第8章【ザナルカンド~バージ=エボン寺院】
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ただ1人の欲望の為に
=77=
飛空挺から降りたところは、ベベル寺院の外れ、グレートブリッジに差し掛かるところだった。
街を眺めることは出来るが、今は立ち寄っている場合ではない。
一見、何も変わった様子は見られないようだったが、漂ってくる空気はどこかピリピリと張り詰めているようにも感じられる。
「(……?)」
なにか、変だ。
普段はいるはずの門兵の姿が見えない。
異界の匂いもしない。
海流や大渦で荒れ狂っているはずの海を静かで穏やかな海面が覆い隠している、そんな雰囲気だ。
一体、ここで何がどうなっているのだろうか?
グレートブリッジを渡っていると、前方からようやく門番らしき兵士が数人走り寄ってきた。
私達に銃を突き付け、反逆者と呼ぶ。
やはりこうなるのか、と予測していた事柄ではあるがそれは1人の女性の登場によって覆ることになった。
シェリンダというこの女性、確か、巡回僧をしていたはず。
急に門衛の監督官を命ぜられたのだそうだ。
ベベルの中にいて、ユウナや私達を反逆者と呼ばない、ただ1人の者かもしれない。
このシェリンダとはこれまでの旅の中でも何度か会う機会があり、その度にユウナは互いに励ましあっていた。
まだ駆け出しだった頃のユウナにとっては、親近感が沸く間柄だったのだろう。
彼女が監督官とは、出世したようだなとは残念ながら言い難い。
申し訳ないが、この様子だと元々誰でも良かった風にも取れる。
彼女の口から語られたベベルの現状は凄惨たるものだ。
多少の混乱は起こるだろうとは思っていたが、まさかここまで酷いとは…
聞けば、ケルク=ロンゾ老師の辞任、キノック老師の死亡、そしてシーモア老師は行方不明。
マイカだけが1人、なんとかかろうじてベベルを持たせているのだとか。
エボン四老師のうち、3人までもがエボンから姿を消し、ベベルの枢機は乱れ、その内部は錯綜していた。
どこもかしこも人員は足りず、ベベルを見捨てて逃亡する僧官さえ出ることで、悪循環を繰り返すだけのようだ。
「それよっかさ、マイカ総老師に会いたいんだけど、できる?」
少年の言葉に、シェリンダは大きく頷いた。
「裁判の間でお待ち下さい!」
それきり、そこには誰もいなくなってしまった。
私達は一応、反逆者ということで、ここにいること自体、本来ならば許されないはずであるにも関わらず、それどころではないと言うのか。
「アルベドの流したデマって何なのさ~」
先程、シェリンダの口から出た言葉の一つに、あったものだ。
ユウナが反逆者というのは、アルベド族が流したデマであると。
勿論、すぐにリュックは反論するが、それを言った当人も恐らく本当のことは何も知らないのだろう。
「気にするな。マイカも、ユウナを頼るしかないのだ」
「ユウナを捕まえることなんて、ベベルにしてみればいい面汚しだ。あくまでもベベルはユウナの味方を繕いたいのさ」
「はぁ~、なるほど」
「虫がいいにも程があるわね」
まったくだ。
ルールーの言葉に即答できる。
ベベルの今のこの状況を見て、私は密かに安堵していた。
他のみんなには申し訳ないが個人的なことだ。
もう、私の役目は終わったんだと、そう思った。
マイカのユウナに対する扱いを見れば一目瞭然だ。
私達は先程シェリンダが言っていた通り、裁判の間へと再び足を踏み入れた。
以前ここに立ったときとは全く雰囲気も心の中も違う。
今はもう、ここにこうして立っていても重苦しさはない。
「マイカ総老師、来てくれるかな…?」
「心配するなユウナ、必ず来る」
「なんで断言できるっスか?」
「…奴は私達がユウナレスカに会ったことをもう知ってる」
「……えっ…」
「来たようだぞ」
異界の匂いが強まる。
私達が立っているここはベランダのように迫り出した演台で、通常は下にいる被告人を見下ろす裁判長の位置する所だ。
そこに、幻光虫が集まりだした。
それはやがてヒトの形を作り出し、それはマイカの姿となって現われた。
「今更、何を知ろうというのだ。早くシンを倒せばよかろう」
私達に背を向けたまま、演台の縁からその下を見下ろすようにマイカは言う。
究極召喚を得たのだから、早くシンを倒してその命を捧げよ、と。
だが、ユウナは究極召喚を手にしていない。
それどころか、究極召喚を授ける存在であったユウナレスカを、私達は倒して異界に送ってしまった。
「もはや召喚士とガードが究極召喚の犠牲になることはない」
「旅をする意味もな」
「なんと…! …1000年の理を消し去ったというのか…。この大たわけ者共がっ!! 何をしたか、わかっておるのか!
シンを鎮めるただ1つの方法であったものを…」
「…嘘だね」
「!! ラフテル、何が言いたいんじゃ! お前はわし等の、スピラの希望の光であったというのに!」
「ベベルの権力の誇示の為だけに人形にされるなんて御免だね。なんでもかんでもお前達の希望通りにいくと思ったら大間違いだ!全てを知っていて、スピラの平和の為なんて笑わせる。
ただ、あんたの望みの通りに変わらない世界を保ってるだけじゃないか。
シンを倒せるのは究極召喚のみ?そう教えておけば召喚士は必ず旅の果てに究極召喚を手に入れるもんな。ただ、命を捨てるためだけに。召喚士に究極召喚を使わせるのは、シンを失わない為だろ」
「!! ……それ、どういうこと!?」
「シンを、失わない……!?」
私の言葉に過剰に反応して見せるのは、ルールーとユウナだ。
「ただ1つなんて決め付けんなよ! 新しい方法、考えてる」
「…そのような方法など在りはせぬわ!」
「だからそれが嘘だって言ってんだ。 シンは、究極召喚なんて使わなくても倒すことができる!」
「「「!!!」」」
「ラフテル、それ、…本当なの?」
「どうして最初から言ってくれなかったの~!? あんなに必死に、ユウナ死なせないようにって考えてたのに!ラフテルもそうだと思ってたのに!!」
当たり前だが、私の言葉に皆が驚き、リュックが噛み付いてくる。
「もう、味方は誰もいないぞ。尻尾を巻いて異界に逃げるか?」
アーロンの挑発的な言葉に、マイカの頭は曲がった腰よりも深く垂れ下がった。
「スピラの救いは失われた。もはや破滅は免れえぬ。エボン=ジュが作り上げた、死の螺旋に落ちゆくのみよ。わしはスピラの終焉を見とうない……」
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飛空挺から降りたところは、ベベル寺院の外れ、グレートブリッジに差し掛かるところだった。
街を眺めることは出来るが、今は立ち寄っている場合ではない。
一見、何も変わった様子は見られないようだったが、漂ってくる空気はどこかピリピリと張り詰めているようにも感じられる。
「(……?)」
なにか、変だ。
普段はいるはずの門兵の姿が見えない。
異界の匂いもしない。
海流や大渦で荒れ狂っているはずの海を静かで穏やかな海面が覆い隠している、そんな雰囲気だ。
一体、ここで何がどうなっているのだろうか?
グレートブリッジを渡っていると、前方からようやく門番らしき兵士が数人走り寄ってきた。
私達に銃を突き付け、反逆者と呼ぶ。
やはりこうなるのか、と予測していた事柄ではあるがそれは1人の女性の登場によって覆ることになった。
シェリンダというこの女性、確か、巡回僧をしていたはず。
急に門衛の監督官を命ぜられたのだそうだ。
ベベルの中にいて、ユウナや私達を反逆者と呼ばない、ただ1人の者かもしれない。
このシェリンダとはこれまでの旅の中でも何度か会う機会があり、その度にユウナは互いに励ましあっていた。
まだ駆け出しだった頃のユウナにとっては、親近感が沸く間柄だったのだろう。
彼女が監督官とは、出世したようだなとは残念ながら言い難い。
申し訳ないが、この様子だと元々誰でも良かった風にも取れる。
彼女の口から語られたベベルの現状は凄惨たるものだ。
多少の混乱は起こるだろうとは思っていたが、まさかここまで酷いとは…
聞けば、ケルク=ロンゾ老師の辞任、キノック老師の死亡、そしてシーモア老師は行方不明。
マイカだけが1人、なんとかかろうじてベベルを持たせているのだとか。
エボン四老師のうち、3人までもがエボンから姿を消し、ベベルの枢機は乱れ、その内部は錯綜していた。
どこもかしこも人員は足りず、ベベルを見捨てて逃亡する僧官さえ出ることで、悪循環を繰り返すだけのようだ。
「それよっかさ、マイカ総老師に会いたいんだけど、できる?」
少年の言葉に、シェリンダは大きく頷いた。
「裁判の間でお待ち下さい!」
それきり、そこには誰もいなくなってしまった。
私達は一応、反逆者ということで、ここにいること自体、本来ならば許されないはずであるにも関わらず、それどころではないと言うのか。
「アルベドの流したデマって何なのさ~」
先程、シェリンダの口から出た言葉の一つに、あったものだ。
ユウナが反逆者というのは、アルベド族が流したデマであると。
勿論、すぐにリュックは反論するが、それを言った当人も恐らく本当のことは何も知らないのだろう。
「気にするな。マイカも、ユウナを頼るしかないのだ」
「ユウナを捕まえることなんて、ベベルにしてみればいい面汚しだ。あくまでもベベルはユウナの味方を繕いたいのさ」
「はぁ~、なるほど」
「虫がいいにも程があるわね」
まったくだ。
ルールーの言葉に即答できる。
ベベルの今のこの状況を見て、私は密かに安堵していた。
他のみんなには申し訳ないが個人的なことだ。
もう、私の役目は終わったんだと、そう思った。
マイカのユウナに対する扱いを見れば一目瞭然だ。
私達は先程シェリンダが言っていた通り、裁判の間へと再び足を踏み入れた。
以前ここに立ったときとは全く雰囲気も心の中も違う。
今はもう、ここにこうして立っていても重苦しさはない。
「マイカ総老師、来てくれるかな…?」
「心配するなユウナ、必ず来る」
「なんで断言できるっスか?」
「…奴は私達がユウナレスカに会ったことをもう知ってる」
「……えっ…」
「来たようだぞ」
異界の匂いが強まる。
私達が立っているここはベランダのように迫り出した演台で、通常は下にいる被告人を見下ろす裁判長の位置する所だ。
そこに、幻光虫が集まりだした。
それはやがてヒトの形を作り出し、それはマイカの姿となって現われた。
「今更、何を知ろうというのだ。早くシンを倒せばよかろう」
私達に背を向けたまま、演台の縁からその下を見下ろすようにマイカは言う。
究極召喚を得たのだから、早くシンを倒してその命を捧げよ、と。
だが、ユウナは究極召喚を手にしていない。
それどころか、究極召喚を授ける存在であったユウナレスカを、私達は倒して異界に送ってしまった。
「もはや召喚士とガードが究極召喚の犠牲になることはない」
「旅をする意味もな」
「なんと…! …1000年の理を消し去ったというのか…。この大たわけ者共がっ!! 何をしたか、わかっておるのか!
シンを鎮めるただ1つの方法であったものを…」
「…嘘だね」
「!! ラフテル、何が言いたいんじゃ! お前はわし等の、スピラの希望の光であったというのに!」
「ベベルの権力の誇示の為だけに人形にされるなんて御免だね。なんでもかんでもお前達の希望通りにいくと思ったら大間違いだ!全てを知っていて、スピラの平和の為なんて笑わせる。
ただ、あんたの望みの通りに変わらない世界を保ってるだけじゃないか。
シンを倒せるのは究極召喚のみ?そう教えておけば召喚士は必ず旅の果てに究極召喚を手に入れるもんな。ただ、命を捨てるためだけに。召喚士に究極召喚を使わせるのは、シンを失わない為だろ」
「!! ……それ、どういうこと!?」
「シンを、失わない……!?」
私の言葉に過剰に反応して見せるのは、ルールーとユウナだ。
「ただ1つなんて決め付けんなよ! 新しい方法、考えてる」
「…そのような方法など在りはせぬわ!」
「だからそれが嘘だって言ってんだ。 シンは、究極召喚なんて使わなくても倒すことができる!」
「「「!!!」」」
「ラフテル、それ、…本当なの?」
「どうして最初から言ってくれなかったの~!? あんなに必死に、ユウナ死なせないようにって考えてたのに!ラフテルもそうだと思ってたのに!!」
当たり前だが、私の言葉に皆が驚き、リュックが噛み付いてくる。
「もう、味方は誰もいないぞ。尻尾を巻いて異界に逃げるか?」
アーロンの挑発的な言葉に、マイカの頭は曲がった腰よりも深く垂れ下がった。
「スピラの救いは失われた。もはや破滅は免れえぬ。エボン=ジュが作り上げた、死の螺旋に落ちゆくのみよ。わしはスピラの終焉を見とうない……」
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