第8章【ザナルカンド~バージ=エボン寺院】
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敵と友
=78=
「終わりにはしません!」
ユウナが強く言い放つ。
そうだ、スピラが終わるのではない。終わるのはマイカの独裁的な秕政のみだ。
始まるのは死の螺旋などではなく、本当の、希望と平和。
「マイカ、本当にスピラの平安が終わることを望んでいないのなら、究極召喚、いや、召喚獣はいらない。そうだろ…?」
「…ただの人形が知恵を付けおって…」
忌々しそうにマイカが私を睨みつけながら呟く。
「…人形…!?」
返したのは、誰の声だっただろうか…?
この時、すでに私は私を抑えきれなくなっていた。
そんな私を押し留めていたのは、理性を保ってくれていたのは、私の中の小さな魂。
そうなのだ、私は、もう、究極召喚を手に入れている。…半分だけだけど。
「なあ、エボン=ジュって……」
「ユウナレスカ様も仰ってたわ」
「ちょっとじーさん、エボン=ジュってなんなのよ!」
それはどこかで聞いたことがあるような気はしていた。
だがそれがいつ、どこで聞いたものだったのかなんて分からない。忘れたといったほうがいいだろうか。
記憶の片隅に残るその言葉、そしてどうしてこうもその言葉に引っ掛かりを覚えるのだろうか?
「死せる魂を寄せ集め、鎧に変えて纏うもの。その鎧こそシンに他ならぬ。シンはエボン=ジュを守る鎧。その鎧を打ち破る究極召喚をお前たちが消し去った!
…誰も倒せぬ」
「あっ!!」
マイカは幻光虫となって消えてしまった。
「ふざけやがって! 好き勝手ほざいて逃げやがった!」
あれだけエボンに心頭し、熱心に教えに従って生きてきたワッカの言葉とは思えなかったが、今は同感だ。
結局、私の言葉なんてマイカには届かなかったし、それに対する答えも結局得ることはできなかった。
本当に、この怒りをどこにぶつけたらいいのか、苛ついて私は思わす舌打ちしてしまう。
タイミングを見計らったかのように、シェリンダが駆け込んできた。
マイカがどこにも見当たらないと言う。
当たり前だ。たった今、目の前で幻光虫となって消えたのだから。
言葉を返そうとしたユウナを遮って、アーロンが言う。
「まだ来ないぞ。いつまで待たせる気だ」
そんな小さな嘘なんて、マイカが今までさんざん人々を、そしてスピラを騙してきたことを思えば可愛いものだ。
ユウナと少年が何かに気付いたように空中に視線を向けている。
微かな異界の匂い。
姿は見えないが、何かがいるようだ。
「誰と話してんだ?」
ワッカも気付いたようで少年に声を掛ける。
なんでもない、と否定する少年の言葉を聞き、ユウナが皆のほうを振り向く。
「祈り子様に会いに行ってきます」
「…話、聞いてくるのか?」
「はい」
「……なるほどな」
祈り子の間へ向かう2人を見送ってから、私達は階下のホールで2人を待つことにした。
「ラフテル、さっきの話、どういう意味か、教えて貰えるかしら?」
「あぁ、そういえばラフテル、ずっと黙ってるなんて、ひどいよ!ちゃんと話して! あれ、どういうこと!?」
「究極召喚なしでも、シンは倒せるって、本当なのか?」
ルールーから始まって、リュックとワッカまで私に詰め寄ってくる。
そう言えば、さっきはついつい余計なことまで話してしまったような気がする。
…まずったな…
「物理的には、シンだけなら倒すことは可能だ」
助け舟を出してくれたアーロンのほうを振り返る。
3人の押し寄せる波を両手で制して、私は1歩後退した。
アーロンは更に続ける。
「マイカも言っていただろう、シンとは死者の魂を寄せ集めた鎧だと」
「死者の魂、つまり幻光虫の塊ってこと」
「…それって…」
「ようするに、でっかい魔物、ってこと?」
私とアーロンは無言で頷く。
「問題は、その鎧を纏っているエボン=ジュだな。そいつに関しては、私もどこかで聞いたことがある、くらいのことしか知らない」
「それ、嘘じゃないんだよね。ほんっと~~~に、知らないんだよね~!?」
「…う、うん」
「もう1つあるわ」
「…え、まだ?」
「“人形”って、何?」
「あ……」
そうか、その件もあった…、と力が抜ける。
最後の最後にマイカが言い残していってくれた厄介な言葉。
言いたくはない。思い出したく、ないんだ。
だが、仲間達のこの雰囲気は、黙っていることはできなさそうだ。
「ユウナに…」
「ユウナに?」
「言われたことがある。…召喚士とガードとしてではなく、友達として色々私のことを知りたい、と」
「ほう…」
「あら、ユウナも言うわね」
「おおっ!いいじゃんいいじゃん!友達! あたしも友達になりたい! ねっ、友達なら、色々教えてくれるんだよね!」
「…ユウナには、こう答えた。今はまだその時じゃない。…でも、シンを倒して平和な世の中になったら、って」
その一言で、リュックの顔色が一変する。
嬉しそうに笑っていた顔が、急に真面目なものに変わった。
「あのね、ラフテル。…友達って、約束してなるものじゃ、ないんだよ」
「!!」
「ラフテル、友達、作ったこと、ないの?」
「…私は…… 生きるか死ぬか、戦うか逃げるか、勝か負けるか。それだけの世界で生きてきたから」
なぜか急に泣き出しそうな顔になったリュックが抱きついてきた。
「シンを倒すまでなんて待ってられない!あたし、もうラフテルの友達になる!友達2号!!」
「リュック……」
「なんで2号なんだよ?」
「1号はユウナ、で3号はルールー!」
「ハハハ…、ありがと、リュック。 ……でも、離れたほうがいいと思うよ…」
「なんで~?」
私の後ろから、背中に突き刺さるような痛い視線を感じる。
怒気を孕んだ異界の匂いが強くなり、なぜか冷たい汗が米神に浮かぶのを感じた。
「……0号がお怒りだ」
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「終わりにはしません!」
ユウナが強く言い放つ。
そうだ、スピラが終わるのではない。終わるのはマイカの独裁的な秕政のみだ。
始まるのは死の螺旋などではなく、本当の、希望と平和。
「マイカ、本当にスピラの平安が終わることを望んでいないのなら、究極召喚、いや、召喚獣はいらない。そうだろ…?」
「…ただの人形が知恵を付けおって…」
忌々しそうにマイカが私を睨みつけながら呟く。
「…人形…!?」
返したのは、誰の声だっただろうか…?
この時、すでに私は私を抑えきれなくなっていた。
そんな私を押し留めていたのは、理性を保ってくれていたのは、私の中の小さな魂。
そうなのだ、私は、もう、究極召喚を手に入れている。…半分だけだけど。
「なあ、エボン=ジュって……」
「ユウナレスカ様も仰ってたわ」
「ちょっとじーさん、エボン=ジュってなんなのよ!」
それはどこかで聞いたことがあるような気はしていた。
だがそれがいつ、どこで聞いたものだったのかなんて分からない。忘れたといったほうがいいだろうか。
記憶の片隅に残るその言葉、そしてどうしてこうもその言葉に引っ掛かりを覚えるのだろうか?
「死せる魂を寄せ集め、鎧に変えて纏うもの。その鎧こそシンに他ならぬ。シンはエボン=ジュを守る鎧。その鎧を打ち破る究極召喚をお前たちが消し去った!
…誰も倒せぬ」
「あっ!!」
マイカは幻光虫となって消えてしまった。
「ふざけやがって! 好き勝手ほざいて逃げやがった!」
あれだけエボンに心頭し、熱心に教えに従って生きてきたワッカの言葉とは思えなかったが、今は同感だ。
結局、私の言葉なんてマイカには届かなかったし、それに対する答えも結局得ることはできなかった。
本当に、この怒りをどこにぶつけたらいいのか、苛ついて私は思わす舌打ちしてしまう。
タイミングを見計らったかのように、シェリンダが駆け込んできた。
マイカがどこにも見当たらないと言う。
当たり前だ。たった今、目の前で幻光虫となって消えたのだから。
言葉を返そうとしたユウナを遮って、アーロンが言う。
「まだ来ないぞ。いつまで待たせる気だ」
そんな小さな嘘なんて、マイカが今までさんざん人々を、そしてスピラを騙してきたことを思えば可愛いものだ。
ユウナと少年が何かに気付いたように空中に視線を向けている。
微かな異界の匂い。
姿は見えないが、何かがいるようだ。
「誰と話してんだ?」
ワッカも気付いたようで少年に声を掛ける。
なんでもない、と否定する少年の言葉を聞き、ユウナが皆のほうを振り向く。
「祈り子様に会いに行ってきます」
「…話、聞いてくるのか?」
「はい」
「……なるほどな」
祈り子の間へ向かう2人を見送ってから、私達は階下のホールで2人を待つことにした。
「ラフテル、さっきの話、どういう意味か、教えて貰えるかしら?」
「あぁ、そういえばラフテル、ずっと黙ってるなんて、ひどいよ!ちゃんと話して! あれ、どういうこと!?」
「究極召喚なしでも、シンは倒せるって、本当なのか?」
ルールーから始まって、リュックとワッカまで私に詰め寄ってくる。
そう言えば、さっきはついつい余計なことまで話してしまったような気がする。
…まずったな…
「物理的には、シンだけなら倒すことは可能だ」
助け舟を出してくれたアーロンのほうを振り返る。
3人の押し寄せる波を両手で制して、私は1歩後退した。
アーロンは更に続ける。
「マイカも言っていただろう、シンとは死者の魂を寄せ集めた鎧だと」
「死者の魂、つまり幻光虫の塊ってこと」
「…それって…」
「ようするに、でっかい魔物、ってこと?」
私とアーロンは無言で頷く。
「問題は、その鎧を纏っているエボン=ジュだな。そいつに関しては、私もどこかで聞いたことがある、くらいのことしか知らない」
「それ、嘘じゃないんだよね。ほんっと~~~に、知らないんだよね~!?」
「…う、うん」
「もう1つあるわ」
「…え、まだ?」
「“人形”って、何?」
「あ……」
そうか、その件もあった…、と力が抜ける。
最後の最後にマイカが言い残していってくれた厄介な言葉。
言いたくはない。思い出したく、ないんだ。
だが、仲間達のこの雰囲気は、黙っていることはできなさそうだ。
「ユウナに…」
「ユウナに?」
「言われたことがある。…召喚士とガードとしてではなく、友達として色々私のことを知りたい、と」
「ほう…」
「あら、ユウナも言うわね」
「おおっ!いいじゃんいいじゃん!友達! あたしも友達になりたい! ねっ、友達なら、色々教えてくれるんだよね!」
「…ユウナには、こう答えた。今はまだその時じゃない。…でも、シンを倒して平和な世の中になったら、って」
その一言で、リュックの顔色が一変する。
嬉しそうに笑っていた顔が、急に真面目なものに変わった。
「あのね、ラフテル。…友達って、約束してなるものじゃ、ないんだよ」
「!!」
「ラフテル、友達、作ったこと、ないの?」
「…私は…… 生きるか死ぬか、戦うか逃げるか、勝か負けるか。それだけの世界で生きてきたから」
なぜか急に泣き出しそうな顔になったリュックが抱きついてきた。
「シンを倒すまでなんて待ってられない!あたし、もうラフテルの友達になる!友達2号!!」
「リュック……」
「なんで2号なんだよ?」
「1号はユウナ、で3号はルールー!」
「ハハハ…、ありがと、リュック。 ……でも、離れたほうがいいと思うよ…」
「なんで~?」
私の後ろから、背中に突き刺さるような痛い視線を感じる。
怒気を孕んだ異界の匂いが強くなり、なぜか冷たい汗が米神に浮かぶのを感じた。
「……0号がお怒りだ」
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