第7章【ガガゼト山~ザナルカンド】
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その事実を知ってから
=70=
『…しかし! 何か方法があるはずです!!』
『そうだよ、もう少し考えてからでもいいじゃないか。まだ間に合うよ!』
『でも、今は何もねぇんだろ……。 …決めた。祈り子には俺がなる』
『!!』
『ヤケになるな! 生きていれば…生きていれば無限の可能性があんたを待っているんだ!』
『ヤケじゃねぇ! 俺なりに考えたんだ! それによアーロン…。無限の可能性なんて信じる歳でもねぇんだ、俺は』
『ジェクトにはあるよ!無限の可能性。だから、そんなことそんな簡単に決めるなよ!』
『ジェクト……』
『ブラスカにゃ、まだ“シン”を倒すって大仕事が待ってる。…だから、2人で俺の分までブラスカを守れよ…。 んじゃ、行くか!』
『ブラスカ様! ジェクト!』
『まだなんかあんのかぁ!?』
『“シン”は何度でも蘇る!短いナギ節の後で、また復活してしまうんだ!この流れを変えないと2人とも無駄死にだぞ!』
『ブラスカ、それこそ他の召喚士たちと同じ想いじゃないか…』
『…だが、今度こそ復活しないかもしれない。 …賭けてみるさ。それにラフテル、約束、忘れてはいけないよ』
『ブラスカ、嫌だよそんな約束! ジェクト!』
『ま、アーロンの言うことももっともだ。 ……よし、俺が何とかしてやる』
『何か策があると言うのか!? ジェクト』
『無限の可能性にでも期待すっか! ワハハハハハハ!!』
ザナルカンドに帰ることをずっと願っていたジェクトの夢。
そこに残してきたまだ幼い息子の成長を、もう見守り続けることなんてできないと、それでもここで、己の生きる意味を持つために。
ジェクトは自ら祈り子になることを決意した。
あの時の記憶が、ユウナの父を思う気持ちが、現われてしまったんだろうか。
幻光虫が見せる、幻と呼ぶにはあまりにもはっきりと見えるその人物たちに、己のことだというのに不覚にも涙が零れる。
あの時から10年の歳月が過ぎてしまっているのに、そこにいるのはあの時のままのブラスカとジェクト。
10年の時間を過ごしてしまった、今の自分とアーロンだけが、若い姿のまるで他人のようにそこに存在することに違和感を覚える。
ユウナレスカに告げられた言葉に、初めてこの事実を知った私達はそれが、それだけがシンを撃ち滅ぼす手段なのだと、他の方法を考える時間も余裕も無くて、そんな方法があるのかすら考えが及ばなかった。
他の召喚士たちに、自分と同じ想いを味あわせる訳にはいかないと、ブラスカが言う。
もう、その言動そのものが先の他の召喚士たちと同じなんだってことに、気が付いていない。
そして2人は階段の先にある扉の向こうに姿を消した。
いつものように豪快に上げるジェクトの大きな笑い声が、いつまでもホールの中に響いていた。
力なく膝から床に落ちるアーロンの背中に、しがみついて泣いている自分の姿に嫌気が差す。
「……くっ ……やあっ!! はあっっ!!」
大きな掛け声と共に、その場に残されたアーロンと私の残留思念を、アーロンはその大きな太刀で斬り捨てるように何度も撃ち払った。
そこに残された強い強い想いは、しつこくその姿を留めようとゆらりゆらりと形を戻しては、やがて消えていった。
幻光虫が空に消え、アーロンは太刀を降ろして瞠目する。
過去の記憶の世界から目を覚ますように。
「…そして、何も変わらなかった」
「俺たちが変えてやる」
「どうやって! 作戦なんて何もねぇんだろ?」
少年の決意に満ちた言葉に反応するワッカは、半ば自棄になっているようにも見えた。
そしてここにも、ユウナレスカから知らされた初めての事実を迎え入れようとする者がいる。
仲間の中の誰かを、究極召喚を得る為に祈り子とする。
ルールーとワッカが名乗りを挙げた。
でも、それを決めてしまったら、それは結局ブラスカと同じなのだ。
私が否定の言葉を吐く前に、2人に反論するように少年が噛み付く。
私の言いたいことを代弁してくれる少年の顔は真剣で、必死だ。
シンを倒してスピラという世界に短く齎される平和の時間。
その一瞬の為だけに、召喚士は命を落とす業を使う。
これまで何百年も続けられてきた、命の無駄でしかない鼬ごっこ。
その死の螺旋は、召喚士が究極召喚を手に入れなければシンを倒せないという教えがあるせいだ。
そんなエボンの独りよがりの教えのせいで、エボンを教えを信じる多くの民は喜んで命を投げ出そうとする。
本当はそんなこと、許されていいはずがないのに…
シンは倒したい。倒す為には究極召喚を手に入れ、仲間の1人を祈り子にして、究極召喚を使った召喚士は命を落とす。
長い間ずっと何度も繰り返されてきたこと。
またそれと同じことを繰り返すわけにはいかない。
復活し続けるシンを本当の意味で倒す方法を考えなければならない。
「全部叶えば最高だけどよ…」
それはここにいる全員、果てはスピラの誰もが思っている本当の気持ち。
だが欲張れが結局全部失敗する。
そう諭すルールーの言葉は、エボンの教えの一つ。
自分に素直で正直に自分の考えを口に出せるテイーダの純粋な気持ちは、大人になりきれていないまだ幼い子供の我侭だ。
あの頃の私の我侭も、こんな風に私の中にまだ幼い純粋な気持ちが残っていたからだったのだろうか。
改めて当時の姿を自分自身で見ることになって、それに気付くなんて、私の中のこんな幼い純粋な気持ちはもうなくなってしまった。
10年前のアーロンが口にした言葉…
「…無限の、可能性?」
リュックが呟いたその言葉。そうだ、私も当時はその言葉にはっとした。
この世界で終わることなく、それこそ無限に連なる死の連鎖、それを可能性に置き換えることが出来たら、選択肢は無限に広がるはず。
「俺、行ってくる。ユウナレスカに話聞く。ちゃんと、本当のことを。…これは俺の物語なんだ。くだらない物語だったらここで終わらせる」
それまでずっと俯いたまま一言も口を開かなかったユウナがここで少年の言葉に返す。
「…ねえ、私にとっては、私の物語なんだよ。…振り回されてちゃ、ダメ。ゆらゆら揺れて流されちゃ、ダメ。どんな結末だってきっと後悔する。そんなの、…嫌だ。
私、…決める。自分で決める!」
「!」
私がリュックに放った言葉、『ユウナに決めてもらう』その時が、来た。
ユウナレスカの言葉を受けてから、ずっと考えていたのだろう。
ザナルカンドに行って手に入れるもの、そう漠然と思っていた究極召喚とは一体どんなものか、それはユウナが考えていた普通の、他の寺院で手に入れるような生易しいものではなかった。
ここまで苦楽を共にしてきた仲間を祈り子とし、自分が召喚して戦わせる。
この世で最も強くて、最も使いたくない召喚獣。
シンを倒すことは出来るが、共に命を失い、そして得られる平和はほんの僅かな間だけ。
少年が言ったようにユウナも、本当の真実を、本当にそれを使わなくてはならないのか、手に入れる意味はあるのか、聞かなくてはならない。
ユウナは一度後ろを振り返り、そこに居並ぶ仲間達の顔を見て、決心したように頷き、そして歩き出した。
ユウナレスカの待つ、扉の向こうへ。
→ 第8章
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『…しかし! 何か方法があるはずです!!』
『そうだよ、もう少し考えてからでもいいじゃないか。まだ間に合うよ!』
『でも、今は何もねぇんだろ……。 …決めた。祈り子には俺がなる』
『!!』
『ヤケになるな! 生きていれば…生きていれば無限の可能性があんたを待っているんだ!』
『ヤケじゃねぇ! 俺なりに考えたんだ! それによアーロン…。無限の可能性なんて信じる歳でもねぇんだ、俺は』
『ジェクトにはあるよ!無限の可能性。だから、そんなことそんな簡単に決めるなよ!』
『ジェクト……』
『ブラスカにゃ、まだ“シン”を倒すって大仕事が待ってる。…だから、2人で俺の分までブラスカを守れよ…。 んじゃ、行くか!』
『ブラスカ様! ジェクト!』
『まだなんかあんのかぁ!?』
『“シン”は何度でも蘇る!短いナギ節の後で、また復活してしまうんだ!この流れを変えないと2人とも無駄死にだぞ!』
『ブラスカ、それこそ他の召喚士たちと同じ想いじゃないか…』
『…だが、今度こそ復活しないかもしれない。 …賭けてみるさ。それにラフテル、約束、忘れてはいけないよ』
『ブラスカ、嫌だよそんな約束! ジェクト!』
『ま、アーロンの言うことももっともだ。 ……よし、俺が何とかしてやる』
『何か策があると言うのか!? ジェクト』
『無限の可能性にでも期待すっか! ワハハハハハハ!!』
ザナルカンドに帰ることをずっと願っていたジェクトの夢。
そこに残してきたまだ幼い息子の成長を、もう見守り続けることなんてできないと、それでもここで、己の生きる意味を持つために。
ジェクトは自ら祈り子になることを決意した。
あの時の記憶が、ユウナの父を思う気持ちが、現われてしまったんだろうか。
幻光虫が見せる、幻と呼ぶにはあまりにもはっきりと見えるその人物たちに、己のことだというのに不覚にも涙が零れる。
あの時から10年の歳月が過ぎてしまっているのに、そこにいるのはあの時のままのブラスカとジェクト。
10年の時間を過ごしてしまった、今の自分とアーロンだけが、若い姿のまるで他人のようにそこに存在することに違和感を覚える。
ユウナレスカに告げられた言葉に、初めてこの事実を知った私達はそれが、それだけがシンを撃ち滅ぼす手段なのだと、他の方法を考える時間も余裕も無くて、そんな方法があるのかすら考えが及ばなかった。
他の召喚士たちに、自分と同じ想いを味あわせる訳にはいかないと、ブラスカが言う。
もう、その言動そのものが先の他の召喚士たちと同じなんだってことに、気が付いていない。
そして2人は階段の先にある扉の向こうに姿を消した。
いつものように豪快に上げるジェクトの大きな笑い声が、いつまでもホールの中に響いていた。
力なく膝から床に落ちるアーロンの背中に、しがみついて泣いている自分の姿に嫌気が差す。
「……くっ ……やあっ!! はあっっ!!」
大きな掛け声と共に、その場に残されたアーロンと私の残留思念を、アーロンはその大きな太刀で斬り捨てるように何度も撃ち払った。
そこに残された強い強い想いは、しつこくその姿を留めようとゆらりゆらりと形を戻しては、やがて消えていった。
幻光虫が空に消え、アーロンは太刀を降ろして瞠目する。
過去の記憶の世界から目を覚ますように。
「…そして、何も変わらなかった」
「俺たちが変えてやる」
「どうやって! 作戦なんて何もねぇんだろ?」
少年の決意に満ちた言葉に反応するワッカは、半ば自棄になっているようにも見えた。
そしてここにも、ユウナレスカから知らされた初めての事実を迎え入れようとする者がいる。
仲間の中の誰かを、究極召喚を得る為に祈り子とする。
ルールーとワッカが名乗りを挙げた。
でも、それを決めてしまったら、それは結局ブラスカと同じなのだ。
私が否定の言葉を吐く前に、2人に反論するように少年が噛み付く。
私の言いたいことを代弁してくれる少年の顔は真剣で、必死だ。
シンを倒してスピラという世界に短く齎される平和の時間。
その一瞬の為だけに、召喚士は命を落とす業を使う。
これまで何百年も続けられてきた、命の無駄でしかない鼬ごっこ。
その死の螺旋は、召喚士が究極召喚を手に入れなければシンを倒せないという教えがあるせいだ。
そんなエボンの独りよがりの教えのせいで、エボンを教えを信じる多くの民は喜んで命を投げ出そうとする。
本当はそんなこと、許されていいはずがないのに…
シンは倒したい。倒す為には究極召喚を手に入れ、仲間の1人を祈り子にして、究極召喚を使った召喚士は命を落とす。
長い間ずっと何度も繰り返されてきたこと。
またそれと同じことを繰り返すわけにはいかない。
復活し続けるシンを本当の意味で倒す方法を考えなければならない。
「全部叶えば最高だけどよ…」
それはここにいる全員、果てはスピラの誰もが思っている本当の気持ち。
だが欲張れが結局全部失敗する。
そう諭すルールーの言葉は、エボンの教えの一つ。
自分に素直で正直に自分の考えを口に出せるテイーダの純粋な気持ちは、大人になりきれていないまだ幼い子供の我侭だ。
あの頃の私の我侭も、こんな風に私の中にまだ幼い純粋な気持ちが残っていたからだったのだろうか。
改めて当時の姿を自分自身で見ることになって、それに気付くなんて、私の中のこんな幼い純粋な気持ちはもうなくなってしまった。
10年前のアーロンが口にした言葉…
「…無限の、可能性?」
リュックが呟いたその言葉。そうだ、私も当時はその言葉にはっとした。
この世界で終わることなく、それこそ無限に連なる死の連鎖、それを可能性に置き換えることが出来たら、選択肢は無限に広がるはず。
「俺、行ってくる。ユウナレスカに話聞く。ちゃんと、本当のことを。…これは俺の物語なんだ。くだらない物語だったらここで終わらせる」
それまでずっと俯いたまま一言も口を開かなかったユウナがここで少年の言葉に返す。
「…ねえ、私にとっては、私の物語なんだよ。…振り回されてちゃ、ダメ。ゆらゆら揺れて流されちゃ、ダメ。どんな結末だってきっと後悔する。そんなの、…嫌だ。
私、…決める。自分で決める!」
「!」
私がリュックに放った言葉、『ユウナに決めてもらう』その時が、来た。
ユウナレスカの言葉を受けてから、ずっと考えていたのだろう。
ザナルカンドに行って手に入れるもの、そう漠然と思っていた究極召喚とは一体どんなものか、それはユウナが考えていた普通の、他の寺院で手に入れるような生易しいものではなかった。
ここまで苦楽を共にしてきた仲間を祈り子とし、自分が召喚して戦わせる。
この世で最も強くて、最も使いたくない召喚獣。
シンを倒すことは出来るが、共に命を失い、そして得られる平和はほんの僅かな間だけ。
少年が言ったようにユウナも、本当の真実を、本当にそれを使わなくてはならないのか、手に入れる意味はあるのか、聞かなくてはならない。
ユウナは一度後ろを振り返り、そこに居並ぶ仲間達の顔を見て、決心したように頷き、そして歩き出した。
ユウナレスカの待つ、扉の向こうへ。
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