第9章【シン~シンの体内】
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それぞれの行く先
=81=
飛空挺に戻って開口一番、キマリが言った。
「ユウナ、頼みたいことがある」
「え、何?キマリ」
「シンと戦う前に、キマリもやっておきたいことがある」
「私、も…?」
「ユウナにしか出来ない」
「えっと、何をすればいいの?」
「異界送りだ」
「あっ……。…そっか、うん、行こう」
「もう遅いかもしれない。でも、やってやらねば、キマリの気が済まない…」
「大丈夫、きっと、みんな待っててくれてるよ」
続いてルールーとワッカも言った。
「私もしたいことがあるの」
「おっ、実は、俺も…」
「もしかして、同じこと考えてる?」
「…かもなぁ。やっぱさ、ちゃんと挨拶しとかねぇと、とか思っちまってよ」
「…うん。そうだね」
「あー、あと、あいつらにも一応、声掛けとかねぇとなぁ」
「あら、ビサイドに戻ってるの?」
「まぁ、結果次第だろうけど、いつもならもうとっくにシーズンは始まってるが、毎日ってわけじゃねぇしな」
「…そうなの。本当は、ユウナも連れて行きたかったんだけど…」
「まぁな。でも、一度旅立った召喚士が戻るっつーのは、な」
「そうね…」
更にリュックと少年も言った。
「ねぇねぇ、もう行きたいとこないならさ、またあたしに付き合ってよ」
「なんだよ、また何か引き上げようってのか?」
「ち~が~う~!! ちょっと、行きたいとこあんだよ」
「どこ?」
「サヌビア」
「………? どこ?」
「んん~~~~っ!!もうっ!!あたし達のホームあったとこだよ!」
「ああ!! …あ、でも、ホームって、もう…」
「だ~か~ら!行きたいわけ! ……あの後、どうなったか、ちょっと心配だし……」
「了解っス! じゃ、一緒に行こう」
最後にシドが私に言った。
「おい、おまえさんはいいのか?」
「あ、いや私は……」
「なんだ、ちゃんと言え。今ならどこだろうと、こいつでひとっ飛びだぜ! それによ、これが最後だから、なんて思うんじゃねぇよ。
別れの挨拶じゃなくて、ちゃんと見届けてくれって、頼みにいくんだ。そいで、また来らぁ!とでも言ってくりゃいい!」
「……フフ、シドの考え方、前向きだな。頼もしいよ」
「おうよ!! で? どこ行きてぇんだ?」
「じゃあ、キーリカに」
「キーリカ? なんだ、知り合いでもいんのか?」
「うん、まあ、ちょっと」
「よおし、わかった。任せときな」
シドはまず、ガガゼトでキマリとユウナを降ろし、次にキーリカで私を降ろした。なぜかアーロンまで一緒だったけど。
次にビサイドに行ってルールーとワッカを、最後に、少年とリュックと共にアルベドのホームがあったサヌビアに向かうのだそうだ。
明日、また逆の順番で迎えに来るらしい。
キーリカの海岸で降りた私の目に飛び込んできたのは、私の記憶の中にあったキーリカではなかった。
気候は穏やかで、地形のお陰で嵐が来ても海からの影響はほとんど受けない、平和な海岸沿いの村。
その気候や風土に合った、簡素な家が並ぶ風景はとても美しいものだった。
私がその知らせを聞いたのは、ルカへ向かう船の中。
例の乗り物酔いで、船尾で風に当たっていた時だった。
あの時の胸が締め付けられる想いが、また蘇ってくる。
被害に遭ってから、何日が過ぎただろうか?
それでも逞しい村人たちは、もう復興を進めている。
家そのものは簡素な造りなので、数人でかかればものの1日で完成できる。
ただ、やはり犠牲者の存在とシンの襲撃という恐ろしい現実が、未だこの村に深く爪痕を残していた。
「知り合いが、いたのか…?」
強い力で勢いに任せてもぎ取られたような太い木の幹や板の残骸の前で、私は足を止め、その後ろからの低い声に耳を澄ます。
私は俯いたまま、小さく頷く。
私が今立っているところには、もう、何もない。
海の上に桟橋のように簡単に板を渡して建っている家は何軒もあった。
だが、もう、ここには、何もない。
足首まで水に浸かったまま、私はここに住んでいた家族のことを思った。
「…ラフテルさん、かい?」
ふいに掛けられた声に顔を上げる。
見知った顔がそこにあった。
「……バージェス」
「あぁ、やっぱりラフテルさん!来てくれたのか!」
「バージェス、酷い目にあったな…。 …ゴーシュは…?」
「………あ…」
「…そっか、やっぱり……」
いつの間にか、アーロンは1人離れたところに立っていた。
気を利かせてくれたのだろうか。
近くにあった桟橋の板に2人で腰を下ろした。
「ゴーシュはまだ幸せだ。ちゃんと異界送りしてもらえたからな」
「一家、みんな?」
「あぁ。丁度、ビサイドから来たばかりだという召喚士様がいらして、見つかった者たちは無事に送ってもらえた。…でも、見つからない奴も、まだ何人もいるんだ」
「…そうなのか。バージェスんとこは、みんな無事?」
「…お袋がな。…足が悪かったから」
「あぁ、そうか、そうだったな。…お気の毒」
「うん、仕方がない。 でも、その召喚士様がシンを倒して下さるんだろ? 祈りの歌を歌ってくれって伝令が届いたんだ」
「(早っ!)あ、あぁ…」
「俺、みんなにもラフテルさんが来たこと、知らせてくるよ。また話、聞かせてくれるんだろ?」
「…いや、もう、私の時代は終わったから」
「…え?」
「ほら、シンを倒したら、今度の大召喚士の話のほうがいいだろ」
生き残った人間は逞しい。
こうして前を向いて進んでいくことが出来ている。
いや、逞しくあらねばならないと思っているのかもしれない。
それが、命失った者達の無念を無駄にすることなく、前向きに生きることが生き残った者の使命になるのなら。
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飛空挺に戻って開口一番、キマリが言った。
「ユウナ、頼みたいことがある」
「え、何?キマリ」
「シンと戦う前に、キマリもやっておきたいことがある」
「私、も…?」
「ユウナにしか出来ない」
「えっと、何をすればいいの?」
「異界送りだ」
「あっ……。…そっか、うん、行こう」
「もう遅いかもしれない。でも、やってやらねば、キマリの気が済まない…」
「大丈夫、きっと、みんな待っててくれてるよ」
続いてルールーとワッカも言った。
「私もしたいことがあるの」
「おっ、実は、俺も…」
「もしかして、同じこと考えてる?」
「…かもなぁ。やっぱさ、ちゃんと挨拶しとかねぇと、とか思っちまってよ」
「…うん。そうだね」
「あー、あと、あいつらにも一応、声掛けとかねぇとなぁ」
「あら、ビサイドに戻ってるの?」
「まぁ、結果次第だろうけど、いつもならもうとっくにシーズンは始まってるが、毎日ってわけじゃねぇしな」
「…そうなの。本当は、ユウナも連れて行きたかったんだけど…」
「まぁな。でも、一度旅立った召喚士が戻るっつーのは、な」
「そうね…」
更にリュックと少年も言った。
「ねぇねぇ、もう行きたいとこないならさ、またあたしに付き合ってよ」
「なんだよ、また何か引き上げようってのか?」
「ち~が~う~!! ちょっと、行きたいとこあんだよ」
「どこ?」
「サヌビア」
「………? どこ?」
「んん~~~~っ!!もうっ!!あたし達のホームあったとこだよ!」
「ああ!! …あ、でも、ホームって、もう…」
「だ~か~ら!行きたいわけ! ……あの後、どうなったか、ちょっと心配だし……」
「了解っス! じゃ、一緒に行こう」
最後にシドが私に言った。
「おい、おまえさんはいいのか?」
「あ、いや私は……」
「なんだ、ちゃんと言え。今ならどこだろうと、こいつでひとっ飛びだぜ! それによ、これが最後だから、なんて思うんじゃねぇよ。
別れの挨拶じゃなくて、ちゃんと見届けてくれって、頼みにいくんだ。そいで、また来らぁ!とでも言ってくりゃいい!」
「……フフ、シドの考え方、前向きだな。頼もしいよ」
「おうよ!! で? どこ行きてぇんだ?」
「じゃあ、キーリカに」
「キーリカ? なんだ、知り合いでもいんのか?」
「うん、まあ、ちょっと」
「よおし、わかった。任せときな」
シドはまず、ガガゼトでキマリとユウナを降ろし、次にキーリカで私を降ろした。なぜかアーロンまで一緒だったけど。
次にビサイドに行ってルールーとワッカを、最後に、少年とリュックと共にアルベドのホームがあったサヌビアに向かうのだそうだ。
明日、また逆の順番で迎えに来るらしい。
キーリカの海岸で降りた私の目に飛び込んできたのは、私の記憶の中にあったキーリカではなかった。
気候は穏やかで、地形のお陰で嵐が来ても海からの影響はほとんど受けない、平和な海岸沿いの村。
その気候や風土に合った、簡素な家が並ぶ風景はとても美しいものだった。
私がその知らせを聞いたのは、ルカへ向かう船の中。
例の乗り物酔いで、船尾で風に当たっていた時だった。
あの時の胸が締め付けられる想いが、また蘇ってくる。
被害に遭ってから、何日が過ぎただろうか?
それでも逞しい村人たちは、もう復興を進めている。
家そのものは簡素な造りなので、数人でかかればものの1日で完成できる。
ただ、やはり犠牲者の存在とシンの襲撃という恐ろしい現実が、未だこの村に深く爪痕を残していた。
「知り合いが、いたのか…?」
強い力で勢いに任せてもぎ取られたような太い木の幹や板の残骸の前で、私は足を止め、その後ろからの低い声に耳を澄ます。
私は俯いたまま、小さく頷く。
私が今立っているところには、もう、何もない。
海の上に桟橋のように簡単に板を渡して建っている家は何軒もあった。
だが、もう、ここには、何もない。
足首まで水に浸かったまま、私はここに住んでいた家族のことを思った。
「…ラフテルさん、かい?」
ふいに掛けられた声に顔を上げる。
見知った顔がそこにあった。
「……バージェス」
「あぁ、やっぱりラフテルさん!来てくれたのか!」
「バージェス、酷い目にあったな…。 …ゴーシュは…?」
「………あ…」
「…そっか、やっぱり……」
いつの間にか、アーロンは1人離れたところに立っていた。
気を利かせてくれたのだろうか。
近くにあった桟橋の板に2人で腰を下ろした。
「ゴーシュはまだ幸せだ。ちゃんと異界送りしてもらえたからな」
「一家、みんな?」
「あぁ。丁度、ビサイドから来たばかりだという召喚士様がいらして、見つかった者たちは無事に送ってもらえた。…でも、見つからない奴も、まだ何人もいるんだ」
「…そうなのか。バージェスんとこは、みんな無事?」
「…お袋がな。…足が悪かったから」
「あぁ、そうか、そうだったな。…お気の毒」
「うん、仕方がない。 でも、その召喚士様がシンを倒して下さるんだろ? 祈りの歌を歌ってくれって伝令が届いたんだ」
「(早っ!)あ、あぁ…」
「俺、みんなにもラフテルさんが来たこと、知らせてくるよ。また話、聞かせてくれるんだろ?」
「…いや、もう、私の時代は終わったから」
「…え?」
「ほら、シンを倒したら、今度の大召喚士の話のほうがいいだろ」
生き残った人間は逞しい。
こうして前を向いて進んでいくことが出来ている。
いや、逞しくあらねばならないと思っているのかもしれない。
それが、命失った者達の無念を無駄にすることなく、前向きに生きることが生き残った者の使命になるのなら。
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