第1章【何が起きたのか理解不能】
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「…ん」
「目が、覚めたかな」
「……あなたは…?」
「心配せんでもええよ。ワシは医者じゃ」
「医者……。私は、どうしたのだ?」
「覚えとらんか?」
…覚え、てる。
二度と来るまいと思っていたベベルの一室。
そこから逃げ出そうとして、何人かの兵を超えて廊下を走った。
昇降台を使って下に降りようとしたところで、恐怖が待っていた。
急に再びその恐怖が蘇ってきた。
もう、そいつの姿はここにはない。
それなのに、まだそいつの気配を感じるような気がして、寒気が走る。
身が、小刻みにカタカタと震える。
その身体を抑えようと、無意識に自分で自分の腕を抱きしめる。
「何を、そんなに怯えとるんじゃ」
「…わ、わからない」
「わからん、とな」
「あいつが誰なのかも、知らない。それなのに、こ、怖くて仕方が、ない…」
「…あいつ…とは?」
「…恐ろしい…。ただ、恐ろしい存在としか、言えない」
鋭利な刃物を思わせる奴の気配に身体が震える。
まるでそこから何らかの力が迸る様で、私の身体はそれだけで竦んで動けなくなる。
あいつは、誰なんだ…?
なぜ私はあいつにこんなにも恐怖を感じる?
「あいつ、とは、アーロン殿のことかの?」
「!! …あ、アー、ロン?」
聞き覚えのあるような、ないような名前。
それが、あいつの名前?
「うっ!!!」
突然頭に走る酷い激痛。
それと共に脳裏に浮かぶ、あの男の顔。
私の胸倉を掴み上げて、私を容赦なく殴りつける姿。
私に剣を突きたてる姿。
苦しむ私を見下ろす、冷たい笑み。
…私を組み敷く獣のような、男…
「う、うう…、うぁ、あぁあぁぁ…!」
怖い、恐ろしい、嫌だ!
私は、あの男を知らない。
それなのに、こんな恐怖の記憶だけが私の中にある。
これは何だ!?
あれは、一体、私にとってどんな人物なのだ。
「ああああ、あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!」
「お、おい! 落ち着くんじゃ!!」
先程、医師だと名乗った初老の男が私を必死に押さえつけようとする。
その行為そのものが、かえって私の記憶の中の行動と重なって、私は気が保てなくなる。
正気ではいられない。
周りからどう思われようとどんな目で見られようと、そんなこと構わない。
この苦しみから逃れたくて、逃げたくて、でもどうすることもできなくて。
この葛藤は誰にもどこにもぶつけることができない。
これは私自身の中で絡み合ってもがいて複雑に張り巡らされた心の行く先が、出口を求めて私の口から零れ落ちる言葉と成っている。
私にもどうすることもできない。
止めたくても、止められない。止めたくない。
何もかもどうでもいいと思えてくる。
「党首!党首!!大変なんじゃ!!」
私から手を離した医師が、ドアの外に誰かを呼びに行ったらしい。
一頻り声を張り上げたことで、少し私の気は晴れたのか、顔を布団に埋めたままで温くなった呼吸を繰り返した。
まだ、頭痛は酷い。
目を閉じれば、嫌でもあの場面が浮かんでくる。
目を閉じるまいと、見開いたままの目に涙が滲むのか、視界はボヤけていく。
ハァハァと短い息を何度も何度も繰り返して、痛む頭を両手で押さえつけたまま、自分自身を落ちつかせようとしてみる。
部屋を出た医師が、もう一人誰かを伴って部屋の扉を開けた。
ガチャリとその音が聞こえたほうへ反応して頭だけを向ける。
長い髪の隙間から目だけを覗かせてその人物を確認した。
先程の医師と、見覚えのある若者。
…こいつは、あの時の戦いの時にいたな。
→第2章【別世界へトリップ】
12,jun,2015
「…ん」
「目が、覚めたかな」
「……あなたは…?」
「心配せんでもええよ。ワシは医者じゃ」
「医者……。私は、どうしたのだ?」
「覚えとらんか?」
…覚え、てる。
二度と来るまいと思っていたベベルの一室。
そこから逃げ出そうとして、何人かの兵を超えて廊下を走った。
昇降台を使って下に降りようとしたところで、恐怖が待っていた。
急に再びその恐怖が蘇ってきた。
もう、そいつの姿はここにはない。
それなのに、まだそいつの気配を感じるような気がして、寒気が走る。
身が、小刻みにカタカタと震える。
その身体を抑えようと、無意識に自分で自分の腕を抱きしめる。
「何を、そんなに怯えとるんじゃ」
「…わ、わからない」
「わからん、とな」
「あいつが誰なのかも、知らない。それなのに、こ、怖くて仕方が、ない…」
「…あいつ…とは?」
「…恐ろしい…。ただ、恐ろしい存在としか、言えない」
鋭利な刃物を思わせる奴の気配に身体が震える。
まるでそこから何らかの力が迸る様で、私の身体はそれだけで竦んで動けなくなる。
あいつは、誰なんだ…?
なぜ私はあいつにこんなにも恐怖を感じる?
「あいつ、とは、アーロン殿のことかの?」
「!! …あ、アー、ロン?」
聞き覚えのあるような、ないような名前。
それが、あいつの名前?
「うっ!!!」
突然頭に走る酷い激痛。
それと共に脳裏に浮かぶ、あの男の顔。
私の胸倉を掴み上げて、私を容赦なく殴りつける姿。
私に剣を突きたてる姿。
苦しむ私を見下ろす、冷たい笑み。
…私を組み敷く獣のような、男…
「う、うう…、うぁ、あぁあぁぁ…!」
怖い、恐ろしい、嫌だ!
私は、あの男を知らない。
それなのに、こんな恐怖の記憶だけが私の中にある。
これは何だ!?
あれは、一体、私にとってどんな人物なのだ。
「ああああ、あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!」
「お、おい! 落ち着くんじゃ!!」
先程、医師だと名乗った初老の男が私を必死に押さえつけようとする。
その行為そのものが、かえって私の記憶の中の行動と重なって、私は気が保てなくなる。
正気ではいられない。
周りからどう思われようとどんな目で見られようと、そんなこと構わない。
この苦しみから逃れたくて、逃げたくて、でもどうすることもできなくて。
この葛藤は誰にもどこにもぶつけることができない。
これは私自身の中で絡み合ってもがいて複雑に張り巡らされた心の行く先が、出口を求めて私の口から零れ落ちる言葉と成っている。
私にもどうすることもできない。
止めたくても、止められない。止めたくない。
何もかもどうでもいいと思えてくる。
「党首!党首!!大変なんじゃ!!」
私から手を離した医師が、ドアの外に誰かを呼びに行ったらしい。
一頻り声を張り上げたことで、少し私の気は晴れたのか、顔を布団に埋めたままで温くなった呼吸を繰り返した。
まだ、頭痛は酷い。
目を閉じれば、嫌でもあの場面が浮かんでくる。
目を閉じるまいと、見開いたままの目に涙が滲むのか、視界はボヤけていく。
ハァハァと短い息を何度も何度も繰り返して、痛む頭を両手で押さえつけたまま、自分自身を落ちつかせようとしてみる。
部屋を出た医師が、もう一人誰かを伴って部屋の扉を開けた。
ガチャリとその音が聞こえたほうへ反応して頭だけを向ける。
長い髪の隙間から目だけを覗かせてその人物を確認した。
先程の医師と、見覚えのある若者。
…こいつは、あの時の戦いの時にいたな。
→第2章【別世界へトリップ】
12,jun,2015