第8章【ザナルカンド~バージ=エボン寺院】
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小休止とこれから
=74=
激しい喉の渇きで目が覚めた。
どれくらい眠ってしまっていたんだろうか。
身動ぎした私に気が付いたのか、私の背後から抱き締めている逞しい腕が一層力を強める。
それを振りほどいて、たった1つしかない寝台から身を下ろす。
一糸纏わぬ姿も、もう気にする歳でもない。
そのまま風呂場だと教えられた扉を潜る。
腹が減っているかと言われれば、減っているような気もするが、できればもう少し眠りたい。
ユウナがこの先どうするのかを決めるまでは、どうせ私達は動くことは出来ないのだ。
何か予定が決まれば部屋に連絡は入るだろうが、皆に申し訳ないと思いながらも、もう少し休ませて欲しい。
濡れた髪を拭きながら部屋に戻ると、アーロンが寝台に身を起していた。
「腹は空いていないか?」
「それより、もう少し眠りたい。…誰かさんのせいで腰がバカみたいだ」
「…フッ」
私が寝台に腰を下ろすのと入れ替わりに腰を上げ、身支度を整える。
「ユウナ達の様子を見てくる。お前はどうする?」
「悪いけど、もう少し寝かせて。何かあったら教えてくれ」
「そうか」
まだ乾かない長い髪もそのままに、私は倒れるように寝台に横になる。
そのまま、奴は静かに部屋を出て行った。
ふと目を覚ます。
少し寝すぎてしまったようで頭が重い。
体を起こして、自分の両手を眺める。
…まだ、壊れていない。
まだ、命が繋がっていることに安堵する。
ユウナレスカの、その全てが宙に還る様をみてしまったからなのだろうか、急に自分の体がこのままではいられないと、危険信号を出す。
このまま眠りについたまま二度と目が覚めないのではないか、と。
昨夜の激しい行為でも壊れることのなかった体だが、ちょっとしたことで脆く崩れてしまいそうにも思う。
だが、それでもいいかとも思ってしまう。
もう、ブラスカもジェクトもこのスピラの上に命はない。
祈り子となったジェクトはシンで、シンでさえも魂が寄せ集まってできたものに過ぎないのだから。
そしてあいつも、もう、生きてはいない。
かつての仲間で未だ命を持ち、このスピラの死の螺旋に囚われているのは自分だけなのだ。
しんと静まり返った船内にほとんど人の気配はない。
少々空腹感を感じて、食堂へ行ってみようかと思い立った。
起きぬけの姿そのままに、まだ完全に覚醒しきらない重い頭を片手で抑えながら通路を進む。
窓から差し込む光で、まだ日が高いことを知る。
その窓の外から、楽しげな声が聞こえてきて、目を窓の外に向ける。
先程目にした遺跡の街ではなく、いつの間にかそこは広大な緑が広がる平原になっていた。
「(…いつの間に…)」
乗り物に極端に弱い自分が気付きもしない程、深い眠りに落ちていたのだろうか。
広いナギ平原の上で、何人かの人間が駆け回っているのが目に入った。
よく見ると黄色い鳥の姿も見える。
「目が覚めたのか」
食堂に入るなり、アーロンが声を掛けてきた。
展望テラスにもなる大きな窓は開放されており、簡易テーブルと椅子が用意されていた。
アーロンから受け取った熱いコーヒーの入ったカップを手にして、そこに腰を下ろす。
「…元気だな」
「…あぁ、やつらか。…気分転換だそうだ。何も考え付かなくて苛ついていたらしい」
「なるほど、それでチョコボレースか。…ハハハ」
そこからはナギ平原の広い緑の野がよく見える。
黄色い大型の鳥、チョコボに乗っているのは少年とリュック、それを応援しているのかユウナと、その後ろにキマリがいる。
「ワッカとルールーは?」
「あぁ、ブリッジでシドと話をしてる」
「……誰?」
「ん? ああ、知らなかったか。この船の船長、いや、艇長と呼ぶべきか。…リュックの父親だ」
「あぁ、あの時の………、 ……リュックの父親!? そっちの方が驚きだ」
「…まぁ、気持ちはわかる」
この様子では、どうやらもう暫くここに停泊することになりそうだ。
「…アーロン」
「なんだ?」
「………いや、やっぱりいい。何でもない、忘れてくれ」
「なんだ、言いたいことがあるなら言え」
「いや、本当に大したことじゃないから、いいよ」
「無理に聞き出してもいいんだが?」
カップに口をつけたまま、こちらに視線を向けてニヤリと奴は笑った。
「……バカ野郎」
その視線を避けるように、眼下で駆け回る少年の乗ったチョコボを目で追った。
「…で? 何を聞きたかったんだ」
「まだ言ってるのか」
「声を掛けてきたのはお前だ」
「…まぁ、そうだが…」
少し、聞きたいと思っただけだ。特にそれを確かめなければならないという訳ではない。
「…少年は、ティーダは、ジェクトに会えるかな、と、そう思っただけだ」
「…なぜだ?」
「シン、だし…。昔のままの、人間の姿のジェクトには、会えるんだろうかと、ちょっと考えただけだ」
「…もちろんだ」
「会った、のか?」
「直接会った訳ではない。だが、…お前にも感じるはずだ。シンの中に、ジェクトの意識はまだ残っている」
「………うん」
「ジェクトには会えるさ。お前も、俺も、あいつも…。お前の長い髪を見たら、奴はきっと驚く」
10年前の旅の時には短かった、私の髪。
10年の間に1度も切らなかった、10年分の重み。
何を願ってたんだろう? 願いが叶ったときに切ったら、どれだけ心は晴れるんだろう…
夜、皆で食事を摂っている時にまた、今後どうするかの話題となる。
あれこれ意見を出す皆を、他人事のように眺めながら、私はアーロンと酒を酌み交わす。
別に話に参加しないわけではないが、自分達は口を出すべきではないと、少々遠慮しているのが事実だ。
「なあ、あんたも考えろよ」
ふいに少年が声を掛けてきた。
「…ふむ、そうだな。シンはジェクトだ。お前とシンは確かに通じ合っている。それが突破口になるかもしれん」
「んで、どうするんだよ?」
「フッ、それがわかれば苦労はせん」
「…そうっスか…。んじゃ、ラフテルは? なんかいい考え、ない?」
「そうだな、…究極召喚はもうない。当然だが究極召喚は使えない。…なぜ、シンを倒すのに究極召喚が必要だったのか、それがわかれば何か道が開けるんじゃないか?」
「…なぜ、か…。…ユウナ?」
「…あの、ね、今まで、シンは究極召喚でしか倒せないとずっと聞かされてたから、究極召喚じゃなくても、本当は倒せるのかなって…」
「今までの歴代の大召喚士様たちは皆、究極召喚を使ってシンを倒してきたから、それしか方法がないと思い込んでいたのかもしれないわね」
「んじゃ、別に普通の召喚獣でも倒せる、もしかしたら召喚獣なしでも倒せるかもしれねぇってことか」
「おいおい、小難しい話は明日にしろや。今日はもう寝な!」
もしかして核心をつけるかもしれない、そんな時になってから、シドが話を割ってきた。
確かに、いつの間にか結構遅い時間だ。
日中に眠ってしまったので、それほど眠気を感じなかったのだが、やはり詳しい話は翌日にしようと、各々部屋に戻って休むことにした。
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激しい喉の渇きで目が覚めた。
どれくらい眠ってしまっていたんだろうか。
身動ぎした私に気が付いたのか、私の背後から抱き締めている逞しい腕が一層力を強める。
それを振りほどいて、たった1つしかない寝台から身を下ろす。
一糸纏わぬ姿も、もう気にする歳でもない。
そのまま風呂場だと教えられた扉を潜る。
腹が減っているかと言われれば、減っているような気もするが、できればもう少し眠りたい。
ユウナがこの先どうするのかを決めるまでは、どうせ私達は動くことは出来ないのだ。
何か予定が決まれば部屋に連絡は入るだろうが、皆に申し訳ないと思いながらも、もう少し休ませて欲しい。
濡れた髪を拭きながら部屋に戻ると、アーロンが寝台に身を起していた。
「腹は空いていないか?」
「それより、もう少し眠りたい。…誰かさんのせいで腰がバカみたいだ」
「…フッ」
私が寝台に腰を下ろすのと入れ替わりに腰を上げ、身支度を整える。
「ユウナ達の様子を見てくる。お前はどうする?」
「悪いけど、もう少し寝かせて。何かあったら教えてくれ」
「そうか」
まだ乾かない長い髪もそのままに、私は倒れるように寝台に横になる。
そのまま、奴は静かに部屋を出て行った。
ふと目を覚ます。
少し寝すぎてしまったようで頭が重い。
体を起こして、自分の両手を眺める。
…まだ、壊れていない。
まだ、命が繋がっていることに安堵する。
ユウナレスカの、その全てが宙に還る様をみてしまったからなのだろうか、急に自分の体がこのままではいられないと、危険信号を出す。
このまま眠りについたまま二度と目が覚めないのではないか、と。
昨夜の激しい行為でも壊れることのなかった体だが、ちょっとしたことで脆く崩れてしまいそうにも思う。
だが、それでもいいかとも思ってしまう。
もう、ブラスカもジェクトもこのスピラの上に命はない。
祈り子となったジェクトはシンで、シンでさえも魂が寄せ集まってできたものに過ぎないのだから。
そしてあいつも、もう、生きてはいない。
かつての仲間で未だ命を持ち、このスピラの死の螺旋に囚われているのは自分だけなのだ。
しんと静まり返った船内にほとんど人の気配はない。
少々空腹感を感じて、食堂へ行ってみようかと思い立った。
起きぬけの姿そのままに、まだ完全に覚醒しきらない重い頭を片手で抑えながら通路を進む。
窓から差し込む光で、まだ日が高いことを知る。
その窓の外から、楽しげな声が聞こえてきて、目を窓の外に向ける。
先程目にした遺跡の街ではなく、いつの間にかそこは広大な緑が広がる平原になっていた。
「(…いつの間に…)」
乗り物に極端に弱い自分が気付きもしない程、深い眠りに落ちていたのだろうか。
広いナギ平原の上で、何人かの人間が駆け回っているのが目に入った。
よく見ると黄色い鳥の姿も見える。
「目が覚めたのか」
食堂に入るなり、アーロンが声を掛けてきた。
展望テラスにもなる大きな窓は開放されており、簡易テーブルと椅子が用意されていた。
アーロンから受け取った熱いコーヒーの入ったカップを手にして、そこに腰を下ろす。
「…元気だな」
「…あぁ、やつらか。…気分転換だそうだ。何も考え付かなくて苛ついていたらしい」
「なるほど、それでチョコボレースか。…ハハハ」
そこからはナギ平原の広い緑の野がよく見える。
黄色い大型の鳥、チョコボに乗っているのは少年とリュック、それを応援しているのかユウナと、その後ろにキマリがいる。
「ワッカとルールーは?」
「あぁ、ブリッジでシドと話をしてる」
「……誰?」
「ん? ああ、知らなかったか。この船の船長、いや、艇長と呼ぶべきか。…リュックの父親だ」
「あぁ、あの時の………、 ……リュックの父親!? そっちの方が驚きだ」
「…まぁ、気持ちはわかる」
この様子では、どうやらもう暫くここに停泊することになりそうだ。
「…アーロン」
「なんだ?」
「………いや、やっぱりいい。何でもない、忘れてくれ」
「なんだ、言いたいことがあるなら言え」
「いや、本当に大したことじゃないから、いいよ」
「無理に聞き出してもいいんだが?」
カップに口をつけたまま、こちらに視線を向けてニヤリと奴は笑った。
「……バカ野郎」
その視線を避けるように、眼下で駆け回る少年の乗ったチョコボを目で追った。
「…で? 何を聞きたかったんだ」
「まだ言ってるのか」
「声を掛けてきたのはお前だ」
「…まぁ、そうだが…」
少し、聞きたいと思っただけだ。特にそれを確かめなければならないという訳ではない。
「…少年は、ティーダは、ジェクトに会えるかな、と、そう思っただけだ」
「…なぜだ?」
「シン、だし…。昔のままの、人間の姿のジェクトには、会えるんだろうかと、ちょっと考えただけだ」
「…もちろんだ」
「会った、のか?」
「直接会った訳ではない。だが、…お前にも感じるはずだ。シンの中に、ジェクトの意識はまだ残っている」
「………うん」
「ジェクトには会えるさ。お前も、俺も、あいつも…。お前の長い髪を見たら、奴はきっと驚く」
10年前の旅の時には短かった、私の髪。
10年の間に1度も切らなかった、10年分の重み。
何を願ってたんだろう? 願いが叶ったときに切ったら、どれだけ心は晴れるんだろう…
夜、皆で食事を摂っている時にまた、今後どうするかの話題となる。
あれこれ意見を出す皆を、他人事のように眺めながら、私はアーロンと酒を酌み交わす。
別に話に参加しないわけではないが、自分達は口を出すべきではないと、少々遠慮しているのが事実だ。
「なあ、あんたも考えろよ」
ふいに少年が声を掛けてきた。
「…ふむ、そうだな。シンはジェクトだ。お前とシンは確かに通じ合っている。それが突破口になるかもしれん」
「んで、どうするんだよ?」
「フッ、それがわかれば苦労はせん」
「…そうっスか…。んじゃ、ラフテルは? なんかいい考え、ない?」
「そうだな、…究極召喚はもうない。当然だが究極召喚は使えない。…なぜ、シンを倒すのに究極召喚が必要だったのか、それがわかれば何か道が開けるんじゃないか?」
「…なぜ、か…。…ユウナ?」
「…あの、ね、今まで、シンは究極召喚でしか倒せないとずっと聞かされてたから、究極召喚じゃなくても、本当は倒せるのかなって…」
「今までの歴代の大召喚士様たちは皆、究極召喚を使ってシンを倒してきたから、それしか方法がないと思い込んでいたのかもしれないわね」
「んじゃ、別に普通の召喚獣でも倒せる、もしかしたら召喚獣なしでも倒せるかもしれねぇってことか」
「おいおい、小難しい話は明日にしろや。今日はもう寝な!」
もしかして核心をつけるかもしれない、そんな時になってから、シドが話を割ってきた。
確かに、いつの間にか結構遅い時間だ。
日中に眠ってしまったので、それほど眠気を感じなかったのだが、やはり詳しい話は翌日にしようと、各々部屋に戻って休むことにした。
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