第8章【ザナルカンド~バージ=エボン寺院】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
話して理解して成長する
=79=
『空を飛ぶ船が祈りの歌を歌う それが聞こえたらみんなも一緒に歌って下さい』
シンを倒す為ならどんな協力も惜しまない。
ましてやそれが、誰もが知る心静める祈りの歌ならば、これほど簡単なことはない。
そして、このスピラが1つになれるだろう。
少年とユウナが戻り、帰り際にシェリンダにお願いをするリュック。
そう言えば、船の中でそんなことを話していたような気はするが、それどころではなかった私はうろ覚えでどんなものかよくわからない。
グレートブリッジを渡っている途中で少年に尋ねる。
シンに祈りの歌を聞かせれば大人しくなる。そこを一気に叩く。だそうだ。
なるほど、そういうことか。
確かに思い出してみれば、旅の途中で立ち寄った寺院でいつもジェクトは目を閉じて気持ち良さそうに歌を聞いていたっけ。
「旅の始めはどうなることかと心配だったが、……よくここまで来たな」
飛空挺に戻ったアーロンが少年に向かって呟いた。
10年前、ジェクトとの約束を果たす為にザナルカンドに渡り、そしてずっと少年を見守ってきたアーロン。
その少年が、シンを、ジェクトを倒そうとしている。
確か少年はユウナと同じ歳だったはずだ。
10年前、あんなに幼かったユウナも今や立派な召喚士。
少年だって当時は同じ様に幼かった筈だ。
アーロンの言葉は、自分自身にも向かっていたのかもしれない。
船が動き出す前に、なんとか気分が悪くならずに済む方法を考えなければならない。
ブリッジにいるリュックに乗り物酔いに効きそうな薬がないか聞いてみる。
「え、乗り物酔い!? …う~ん、あったと思うけど、ちょっと聞いてくるね」
そう言ってリュックはブリッジを飛び出していった。
「さて、いつでもおっぱじめていいぜ、シンとの最終決戦ってやつをよぉ!」
シドが仲間達に声を掛ける。
仲間達は思い思いにシンとの戦いやシンがいなくなった後の世界のことを考えていた。
いつの間にか、すぐ側にアーロンが近付いていた。
「さあ、いよいよシンに戦いを挑む時だ。思い残したことやり残したことがある奴は、今のうちだ。覚悟を決める時間が必要ならば待ってやる」
やり残したこと、心残りなこと、そんなものは山ほどある。
でも、それを全部やり遂げられるほど、私には時間は残っているのだろうか?
しばらくして、リュックが駆け込んできた。
「ラフテル、はいこれ。食堂のおばちゃんがどうぞってさ」
「あぁ、すまない、ありがとう」
受け取った小さな小瓶には微かに色の付いた液体が入っていた。
見るからに怪しいと思うが、何もないよりはマシだろう。
「俺さ、ちょっと行きたいところ、あんだけど…」
少年が仲間達に声を掛ける。
ユウナは何かずっと考え込んでいるようで、反応がない。
「ユウナ? いいっスか?」
「えっ、あ、ごめん、考え事してた。何?」
「シンを倒しに行く前に、行きたいとこあるんだけど、いい?」
「あ、うん。…どこかな?」
「えーっと、…あれ? どこだ? ……あ!リュックならわかるよな! ほら、あの時……」
みんなには申し訳ないが、少年が行きたいと言っていたところに到着するまでの間、少し休ませてもらうことにした。
どうせそこにいても、気分の悪さでどうしようもなくなるだろうし、そんな姿を見た仲間達も気分はいいものではないだろう。
客室まで、ユウナにルールー、リュックも女性陣だけで押しかけてきた。
私はリュックから受け取った少々怪しい薬を飲み、腰の武器を外して寝台に横になった。
「悪い、みんな、少し、横にならせて貰う」
「うん、無理、しないで下さい」
「苦しかったらすぐ言いなさい」
「大丈夫!アルベドの回復薬はすっごい効くんだから!」
「…ありがと」
「…あ!そうだ!」
思い出したように、リュックは声を上げる。
「ラフテル、あたし、ラフテルのこと、聞きたいな~。もう友達なんだもん、いいよね」
「…え」
「…リュック、友達、って…」
「うん、ユウナが1号で、あたしが2号、そしてルールーが3号だよ」
「わあ!もう友達って呼んでいいんですか! …でもリュック、1号2号って、変だよ」
「あ、そっか…、ごめん」
私の意志はそこに入っていないのかと少々複雑になる。
突然今から友達、と言われても、この歳になるまで友達なんて呼べる存在はいないし、仲間か知り合いくらいならいるが。
何をどうしたらいいのかまるで分からない。
私が何も言えずにポカンとしていても、女たちは勝手に甲高い声で楽しそうに話をしている。
元来、女性というのはそういうものなのだそうだ。
幼い頃にベベルで見た女性も、1人で旅をしていた頃に立ち寄った村や町の女たちも、こうしてどうでもいい話題で盛り上がる。
私はそこに参加するわけでもなく、離れて見ていただけだった。
まあ、本人たちは気にした様子もなく楽しそうにしているので、見ているこっちもなんとなく嬉しくなってくる。
彼女たちの興味は移り気で、次から次と様々な話題が出てはいつの間にかまた別の話題へと。
よくこうも次から次へと話のネタが尽きないものだ。
そしてその話題はとうとう私にお鉢が回ってきた。
私の幼い頃や、10年前の旅のことなどとにかく時系列なんて関係ない。
思いつくままに話を聞きたがり、様々に質問をぶつけてくる。
中にはどうしてそんなものを聞きたがるんだというものまであって、正直参った。
だが、10年前の、あの旅の後の、ベベルで私が体験した話をすると、3人は目に涙を浮かべた。
こんなことは、もう過去のことだ。他人の過去を聞いて何が楽しいんだろうか?
どうして知りたがるんだろうか?
それで何かが変わるというのだろうか?
もう起こってしまった出来事は変えられない。過ぎてしまった時間は取り戻せない。
いつまでも過去に囚われていては前に進めない。昔のことを悔やんでも仕方がない。
…でも…
少し前の私だったら、そう言ってばっさり切り捨ててたかもしれない。
でも今は、それでもいいと思ってしまっている。
他人の記憶や思い出を知って、共に笑い、喜び、そして泣いてくれる。
同じ感情を、気持ちを持ってくれる。
こういう存在がいてくれることが、嬉しいと思う。
…そうか、きっとこれが、ともだちってやつか。
→
=79=
『空を飛ぶ船が祈りの歌を歌う それが聞こえたらみんなも一緒に歌って下さい』
シンを倒す為ならどんな協力も惜しまない。
ましてやそれが、誰もが知る心静める祈りの歌ならば、これほど簡単なことはない。
そして、このスピラが1つになれるだろう。
少年とユウナが戻り、帰り際にシェリンダにお願いをするリュック。
そう言えば、船の中でそんなことを話していたような気はするが、それどころではなかった私はうろ覚えでどんなものかよくわからない。
グレートブリッジを渡っている途中で少年に尋ねる。
シンに祈りの歌を聞かせれば大人しくなる。そこを一気に叩く。だそうだ。
なるほど、そういうことか。
確かに思い出してみれば、旅の途中で立ち寄った寺院でいつもジェクトは目を閉じて気持ち良さそうに歌を聞いていたっけ。
「旅の始めはどうなることかと心配だったが、……よくここまで来たな」
飛空挺に戻ったアーロンが少年に向かって呟いた。
10年前、ジェクトとの約束を果たす為にザナルカンドに渡り、そしてずっと少年を見守ってきたアーロン。
その少年が、シンを、ジェクトを倒そうとしている。
確か少年はユウナと同じ歳だったはずだ。
10年前、あんなに幼かったユウナも今や立派な召喚士。
少年だって当時は同じ様に幼かった筈だ。
アーロンの言葉は、自分自身にも向かっていたのかもしれない。
船が動き出す前に、なんとか気分が悪くならずに済む方法を考えなければならない。
ブリッジにいるリュックに乗り物酔いに効きそうな薬がないか聞いてみる。
「え、乗り物酔い!? …う~ん、あったと思うけど、ちょっと聞いてくるね」
そう言ってリュックはブリッジを飛び出していった。
「さて、いつでもおっぱじめていいぜ、シンとの最終決戦ってやつをよぉ!」
シドが仲間達に声を掛ける。
仲間達は思い思いにシンとの戦いやシンがいなくなった後の世界のことを考えていた。
いつの間にか、すぐ側にアーロンが近付いていた。
「さあ、いよいよシンに戦いを挑む時だ。思い残したことやり残したことがある奴は、今のうちだ。覚悟を決める時間が必要ならば待ってやる」
やり残したこと、心残りなこと、そんなものは山ほどある。
でも、それを全部やり遂げられるほど、私には時間は残っているのだろうか?
しばらくして、リュックが駆け込んできた。
「ラフテル、はいこれ。食堂のおばちゃんがどうぞってさ」
「あぁ、すまない、ありがとう」
受け取った小さな小瓶には微かに色の付いた液体が入っていた。
見るからに怪しいと思うが、何もないよりはマシだろう。
「俺さ、ちょっと行きたいところ、あんだけど…」
少年が仲間達に声を掛ける。
ユウナは何かずっと考え込んでいるようで、反応がない。
「ユウナ? いいっスか?」
「えっ、あ、ごめん、考え事してた。何?」
「シンを倒しに行く前に、行きたいとこあるんだけど、いい?」
「あ、うん。…どこかな?」
「えーっと、…あれ? どこだ? ……あ!リュックならわかるよな! ほら、あの時……」
みんなには申し訳ないが、少年が行きたいと言っていたところに到着するまでの間、少し休ませてもらうことにした。
どうせそこにいても、気分の悪さでどうしようもなくなるだろうし、そんな姿を見た仲間達も気分はいいものではないだろう。
客室まで、ユウナにルールー、リュックも女性陣だけで押しかけてきた。
私はリュックから受け取った少々怪しい薬を飲み、腰の武器を外して寝台に横になった。
「悪い、みんな、少し、横にならせて貰う」
「うん、無理、しないで下さい」
「苦しかったらすぐ言いなさい」
「大丈夫!アルベドの回復薬はすっごい効くんだから!」
「…ありがと」
「…あ!そうだ!」
思い出したように、リュックは声を上げる。
「ラフテル、あたし、ラフテルのこと、聞きたいな~。もう友達なんだもん、いいよね」
「…え」
「…リュック、友達、って…」
「うん、ユウナが1号で、あたしが2号、そしてルールーが3号だよ」
「わあ!もう友達って呼んでいいんですか! …でもリュック、1号2号って、変だよ」
「あ、そっか…、ごめん」
私の意志はそこに入っていないのかと少々複雑になる。
突然今から友達、と言われても、この歳になるまで友達なんて呼べる存在はいないし、仲間か知り合いくらいならいるが。
何をどうしたらいいのかまるで分からない。
私が何も言えずにポカンとしていても、女たちは勝手に甲高い声で楽しそうに話をしている。
元来、女性というのはそういうものなのだそうだ。
幼い頃にベベルで見た女性も、1人で旅をしていた頃に立ち寄った村や町の女たちも、こうしてどうでもいい話題で盛り上がる。
私はそこに参加するわけでもなく、離れて見ていただけだった。
まあ、本人たちは気にした様子もなく楽しそうにしているので、見ているこっちもなんとなく嬉しくなってくる。
彼女たちの興味は移り気で、次から次と様々な話題が出てはいつの間にかまた別の話題へと。
よくこうも次から次へと話のネタが尽きないものだ。
そしてその話題はとうとう私にお鉢が回ってきた。
私の幼い頃や、10年前の旅のことなどとにかく時系列なんて関係ない。
思いつくままに話を聞きたがり、様々に質問をぶつけてくる。
中にはどうしてそんなものを聞きたがるんだというものまであって、正直参った。
だが、10年前の、あの旅の後の、ベベルで私が体験した話をすると、3人は目に涙を浮かべた。
こんなことは、もう過去のことだ。他人の過去を聞いて何が楽しいんだろうか?
どうして知りたがるんだろうか?
それで何かが変わるというのだろうか?
もう起こってしまった出来事は変えられない。過ぎてしまった時間は取り戻せない。
いつまでも過去に囚われていては前に進めない。昔のことを悔やんでも仕方がない。
…でも…
少し前の私だったら、そう言ってばっさり切り捨ててたかもしれない。
でも今は、それでもいいと思ってしまっている。
他人の記憶や思い出を知って、共に笑い、喜び、そして泣いてくれる。
同じ感情を、気持ちを持ってくれる。
こういう存在がいてくれることが、嬉しいと思う。
…そうか、きっとこれが、ともだちってやつか。
→