第7章【ガガゼト山~ザナルカンド】
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思い出に負けたくない
=67=
『おら、い~つまでそうしてるつもりなんだ、ラフテルよ~!』
「!?」
『ラフテル、これじゃあ進めないよ、手を離してくれるかい?』
『しゃんっとしろ、も少しで着くんだろ、…ほら立った立った!』
『もう疲れたんだ。歩けない!』
『…ブラスカ様、…ジェクト』
その場にペタリと腰を落とした私の目の前に現われたのは、かつての自分たちの姿。
今はもう会うこともできない、かつての大切な仲間。
「あ……!」
ここまで来て、私はどうしたらいいか分からなくて、幼い子供のように我侭を言ってはブラスカを困らせ、ジェクトに呆れられた。
さんざん自分も覚悟を決めたはずなのに、やっぱり先に進むのが怖くて、悲しくて、辛かった。
太陽のように笑ういつのもジェクトがそこにいた。
私をバカにしたようにからかっては、気持ちいいくらいの笑い声を上げてた。
逞しいその背中に、見たことも無い自分の父親像を重ねていた。
『ラフテル』
『…何?』
『君は言ってくれたじゃないか、この先どんな試練があっても、困難や悲しみにぶつかっても、共に最後まで旅を続けてくれると…。
私たちをバカにして見下した僧官たちを見返してやるんだ、と』
『……もう、忘れた』
『一つ、お願いを聞いてくれないか』
『……やだ。ブラスカの約束やお願いはたくさんありすぎて覚えられないし、やり通す自信もない』
『簡単なお願いだ。 …私が“シン”を倒したら、ベベルに戻って皆に本当のことを話して欲しい』
『!?』
『マイカ総老師を始め、老師のみんな、高官達や僧官、僧兵のみんな、それだけじゃない、ベベルに住む者、スピラに生きる者、みんなに』
『…どうして?』
『私に覚悟と引き換えの権利があるなら…、それは皆に真実を知ってもらいたい、そういうことにしておこうか。お願いだ、ラフテル…』
『……わかった』
『だから、最後まで、一緒に来て見守って欲しい』
ブラスカの服の裾を握りめたまま、今のように地面に腰を落として話を聞いている私の姿は、そこで幻となって空気に溶けていった。
幾匹かの幻光虫がフワリと光を放って飛び去っていく。
10年前、ブラスカの物語が終わりを迎えた瞬間、私はその約束を果たす為に、ベベルへ戻った。
そして、エボンの本質を知った。
私が見知った真実なんて、エボンは最初からわかってた。わかってて、シンという災厄に向かわせるための犠牲を贄として捧げているだけ。
そんな腐ったエボンの教えなんて、こちらから願い下げだ。
でも、ブラスカが望んだ権利は果たさなくてはならないと感じていた。
だから、スピラ中を駆け回り、そしてたくさんの町や村で、多くのスピラの民に話を聞かせた。
「…ブラスカ、私、ブラスカのお願い、ちゃんと果たせたかな……」
空に上っていく幻光虫をじっと見送り、空に向かって呟いた。
届くわけないとわかっていても声に出さずにはいられなかった。
視線を自分の掌に戻す。
石や欠片の上にわざと擦りつけたそこは傷付き、血が流れている。
己の思考を現実に戻す、真っ赤な血が。
痛みも流れる血も、まだ私が生きている証。
ブラスカとの約束の一つ、ユウナを見守ること。そのユウナはもう、ここにいる。
ブラスカや他の召喚士達と同じ様にここで究極召喚を得ようとしている。
究極召喚を手に入れたらユウナは……
そんなことは絶対にさせない。
そして、ジェクトとの約束である少年の存在。
彼をジェクトの元へ連れて行くまでは、私はまだ、壊れる訳には行かない。
血の滲んだ掌を力一杯握り締める。
微かな痛みが意識を正常に働かせる。
この夥しい幻光虫の中で、異界の匂いに当てられすぎただけだ。
頭の中に広がった靄を振り払うように首を振って、立ち上がる。
こんなところで、ここまで来てまだ迷っている私を奮い立たせる為だったのか、バカにする為だったのか、幻光虫が見せた幻は奇しくも当時の私と今の私の心情を読み取っていたかのようだ。
ずっと、感じていたいと願ったブラスカの魂は、こんな他にもたくさんの魂が密集しているところでしか現われてはくれなかった。
他のたくさんの幻光虫が放つ異界の強い匂いで、結局目の前に幻影となって現われるまで気が付かなかったなんて…
何の為にこの能力を手に入れたのか、全く意味のないことをして、私は無駄に命を削ってしまったのだろうか。
だがそんなことを言ったら、ジスカルの立場は一体どうなる?
互いにメリットを汲み取って互いの能力を手にしたのだろう。
これ以上はジスカルを蔑むことに繋がってしまう。
いつまでもこうしている訳にも行かない。
早くみんなのところに追いつかなければ…。
立ち上がって足の埃を払う。
埃と一緒に他の余計な考えや気持ちも払ってしまえたらいいのに、そう思うと、少しだけ顔が綻ぶ。
「な~に笑ってるっスか!」
かけられた声にはっとして前方に目を向ける。
少々呆れたような顔をした少年がそこにいた。
「いつの間にかいなくなってたから、みんな心配してるっスよ。」
「迎えに来てくれたのか、ごめん、ちょっと躓いて転んだ」
そう言って血の付いたままの掌を見せる。
「うわっ!凄い血が出てるっスよ!早くユウナに…!」
「大丈夫、これくらいなら自分で治せる。それより、早くみんなのところに戻ろう。もたもたしてたらサングラスの大魔神が降臨しそうだ」
「アハハハハ!確かに!」
ジェクトの幻影を見ても懐かしいとあまり感じなかったのは、少年の存在があるから、なのだろうか?
いやでも親子だと感じてしまう、ジェクトの息子。
私は、私とアーロンは、キミを、ジェクトの元へ連れて行く。
その時、どうするのかは、それを決めるのもキミの物語の1ページ。
→
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『おら、い~つまでそうしてるつもりなんだ、ラフテルよ~!』
「!?」
『ラフテル、これじゃあ進めないよ、手を離してくれるかい?』
『しゃんっとしろ、も少しで着くんだろ、…ほら立った立った!』
『もう疲れたんだ。歩けない!』
『…ブラスカ様、…ジェクト』
その場にペタリと腰を落とした私の目の前に現われたのは、かつての自分たちの姿。
今はもう会うこともできない、かつての大切な仲間。
「あ……!」
ここまで来て、私はどうしたらいいか分からなくて、幼い子供のように我侭を言ってはブラスカを困らせ、ジェクトに呆れられた。
さんざん自分も覚悟を決めたはずなのに、やっぱり先に進むのが怖くて、悲しくて、辛かった。
太陽のように笑ういつのもジェクトがそこにいた。
私をバカにしたようにからかっては、気持ちいいくらいの笑い声を上げてた。
逞しいその背中に、見たことも無い自分の父親像を重ねていた。
『ラフテル』
『…何?』
『君は言ってくれたじゃないか、この先どんな試練があっても、困難や悲しみにぶつかっても、共に最後まで旅を続けてくれると…。
私たちをバカにして見下した僧官たちを見返してやるんだ、と』
『……もう、忘れた』
『一つ、お願いを聞いてくれないか』
『……やだ。ブラスカの約束やお願いはたくさんありすぎて覚えられないし、やり通す自信もない』
『簡単なお願いだ。 …私が“シン”を倒したら、ベベルに戻って皆に本当のことを話して欲しい』
『!?』
『マイカ総老師を始め、老師のみんな、高官達や僧官、僧兵のみんな、それだけじゃない、ベベルに住む者、スピラに生きる者、みんなに』
『…どうして?』
『私に覚悟と引き換えの権利があるなら…、それは皆に真実を知ってもらいたい、そういうことにしておこうか。お願いだ、ラフテル…』
『……わかった』
『だから、最後まで、一緒に来て見守って欲しい』
ブラスカの服の裾を握りめたまま、今のように地面に腰を落として話を聞いている私の姿は、そこで幻となって空気に溶けていった。
幾匹かの幻光虫がフワリと光を放って飛び去っていく。
10年前、ブラスカの物語が終わりを迎えた瞬間、私はその約束を果たす為に、ベベルへ戻った。
そして、エボンの本質を知った。
私が見知った真実なんて、エボンは最初からわかってた。わかってて、シンという災厄に向かわせるための犠牲を贄として捧げているだけ。
そんな腐ったエボンの教えなんて、こちらから願い下げだ。
でも、ブラスカが望んだ権利は果たさなくてはならないと感じていた。
だから、スピラ中を駆け回り、そしてたくさんの町や村で、多くのスピラの民に話を聞かせた。
「…ブラスカ、私、ブラスカのお願い、ちゃんと果たせたかな……」
空に上っていく幻光虫をじっと見送り、空に向かって呟いた。
届くわけないとわかっていても声に出さずにはいられなかった。
視線を自分の掌に戻す。
石や欠片の上にわざと擦りつけたそこは傷付き、血が流れている。
己の思考を現実に戻す、真っ赤な血が。
痛みも流れる血も、まだ私が生きている証。
ブラスカとの約束の一つ、ユウナを見守ること。そのユウナはもう、ここにいる。
ブラスカや他の召喚士達と同じ様にここで究極召喚を得ようとしている。
究極召喚を手に入れたらユウナは……
そんなことは絶対にさせない。
そして、ジェクトとの約束である少年の存在。
彼をジェクトの元へ連れて行くまでは、私はまだ、壊れる訳には行かない。
血の滲んだ掌を力一杯握り締める。
微かな痛みが意識を正常に働かせる。
この夥しい幻光虫の中で、異界の匂いに当てられすぎただけだ。
頭の中に広がった靄を振り払うように首を振って、立ち上がる。
こんなところで、ここまで来てまだ迷っている私を奮い立たせる為だったのか、バカにする為だったのか、幻光虫が見せた幻は奇しくも当時の私と今の私の心情を読み取っていたかのようだ。
ずっと、感じていたいと願ったブラスカの魂は、こんな他にもたくさんの魂が密集しているところでしか現われてはくれなかった。
他のたくさんの幻光虫が放つ異界の強い匂いで、結局目の前に幻影となって現われるまで気が付かなかったなんて…
何の為にこの能力を手に入れたのか、全く意味のないことをして、私は無駄に命を削ってしまったのだろうか。
だがそんなことを言ったら、ジスカルの立場は一体どうなる?
互いにメリットを汲み取って互いの能力を手にしたのだろう。
これ以上はジスカルを蔑むことに繋がってしまう。
いつまでもこうしている訳にも行かない。
早くみんなのところに追いつかなければ…。
立ち上がって足の埃を払う。
埃と一緒に他の余計な考えや気持ちも払ってしまえたらいいのに、そう思うと、少しだけ顔が綻ぶ。
「な~に笑ってるっスか!」
かけられた声にはっとして前方に目を向ける。
少々呆れたような顔をした少年がそこにいた。
「いつの間にかいなくなってたから、みんな心配してるっスよ。」
「迎えに来てくれたのか、ごめん、ちょっと躓いて転んだ」
そう言って血の付いたままの掌を見せる。
「うわっ!凄い血が出てるっスよ!早くユウナに…!」
「大丈夫、これくらいなら自分で治せる。それより、早くみんなのところに戻ろう。もたもたしてたらサングラスの大魔神が降臨しそうだ」
「アハハハハ!確かに!」
ジェクトの幻影を見ても懐かしいとあまり感じなかったのは、少年の存在があるから、なのだろうか?
いやでも親子だと感じてしまう、ジェクトの息子。
私は、私とアーロンは、キミを、ジェクトの元へ連れて行く。
その時、どうするのかは、それを決めるのもキミの物語の1ページ。
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