第9章【シン~シンの体内】
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同じ気持ち強い絆
=84=
過去にシンを打ち破った召喚士たちが浮かべた想いと、今の私達が感じている気持ちは同じものなんだろうか。
勢いのままに、飛空挺はシンの反対側へと周り、そしてもう片方の腕をも同じ様にもぎ取った。
青白い光を付け根から迸らせながら、本体から離れた腕が地表に向かってゆっくりと落ちていく。
それは地に落ちる瞬間、細かな光の粒となって空中に溶けるように消えていく。
その粒一つ一つが幻光虫の塊。
元は人の魂だったもの。
美しい光の河となって空へ消えていく様を、船の上からじっと見つめた。
一段落とばかりに溜息を1つ。
だがまだ終わりではない。
意気は、下がらない。
シドとアニキの声は続いていた。だが飛空挺の主砲が壊れてしまったらしく、飛空挺からの援護は期待できない。
一度船の中に戻れという声が聞こえるが、この勢いを消してしまうわけにはいかない。
「いーや、行くッス!!」
上がった声に、皆がそちらを振り返る。
少年の張り詰めた糸は、途切れるどころかその太さを益々増しているようだ。
私の心臓がドクンと1つ大きく脈打つ。
「!?」
ヒヤリとした。
だが、特にこれといって何も変化は起こらない。
何だろうとは一瞬思ったが、今はそれどころではない。
空に向かって雄叫びのように咆哮を上げるシンを叩くには、今しかない。
「勢いがあるときは勢いに乗るッス! これ、ブリッツの鉄則!!」
少年が拳を振り上げた。
その意気は仲間達全員に共通している。
今なら分かる。皆が同じ気持ちでいるってこと。
「…フフ、頼もしいな」
「あんたといると、退屈しないわ」
私がデッキの端から身を投げるのと同時に、ルールーも私に続いて身を投じてきた。
「ああっ!!待てよ!エースは俺だっつーの!!」
まだデッキの上にいる少年の声だけが聞こえてきた。
飛空挺はシンの真上にいる。
つまり、この真下にシンがいる。
地面、いやシンの背中が近付いてところで、身をくるりと回転させて着地する。
足をクッションにして深く腰を落とし、衝撃を和らげる。
硬い、獣の皮膚のような地面。そうだ、ここはもうシンの体なのだ。
上空から落ちてくるルールーを咄嗟に両腕で受け止め、その場に下ろしてやる。
短い礼の言葉を聞くと、仲間達が次々とそこへ降り立ってきた。
キマリに抱きかかえられてユウナも到着し、結局少年は最後の最後に着地して見せた。
どこかで見たような、建物の残骸、瓦礫の山。
シンの背中に降り立ったはずなのに、なぜかそこにあったのは古い古い町の廃墟のような世界。
見たことが、ある。
ここに、来たことが、ある…
フラッシュバックのように次々と思い出の場面が浮かんでくる。
冷たい水と空気、そこで流れる美しい歌声の祈りの歌。真っ白な霧の掛かった廃墟の町。
ここは、マカラーニャの湖底で見たあの景色。
あの時も、ここに自分達は落ちたのだ。
しかし、今度はあの時とは違う。今は自分の、自分達の意思でここに立っている。
深い真っ白な霧に覆われていてよく分からなかったが、やはりここはどこかの町、もしくは建物そのものを飲み込んだ影響で現われたもの。
いや、もしかしたらこれはジェクトの記憶の一部なのかもしれない。
ザワザワと肌が騒いでいるのがわかる。
粟立つ腕を摩りながら、その方向を確かめる。
少年や仲間達はあちこちをきょろきょろと見つめているようだが、この気配に気付いてはいないのだろうか?
私はアーロンの側まで行って聞いて見た。
「アーロン、以前ここに来たとき、何か見たか?」
「…以前?…あぁ、マカラーニャ湖の底でか。 ……何か、とは?」
「向こう、何か変な感じがする。匂いはこれそのものがあるから分からないが、何かこう、気配というか…」
「…行くしかあるまい。 …おい!、こっちだ!」
アーロンが少年に声を掛ける。
指差した方向に、少年は戸惑いも無く走っていく。
そしてそれに続く仲間達。
そこにあったのは、巨大な口のような、堅い鱗に守られた、核。
幾重にも同心円状に並ぶ鋭い牙のような鱗がその内部を守るようにして蠢いている。
これが一体何なのか、理解できるはずもない。
だが、硬い皮膚に覆われたシンの背中にあって、これだけ防御を固めて守るものならば、それだけ急所であると教えているようなものだ。
「よーし!!」
その殺気に反応したのか、吐き出された鱗が見る見る形を変えていく。
シンのコケラだ。
どこかで見たことがあるような魔物とも呼べないシンのコケラ達が群れになって襲い掛かってくる。
「ティーダ!コケラは私達が引き受ける。お前たちはそいつを叩け!!」
「了解ッス!」
シンが生きている限り、コケラが無くなる事はない。
それはシンの体の一部なのだから。
次から次と、小さなコケラは大きく形を変えて襲い掛かってくる。
「…面倒だ。一気にカタをつける。下がってろ」
アーロンが太刀をその場に突き刺し、手に力を込め始める。
集まっていく堅気にピリと電流が迸った。
掛け声と共に、高く飛び上がって両手に握った太刀の柄を握り締め、そのまま力一杯その場に突き刺した。
その覇気の衝撃は多くのコケラを一掃し、たちまちあたりは幻光虫の光に包まれる。
それは少年が相手にしている核にも影響を及ぼしたようで、核の中心を守っている鱗が僅かに口を開く。
「ルールー、今だ!!」
「ええ!」
強力な魔力がそこに一点集中で注がれる。
一発、二発、核の鱗はまだうねうねと蠢いている。
「…くっ!頑丈だぜ!」
突然、後ろを向いて屈みこんだリュック。
そこ目掛けてコケラの触手が襲い掛かろうとしている。
「あぶない! 何してるんだ!!」
咄嗟に両手に握った小太刀で何本かの触手を切り落とす。
立ち上がったリュックは手にした物を核の中心に投げ入れた。
「伏せて!!」
でかい爆音と黒い煙が上がった。
しかもひどい匂いだ。
「な、なんだぁ!?」
「へっへ~ん、あたし特製、超スペシャル徹甲手榴弾! ちょ~っと調合に時間掛かるけど、どうよこの威力!!」
→
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過去にシンを打ち破った召喚士たちが浮かべた想いと、今の私達が感じている気持ちは同じものなんだろうか。
勢いのままに、飛空挺はシンの反対側へと周り、そしてもう片方の腕をも同じ様にもぎ取った。
青白い光を付け根から迸らせながら、本体から離れた腕が地表に向かってゆっくりと落ちていく。
それは地に落ちる瞬間、細かな光の粒となって空中に溶けるように消えていく。
その粒一つ一つが幻光虫の塊。
元は人の魂だったもの。
美しい光の河となって空へ消えていく様を、船の上からじっと見つめた。
一段落とばかりに溜息を1つ。
だがまだ終わりではない。
意気は、下がらない。
シドとアニキの声は続いていた。だが飛空挺の主砲が壊れてしまったらしく、飛空挺からの援護は期待できない。
一度船の中に戻れという声が聞こえるが、この勢いを消してしまうわけにはいかない。
「いーや、行くッス!!」
上がった声に、皆がそちらを振り返る。
少年の張り詰めた糸は、途切れるどころかその太さを益々増しているようだ。
私の心臓がドクンと1つ大きく脈打つ。
「!?」
ヒヤリとした。
だが、特にこれといって何も変化は起こらない。
何だろうとは一瞬思ったが、今はそれどころではない。
空に向かって雄叫びのように咆哮を上げるシンを叩くには、今しかない。
「勢いがあるときは勢いに乗るッス! これ、ブリッツの鉄則!!」
少年が拳を振り上げた。
その意気は仲間達全員に共通している。
今なら分かる。皆が同じ気持ちでいるってこと。
「…フフ、頼もしいな」
「あんたといると、退屈しないわ」
私がデッキの端から身を投げるのと同時に、ルールーも私に続いて身を投じてきた。
「ああっ!!待てよ!エースは俺だっつーの!!」
まだデッキの上にいる少年の声だけが聞こえてきた。
飛空挺はシンの真上にいる。
つまり、この真下にシンがいる。
地面、いやシンの背中が近付いてところで、身をくるりと回転させて着地する。
足をクッションにして深く腰を落とし、衝撃を和らげる。
硬い、獣の皮膚のような地面。そうだ、ここはもうシンの体なのだ。
上空から落ちてくるルールーを咄嗟に両腕で受け止め、その場に下ろしてやる。
短い礼の言葉を聞くと、仲間達が次々とそこへ降り立ってきた。
キマリに抱きかかえられてユウナも到着し、結局少年は最後の最後に着地して見せた。
どこかで見たような、建物の残骸、瓦礫の山。
シンの背中に降り立ったはずなのに、なぜかそこにあったのは古い古い町の廃墟のような世界。
見たことが、ある。
ここに、来たことが、ある…
フラッシュバックのように次々と思い出の場面が浮かんでくる。
冷たい水と空気、そこで流れる美しい歌声の祈りの歌。真っ白な霧の掛かった廃墟の町。
ここは、マカラーニャの湖底で見たあの景色。
あの時も、ここに自分達は落ちたのだ。
しかし、今度はあの時とは違う。今は自分の、自分達の意思でここに立っている。
深い真っ白な霧に覆われていてよく分からなかったが、やはりここはどこかの町、もしくは建物そのものを飲み込んだ影響で現われたもの。
いや、もしかしたらこれはジェクトの記憶の一部なのかもしれない。
ザワザワと肌が騒いでいるのがわかる。
粟立つ腕を摩りながら、その方向を確かめる。
少年や仲間達はあちこちをきょろきょろと見つめているようだが、この気配に気付いてはいないのだろうか?
私はアーロンの側まで行って聞いて見た。
「アーロン、以前ここに来たとき、何か見たか?」
「…以前?…あぁ、マカラーニャ湖の底でか。 ……何か、とは?」
「向こう、何か変な感じがする。匂いはこれそのものがあるから分からないが、何かこう、気配というか…」
「…行くしかあるまい。 …おい!、こっちだ!」
アーロンが少年に声を掛ける。
指差した方向に、少年は戸惑いも無く走っていく。
そしてそれに続く仲間達。
そこにあったのは、巨大な口のような、堅い鱗に守られた、核。
幾重にも同心円状に並ぶ鋭い牙のような鱗がその内部を守るようにして蠢いている。
これが一体何なのか、理解できるはずもない。
だが、硬い皮膚に覆われたシンの背中にあって、これだけ防御を固めて守るものならば、それだけ急所であると教えているようなものだ。
「よーし!!」
その殺気に反応したのか、吐き出された鱗が見る見る形を変えていく。
シンのコケラだ。
どこかで見たことがあるような魔物とも呼べないシンのコケラ達が群れになって襲い掛かってくる。
「ティーダ!コケラは私達が引き受ける。お前たちはそいつを叩け!!」
「了解ッス!」
シンが生きている限り、コケラが無くなる事はない。
それはシンの体の一部なのだから。
次から次と、小さなコケラは大きく形を変えて襲い掛かってくる。
「…面倒だ。一気にカタをつける。下がってろ」
アーロンが太刀をその場に突き刺し、手に力を込め始める。
集まっていく堅気にピリと電流が迸った。
掛け声と共に、高く飛び上がって両手に握った太刀の柄を握り締め、そのまま力一杯その場に突き刺した。
その覇気の衝撃は多くのコケラを一掃し、たちまちあたりは幻光虫の光に包まれる。
それは少年が相手にしている核にも影響を及ぼしたようで、核の中心を守っている鱗が僅かに口を開く。
「ルールー、今だ!!」
「ええ!」
強力な魔力がそこに一点集中で注がれる。
一発、二発、核の鱗はまだうねうねと蠢いている。
「…くっ!頑丈だぜ!」
突然、後ろを向いて屈みこんだリュック。
そこ目掛けてコケラの触手が襲い掛かろうとしている。
「あぶない! 何してるんだ!!」
咄嗟に両手に握った小太刀で何本かの触手を切り落とす。
立ち上がったリュックは手にした物を核の中心に投げ入れた。
「伏せて!!」
でかい爆音と黒い煙が上がった。
しかもひどい匂いだ。
「な、なんだぁ!?」
「へっへ~ん、あたし特製、超スペシャル徹甲手榴弾! ちょ~っと調合に時間掛かるけど、どうよこの威力!!」
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