第7章【ガガゼト山~ザナルカンド】
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ここは始まりの場所
=65=
そこに広がる広大な都市の遺跡。
太古の昔に繁栄を極めた、機械仕掛けの眠らない街、ザナルカンド。
今はその巨大な建造物が当時の栄華の残像を残すのみ。
山の頂から、遥か遠くまで続く巨大な過去の大都市はどこまでも広がって見える。
優しい夕日を浴びて赤く染まる古の都市は、幻想的な光景を見るもの全てに感動を与える。
初めてこの景色を目にすれば、この圧倒的な大きさに息を飲む。
だがこれはもう、町でも都市でもない、ただの遺跡でしかない。
そこに住む生者はおらず、かつてここで生きていた者や、生者を恨む死者の魂だけが1000年もの長い時間が過ぎた今もそこに漂っている。
多くの召喚士がここを目指し、辿り着き、ある者は究極召喚を手に入れ、ある者は命を落とす。
ここが遺跡であるということは誰もが知っていることであり、事実である。
だが、ここを訪れた召喚士の運命を、真実を知るものは少ない。
希望と覚悟を胸にガガゼトの山頂から見下ろすザナルカンドの景色を目にするのか、そのための犠牲を考えながら恨めしく眺めるのか。
とうとうここまで辿り着いたと、満ちた心を持つのか、それともとうとうここまで来てしまったと、落胆してしまうのか。
どんな心情を持っていたとしても、その先に目指すものは皆、1つ。
召喚士達は命を捨てることを知りながらここへ来る。
命を失う技を得る為に旅をする召喚士の命をガードは命を懸けて護る。
これほどバカなことはない。
愚かしいことはない。
獣も鳥も近付かず、一切の植物も生えない不毛の地。
1000年の長き悠久の時間を、その姿を変えることなくそこにあり続ける巨大な都市の遺跡。
ガガゼトの高い山と冷たい空気に守られた聖なる土地。
全てがここから始まり、ここで全てが終わる。
10年前のあの時とは、違う視点からこの景色を見つめることが出来ている自分がいる。
10年前のあの時と同じ様にはさせない、絶対に。
ユウナは、あの時のブラスカと同じ気持ち、なんだろうか?
ザナルカンドから来たと言っていたジェクトと少年。
この遺跡の町が繁栄を極めていた1000年前の世界で、彼らは本当に生きていたのかと疑問に思う。
生まれた時から遺跡だと聞かされ、この目で見てきたこの街の、光に溢れた世界なんて、知らない。
シーモアの屋敷で見せられたあの光に溢れる大きな街。きっとあんな感じだったんだろうなんて、漠然としか想像できない。
少年はこの景色を見て、何を思ったんだろうか?
「みんな、ホントにいいの!?…あそこに着いたらユウナは…」
リュックの素直さが眩しかった。純粋で、心からユウナを大切に思っている。
誰もリュックを咎めたりしない。そんなこと、できない。
みんなが同じ気持ちだから。
ユウナが、リュックを抱き締める。
その気持ちに答える様に、感謝と別れ、どちらの意味にも取れる言葉を紡ぐ。
嫌だと駄々を捏ねる子供のように、リュックは涙を流してユウナの言葉に反発するが、ユウナは優しくそれを諭す。
10年前の自分を見ているようで、それ以上に素直に気持ちを言葉に出来るリュックが羨ましくて、目が離せなかった。
私と同じ様に、皆もじっとリュックを見つめる中、アーロンだけが背を向けてザナルカンドの遺跡を見つめている。
アーロンの右腕に、しがみ付きたくなった。
リュックの気持ちが溢れて、私の中にまで入り込んでくるようで、何かに縋りたかった。
思わずぎゅっと赤い服を握り締めてしまう。
「…どうせなら、こっちにしろ」
動かされて離してしまった手が宙を切る。
肩に回された腕に押されるように、手は別の赤を握る。
「…どうした?」
「…私も、あれくらい素直になれてたら、と…」
「……そうか」
アーロンの胸に頭を預けたまま、沈んでいく紅い夕日を見つめた。
リュックがどんなに泣いて縋ってもユウナの決意は変わらない。
それが覚悟であり、誇りだから。
「キマリ、行こう」
ユウナの言葉で一行は再び歩き始める。
ザナルカンドの遺跡に入るために、今度は山を下るのだ。
赤茶けた大地はその長い年月の重さをずっと支えてきた雄大なる土の証。
多くの召喚士とガード達の歩いた足跡を残し、その想いを留める。
山から続く坂をゆっくりと下っていくに連れ、遠くに見えていた古い建物は、その距離が近くなったことで次第に本当の大きさが分かってくる。
少年が生きていた街が、ここそのものだったとしたら、何か面影が残っていたりするんだろうか?
古い古い歴史ある街の遺跡は本当に静かで、ここに凶暴な魔物が潜んでいることなど信じられない。
少年は辺りをきょろきょろと眺めている。
ここは間違いなくザナルカンドだ。
しかし、私たちが知るスピラのザナルカンドと、少年が生きたそれは違うもの、なのだろうか。
それを少年自身も確かめようとしているのではないだろうか。
夕日は間もなく遺跡が立ち並ぶ地平線に吸い込まれようとしていた。
かつては、何かの記念碑のようなものだったのだろうか、装飾のすっかり剥がれたその造形物の立つ一角で、ふと足を止めた。
前を歩くアーロンが立ち止まったから。
「少し、休むか」
誰も、何も言わない。
小さな焚き火を囲んで円陣を作って座り込む。
ユウナの顔には、笑顔はない。
じっと俯いたまま、時が過ぎるのを待っている。
静かな時間が流れ、夕日はもうその姿を半分ほどにしてしまっている。
ふいに少年が立ち上がった。
仲間達はそれでも何も言わない。
リュックもチラリと視線を向けただけで、再び小さな炎を見つめている。
少年はゆっくりとユウナへと近付き、ユウナの肩にそっと手を当てる。
ユウナも別にそれを気にするわけでもなく、顔を少しだけ傾けて瞑目する。
少年は仲間達の輪から外れ、1人後方の造形物のある高台に上る。
ゆっくりと、1歩1歩踏みしめるように。
ここからでは、少年の背中しか見えないから、今彼がどんな顔で夕日を眺めているのかなんて、わからない。
少年の声が、静かに聞こえてくる。
「最後かもしれないだろ。 だから、全部話しておきたいんだ……」
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そこに広がる広大な都市の遺跡。
太古の昔に繁栄を極めた、機械仕掛けの眠らない街、ザナルカンド。
今はその巨大な建造物が当時の栄華の残像を残すのみ。
山の頂から、遥か遠くまで続く巨大な過去の大都市はどこまでも広がって見える。
優しい夕日を浴びて赤く染まる古の都市は、幻想的な光景を見るもの全てに感動を与える。
初めてこの景色を目にすれば、この圧倒的な大きさに息を飲む。
だがこれはもう、町でも都市でもない、ただの遺跡でしかない。
そこに住む生者はおらず、かつてここで生きていた者や、生者を恨む死者の魂だけが1000年もの長い時間が過ぎた今もそこに漂っている。
多くの召喚士がここを目指し、辿り着き、ある者は究極召喚を手に入れ、ある者は命を落とす。
ここが遺跡であるということは誰もが知っていることであり、事実である。
だが、ここを訪れた召喚士の運命を、真実を知るものは少ない。
希望と覚悟を胸にガガゼトの山頂から見下ろすザナルカンドの景色を目にするのか、そのための犠牲を考えながら恨めしく眺めるのか。
とうとうここまで辿り着いたと、満ちた心を持つのか、それともとうとうここまで来てしまったと、落胆してしまうのか。
どんな心情を持っていたとしても、その先に目指すものは皆、1つ。
召喚士達は命を捨てることを知りながらここへ来る。
命を失う技を得る為に旅をする召喚士の命をガードは命を懸けて護る。
これほどバカなことはない。
愚かしいことはない。
獣も鳥も近付かず、一切の植物も生えない不毛の地。
1000年の長き悠久の時間を、その姿を変えることなくそこにあり続ける巨大な都市の遺跡。
ガガゼトの高い山と冷たい空気に守られた聖なる土地。
全てがここから始まり、ここで全てが終わる。
10年前のあの時とは、違う視点からこの景色を見つめることが出来ている自分がいる。
10年前のあの時と同じ様にはさせない、絶対に。
ユウナは、あの時のブラスカと同じ気持ち、なんだろうか?
ザナルカンドから来たと言っていたジェクトと少年。
この遺跡の町が繁栄を極めていた1000年前の世界で、彼らは本当に生きていたのかと疑問に思う。
生まれた時から遺跡だと聞かされ、この目で見てきたこの街の、光に溢れた世界なんて、知らない。
シーモアの屋敷で見せられたあの光に溢れる大きな街。きっとあんな感じだったんだろうなんて、漠然としか想像できない。
少年はこの景色を見て、何を思ったんだろうか?
「みんな、ホントにいいの!?…あそこに着いたらユウナは…」
リュックの素直さが眩しかった。純粋で、心からユウナを大切に思っている。
誰もリュックを咎めたりしない。そんなこと、できない。
みんなが同じ気持ちだから。
ユウナが、リュックを抱き締める。
その気持ちに答える様に、感謝と別れ、どちらの意味にも取れる言葉を紡ぐ。
嫌だと駄々を捏ねる子供のように、リュックは涙を流してユウナの言葉に反発するが、ユウナは優しくそれを諭す。
10年前の自分を見ているようで、それ以上に素直に気持ちを言葉に出来るリュックが羨ましくて、目が離せなかった。
私と同じ様に、皆もじっとリュックを見つめる中、アーロンだけが背を向けてザナルカンドの遺跡を見つめている。
アーロンの右腕に、しがみ付きたくなった。
リュックの気持ちが溢れて、私の中にまで入り込んでくるようで、何かに縋りたかった。
思わずぎゅっと赤い服を握り締めてしまう。
「…どうせなら、こっちにしろ」
動かされて離してしまった手が宙を切る。
肩に回された腕に押されるように、手は別の赤を握る。
「…どうした?」
「…私も、あれくらい素直になれてたら、と…」
「……そうか」
アーロンの胸に頭を預けたまま、沈んでいく紅い夕日を見つめた。
リュックがどんなに泣いて縋ってもユウナの決意は変わらない。
それが覚悟であり、誇りだから。
「キマリ、行こう」
ユウナの言葉で一行は再び歩き始める。
ザナルカンドの遺跡に入るために、今度は山を下るのだ。
赤茶けた大地はその長い年月の重さをずっと支えてきた雄大なる土の証。
多くの召喚士とガード達の歩いた足跡を残し、その想いを留める。
山から続く坂をゆっくりと下っていくに連れ、遠くに見えていた古い建物は、その距離が近くなったことで次第に本当の大きさが分かってくる。
少年が生きていた街が、ここそのものだったとしたら、何か面影が残っていたりするんだろうか?
古い古い歴史ある街の遺跡は本当に静かで、ここに凶暴な魔物が潜んでいることなど信じられない。
少年は辺りをきょろきょろと眺めている。
ここは間違いなくザナルカンドだ。
しかし、私たちが知るスピラのザナルカンドと、少年が生きたそれは違うもの、なのだろうか。
それを少年自身も確かめようとしているのではないだろうか。
夕日は間もなく遺跡が立ち並ぶ地平線に吸い込まれようとしていた。
かつては、何かの記念碑のようなものだったのだろうか、装飾のすっかり剥がれたその造形物の立つ一角で、ふと足を止めた。
前を歩くアーロンが立ち止まったから。
「少し、休むか」
誰も、何も言わない。
小さな焚き火を囲んで円陣を作って座り込む。
ユウナの顔には、笑顔はない。
じっと俯いたまま、時が過ぎるのを待っている。
静かな時間が流れ、夕日はもうその姿を半分ほどにしてしまっている。
ふいに少年が立ち上がった。
仲間達はそれでも何も言わない。
リュックもチラリと視線を向けただけで、再び小さな炎を見つめている。
少年はゆっくりとユウナへと近付き、ユウナの肩にそっと手を当てる。
ユウナも別にそれを気にするわけでもなく、顔を少しだけ傾けて瞑目する。
少年は仲間達の輪から外れ、1人後方の造形物のある高台に上る。
ゆっくりと、1歩1歩踏みしめるように。
ここからでは、少年の背中しか見えないから、今彼がどんな顔で夕日を眺めているのかなんて、わからない。
少年の声が、静かに聞こえてくる。
「最後かもしれないだろ。 だから、全部話しておきたいんだ……」
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