第11章【帰ろう、ともに…】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
= 101 =
その日は朝から嫌な予感がしてたんだ。
いい予感は当たったためしがないくせに、なぜ悪い予感はよく当たるんだろう。
胸のあたりが重苦しい。
突然、胸に杭でも打ち込まれたような激しい痛みに襲われ、呼吸ができなくなる。
仲間達と共に私も行動を起こさねばならないのだろうが、この状態では逆に足手まといになるだろう。
「その様子じゃ却って邪魔になるだけだ」
「もう! そんな言い方しなくていいじゃん! ちょっと待ってて、今すんごい薬持ってきてあげるから!」
「ゆっくり休んでください。 きっとまだ本調子じゃないんですよ」
彼女達の言葉はそれぞれの性格をよく表していると思う。
私は短い返事だけ残して部屋に戻ることにした。
ふとデジャヴのような感覚を覚え、前にも似たような言葉を聞いたことがあるような気がした。
だが、そう思うこと自体が気のせいだろうと結論付けた。
寝台に横になってうとうとしてた時だった。
「ラフテル! 大変! 手を貸して!!」
「どうしたんだ? リュック」
慌てた様子で部屋に飛び込んできたリュックに驚いて一気に眠気が吹き飛んだ。
いつものジャケットを羽織って、腰に武器が括り付けられたベルトを巻く。
アイテムの入った小さな袋を鷲掴むと、急かすリュックの後を追って部屋を飛び出した。
独特の足音が響く廊下を走り抜け、甲板に上がる。
船は止まっていた。
周囲の景色を見て、ここがルカの町であることを知る。
ポートには住人だろうか、たくさんの人々が集まってある方向を見つめている。
「ラフテル、あそこ!」
リュックが指差した辺りに目を向ける。
今建設真っ最中の、新しくルカのシンボルになる予定のポートタワーがそこに見える。
この船はそこそこ高さがあり、この甲板の上からは大分辺りを見下ろせるが、この度のタワーはもっと高い。
この位置からでも見上げなければならないほどだ。
その塔の天頂に、何かいる。
…あれは、魔物?
だけどあんな魔物ぐらいで何をそんなに……?
何か、持ってる…?
魔物が手にしているものの正体が知りたくて、思わず甲板の端まで駆け寄る。
そこにいたのは…。
「ユウナ…!?」
「ラフテル! どうしよ~、ユウナが!」
今日はこの町の祭りの準備の手伝いだけだから、とか言ってたはずなのに、一体どうしてこんな展開になったのか。
それより早く助けないと!
「パインはどうしたんだ?」
「今、あの塔に上る方法を探しに行ってる。 下にいるはずだけど…」
「私が行くから、パインを呼び戻して。 下からじゃ間に合わないよ」
「え、行くって…? あっ!ラフテル~!」
そこからなら飛んでいける距離だ。
あの魔物も、でかいだけで素早さはないに等しい。強力な魔法さえ気を付ければ問題ない。
甲板を蹴って飛び上がる。
魔物はまだこちらに気付いてさえいない。
ようやく私の殺気を感じてこちらを振り返ったが、もう遅い。
後ろ腰から引き抜いた2本の小太刀は魔物の体を引き裂く。
浮遊魔法を応用して空中で身を捻り、真下に飛ぶ。
気を失っているのか、ユウナはピクリともしないまま落ちていく。
剣を収め、落ちるユウナを引き寄せて落下地点に目を向けた。
工事中だけあって、辺りには機材やらが散乱していて足の踏み場もない。
それでも体勢を戻して足を下に向けて着地の準備をする。
いつもの浮遊魔法も調整しなければならない。
私とユウナの2人分だから。
軽い足音だけ立てて、無事に地面に降り立った。
と同時に、まだユウナの体を掴んでいた魔物の腕が淡い光となってフワリと舞い上がった。
少し離れた所からワッと歓声が上がる。
バリケードの向こうや隣のポートから見守っていた人々の声だ。
その声で意識を取り戻したのだろう、ユウナが目を覚ました。
「…大丈夫? ユウナ」
「ラフテルさん! …え? あれ? わ、私…?」
「魔物は倒したけど、何か問題が?」
「え、いえ、あの、ありがとうございます!」
「怪我は?」
抱えていたユウナをゆっくり地面に下ろしてやる。
自分で体をあちこち触ってから、ユウナはやっと笑顔を見せた。
「はい、大丈夫です!」
…!!
まただ。またこの感覚。
前にもこんなことがあったような気がする。
私が忘れてるだけなのか?
「…ユ…」
「ユウナ~~ッ!!」
掛けようとした声は別の声でかき消されてしまった。
既に塔に上り始めていたパインと、すぐ近くまで近づいてきた船の上から、リュックが飛び降りてきたのだ。
駆け寄ってくる2人の姿に、本当に嬉しそうに笑顔を見せるユウナ。
彼女のその顔を見てしまったら、私の言葉は引っ込んでしまった。
楽しそうに笑う彼女達を見ていると、こちらも悪い気はしない。
「あっ、今ラフテル笑った!」
目敏いリュックは僅かな表情を見逃さない。
すぐに3人に見つめられる羽目になった私の顔はひきつってしまう。
別に私は笑わない人間というわけではない。
ただ今日は朝から少し気分がすぐれないし、嫌な予感がずっと付きまとっていて、自分でもおかしいと思っている。
そんなことを考えている最中、それは突然やってきた。
胸に激しい痛みが走り、呼吸ができなくなる。
耐えられなくなって、膝をついてしまう。
これは何なんだ!?
胸の奥底のほうが重くて熱くて痛い。
3人が私の名を呼んでいる声が聞こえていた。
その声がだんだん遠くなっていく。
地面についている自分の片手すら歪んでぼやけてくる。
大きく息を吸い込むことができなくて短い小さな呼吸を辛うじて繰り返す。
腕がガクガクと震えているのが自分でわかった。
力が入らなくなり、私の意識はそこで途切れた。
→
29,sep,2015
その日は朝から嫌な予感がしてたんだ。
いい予感は当たったためしがないくせに、なぜ悪い予感はよく当たるんだろう。
胸のあたりが重苦しい。
突然、胸に杭でも打ち込まれたような激しい痛みに襲われ、呼吸ができなくなる。
仲間達と共に私も行動を起こさねばならないのだろうが、この状態では逆に足手まといになるだろう。
「その様子じゃ却って邪魔になるだけだ」
「もう! そんな言い方しなくていいじゃん! ちょっと待ってて、今すんごい薬持ってきてあげるから!」
「ゆっくり休んでください。 きっとまだ本調子じゃないんですよ」
彼女達の言葉はそれぞれの性格をよく表していると思う。
私は短い返事だけ残して部屋に戻ることにした。
ふとデジャヴのような感覚を覚え、前にも似たような言葉を聞いたことがあるような気がした。
だが、そう思うこと自体が気のせいだろうと結論付けた。
寝台に横になってうとうとしてた時だった。
「ラフテル! 大変! 手を貸して!!」
「どうしたんだ? リュック」
慌てた様子で部屋に飛び込んできたリュックに驚いて一気に眠気が吹き飛んだ。
いつものジャケットを羽織って、腰に武器が括り付けられたベルトを巻く。
アイテムの入った小さな袋を鷲掴むと、急かすリュックの後を追って部屋を飛び出した。
独特の足音が響く廊下を走り抜け、甲板に上がる。
船は止まっていた。
周囲の景色を見て、ここがルカの町であることを知る。
ポートには住人だろうか、たくさんの人々が集まってある方向を見つめている。
「ラフテル、あそこ!」
リュックが指差した辺りに目を向ける。
今建設真っ最中の、新しくルカのシンボルになる予定のポートタワーがそこに見える。
この船はそこそこ高さがあり、この甲板の上からは大分辺りを見下ろせるが、この度のタワーはもっと高い。
この位置からでも見上げなければならないほどだ。
その塔の天頂に、何かいる。
…あれは、魔物?
だけどあんな魔物ぐらいで何をそんなに……?
何か、持ってる…?
魔物が手にしているものの正体が知りたくて、思わず甲板の端まで駆け寄る。
そこにいたのは…。
「ユウナ…!?」
「ラフテル! どうしよ~、ユウナが!」
今日はこの町の祭りの準備の手伝いだけだから、とか言ってたはずなのに、一体どうしてこんな展開になったのか。
それより早く助けないと!
「パインはどうしたんだ?」
「今、あの塔に上る方法を探しに行ってる。 下にいるはずだけど…」
「私が行くから、パインを呼び戻して。 下からじゃ間に合わないよ」
「え、行くって…? あっ!ラフテル~!」
そこからなら飛んでいける距離だ。
あの魔物も、でかいだけで素早さはないに等しい。強力な魔法さえ気を付ければ問題ない。
甲板を蹴って飛び上がる。
魔物はまだこちらに気付いてさえいない。
ようやく私の殺気を感じてこちらを振り返ったが、もう遅い。
後ろ腰から引き抜いた2本の小太刀は魔物の体を引き裂く。
浮遊魔法を応用して空中で身を捻り、真下に飛ぶ。
気を失っているのか、ユウナはピクリともしないまま落ちていく。
剣を収め、落ちるユウナを引き寄せて落下地点に目を向けた。
工事中だけあって、辺りには機材やらが散乱していて足の踏み場もない。
それでも体勢を戻して足を下に向けて着地の準備をする。
いつもの浮遊魔法も調整しなければならない。
私とユウナの2人分だから。
軽い足音だけ立てて、無事に地面に降り立った。
と同時に、まだユウナの体を掴んでいた魔物の腕が淡い光となってフワリと舞い上がった。
少し離れた所からワッと歓声が上がる。
バリケードの向こうや隣のポートから見守っていた人々の声だ。
その声で意識を取り戻したのだろう、ユウナが目を覚ました。
「…大丈夫? ユウナ」
「ラフテルさん! …え? あれ? わ、私…?」
「魔物は倒したけど、何か問題が?」
「え、いえ、あの、ありがとうございます!」
「怪我は?」
抱えていたユウナをゆっくり地面に下ろしてやる。
自分で体をあちこち触ってから、ユウナはやっと笑顔を見せた。
「はい、大丈夫です!」
…!!
まただ。またこの感覚。
前にもこんなことがあったような気がする。
私が忘れてるだけなのか?
「…ユ…」
「ユウナ~~ッ!!」
掛けようとした声は別の声でかき消されてしまった。
既に塔に上り始めていたパインと、すぐ近くまで近づいてきた船の上から、リュックが飛び降りてきたのだ。
駆け寄ってくる2人の姿に、本当に嬉しそうに笑顔を見せるユウナ。
彼女のその顔を見てしまったら、私の言葉は引っ込んでしまった。
楽しそうに笑う彼女達を見ていると、こちらも悪い気はしない。
「あっ、今ラフテル笑った!」
目敏いリュックは僅かな表情を見逃さない。
すぐに3人に見つめられる羽目になった私の顔はひきつってしまう。
別に私は笑わない人間というわけではない。
ただ今日は朝から少し気分がすぐれないし、嫌な予感がずっと付きまとっていて、自分でもおかしいと思っている。
そんなことを考えている最中、それは突然やってきた。
胸に激しい痛みが走り、呼吸ができなくなる。
耐えられなくなって、膝をついてしまう。
これは何なんだ!?
胸の奥底のほうが重くて熱くて痛い。
3人が私の名を呼んでいる声が聞こえていた。
その声がだんだん遠くなっていく。
地面についている自分の片手すら歪んでぼやけてくる。
大きく息を吸い込むことができなくて短い小さな呼吸を辛うじて繰り返す。
腕がガクガクと震えているのが自分でわかった。
力が入らなくなり、私の意識はそこで途切れた。
→
29,sep,2015