第7章【ガガゼト山~ザナルカンド】
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護るもの
=63=
「すでに命は無く、ただ魂だけが幻光虫の力を借りてその姿を保っているだけの存在」
アーロンの顔を見つめながら言葉を紡ぐ。
目の前にいるこの人間も、それと同じなのだと自分自身に言い聞かせるように。
「マイカやシーモアと同じだ…」
そして、自分と…
アーロンの言葉に足りない単語が勝手に浮かんでくる。
言わなくてもいい余計な一言は、自分の胸の中だけに仕舞い込んでおく。
洞窟の先の道が明るくなっているのが見えた。
出口が近いのだ。
近付くに連れて強まる異界の匂い。
洞窟を抜けた瞬間、鮮やかに染まった夕焼けの空が私たちを照らした。
集まる幻光虫と強まる匂いと、恐ろしいほどの殺気。
「……来た」
私の言葉を受けて、いち早くアーロンが身構える。
「来るぞ!!」
夕日と明かりとは違う、小さな光の粒と仄かな揺らめきが空間を歪ませる。
それは徐々に姿を現し、大きな魔物となって私たちの前に立ちはだかった。
聖地ザナルカンドを守護するガーディアン。
巨大な獣の姿に似つかわしくない美しい羽根が広がる。
いや、羽根のように見える、太い木の根を並べたような、触手のような、これも羽根のように1枚にきれいに並んでいるだけのもの。
強靭な爪がついた足は太く力強い。
凶暴な牙が並ぶ口の顎の他に顔の両脇にそれを守る盾にも見える陣の鱗。
長い尻尾をゆらゆらと揺らし、まるで立ち向かうものを嘲笑うかのように私たちの行く手を遮る。
「こいつは防御の力が強い。普通に攻撃しても無駄だ、アーロン!」
「ああ」
「ユウナ下がって、リュックと聖水を用意して」
「…聖水…?」
「背中の管に注意して! ワッカとキマリはそこを集中攻撃。ティーダ、足元から崩すんだ。ルールー、こいつは正面から魔法を撃ってもあの輪っかで無効にされる。羽根を広げた瞬間を狙うんだ!」
「おう」
「わかったわ」
「ユウナ、こいつはユウナレスカが放った、召喚士の力を試すための魔物。隙をみて召喚獣を呼ぶんだ!」
「は、はい!」
もう何度、この守護獣を見ただろう。何度こうして対峙しただろう。
だがこうして戦闘となるのは、たった2度目。
それはこいつが、召喚士を試すだけの存在だから。
1人の時も、ジスカルと一緒のときも、この守護獣は姿を見せただけ。
ザナルカンドを守る像のように、そこに鎮座しているだけ。
アーロンの重い太刀が守護獣の硬い皮膚を割り砕いていく。
少年が素早い動きで守護獣を翻弄しながら足元を攻撃し、高いジャンプ力で守護獣の頭上まで一気に飛び上がったキマリがその背に槍を突き立てる。
ワッカの鋭い刃付きのボールが背中の管を切りつけ、瞬間的に持ち上がった羽根の根元を狙ってルールーが魔法を落とす。
「効いてんじゃねーか?」
「いい調子!」
「気を緩めるな!!」
背中の羽根が流れるように持ち上がり、根元から先端に光が収束していく。
「ヤバイ!!」
「伏せろ―っ!!」
背中の羽根から光の弾がいくつも落とされる。
守護獣本体に攻撃をしかけていた私がいるところから、ユウナがいる位置までは遠い。
「くっ」
地を蹴る。守護獣から放たれた光の弾が仲間達の頭上に降り注ぐ。
悲鳴を上げる間もなく、それは仲間達を包み込む。
「!!」
飛び出した私の背中にもそれは衝撃を与え、私は地面の上を滑る様に倒れこむ。
眩い光と激しい破裂音。
光が収まり、辺りは急に静けさを取り戻す。
少し離れたところで仲間達の呻き声が聞こえ、私のすぐ後ろからは獣の唸り声と体にかかる息遣い。
はっとして後ろを振り返る。
そこにあったのは、真っ赤に光る、凶悪な怒気を孕んだ獣の瞳。
私をじっと見るその眼から目を逸らせない。
グルグルと唸り声を上げる口は大きく開かれ、息を吸い込んだ獣の次の攻撃は決まっている。
逃げなければ!!
そうは思っても、体が動かない。鉛のように重い体は私の意志に反してのろのろとしか反応してくれない。
「!?」
体のあちこちに見える、黒い染みのようなもの。
ステータス攻撃の一つ、呪いをうけてしまったようだ。
言葉が出ない。魔法を唱えることも出来ない。まともに動けない体では武器を振りかざすことも出来ず、絶体絶命の状況に陥った。
「はあああああああああっ!!!」
どこからか力強い掛け声が聞こえた。
大きく口を開けた守護獣の喉の奥が光っているのが見えた。
もう間に合わない!それでも何とかみっともなくもがいて、必死に逃れようと体を動かす。
口の中の光はどんどん大きくなっていき、私は死を近くに感じてしまった。
突然守護獣が口を閉じた。
いや、上部から上顎に受けた強烈な一撃が、口を閉じさせたのだ。
喉まで出しかけていた光線は守護獣の口の中で強い光を放った直後に消え、一撃をお見舞いしたキマリが素早く私を担ぎ上げてそこから離れた。
一気に仲間達のところまで移動して、キマリはまた守護獣の前に槍を構えた。
『エスナ』
ユウナの癒しの魔法が優しく私を包み込む。
「…助かった」
「ラフテルさん、無理しないで!」
「私は平気だ。それより、ユウナは大丈夫か?」
「はい!」
ユウナも呪いを受けたらしいが、すぐに近くにいたリュックが聖水でサポートしてくれたらしい。
他のみんなの無事を確認し、私もまた守護獣のほうへ足を向けた。
→
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「すでに命は無く、ただ魂だけが幻光虫の力を借りてその姿を保っているだけの存在」
アーロンの顔を見つめながら言葉を紡ぐ。
目の前にいるこの人間も、それと同じなのだと自分自身に言い聞かせるように。
「マイカやシーモアと同じだ…」
そして、自分と…
アーロンの言葉に足りない単語が勝手に浮かんでくる。
言わなくてもいい余計な一言は、自分の胸の中だけに仕舞い込んでおく。
洞窟の先の道が明るくなっているのが見えた。
出口が近いのだ。
近付くに連れて強まる異界の匂い。
洞窟を抜けた瞬間、鮮やかに染まった夕焼けの空が私たちを照らした。
集まる幻光虫と強まる匂いと、恐ろしいほどの殺気。
「……来た」
私の言葉を受けて、いち早くアーロンが身構える。
「来るぞ!!」
夕日と明かりとは違う、小さな光の粒と仄かな揺らめきが空間を歪ませる。
それは徐々に姿を現し、大きな魔物となって私たちの前に立ちはだかった。
聖地ザナルカンドを守護するガーディアン。
巨大な獣の姿に似つかわしくない美しい羽根が広がる。
いや、羽根のように見える、太い木の根を並べたような、触手のような、これも羽根のように1枚にきれいに並んでいるだけのもの。
強靭な爪がついた足は太く力強い。
凶暴な牙が並ぶ口の顎の他に顔の両脇にそれを守る盾にも見える陣の鱗。
長い尻尾をゆらゆらと揺らし、まるで立ち向かうものを嘲笑うかのように私たちの行く手を遮る。
「こいつは防御の力が強い。普通に攻撃しても無駄だ、アーロン!」
「ああ」
「ユウナ下がって、リュックと聖水を用意して」
「…聖水…?」
「背中の管に注意して! ワッカとキマリはそこを集中攻撃。ティーダ、足元から崩すんだ。ルールー、こいつは正面から魔法を撃ってもあの輪っかで無効にされる。羽根を広げた瞬間を狙うんだ!」
「おう」
「わかったわ」
「ユウナ、こいつはユウナレスカが放った、召喚士の力を試すための魔物。隙をみて召喚獣を呼ぶんだ!」
「は、はい!」
もう何度、この守護獣を見ただろう。何度こうして対峙しただろう。
だがこうして戦闘となるのは、たった2度目。
それはこいつが、召喚士を試すだけの存在だから。
1人の時も、ジスカルと一緒のときも、この守護獣は姿を見せただけ。
ザナルカンドを守る像のように、そこに鎮座しているだけ。
アーロンの重い太刀が守護獣の硬い皮膚を割り砕いていく。
少年が素早い動きで守護獣を翻弄しながら足元を攻撃し、高いジャンプ力で守護獣の頭上まで一気に飛び上がったキマリがその背に槍を突き立てる。
ワッカの鋭い刃付きのボールが背中の管を切りつけ、瞬間的に持ち上がった羽根の根元を狙ってルールーが魔法を落とす。
「効いてんじゃねーか?」
「いい調子!」
「気を緩めるな!!」
背中の羽根が流れるように持ち上がり、根元から先端に光が収束していく。
「ヤバイ!!」
「伏せろ―っ!!」
背中の羽根から光の弾がいくつも落とされる。
守護獣本体に攻撃をしかけていた私がいるところから、ユウナがいる位置までは遠い。
「くっ」
地を蹴る。守護獣から放たれた光の弾が仲間達の頭上に降り注ぐ。
悲鳴を上げる間もなく、それは仲間達を包み込む。
「!!」
飛び出した私の背中にもそれは衝撃を与え、私は地面の上を滑る様に倒れこむ。
眩い光と激しい破裂音。
光が収まり、辺りは急に静けさを取り戻す。
少し離れたところで仲間達の呻き声が聞こえ、私のすぐ後ろからは獣の唸り声と体にかかる息遣い。
はっとして後ろを振り返る。
そこにあったのは、真っ赤に光る、凶悪な怒気を孕んだ獣の瞳。
私をじっと見るその眼から目を逸らせない。
グルグルと唸り声を上げる口は大きく開かれ、息を吸い込んだ獣の次の攻撃は決まっている。
逃げなければ!!
そうは思っても、体が動かない。鉛のように重い体は私の意志に反してのろのろとしか反応してくれない。
「!?」
体のあちこちに見える、黒い染みのようなもの。
ステータス攻撃の一つ、呪いをうけてしまったようだ。
言葉が出ない。魔法を唱えることも出来ない。まともに動けない体では武器を振りかざすことも出来ず、絶体絶命の状況に陥った。
「はあああああああああっ!!!」
どこからか力強い掛け声が聞こえた。
大きく口を開けた守護獣の喉の奥が光っているのが見えた。
もう間に合わない!それでも何とかみっともなくもがいて、必死に逃れようと体を動かす。
口の中の光はどんどん大きくなっていき、私は死を近くに感じてしまった。
突然守護獣が口を閉じた。
いや、上部から上顎に受けた強烈な一撃が、口を閉じさせたのだ。
喉まで出しかけていた光線は守護獣の口の中で強い光を放った直後に消え、一撃をお見舞いしたキマリが素早く私を担ぎ上げてそこから離れた。
一気に仲間達のところまで移動して、キマリはまた守護獣の前に槍を構えた。
『エスナ』
ユウナの癒しの魔法が優しく私を包み込む。
「…助かった」
「ラフテルさん、無理しないで!」
「私は平気だ。それより、ユウナは大丈夫か?」
「はい!」
ユウナも呪いを受けたらしいが、すぐに近くにいたリュックが聖水でサポートしてくれたらしい。
他のみんなの無事を確認し、私もまた守護獣のほうへ足を向けた。
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