最終章【ジェクト~終結】
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繰り返してはいけない
=96=
ユウナの顔が苦痛に歪む。
当然だ。
これを苦痛と感じない召喚士がいるはずがない。
命を掛けて長く苦しい旅をして、必死に祈りを捧げて心を通わせた召喚獣達。
それは決して、こんな風に敵対するためなのではない。
シンを倒してスピラに平和を取り戻すため。
己の力を鍛え上げ、究極召喚を得る為に…
召喚士も、祈り子達も、それは同じ気持ちだった。
だが、そうやって共に旅をし、力を貸してくれた存在は、敵となって目の前にいる。
こんな闘いなど、召喚士もガードも誰も、望んでいた訳ではないというのに…
ユウナが召喚する。
心を通わせた召喚獣を呼ぶ。
その度に私達は力を合わせ、エボン=ジュの乗り移った黒い召喚獣を倒す。
1体、2体、3体……
ユウナ1人が苦しいのではない。
この場にいる誰もが苦しんでいる。
仲間達も、召喚獣も、そしてきっと、エボン=ジュも。
一番最後に、ユウナはバハムートを召喚した。
最後の最後で、最強の召喚獣が姿を現す。
すでに仲間達は皆、肩で息をしている。
ただでさえ召喚獣の力は強い。それ以上に、ここに現われるものたちは皆エボン=ジュの邪悪な能力に支配されより強固になっている。
しかもこの立て続けの連戦。そこにダメ押しとばかりに登場した最強の敵。
「………」
「…マジかよ…」
「召喚獣って、こんないっぱいいたっけ~~!?」
それでも、怯まない。諦めない。
ほんの少しずつだとしても、確実にこちらの攻撃は効いている。
仲間達の疲労がピークに達する。
バハムートがカウントダウンを始めたのが分かった。
戦慄が走る。
この攻撃は、まずい!
召喚を続けたユウナはもう、その場に座り込んでしまっている。
仲間達の動きも鈍い。
先程から何度も攻撃を続けてはいるが、そのどれも致命的なダメージは与えられない。
最強の名は伊達ではない。
カウントが小さくなる。時間が無い。
考えている余裕はない。
攻撃を与え続ける仲間がユウナを守るためにその場を離れる訳にはいかない。
だが、地面に両手をついて身構えているバハムートの攻撃が来る直線上にいるユウナは、気が付いていないのか俯いたままだ。
「…くっ!」
バハムートの背にある陣が魔力を蓄えて回転を始める。
動きの鈍くなった自分の足を叱咤しながら、私はユウナ目掛けて飛んだ。
瞬間、辺りは眩しい閃光に包まれる。
眩しい真っ白な光の中の、無音の世界。
光の中に、2人の人影を見た。
こちらに背を向けていた2人はゆっくりと振り返り、そして、優しく微笑んだ。
「ラフテルさん!!」
ユウナの声に目を開ける。
…ユウナは、無事だった。良かった。
そして獣の切ない断末魔の声が響いた。
どうやら向こうも決着がついたようだ。
少年や仲間達がこちらに走り寄ってくる。
体を起こそうとしたが、何かがおかしい。上手く体が動かない。
「……ラフテルさん、 ……あ、足…足が……」
「??」
ユウナが何を口にしているのか意味がわからなかったが、己の足を見て、愕然とする。
足が片方、膝から下が無くなっていた。
先程の攻撃で足だけ避け切れなかったらしい。
だが、痛みは無い。血も出ない。
よく見ると、その切り口が石のように硬化しているのがわかった。
はっとした。
………時間が、来た。
全ての召喚獣を倒し、それでもまだ召喚獣を探し続けるエボン=ジュが私達の頭上をぐるぐると飛びまわっている。
「ユウナ、私のことはいい。…いつも言ってるだろ?」
「でも!…ラフテルさん…」
「ほら、ティーダも! 私に構っている場合じゃない。そうだろ?」
しつこく説得しなくても、ユウナも少年も、そして仲間達も、今何をすべきなのか、何をしなければならないのか、ちゃんと分かってる。
ユウナと少年の顔を見れば一目瞭然だ。
少年が頭上を見上げる。
そこに浮かんだ、黒い靄のような塊。
それは次第にその姿を鮮明にし始める。
丸い卵のような、黒い物体。
顎鬚のようにさえ見える太く短い触手がうねうねと蠢いている。
そしてその表面に映し出された、エボンを現す梵字のような象徴。
これが、エボン=ジュ。
乗り移るべき召喚獣を全て失って、ようやく姿を現した、この世界そのものの敵。
→
=96=
ユウナの顔が苦痛に歪む。
当然だ。
これを苦痛と感じない召喚士がいるはずがない。
命を掛けて長く苦しい旅をして、必死に祈りを捧げて心を通わせた召喚獣達。
それは決して、こんな風に敵対するためなのではない。
シンを倒してスピラに平和を取り戻すため。
己の力を鍛え上げ、究極召喚を得る為に…
召喚士も、祈り子達も、それは同じ気持ちだった。
だが、そうやって共に旅をし、力を貸してくれた存在は、敵となって目の前にいる。
こんな闘いなど、召喚士もガードも誰も、望んでいた訳ではないというのに…
ユウナが召喚する。
心を通わせた召喚獣を呼ぶ。
その度に私達は力を合わせ、エボン=ジュの乗り移った黒い召喚獣を倒す。
1体、2体、3体……
ユウナ1人が苦しいのではない。
この場にいる誰もが苦しんでいる。
仲間達も、召喚獣も、そしてきっと、エボン=ジュも。
一番最後に、ユウナはバハムートを召喚した。
最後の最後で、最強の召喚獣が姿を現す。
すでに仲間達は皆、肩で息をしている。
ただでさえ召喚獣の力は強い。それ以上に、ここに現われるものたちは皆エボン=ジュの邪悪な能力に支配されより強固になっている。
しかもこの立て続けの連戦。そこにダメ押しとばかりに登場した最強の敵。
「………」
「…マジかよ…」
「召喚獣って、こんないっぱいいたっけ~~!?」
それでも、怯まない。諦めない。
ほんの少しずつだとしても、確実にこちらの攻撃は効いている。
仲間達の疲労がピークに達する。
バハムートがカウントダウンを始めたのが分かった。
戦慄が走る。
この攻撃は、まずい!
召喚を続けたユウナはもう、その場に座り込んでしまっている。
仲間達の動きも鈍い。
先程から何度も攻撃を続けてはいるが、そのどれも致命的なダメージは与えられない。
最強の名は伊達ではない。
カウントが小さくなる。時間が無い。
考えている余裕はない。
攻撃を与え続ける仲間がユウナを守るためにその場を離れる訳にはいかない。
だが、地面に両手をついて身構えているバハムートの攻撃が来る直線上にいるユウナは、気が付いていないのか俯いたままだ。
「…くっ!」
バハムートの背にある陣が魔力を蓄えて回転を始める。
動きの鈍くなった自分の足を叱咤しながら、私はユウナ目掛けて飛んだ。
瞬間、辺りは眩しい閃光に包まれる。
眩しい真っ白な光の中の、無音の世界。
光の中に、2人の人影を見た。
こちらに背を向けていた2人はゆっくりと振り返り、そして、優しく微笑んだ。
「ラフテルさん!!」
ユウナの声に目を開ける。
…ユウナは、無事だった。良かった。
そして獣の切ない断末魔の声が響いた。
どうやら向こうも決着がついたようだ。
少年や仲間達がこちらに走り寄ってくる。
体を起こそうとしたが、何かがおかしい。上手く体が動かない。
「……ラフテルさん、 ……あ、足…足が……」
「??」
ユウナが何を口にしているのか意味がわからなかったが、己の足を見て、愕然とする。
足が片方、膝から下が無くなっていた。
先程の攻撃で足だけ避け切れなかったらしい。
だが、痛みは無い。血も出ない。
よく見ると、その切り口が石のように硬化しているのがわかった。
はっとした。
………時間が、来た。
全ての召喚獣を倒し、それでもまだ召喚獣を探し続けるエボン=ジュが私達の頭上をぐるぐると飛びまわっている。
「ユウナ、私のことはいい。…いつも言ってるだろ?」
「でも!…ラフテルさん…」
「ほら、ティーダも! 私に構っている場合じゃない。そうだろ?」
しつこく説得しなくても、ユウナも少年も、そして仲間達も、今何をすべきなのか、何をしなければならないのか、ちゃんと分かってる。
ユウナと少年の顔を見れば一目瞭然だ。
少年が頭上を見上げる。
そこに浮かんだ、黒い靄のような塊。
それは次第にその姿を鮮明にし始める。
丸い卵のような、黒い物体。
顎鬚のようにさえ見える太く短い触手がうねうねと蠢いている。
そしてその表面に映し出された、エボンを現す梵字のような象徴。
これが、エボン=ジュ。
乗り移るべき召喚獣を全て失って、ようやく姿を現した、この世界そのものの敵。
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