第7章【ガガゼト山~ザナルカンド】
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目に見えて残るもの
=68=
「顔を……そなたが歩いてきた道を見せなさい」
長い道のりの先にあった巨大な建造物。
ここが旅の本当の最終点。
旅の果てに召喚士はここで究極召喚を手に入れる。
「ユウナレスカ様も、そなたを歓迎するであろう。ガード衆ともども、ユウナレスカ様の御許に向かうが良い」
「……はい」
ユウナは、迷うことなく中へ足を踏み入れた。
少年はまたキョロキョロと視線を彷徨わせて落ち着かない様子だ。
「…ここ、知ってる、とか?」
何気ない冗談のつもりの問い掛けだった。
「…スタジアム…だ。なんで…」
驚いた。まさか本当に彼の記憶の中に残る建物まであるなんて…。
本当に、少年の生きたザナルカンドとこの遺跡のザナルカンドが繋がっている。
あまり気にしたことはなかった。
この建物はスピラに数ある寺院とはまるで違っていたし、第一護聖像が一つもない。
入口付近にある巨大な像は、作った奴には申し訳ないがとても大召喚士には見えない。
ここは、寺院では、ない、のか…。
中にある試練や昇降装置などの仕掛けはこの遺跡に比べれば新しい。
他の寺院のように、後から寺院の者達が付けたものなのだろう。
当時も全くそんなことまで頭が回らなかった。
この巨大な建物、当時のスタジアム、この入口に立つ1人の老人が、訪れた召喚士の力を計る者なのだ。
彼はそうして召喚士を見て、そしてユウナレスカの存在を召喚士とガードに教える。ただそれだけの存在。
この異界の匂いを嗅ぐまでもない。
実体を留めておくほどの力ももはや薄れ、ゆらゆらと空気に映った映像のように向こう側が透けてすら見えるこの老人もまた、死者なのだ。
広いホールを抜けると渡り廊下に出る。
かつては広い場所だったのだろう。落ちた天井の梁を渡って進んでいかなくてはならない。
どこもかしこも崩れて原型をとどめているところはほとんど見当たらない。
少年には、かつてのここの姿が浮かんでいるのだろう。
元の姿を知らない自分には、そちらの姿を記憶の中に残せている少年を羨ましく思う。
どれほど大きくてどれほど美しい建物だっただろう…
その先の渡り廊下に出ると、ルカのスタジアムと似たような造りになっている為、ここがスタジアムだと言われればそうかもしれないと思う。
ボロボロに壊れたり腐敗してもうその意味を成さない扉の奥にあるたくさんの小さな小部屋は、選手たちの控え室か。
すっかり剥がれてしまった壁に掛けられていたであろう、絵画や賞状を収めた額縁の成れの果て、元は立派なショーケースだったのか
今はその骨組みだけが残された棚のようなもの。トロフィーやカップといった、健闘を称える物があったのだろう。
崩れた天井や壁が瓦礫となって足場に転がり、今は当時の姿など想像することさえ難しい。
階段を登り、また廊下を進む。
『なんだあ、こりゃあ!? こんなんなっちまってよー。見る影もねぇな~』
そう言えば、ジェクトがそんなことを言ってたな、なんてふいに思い出してしまった。
少年が知っているのならば、当然ジェクトも知っていたはず。
彼が何と言っていたかなんてほとんど覚えていない。
もう、それどころではなかったから。
私が思い出したことで幻光虫が反応したのだろうか?
当時の人間がここに2人も来たから…?
とつぜん、進むべき先の扉の前にまた幻影が姿を表した。
『もしかしてこの先、試練か?』
『たぶんな』
『かったりぃなあ。ここまで来てまたかよ~…』
「親父…!」
「父さん!」
少年とユウナが同時に互いの父を呼ぶ。
何も言わないアーロンと、2人を見守る私。
ジェクトはいつでも何に対してもおおらかで前向きで豪快だ。
もう後10年早く出会えていたらいい話し相手になれたかもしれない。
ジェクトの明るさにみんなが助けられた。
あの時のあの笑顔がここにある。
もうすっかり覚悟を決めてその気でいるブラスカに、私もアーロンもかける言葉が見つけられないのだ。
やがてその幻も幻光虫となって消え、私達は試練の間へと続く扉を開いた。
試練を越えるのはユウナの役目、だがもちろん召喚士のサポートもガードの大事な務め。
私はアーロンと共にユウナ達の動向を見守り、必要があればその都度助言だけをする。
そうしている内にユウナは見事試練を越え、階下へ降りる昇降装置が起動した。
「着いたぞ、ユウナ」
昇降装置の隙間から下を覗いていたユウナはその言葉に顔を上げた。
「この下が祈り子の間だよ」
「行け」
「…はい」
決意に固められた強い眼差しと共に、ユウナはきっぱりと返事を返した。
迷うことなく昇降装置に足を乗せたユウナの姿勢はまっすぐで何の不安も感じさせない。
見送る私とアーロンの後ろで小さく落胆の声を漏らすのはリュックだろうか。
私とアーロンがガードとして召喚士を導くのはここまで。
ここから先はユウナ自身が決めなくてはならない。
互いに会話を交わす間もなくすぐに昇降装置が戻ってきた。
そこにユウナを乗せて…。
「どうし…「アーロンさん!みんな!」」
『ああん!?召喚獣がねぇだ~!?』
ふいにジェクトの幻影が姿を表す。
「すぐに来て!」
切羽詰まった様子のユウナの言葉に、仲間達は慌てて昇降装置に足を乗せた。
私はアーロンの顔色を伺う。
私の視線に気付いたようで、こちらに目を向けて小さく頷いた。
ユウナも、知ってしまった…。
狭い小部屋の床に無造作に安置された古い祈り子の像。
青白いスフィアの殻に守られてるとはいえ、その殻は部屋の崩れた瓦礫が落ちたのか割れてしまっている。
中の祈り子は、石になっていた。
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「顔を……そなたが歩いてきた道を見せなさい」
長い道のりの先にあった巨大な建造物。
ここが旅の本当の最終点。
旅の果てに召喚士はここで究極召喚を手に入れる。
「ユウナレスカ様も、そなたを歓迎するであろう。ガード衆ともども、ユウナレスカ様の御許に向かうが良い」
「……はい」
ユウナは、迷うことなく中へ足を踏み入れた。
少年はまたキョロキョロと視線を彷徨わせて落ち着かない様子だ。
「…ここ、知ってる、とか?」
何気ない冗談のつもりの問い掛けだった。
「…スタジアム…だ。なんで…」
驚いた。まさか本当に彼の記憶の中に残る建物まであるなんて…。
本当に、少年の生きたザナルカンドとこの遺跡のザナルカンドが繋がっている。
あまり気にしたことはなかった。
この建物はスピラに数ある寺院とはまるで違っていたし、第一護聖像が一つもない。
入口付近にある巨大な像は、作った奴には申し訳ないがとても大召喚士には見えない。
ここは、寺院では、ない、のか…。
中にある試練や昇降装置などの仕掛けはこの遺跡に比べれば新しい。
他の寺院のように、後から寺院の者達が付けたものなのだろう。
当時も全くそんなことまで頭が回らなかった。
この巨大な建物、当時のスタジアム、この入口に立つ1人の老人が、訪れた召喚士の力を計る者なのだ。
彼はそうして召喚士を見て、そしてユウナレスカの存在を召喚士とガードに教える。ただそれだけの存在。
この異界の匂いを嗅ぐまでもない。
実体を留めておくほどの力ももはや薄れ、ゆらゆらと空気に映った映像のように向こう側が透けてすら見えるこの老人もまた、死者なのだ。
広いホールを抜けると渡り廊下に出る。
かつては広い場所だったのだろう。落ちた天井の梁を渡って進んでいかなくてはならない。
どこもかしこも崩れて原型をとどめているところはほとんど見当たらない。
少年には、かつてのここの姿が浮かんでいるのだろう。
元の姿を知らない自分には、そちらの姿を記憶の中に残せている少年を羨ましく思う。
どれほど大きくてどれほど美しい建物だっただろう…
その先の渡り廊下に出ると、ルカのスタジアムと似たような造りになっている為、ここがスタジアムだと言われればそうかもしれないと思う。
ボロボロに壊れたり腐敗してもうその意味を成さない扉の奥にあるたくさんの小さな小部屋は、選手たちの控え室か。
すっかり剥がれてしまった壁に掛けられていたであろう、絵画や賞状を収めた額縁の成れの果て、元は立派なショーケースだったのか
今はその骨組みだけが残された棚のようなもの。トロフィーやカップといった、健闘を称える物があったのだろう。
崩れた天井や壁が瓦礫となって足場に転がり、今は当時の姿など想像することさえ難しい。
階段を登り、また廊下を進む。
『なんだあ、こりゃあ!? こんなんなっちまってよー。見る影もねぇな~』
そう言えば、ジェクトがそんなことを言ってたな、なんてふいに思い出してしまった。
少年が知っているのならば、当然ジェクトも知っていたはず。
彼が何と言っていたかなんてほとんど覚えていない。
もう、それどころではなかったから。
私が思い出したことで幻光虫が反応したのだろうか?
当時の人間がここに2人も来たから…?
とつぜん、進むべき先の扉の前にまた幻影が姿を表した。
『もしかしてこの先、試練か?』
『たぶんな』
『かったりぃなあ。ここまで来てまたかよ~…』
「親父…!」
「父さん!」
少年とユウナが同時に互いの父を呼ぶ。
何も言わないアーロンと、2人を見守る私。
ジェクトはいつでも何に対してもおおらかで前向きで豪快だ。
もう後10年早く出会えていたらいい話し相手になれたかもしれない。
ジェクトの明るさにみんなが助けられた。
あの時のあの笑顔がここにある。
もうすっかり覚悟を決めてその気でいるブラスカに、私もアーロンもかける言葉が見つけられないのだ。
やがてその幻も幻光虫となって消え、私達は試練の間へと続く扉を開いた。
試練を越えるのはユウナの役目、だがもちろん召喚士のサポートもガードの大事な務め。
私はアーロンと共にユウナ達の動向を見守り、必要があればその都度助言だけをする。
そうしている内にユウナは見事試練を越え、階下へ降りる昇降装置が起動した。
「着いたぞ、ユウナ」
昇降装置の隙間から下を覗いていたユウナはその言葉に顔を上げた。
「この下が祈り子の間だよ」
「行け」
「…はい」
決意に固められた強い眼差しと共に、ユウナはきっぱりと返事を返した。
迷うことなく昇降装置に足を乗せたユウナの姿勢はまっすぐで何の不安も感じさせない。
見送る私とアーロンの後ろで小さく落胆の声を漏らすのはリュックだろうか。
私とアーロンがガードとして召喚士を導くのはここまで。
ここから先はユウナ自身が決めなくてはならない。
互いに会話を交わす間もなくすぐに昇降装置が戻ってきた。
そこにユウナを乗せて…。
「どうし…「アーロンさん!みんな!」」
『ああん!?召喚獣がねぇだ~!?』
ふいにジェクトの幻影が姿を表す。
「すぐに来て!」
切羽詰まった様子のユウナの言葉に、仲間達は慌てて昇降装置に足を乗せた。
私はアーロンの顔色を伺う。
私の視線に気付いたようで、こちらに目を向けて小さく頷いた。
ユウナも、知ってしまった…。
狭い小部屋の床に無造作に安置された古い祈り子の像。
青白いスフィアの殻に守られてるとはいえ、その殻は部屋の崩れた瓦礫が落ちたのか割れてしまっている。
中の祈り子は、石になっていた。
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