第1章【ルカ~ミヘン街道】
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覆い隠せぬ闇
=8=
旧道から現われた私達に、当然ながら仲間達は驚きの目を向ける。
道の途中で、私たちが乗っていたチョコボが旧道に落ちていたアイテムを見つけてくれたらしい。
どうにかこうにか、やっとミヘン街道の最終地点まで辿り着いた。
ミヘン街道を抜けると、通称キノコ岩街道と呼ばれる、岩がキノコのように迫り出している岸壁沿いの道が続くことになる。
普段なら見かけないような重々しい関がそこに設えられていた。
警備に当たっているのは、討伐隊…?
ずっと感じていた異変、違和感。
本来のミヘン街道にはあるはずの無い不穏な空気。
それが突然、形になったような気がした。
「いかがしました?」
掛けられた声にビクリと反応する。
思わず仲間から少し離れたところに立つアーロンの背後に身を潜めた。
アーロンも何かを察してくれたのか、何も言わずに盾になってくれている。
腕の隙間からそっと様子を伺う。
この声、話し方、そして纏っている空気。
姿を見ずともそれが誰なのか理解できてしまう。
この10年の間に直接会ったことは少ないが、それでもいい思い出の全く無い存在。
この世界の主権を握っていると言っても過言ではない、エボン教の総本山、ベベルのエボン寺院を纏める老師の一人、シーモアだ。
できれば二度と会わずに済ませたい。
…私の、この体のことを思えば…
第一印象は、“黒い”
真っ青な衣装に、海の色の髪をしているのに、なぜか黒いオーラが滲み出ているように見えて、黒いという印象しか残らなかった。
表には作ったような薄笑い。
だがその内部には闇を抱えているような、油断できない人物だ。
機械を使う作戦。
エボンの教えに反し、禁止された機械を使ってでもシンを打ち倒そうとする討伐隊が主体となった戦いが始まろうとしている。
機械を使う、それはこのミヘン街道を通ってくる間にも何度も耳にした。
私は機械を使うことを特に反対はしない。
それはアーロンも同じ。
『使えるものは何でも使えばいい』
そんなことを言っていた。それには同意できる。
でも、それならばこの異界の匂いの濃さは何なのだろう?
シーモアが関を通る許可を出したらしいことはすぐに分かった。
過ぎ行くシーモアにいつまでも頭を下げているユウナは、この時何を考えていたのだろうか?
関を通過したところで、先に進んでいたシーモアがこちらに歩み寄ってきたのが見えて、私はまたこっそりとアーロンの陰に入る。
なぜか妙に気分が落ち着かない。
空気がざわざわと何かを訴えかけてくるように感じる。
背中に走る気持ちの悪い寒気が収まらない。
己の五感が、コイツは危険だと信号を出しているのだろうか?
それとも、私の中にいるアレが…?
異様に耳につく特徴のある足音が近付いてくる。
アーロンのすぐ側までやってきて、そのまま通り過ぎてくれればよかっただろうに、態々何故そこで足を止める。
そして掛けられる低く禍々しさを孕んだ上っ面だけの優しい声。
「やはりアーロン殿でしたか。お会いできて光栄です。ぜひ、お話を聞かせてください。この10年のことなど…」
耳に届いた声に寒気が走る。
他のみんなは気付いていないんだろうか?
この男の内に潜む黒い闇がこんなに洩れているのに、どうして平気でいられるんだ?
「…ん?」
「………」
バカアーロンが、動かなければいいのに、本人も耐えられなかったのか逃げるように移動するもんだから、結局私の姿はシーモアの目に触れてしまった。
「ラフテル様、いらしたのですか。まさか、ラフテル様もユウナ殿のガードを?」
「……まぁ」
「ユウナ殿は幸せですね。伝説のガードが2人もついていらっしゃる。ラフテル様、ベベルの寺院にはお帰りにはならないのですか?」
「……そ、その内」
こんな男と会話などしたくは無かった。
しかし、これは建前という奴だ。自分は確かに10年前、ガードとして旅をしてシンを倒した。
だから、寺院にとって、スピラにとっては自分は称えられるべき存在。
そしてそれを自分自身でも利用してきた。
ここでシーモアを遮って逃げることなど簡単だ。だが、できない。
今、私は、ユウナのガードなのだから…
「俺たちはユウナのガードだ。そんな時間は無い」
アーロンが一蹴する。
正直、助かったと思った。
同時に悔しかった。
シーモアの言葉を受け流すことも出来ない自分に歯痒さを覚えた。
シーモアがユウナたちのほうへ歩み寄って行ったのを確認し、私は思わずアーロンの袖口をギュッと握ってしまっていた。
「どうした?」
「…なんでもない。気に食わないだけ…」
俯いたまま小さく呟く私の言葉に、アーロンは小さな笑みを漏らした声が聞こえた。
→
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旧道から現われた私達に、当然ながら仲間達は驚きの目を向ける。
道の途中で、私たちが乗っていたチョコボが旧道に落ちていたアイテムを見つけてくれたらしい。
どうにかこうにか、やっとミヘン街道の最終地点まで辿り着いた。
ミヘン街道を抜けると、通称キノコ岩街道と呼ばれる、岩がキノコのように迫り出している岸壁沿いの道が続くことになる。
普段なら見かけないような重々しい関がそこに設えられていた。
警備に当たっているのは、討伐隊…?
ずっと感じていた異変、違和感。
本来のミヘン街道にはあるはずの無い不穏な空気。
それが突然、形になったような気がした。
「いかがしました?」
掛けられた声にビクリと反応する。
思わず仲間から少し離れたところに立つアーロンの背後に身を潜めた。
アーロンも何かを察してくれたのか、何も言わずに盾になってくれている。
腕の隙間からそっと様子を伺う。
この声、話し方、そして纏っている空気。
姿を見ずともそれが誰なのか理解できてしまう。
この10年の間に直接会ったことは少ないが、それでもいい思い出の全く無い存在。
この世界の主権を握っていると言っても過言ではない、エボン教の総本山、ベベルのエボン寺院を纏める老師の一人、シーモアだ。
できれば二度と会わずに済ませたい。
…私の、この体のことを思えば…
第一印象は、“黒い”
真っ青な衣装に、海の色の髪をしているのに、なぜか黒いオーラが滲み出ているように見えて、黒いという印象しか残らなかった。
表には作ったような薄笑い。
だがその内部には闇を抱えているような、油断できない人物だ。
機械を使う作戦。
エボンの教えに反し、禁止された機械を使ってでもシンを打ち倒そうとする討伐隊が主体となった戦いが始まろうとしている。
機械を使う、それはこのミヘン街道を通ってくる間にも何度も耳にした。
私は機械を使うことを特に反対はしない。
それはアーロンも同じ。
『使えるものは何でも使えばいい』
そんなことを言っていた。それには同意できる。
でも、それならばこの異界の匂いの濃さは何なのだろう?
シーモアが関を通る許可を出したらしいことはすぐに分かった。
過ぎ行くシーモアにいつまでも頭を下げているユウナは、この時何を考えていたのだろうか?
関を通過したところで、先に進んでいたシーモアがこちらに歩み寄ってきたのが見えて、私はまたこっそりとアーロンの陰に入る。
なぜか妙に気分が落ち着かない。
空気がざわざわと何かを訴えかけてくるように感じる。
背中に走る気持ちの悪い寒気が収まらない。
己の五感が、コイツは危険だと信号を出しているのだろうか?
それとも、私の中にいるアレが…?
異様に耳につく特徴のある足音が近付いてくる。
アーロンのすぐ側までやってきて、そのまま通り過ぎてくれればよかっただろうに、態々何故そこで足を止める。
そして掛けられる低く禍々しさを孕んだ上っ面だけの優しい声。
「やはりアーロン殿でしたか。お会いできて光栄です。ぜひ、お話を聞かせてください。この10年のことなど…」
耳に届いた声に寒気が走る。
他のみんなは気付いていないんだろうか?
この男の内に潜む黒い闇がこんなに洩れているのに、どうして平気でいられるんだ?
「…ん?」
「………」
バカアーロンが、動かなければいいのに、本人も耐えられなかったのか逃げるように移動するもんだから、結局私の姿はシーモアの目に触れてしまった。
「ラフテル様、いらしたのですか。まさか、ラフテル様もユウナ殿のガードを?」
「……まぁ」
「ユウナ殿は幸せですね。伝説のガードが2人もついていらっしゃる。ラフテル様、ベベルの寺院にはお帰りにはならないのですか?」
「……そ、その内」
こんな男と会話などしたくは無かった。
しかし、これは建前という奴だ。自分は確かに10年前、ガードとして旅をしてシンを倒した。
だから、寺院にとって、スピラにとっては自分は称えられるべき存在。
そしてそれを自分自身でも利用してきた。
ここでシーモアを遮って逃げることなど簡単だ。だが、できない。
今、私は、ユウナのガードなのだから…
「俺たちはユウナのガードだ。そんな時間は無い」
アーロンが一蹴する。
正直、助かったと思った。
同時に悔しかった。
シーモアの言葉を受け流すことも出来ない自分に歯痒さを覚えた。
シーモアがユウナたちのほうへ歩み寄って行ったのを確認し、私は思わずアーロンの袖口をギュッと握ってしまっていた。
「どうした?」
「…なんでもない。気に食わないだけ…」
俯いたまま小さく呟く私の言葉に、アーロンは小さな笑みを漏らした声が聞こえた。
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