第1章【何が起きたのか理解不能】
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開いた目に最初に飛び込んできたのは、眩しい世界。
その余りの眩しさに、再び硬く瞼を閉じて布団に潜り込んだ。
その中でゆっくりと再び目を開く。
先程よりも抑えられた明るさの中で、何度も瞬きを繰り返した。
「(…布団…?)」
ゆっくりと顔を出してみる。
ずっと長いこと暗い世界にいたせいで、部屋の中の明るさでさえも目に刺さるようにキツイ。
それでも長い時間も置かずにやがて目は慣れてきた。
見覚えのある天井、見覚えのある部屋。
異界で暮らしていたときの自分の部屋ではないことは確かだ。
はっとした。
見覚えがあるわけだ。
もう二度と、来るまいと思っていた部屋、建物、街…
「…ベベル、か」
どうして自分はこんなところにいるのか理解できない。
頭が重くて、直前まで何をしていたのだろうと思い出そうとしてみるが、ユウナと出会ったところまでしか思い出せない。
ずっと長いこと、夢を見ていたような気分だった。
今もまだ、夢の中にいるのではないだろうかと錯覚してしまう。
体を起こしてみるが、自分の体がこんなに重かっただろうかと思えるほど、言うことを聞いてくれない。
酷い喉の渇きを覚えて、見知った部屋の間取りの中の水場へと足を進める。
鏡に映った自分の姿を見て、驚愕した。
目の下どころか、目の周りが窪んでしまったのではないかと思えるほどの隈と、扱けた頬。
何日も入浴しなかったのか、髪はベタリと額に張付いている。
「……酷い顔だ…」
鏡の中の自分が自嘲したのを見て、水を飲んだ。
部屋に戻り、改めて自分自身の姿を確認する。
体力は酷く消耗しているが、ずっと寝ていたせいか、魔力だけは満杯だ。
相変わらず部屋の窓の外には鉄格子。
だが、窓を開けることはできた。
開けた窓から入り込む新鮮な空気に、異界の匂いはもうしない。
…いや、恐らく自分自身がこの匂いに包まれているせいで気付かないだけなのだろう。
上空を、奇妙な声を上げて旋回している魔物を見つけて、すかさず魔法を放つ。
浮き上がった幻光虫を自身の体に取り込んだ。
僅かに体力が戻ってくるのを感じて、やはり自分は死人なのだと再認識する。
趣味の悪いベベルの夜具を脱ぎ捨てて、頭から湯を被った。
体中に残る、過去の戦いの傷跡に目を落として、幻光虫がこんな細かなところまで再現してくれるその能力に改めて驚かされる。
特に目立つ、脇腹の傷。
まだ新しいそれに目を落とし、さてこれはいつのものだっただろうかと思考を巡らせる。
そして、徐々に蘇ってくる、あの時の記憶。
ジェクトと戦った、誰かに剣を突きたてられた。
シューインと話をした。
そして、ジェクトと、別れた……
そうだ、あの時、ジェクトは私に何かを預かって欲しいと言った。
直後に頭に流れ込んできたもののせいで、酷い頭痛に冒されていたことまで蘇った。
ジェクトから受け取った記憶とこれまでに集めた欠片を一つにする。
シューインに利用された記憶も、彼が宙に還るときに私の中に戻っていた。
あとはそれら全てをひとつにすれば…。
最後まで見守りたかった。
そうするつもりだったのに、
できなかった。
突然体中すべての力が無くなってしまったかのように、私の意識はそこで本当に前触れもなくプツリと途切れた。
「……はぁ」
思い出した内容に溜息を吐き出した。
濡れて重くなった長い髪を乱暴に掻き揚げて、ある程度の水気を拭き取ってから強引にいつものように1つに束ねた。
部屋の中を漁ってみても、まともな服は無い。
仕方ないとばかりに、再び趣味の悪い夜具を被り、部屋から脱出を試みることにした。
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開いた目に最初に飛び込んできたのは、眩しい世界。
その余りの眩しさに、再び硬く瞼を閉じて布団に潜り込んだ。
その中でゆっくりと再び目を開く。
先程よりも抑えられた明るさの中で、何度も瞬きを繰り返した。
「(…布団…?)」
ゆっくりと顔を出してみる。
ずっと長いこと暗い世界にいたせいで、部屋の中の明るさでさえも目に刺さるようにキツイ。
それでも長い時間も置かずにやがて目は慣れてきた。
見覚えのある天井、見覚えのある部屋。
異界で暮らしていたときの自分の部屋ではないことは確かだ。
はっとした。
見覚えがあるわけだ。
もう二度と、来るまいと思っていた部屋、建物、街…
「…ベベル、か」
どうして自分はこんなところにいるのか理解できない。
頭が重くて、直前まで何をしていたのだろうと思い出そうとしてみるが、ユウナと出会ったところまでしか思い出せない。
ずっと長いこと、夢を見ていたような気分だった。
今もまだ、夢の中にいるのではないだろうかと錯覚してしまう。
体を起こしてみるが、自分の体がこんなに重かっただろうかと思えるほど、言うことを聞いてくれない。
酷い喉の渇きを覚えて、見知った部屋の間取りの中の水場へと足を進める。
鏡に映った自分の姿を見て、驚愕した。
目の下どころか、目の周りが窪んでしまったのではないかと思えるほどの隈と、扱けた頬。
何日も入浴しなかったのか、髪はベタリと額に張付いている。
「……酷い顔だ…」
鏡の中の自分が自嘲したのを見て、水を飲んだ。
部屋に戻り、改めて自分自身の姿を確認する。
体力は酷く消耗しているが、ずっと寝ていたせいか、魔力だけは満杯だ。
相変わらず部屋の窓の外には鉄格子。
だが、窓を開けることはできた。
開けた窓から入り込む新鮮な空気に、異界の匂いはもうしない。
…いや、恐らく自分自身がこの匂いに包まれているせいで気付かないだけなのだろう。
上空を、奇妙な声を上げて旋回している魔物を見つけて、すかさず魔法を放つ。
浮き上がった幻光虫を自身の体に取り込んだ。
僅かに体力が戻ってくるのを感じて、やはり自分は死人なのだと再認識する。
趣味の悪いベベルの夜具を脱ぎ捨てて、頭から湯を被った。
体中に残る、過去の戦いの傷跡に目を落として、幻光虫がこんな細かなところまで再現してくれるその能力に改めて驚かされる。
特に目立つ、脇腹の傷。
まだ新しいそれに目を落とし、さてこれはいつのものだっただろうかと思考を巡らせる。
そして、徐々に蘇ってくる、あの時の記憶。
ジェクトと戦った、誰かに剣を突きたてられた。
シューインと話をした。
そして、ジェクトと、別れた……
そうだ、あの時、ジェクトは私に何かを預かって欲しいと言った。
直後に頭に流れ込んできたもののせいで、酷い頭痛に冒されていたことまで蘇った。
ジェクトから受け取った記憶とこれまでに集めた欠片を一つにする。
シューインに利用された記憶も、彼が宙に還るときに私の中に戻っていた。
あとはそれら全てをひとつにすれば…。
最後まで見守りたかった。
そうするつもりだったのに、
できなかった。
突然体中すべての力が無くなってしまったかのように、私の意識はそこで本当に前触れもなくプツリと途切れた。
「……はぁ」
思い出した内容に溜息を吐き出した。
濡れて重くなった長い髪を乱暴に掻き揚げて、ある程度の水気を拭き取ってから強引にいつものように1つに束ねた。
部屋の中を漁ってみても、まともな服は無い。
仕方ないとばかりに、再び趣味の悪い夜具を被り、部屋から脱出を試みることにした。
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