第9章【シン~シンの体内】
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この勢いは殺せない
=86=
「何を話していたんだ」
キマリに呼ばれた少年がユウナを探しにその場を離れたとき、後ろから抱き締められた。
「…見てたのか」
「遠慮はしたつもりだが」
「丁度良かった、少し休みたい。部屋まで運んでくれ」
「見返りは?」
「バーカ!」
少年のお陰で、少しだけ気分が回復したようだ。
だが、いつまで経ってもこの乗り物に乗った時の浮遊感にはどうにも慣れない。
頭の中の、バランスを取る器官がうまく機能してくれないのだ。
お陰でこの悪酔いからなかなか醒めてくれない。
いい歳をして…、と思われてももう構わない。
誰かに見られても、もういいと思っている自分がいる。
遠慮なくアーロンの首にしがみ付くようにして身を任せた。
「ジェクトは待っているようだな」
「…うん、早く、行ってやらないとな」
「お前は、大丈夫なのか?」
「…わからない。でも、大丈夫とは言い切れない。…ジスカルは待っててくれてる。でも、ジェクトに会ったら、嬉しくてそこで終わってしまいそうだ」
「奴を、解放してやるのが先だろ」
「…そうだな」
「あぁ、全部終わったら、ジェクトもみんなで行こう。ブラスカが待ってる。ガードが召喚士を放っておくなんて、できんからな」
「…うん…んっ!! ………っっ!………んんっ……」
またこいつは……
『ユウナ、ラフテル、どこにいるの!? シンを見て!!』
船の中にリュックの声が響いた。
いつの間にか寝台に押し倒されていた私は、その声にはっとする。
…あ、あぶない。また流されるところだった……
上に覆いかぶさっている奴を押しのけるようにして窓から外の様子を見る。
ベベルの町外れに落下したシンがその体を動かし始めた。
「!! 復活する…」
気分の悪さなんて、あいつに触れられたことで上がった熱なんて、今はもうどうでもいい。
それよりも、これ以上また復活されたら厄介になる。
やれやれ、なんて暢気なことを言いながら、アーロンもブリッジへ向かう。
身を起し、空に向かって咆哮を上げるシン。
のそりとその身を反転させたかと思うと、背中の模様かと思っていた部分が持ち上がる。
それは羽根のように背中の上に広がった。
と思った瞬間!その下から、本当に本物の羽根が現われたのだ!!
鳥のものとも、虫のものとも違う、だが、薄い膜のようなそれはシンの背中に2対、夕日を透かしてそこに羽ばたいている。
もともとあったものなのか、それとも腕をもがれたことによる進化なのか、それはわからない。
だが、あきらかに先程負わせたダメージなんてすでに無いように見える。
さらに空に向かって力強く嘶いて見せると、側にあったベベルの建造物であろうか、塔の上部にひらりと舞ってみせた。
ブリッジに少年とユウナが戻ってきた。
夕日を受けて鮮やかに染まるシンはそこにじっと佇んでいた。
何かを待っているかのように。
…それは、少年に倒されること。私たちの手で解放されること。
「どうする、もう、援護は出来ねぇぞ」
シドが少々情けない声を出す。
「もう、どうもこうもないだろ! 正面から行く!」
少年が力強く叫んだ。
私達は再びデッキに集合した。
飛空挺がゆっくりとシンの顔に近付いていく。
真正面から、ゆっくりと、ゆっくりと…
シンもこちらに気付いたのか、大きな巨体を動かしている。
そして、背中の羽根を歓喜するようにゆっくりと羽ばたかせて見せた。
「攻撃の届くものからどんどん攻めろ。奴に隙を与えるな!」
『行くぞ!』
「おう!」
塔から再び飛び上がったシンに向かって、私たちもデッキの端まで駆け寄る。
突然、体も足元もぐいと引き寄せられる感覚に陥る。
シンに引かれているのだ。
今はまだ距離があるが、完全に引き寄せられたらお終いだろう。
ふとシンの顔の前の空間が微かに歪んでいるのが見えた。
「…?」
気のせいだろうかとも思ったが、いや、違う。あれは…
「急げ!奴はまたさっきのアレを使うつもりだ!」
「え~~~~っ!」
「マジかよ!」
「またあんなのを食らったら、今度こそお終いだわ」
「一気にカタをつける!!」
「行くッスよ!!」
魔法や投打攻撃を中心にシンを攻撃していく。
シンがゆっくりとそのでかい口を開いていく。それと同時に先程と同じ様なエネルギーの塊が作り出されていく。
あれが完成するまでは時間がかかる。
それまでになんとかシンを弱らせることが出来れば、あの恐ろしい攻撃は止められる。
アニキがなんとか飛空挺を持たせているのだろうが、シンの引き寄せる力には抗えないのか、少しずつ距離が縮まっていく。
こちらも攻撃の手を休めるわけには行かない。
シンが作り出したエネルギーの塊は、黒い羽根のような光の帯をその球体の周りに浮かばせている。
船が近付いたことで、飛び回る光の帯は私たちにまで影響を及ぼし始める。
物凄い速さでどこからともなく飛来するそれは、私達に回避する時間を与えない。
それだけ、距離が縮まってしまってということ。
だがこの距離なら、直接攻撃も十分に届く範囲だ。
アーロンや少年、キマリも前線へと身を投じる。
そしてついに、シンの作り出したエネルギーの球体が動きを止め、空気中に霧散していった。
引き寄せる力も弱まったのか、一気にそこから飛空挺は離脱した。
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「何を話していたんだ」
キマリに呼ばれた少年がユウナを探しにその場を離れたとき、後ろから抱き締められた。
「…見てたのか」
「遠慮はしたつもりだが」
「丁度良かった、少し休みたい。部屋まで運んでくれ」
「見返りは?」
「バーカ!」
少年のお陰で、少しだけ気分が回復したようだ。
だが、いつまで経ってもこの乗り物に乗った時の浮遊感にはどうにも慣れない。
頭の中の、バランスを取る器官がうまく機能してくれないのだ。
お陰でこの悪酔いからなかなか醒めてくれない。
いい歳をして…、と思われてももう構わない。
誰かに見られても、もういいと思っている自分がいる。
遠慮なくアーロンの首にしがみ付くようにして身を任せた。
「ジェクトは待っているようだな」
「…うん、早く、行ってやらないとな」
「お前は、大丈夫なのか?」
「…わからない。でも、大丈夫とは言い切れない。…ジスカルは待っててくれてる。でも、ジェクトに会ったら、嬉しくてそこで終わってしまいそうだ」
「奴を、解放してやるのが先だろ」
「…そうだな」
「あぁ、全部終わったら、ジェクトもみんなで行こう。ブラスカが待ってる。ガードが召喚士を放っておくなんて、できんからな」
「…うん…んっ!! ………っっ!………んんっ……」
またこいつは……
『ユウナ、ラフテル、どこにいるの!? シンを見て!!』
船の中にリュックの声が響いた。
いつの間にか寝台に押し倒されていた私は、その声にはっとする。
…あ、あぶない。また流されるところだった……
上に覆いかぶさっている奴を押しのけるようにして窓から外の様子を見る。
ベベルの町外れに落下したシンがその体を動かし始めた。
「!! 復活する…」
気分の悪さなんて、あいつに触れられたことで上がった熱なんて、今はもうどうでもいい。
それよりも、これ以上また復活されたら厄介になる。
やれやれ、なんて暢気なことを言いながら、アーロンもブリッジへ向かう。
身を起し、空に向かって咆哮を上げるシン。
のそりとその身を反転させたかと思うと、背中の模様かと思っていた部分が持ち上がる。
それは羽根のように背中の上に広がった。
と思った瞬間!その下から、本当に本物の羽根が現われたのだ!!
鳥のものとも、虫のものとも違う、だが、薄い膜のようなそれはシンの背中に2対、夕日を透かしてそこに羽ばたいている。
もともとあったものなのか、それとも腕をもがれたことによる進化なのか、それはわからない。
だが、あきらかに先程負わせたダメージなんてすでに無いように見える。
さらに空に向かって力強く嘶いて見せると、側にあったベベルの建造物であろうか、塔の上部にひらりと舞ってみせた。
ブリッジに少年とユウナが戻ってきた。
夕日を受けて鮮やかに染まるシンはそこにじっと佇んでいた。
何かを待っているかのように。
…それは、少年に倒されること。私たちの手で解放されること。
「どうする、もう、援護は出来ねぇぞ」
シドが少々情けない声を出す。
「もう、どうもこうもないだろ! 正面から行く!」
少年が力強く叫んだ。
私達は再びデッキに集合した。
飛空挺がゆっくりとシンの顔に近付いていく。
真正面から、ゆっくりと、ゆっくりと…
シンもこちらに気付いたのか、大きな巨体を動かしている。
そして、背中の羽根を歓喜するようにゆっくりと羽ばたかせて見せた。
「攻撃の届くものからどんどん攻めろ。奴に隙を与えるな!」
『行くぞ!』
「おう!」
塔から再び飛び上がったシンに向かって、私たちもデッキの端まで駆け寄る。
突然、体も足元もぐいと引き寄せられる感覚に陥る。
シンに引かれているのだ。
今はまだ距離があるが、完全に引き寄せられたらお終いだろう。
ふとシンの顔の前の空間が微かに歪んでいるのが見えた。
「…?」
気のせいだろうかとも思ったが、いや、違う。あれは…
「急げ!奴はまたさっきのアレを使うつもりだ!」
「え~~~~っ!」
「マジかよ!」
「またあんなのを食らったら、今度こそお終いだわ」
「一気にカタをつける!!」
「行くッスよ!!」
魔法や投打攻撃を中心にシンを攻撃していく。
シンがゆっくりとそのでかい口を開いていく。それと同時に先程と同じ様なエネルギーの塊が作り出されていく。
あれが完成するまでは時間がかかる。
それまでになんとかシンを弱らせることが出来れば、あの恐ろしい攻撃は止められる。
アニキがなんとか飛空挺を持たせているのだろうが、シンの引き寄せる力には抗えないのか、少しずつ距離が縮まっていく。
こちらも攻撃の手を休めるわけには行かない。
シンが作り出したエネルギーの塊は、黒い羽根のような光の帯をその球体の周りに浮かばせている。
船が近付いたことで、飛び回る光の帯は私たちにまで影響を及ぼし始める。
物凄い速さでどこからともなく飛来するそれは、私達に回避する時間を与えない。
それだけ、距離が縮まってしまってということ。
だがこの距離なら、直接攻撃も十分に届く範囲だ。
アーロンや少年、キマリも前線へと身を投じる。
そしてついに、シンの作り出したエネルギーの球体が動きを止め、空気中に霧散していった。
引き寄せる力も弱まったのか、一気にそこから飛空挺は離脱した。
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