第9章【シン~シンの体内】
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言葉だけが真実ではない
=83=
無音…。
思わず硬く閉じた瞼を恐る恐る開いてく。
先程までと変わらない、飛空挺のデッキの上。
あんなに激しく震えていた大気はしんと静まり返り、風の音さえも聞こえない。
自分が立てる衣擦れの音や、仲間達が立ち上がる動作の音、そして徐々に耳に戻ってくる飛空挺の動力音。
耳がおかしくなってしまったのだろうか?と錯覚してしまうほどに、辺りの空間の音が全く無い。
このおかしな現象を確かめるべく、立ち上がった自分を中心に辺りを見回してみる。
そこにあった、異質なもの。いや、無くなったと言ったほうが正しいだろう。
シンは、変わらずにそこにいた。
だが先程までの巨大なエネルギーの球体の姿はもうそこには無かった。
そこを中心として、まるで巨大な柱でも通したかのように丸く長く抉られた海と大地。
あまりにも見事にきれいになくなってしまったそこに、時間が止まってしまったかのような錯覚を覚える。
それはこのスピラ、いやこの星そのものも同じだったのかもしれない。
一瞬、何が起こったのか理解できず、星が呆けて動きを忘れてしまったかのようだ。
忘れていた時間がまた動き出す。
星の重力に引かれ、抉られた海はその部分に周りの水を落としていく。
抉られた部分がさながら水路のように流れ込んだ大量の海水をその先へと押し流していく。
それはどんどん速さと量を増していき、鉄砲水や津波など比ではないほどの、まさしく怒涛の攻撃。
大地にぶつかった瞬間、勢いを増した大量の水は巨大な爆弾のようにそこで破裂して水と大地とを巻き上げてなおも突進してくる。
空を飛んでいたはずの私達がいるところにまでその勢いは上がり、呆然と見つめていた少年とユウナを吹き飛ばした。
シドとアニキの声が聞こえてくる。
操縦室でもパニックになっているようだ。
だが、ここはまず礼を言わねばなるまい。
咄嗟に回避した場所から見た先程までいた辺りは、天まで届くような巨大な炎が、抉られた大地から発せられていて炎の壁のように見えた。
あのままあそこにいたら、木っ端微塵どころではなかっただろう。
シンがゆっくりとこちらに近付いてくる。
吹き飛ばされて倒れこんだ少年が、なんとか身を起して呟く。
「くそオヤジ……」
シンにもわかっているのだ。
戦いはもう始まっているのだと。
その力を見せ付けるために、それでも向かってくるのかと、これはシンからの宣戦布告。
瞬間、ジェクトのあの不適な笑みが浮かんだような気がした。
『おい!シンの腕んところ、光ったの見えたか?』
船内からシドの声が聞こえた。
それどころではなかった私には光ったかどうかなんてわからない。
他の仲間達には見えただろうか?
私達がいる位置とは違う視点から見た者にしか見えないのだろうか?
ともかく、シドはそこを狙えと指示を出す。
「?」
何か違和感があった。
何かに引っ張られているような感覚。
気のせいだろうか?
シンは大人しくそこに浮かんでいた。
自由に飛びまわれる飛空挺はシンの周りを旋回しながらその全貌を捕らえることが出来る。
…10年前に見たシンは、こんな姿だっただろうか?
倒される度に復活するシンが召喚獣の成れの果てだったとしたら、姿が変わっていても何ら不思議ではないことかもしれない。
『ヤブミ!!“シン”シリチモヘナエセンガ!!』
「…やっぱり…」
「シンに引き寄せられてるって!!」
突然飛空挺がガタガタと揺れ始め、アニキの大声が響き渡った。
先程の一撃で、また多くの命が失われたのだろう。
その幻光虫がシンに引き寄せられ、取り込まれていく。
その流れに、この船も乗せられてしまっているのだ。
シドが一度中に戻るように指示を出してくるが、もうシンは目の前だ。
この距離ならワッカの投打や魔法で十分届く。
シドには悪いが、今更戻ることなんて出来ない。
引き寄せられるシンから付かず離れず、上手いこと飛空挺を操縦してもらうしかない。
「このチャンスを無駄にする理由はないぞ!」
「わかってるって!」
「んなこたぁ、百も承知だ!」
私の言葉に仲間達が返してくる。みんな、同じ気持ちなのだ。
魔法とワッカの投打攻撃を中心にシンの腕の付け根にある核のようなものを攻め続けていると、やがてそれは光を失った。
『ためしに一発かましてやらあ! お前ら、そこで待機してろ!』
船の中からまたシドの怒声が響く。
「なんだぁ、何する気だ!?」
船の振動がそれまでとは違うものに変わる。
動力の音の他に足の下からまた別の音が響いて、軽い衝撃を覚えた。
と同時に船から発せられた強い光の弾。それは真っ直ぐにシンにぶつけられた。
当たったのは先程まで私達が攻撃を繰り返していたところ。
電気が走るような音と耳障りな肉が裂けるような音。
重い音を立てて、シンの腕がゆっくりと本体から離れていった。
そして、シンが吼えた。
これは声と呼べるのか、体を傷付けられたシンの悲痛な叫び。
「やった!」
少年がガッツポーズを取る。
これまで、究極召喚の召喚獣でしか鎧であるシンの体は破壊できない、そうマイカは言い続けていた。
だがどうだ!
生身の人間たちと掟に反する武器の連携。
その攻撃で、シンの体は破壊できる!
→
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無音…。
思わず硬く閉じた瞼を恐る恐る開いてく。
先程までと変わらない、飛空挺のデッキの上。
あんなに激しく震えていた大気はしんと静まり返り、風の音さえも聞こえない。
自分が立てる衣擦れの音や、仲間達が立ち上がる動作の音、そして徐々に耳に戻ってくる飛空挺の動力音。
耳がおかしくなってしまったのだろうか?と錯覚してしまうほどに、辺りの空間の音が全く無い。
このおかしな現象を確かめるべく、立ち上がった自分を中心に辺りを見回してみる。
そこにあった、異質なもの。いや、無くなったと言ったほうが正しいだろう。
シンは、変わらずにそこにいた。
だが先程までの巨大なエネルギーの球体の姿はもうそこには無かった。
そこを中心として、まるで巨大な柱でも通したかのように丸く長く抉られた海と大地。
あまりにも見事にきれいになくなってしまったそこに、時間が止まってしまったかのような錯覚を覚える。
それはこのスピラ、いやこの星そのものも同じだったのかもしれない。
一瞬、何が起こったのか理解できず、星が呆けて動きを忘れてしまったかのようだ。
忘れていた時間がまた動き出す。
星の重力に引かれ、抉られた海はその部分に周りの水を落としていく。
抉られた部分がさながら水路のように流れ込んだ大量の海水をその先へと押し流していく。
それはどんどん速さと量を増していき、鉄砲水や津波など比ではないほどの、まさしく怒涛の攻撃。
大地にぶつかった瞬間、勢いを増した大量の水は巨大な爆弾のようにそこで破裂して水と大地とを巻き上げてなおも突進してくる。
空を飛んでいたはずの私達がいるところにまでその勢いは上がり、呆然と見つめていた少年とユウナを吹き飛ばした。
シドとアニキの声が聞こえてくる。
操縦室でもパニックになっているようだ。
だが、ここはまず礼を言わねばなるまい。
咄嗟に回避した場所から見た先程までいた辺りは、天まで届くような巨大な炎が、抉られた大地から発せられていて炎の壁のように見えた。
あのままあそこにいたら、木っ端微塵どころではなかっただろう。
シンがゆっくりとこちらに近付いてくる。
吹き飛ばされて倒れこんだ少年が、なんとか身を起して呟く。
「くそオヤジ……」
シンにもわかっているのだ。
戦いはもう始まっているのだと。
その力を見せ付けるために、それでも向かってくるのかと、これはシンからの宣戦布告。
瞬間、ジェクトのあの不適な笑みが浮かんだような気がした。
『おい!シンの腕んところ、光ったの見えたか?』
船内からシドの声が聞こえた。
それどころではなかった私には光ったかどうかなんてわからない。
他の仲間達には見えただろうか?
私達がいる位置とは違う視点から見た者にしか見えないのだろうか?
ともかく、シドはそこを狙えと指示を出す。
「?」
何か違和感があった。
何かに引っ張られているような感覚。
気のせいだろうか?
シンは大人しくそこに浮かんでいた。
自由に飛びまわれる飛空挺はシンの周りを旋回しながらその全貌を捕らえることが出来る。
…10年前に見たシンは、こんな姿だっただろうか?
倒される度に復活するシンが召喚獣の成れの果てだったとしたら、姿が変わっていても何ら不思議ではないことかもしれない。
『ヤブミ!!“シン”シリチモヘナエセンガ!!』
「…やっぱり…」
「シンに引き寄せられてるって!!」
突然飛空挺がガタガタと揺れ始め、アニキの大声が響き渡った。
先程の一撃で、また多くの命が失われたのだろう。
その幻光虫がシンに引き寄せられ、取り込まれていく。
その流れに、この船も乗せられてしまっているのだ。
シドが一度中に戻るように指示を出してくるが、もうシンは目の前だ。
この距離ならワッカの投打や魔法で十分届く。
シドには悪いが、今更戻ることなんて出来ない。
引き寄せられるシンから付かず離れず、上手いこと飛空挺を操縦してもらうしかない。
「このチャンスを無駄にする理由はないぞ!」
「わかってるって!」
「んなこたぁ、百も承知だ!」
私の言葉に仲間達が返してくる。みんな、同じ気持ちなのだ。
魔法とワッカの投打攻撃を中心にシンの腕の付け根にある核のようなものを攻め続けていると、やがてそれは光を失った。
『ためしに一発かましてやらあ! お前ら、そこで待機してろ!』
船の中からまたシドの怒声が響く。
「なんだぁ、何する気だ!?」
船の振動がそれまでとは違うものに変わる。
動力の音の他に足の下からまた別の音が響いて、軽い衝撃を覚えた。
と同時に船から発せられた強い光の弾。それは真っ直ぐにシンにぶつけられた。
当たったのは先程まで私達が攻撃を繰り返していたところ。
電気が走るような音と耳障りな肉が裂けるような音。
重い音を立てて、シンの腕がゆっくりと本体から離れていった。
そして、シンが吼えた。
これは声と呼べるのか、体を傷付けられたシンの悲痛な叫び。
「やった!」
少年がガッツポーズを取る。
これまで、究極召喚の召喚獣でしか鎧であるシンの体は破壊できない、そうマイカは言い続けていた。
だがどうだ!
生身の人間たちと掟に反する武器の連携。
その攻撃で、シンの体は破壊できる!
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