第12章【全ての物語の結末】
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【 104 】
案内された部屋の扉を開けた瞬間、息を飲んだ。
なんだ、この状況は…!
寝台の上でピクリともしないお前を見て、ゾクリと身震いする。
仄暗い部屋で、飛び回る無数の幻光虫の光に照らされている姿は、幻想的であり、そして不気味だった。
まるで近付くことを拒絶されているような圧迫感を感じる。
誰も来るな、触れるなと言われているようで、見えない氷の壁があるようだ。
この噎せかえるような異界独特の匂い。
少し前までは己が発していたはず。
自身では気付けないものだが、なるほど、こういう立場になって初めて実感できる。
まるで俺を近付けさせまいとしているように煩くまとわりついてくる幻光虫を無視して、寝台に近付いていく。
眠っている彼女の顔を見つめて、ラフテルだとわかっているはずだが、それでもどこかで違うという感覚が浮かぶ。
向こうの世界であんな形で別れたお前が、ここにいる。
ここにいるお前は、俺が知っているお前ではないということがわかっているのに、目覚めさせようとしている。
そうまでして、お前という人物を確立させたいのか、俺は。
自分を憎んでいる相手を覚醒させて何の得がある。
だが、このまま彼女が消えていくのをただ待つことは、それ以上に俺には耐えられそうにない。
青白い顔色をしたお前がここにいる。
向こうの世界での出来事が幻だったかのような錯覚さえ覚える。
そっと頬に触れてみても、お前は身動き一つしない。
その冷たさに、改めて死人であることを確証付けてしまったようだ。
突然、背後にゾクリと殺気を感じた。
いや、ずっと感じていた気配が急に大きくなったと言うべきか。
後ろを振り向き、ラフテルを守るようにして、相手を見た。
「…貴様!」
「やっと、あいつの本体とご対面できたな」
ニヤニヤと気味の悪い顔をしながら、ラフテルのほうを見つめている。
なぜこいつがここにいる!?
あの時、俺とラフテルの前に姿を表したこいつは、俺がここでラフテルと会ったと言うと、すぐに姿を眩ませた。
「なんだ、こんな状態なら任務は簡単だな、…おたくさえ邪魔しなかったら、だけど」
思わず武器に手をかけたが、この狭い医務室の中で振り回すのは無理がある。
何より、ラフテルを傷つけてしまう。
軽く舌打ちをして相手を睨み付けるが、ニヤついた顔は変わらない。
「外で待ってるぜ」
そう言い残して、奴は再び黒い闇に消えた。
やり場のない怒りで苛立ちが募って、すぐ横の壁に八つ当たりしてしまう。
凹んだ壁を見て苦笑が浮かぶ。
俺はこれほどまでにこいつに依存していたのか。
見つめていても何の変化もないラフテルが、本当に消えていく姿を思い浮かべてしまう。
心臓を鷲掴みにされたような感覚がする。
こんな痛みを感じるのなら、生など戻ってこないほうが良かった。
部屋の扉を開いた所で、この船の3人娘が驚いた顔をしてそこにいた。
体勢からして部屋の中を覗こうとしていたのだろう。
悪戯を見つけられた子供のような顔でこちらを見上げていた。
「あ、あの、アーロンさん! ラフテルさんは…」
「…中で眠っている」
「そうですか」
「…いつからだ」
「えっ?」
「いつからあの状態なんだ」
「あ、はい、昨日の朝、みたいです。 ずっと胸が苦しいって」
昨日の朝、か…。
もしかして、こちらと向こうの世界の時間の流れは同じなのだろうか。
そして、ラフテルも両方の世界での互いの行動がリンクしていた…?
ユウナ達には部屋に入らぬよう伝え、船の甲板にでた。
ここなら隠れようがないからな。
「姿を現したらどうだ」
「…なんだ、気付いてたのか」
どこからともなく聞こえた声はあいつのもの。
こちらの世界に戻った時から、微かに気配は感じていた。
…いや、奴はわざと気配を隠さなかったのだろう。
このスピラではあまり感じることのない、禍々しい気。闇の力。
かつて、あのシーモアが従えた召喚獣が闇の力を持つものだったが、あの力とは根源が違う。
向こうの世界で何度も目にした黒い靄が立ち上り、中から男が現れた。
「なぜお前がここにいる」
「何度も同じことを言うつもりはない。 確認したらすぐに帰るさ」
「確認、だと?」
「あのキーブレードの坊やが開いたこの世界への扉がどんな所に繋がってるのか興味あったし、俺は俺の任務を果たしたかっただけってハナシ」
「…勝手にすればいい」
「ああ、勝手にやらせて貰おう。 ……だけど、おたくは困ってるんじゃないかと思ってね」
「…何の話だ」
「惚けなくていい。 全部見てた。…ファレルクス、いや、こちらの世界ではラフテル、だったかな?
彼女が、目を覚まさないんだろ?」
「!?」
「…俺も、随分戸惑った。 俺が殺したはずの女が、俺達の存在すら知らずに生きている。
はっきり言って、どうしたらいいか組織内でも判断つけがたい状況でね。
…で、完璧主義の俺としては、完璧に任務を全うしたくて少しでも任務の内容に関わりがある事柄は確認しておきたいってハナシ。
おたくが目覚めさせようとしてる女。 あいつは本当に謎だ。 不思議な存在と言ってもいい。
…あんたもおかしいと思わなかったのかい?」
「………」
「ファ…じゃない、ラフテルという女は本当に存在したのか? あれはただの幻で、みんな夢でも見てるんじゃないか。
そう思ったことは?」
「…何が言いたいんだ」
遠回しな言い分に、聞いてるほうは苛つきを覚えるが、こいつが何かを知っているのは確実のようだ。
目覚めたラフテルに会いたいと、こいつも思っているということか。
俺にはわからんその方法を知っているなら聞き出したいところではあるが、こいつが素直に口にするとも思えん。
さて、どうしたものか。
→
2,oct,2015
案内された部屋の扉を開けた瞬間、息を飲んだ。
なんだ、この状況は…!
寝台の上でピクリともしないお前を見て、ゾクリと身震いする。
仄暗い部屋で、飛び回る無数の幻光虫の光に照らされている姿は、幻想的であり、そして不気味だった。
まるで近付くことを拒絶されているような圧迫感を感じる。
誰も来るな、触れるなと言われているようで、見えない氷の壁があるようだ。
この噎せかえるような異界独特の匂い。
少し前までは己が発していたはず。
自身では気付けないものだが、なるほど、こういう立場になって初めて実感できる。
まるで俺を近付けさせまいとしているように煩くまとわりついてくる幻光虫を無視して、寝台に近付いていく。
眠っている彼女の顔を見つめて、ラフテルだとわかっているはずだが、それでもどこかで違うという感覚が浮かぶ。
向こうの世界であんな形で別れたお前が、ここにいる。
ここにいるお前は、俺が知っているお前ではないということがわかっているのに、目覚めさせようとしている。
そうまでして、お前という人物を確立させたいのか、俺は。
自分を憎んでいる相手を覚醒させて何の得がある。
だが、このまま彼女が消えていくのをただ待つことは、それ以上に俺には耐えられそうにない。
青白い顔色をしたお前がここにいる。
向こうの世界での出来事が幻だったかのような錯覚さえ覚える。
そっと頬に触れてみても、お前は身動き一つしない。
その冷たさに、改めて死人であることを確証付けてしまったようだ。
突然、背後にゾクリと殺気を感じた。
いや、ずっと感じていた気配が急に大きくなったと言うべきか。
後ろを振り向き、ラフテルを守るようにして、相手を見た。
「…貴様!」
「やっと、あいつの本体とご対面できたな」
ニヤニヤと気味の悪い顔をしながら、ラフテルのほうを見つめている。
なぜこいつがここにいる!?
あの時、俺とラフテルの前に姿を表したこいつは、俺がここでラフテルと会ったと言うと、すぐに姿を眩ませた。
「なんだ、こんな状態なら任務は簡単だな、…おたくさえ邪魔しなかったら、だけど」
思わず武器に手をかけたが、この狭い医務室の中で振り回すのは無理がある。
何より、ラフテルを傷つけてしまう。
軽く舌打ちをして相手を睨み付けるが、ニヤついた顔は変わらない。
「外で待ってるぜ」
そう言い残して、奴は再び黒い闇に消えた。
やり場のない怒りで苛立ちが募って、すぐ横の壁に八つ当たりしてしまう。
凹んだ壁を見て苦笑が浮かぶ。
俺はこれほどまでにこいつに依存していたのか。
見つめていても何の変化もないラフテルが、本当に消えていく姿を思い浮かべてしまう。
心臓を鷲掴みにされたような感覚がする。
こんな痛みを感じるのなら、生など戻ってこないほうが良かった。
部屋の扉を開いた所で、この船の3人娘が驚いた顔をしてそこにいた。
体勢からして部屋の中を覗こうとしていたのだろう。
悪戯を見つけられた子供のような顔でこちらを見上げていた。
「あ、あの、アーロンさん! ラフテルさんは…」
「…中で眠っている」
「そうですか」
「…いつからだ」
「えっ?」
「いつからあの状態なんだ」
「あ、はい、昨日の朝、みたいです。 ずっと胸が苦しいって」
昨日の朝、か…。
もしかして、こちらと向こうの世界の時間の流れは同じなのだろうか。
そして、ラフテルも両方の世界での互いの行動がリンクしていた…?
ユウナ達には部屋に入らぬよう伝え、船の甲板にでた。
ここなら隠れようがないからな。
「姿を現したらどうだ」
「…なんだ、気付いてたのか」
どこからともなく聞こえた声はあいつのもの。
こちらの世界に戻った時から、微かに気配は感じていた。
…いや、奴はわざと気配を隠さなかったのだろう。
このスピラではあまり感じることのない、禍々しい気。闇の力。
かつて、あのシーモアが従えた召喚獣が闇の力を持つものだったが、あの力とは根源が違う。
向こうの世界で何度も目にした黒い靄が立ち上り、中から男が現れた。
「なぜお前がここにいる」
「何度も同じことを言うつもりはない。 確認したらすぐに帰るさ」
「確認、だと?」
「あのキーブレードの坊やが開いたこの世界への扉がどんな所に繋がってるのか興味あったし、俺は俺の任務を果たしたかっただけってハナシ」
「…勝手にすればいい」
「ああ、勝手にやらせて貰おう。 ……だけど、おたくは困ってるんじゃないかと思ってね」
「…何の話だ」
「惚けなくていい。 全部見てた。…ファレルクス、いや、こちらの世界ではラフテル、だったかな?
彼女が、目を覚まさないんだろ?」
「!?」
「…俺も、随分戸惑った。 俺が殺したはずの女が、俺達の存在すら知らずに生きている。
はっきり言って、どうしたらいいか組織内でも判断つけがたい状況でね。
…で、完璧主義の俺としては、完璧に任務を全うしたくて少しでも任務の内容に関わりがある事柄は確認しておきたいってハナシ。
おたくが目覚めさせようとしてる女。 あいつは本当に謎だ。 不思議な存在と言ってもいい。
…あんたもおかしいと思わなかったのかい?」
「………」
「ファ…じゃない、ラフテルという女は本当に存在したのか? あれはただの幻で、みんな夢でも見てるんじゃないか。
そう思ったことは?」
「…何が言いたいんだ」
遠回しな言い分に、聞いてるほうは苛つきを覚えるが、こいつが何かを知っているのは確実のようだ。
目覚めたラフテルに会いたいと、こいつも思っているということか。
俺にはわからんその方法を知っているなら聞き出したいところではあるが、こいつが素直に口にするとも思えん。
さて、どうしたものか。
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2,oct,2015