第7章【ガガゼト山~ザナルカンド】
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夢と現実の狭間
=61=
黒く硬い岩肌の上に、もう溶けないだろうと思われるような氷が白い彩をつけている。
ここよりももっと高い山の頂きから流れてきた水が集まって、巨大な幅の広い滝を3段に渡って作り出していた。
かろうじて人が歩けるほどの狭い道の脇に聳える高い岩壁。
そこには折り重なるようにして自らそこにそうしたかのように、ヒトの姿をしたものがある。
それはまるで生きているかのような艶やかな肌や髪を持ち、だが、生きているとはとても言い難い姿形。
その体を岩壁の中にめり込ませて、何十、いや何百というヒトガタが奥まで続いていた。
薄い膜でも張っているかのように淡い光に包まれ、どこから来ているのか淡く青く光る水のように流れるスフィアが、滝から流れた水が作り出した大きな湖の中に流れ込んでいた。
湖の中のスフィアは一つの塊となり、それは遥か遠くの上空まで巻き上げられている。
風も無く、ただ幻想的で不気味な近寄り難い、そんな気にさせる、神聖な場所。
「うわっ! …なんだ、ここ!?」
この圧倒的な景色に、少年はただ息を飲む。
言葉を失っているのは少年だけではない。
私とアーロン以外は、ここを訪れたことのない者ばかり。
初めて見た者にはとてつもない衝撃となるだろう。
そうだ、私も、そうだった。
「祈り子様、だよ」
ユウナが静かに言葉を発し、ゆっくりとその像に近付いていく。
「召喚されてる…」
流石は召喚士だと、そう思ったことを気付かれまいと無表情を作った。
アーロンはいつでも顔を隠すようにして、何も多くを語らない、私も、そうしたいと今更思ってしまう。
「…誰かが、この祈り子様たちから力を引き出している…」
召喚士が祈り子から力を引き出し、召喚を行うのはその召喚士の力、能力の高さが必要だ。
能力の高い召喚士ならば、2体同時の召喚をも行えるだろう。
しかし、ここにいる祈り子の数は半端ない。
これ全部から一度に召喚を行えるほどの能力者。
そんな人物が実在するのだろうか…
「ねぇ、なんか知ってるんでしょ!教えてよ!!」
リュックが私とアーロンに問いかける。
こればかりは、実は私も知らないのだ。
その旨をリュックに言うと、リュックは口を尖らせた。
「何の為の旅だ。他人の知識をあてにしても無駄だ…」
アーロンは、何か知っているんだろうか…?
不満をぶつけるリュックを諌めるように、少年がリュックとアーロンの間に入る。
「これは俺の…、俺達の物語なんだからさ…」
少年がその存在を確かめるように、祈り子のひとつに触れた。
途端に、少年の体は崩れ落ちるようにその場に倒れた。
「「「!!!」」」
「ティーダ!!」
「お、おいっ!」
ピクリとも反応しないティーダにユウナは慌てて駆け寄る。
一体どうしたというんだ?
少年は何をした?何が起きた?
祈り子の像に触れると、こうなるのか…?
私も直接手で触れたことはない。
皆が慌てて少年を心配する中、アーロンだけは訳知り顔で何かをじっと待っているようだ。
「…知って、るのか?ティーダが、こうなった訳」
アーロンが、仲間達のところから少し距離を取る。
まだ眼を覚まさない少年を取り囲むように、仲間達は声をかけ続けていた。
「恐らく、あいつはウチに帰ったんだろう」
「……………は?」
返ってきた答えが余りにも、こう、何と言うか、あっさりと簡単に現実的なことを口にするものだから、私は少々思考回路が停止した。
「もう一つ教えようか。 …俺は、ここからザナルカンドへ飛んだ」
「………」
私は考えた。言葉を発することも忘れて必死に頭の中で単語を繋ぎ合わせる。
突然意識を失った少年。何かを召喚し続ける大量の祈り子。死人であるアーロン。…そして、ジェクトの言うザナルカンド。
そして一つの考えが浮かび上がる。
だがそれはとてもではないが信じられるものではない。
もしかしてという可能性があったとしても、そんなこと、有り得ない。
「わかったのか?」
「…あ、あぁ、いや、その……」
「出たようだな」
「だが、とても信じられないし、有り得ない! それに、どうやってこっちで肉体を…。…それも、全部含めて、ってことか…」
「あぁ。俺も自分の目を疑った。ジェクトの言っていたことが嘘ではなかったと…」
ウチに帰ったとは、そういう意味だったのか。
「戻って、くるだろうか?」
「…さあな、わからん」
少年がアーロンと共にこの世界に、スピラに来た時の様子は、以前さわりだけ聞いた。
突然シンに襲われ、有無を言わさずアーロンに連れてこられた、と。
来たくて来た訳ではないだろう。
それまでの平和な世界は一変し、急に全く未知の、世界観も何もかもが違う場所に連れてこられ、不安に苛まれていたことだろう。
帰りたい、と、願っていただろう。…かつてのジェクトのように。
帰れたら、それは嬉しいだろう。ずっと帰りたいと願っていたところに突然それが叶ったら。
…戻ってきてくれるだろうか。戻らなかったら、ユウナやみんなとの旅はどうする?
何もかも捨てて、何事も無かったかのように、また平和な世界で生きる道を選択するのだろうか?
「(ジェクトとのケリ、つけるんじゃなかったのかよ…)」
→
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黒く硬い岩肌の上に、もう溶けないだろうと思われるような氷が白い彩をつけている。
ここよりももっと高い山の頂きから流れてきた水が集まって、巨大な幅の広い滝を3段に渡って作り出していた。
かろうじて人が歩けるほどの狭い道の脇に聳える高い岩壁。
そこには折り重なるようにして自らそこにそうしたかのように、ヒトの姿をしたものがある。
それはまるで生きているかのような艶やかな肌や髪を持ち、だが、生きているとはとても言い難い姿形。
その体を岩壁の中にめり込ませて、何十、いや何百というヒトガタが奥まで続いていた。
薄い膜でも張っているかのように淡い光に包まれ、どこから来ているのか淡く青く光る水のように流れるスフィアが、滝から流れた水が作り出した大きな湖の中に流れ込んでいた。
湖の中のスフィアは一つの塊となり、それは遥か遠くの上空まで巻き上げられている。
風も無く、ただ幻想的で不気味な近寄り難い、そんな気にさせる、神聖な場所。
「うわっ! …なんだ、ここ!?」
この圧倒的な景色に、少年はただ息を飲む。
言葉を失っているのは少年だけではない。
私とアーロン以外は、ここを訪れたことのない者ばかり。
初めて見た者にはとてつもない衝撃となるだろう。
そうだ、私も、そうだった。
「祈り子様、だよ」
ユウナが静かに言葉を発し、ゆっくりとその像に近付いていく。
「召喚されてる…」
流石は召喚士だと、そう思ったことを気付かれまいと無表情を作った。
アーロンはいつでも顔を隠すようにして、何も多くを語らない、私も、そうしたいと今更思ってしまう。
「…誰かが、この祈り子様たちから力を引き出している…」
召喚士が祈り子から力を引き出し、召喚を行うのはその召喚士の力、能力の高さが必要だ。
能力の高い召喚士ならば、2体同時の召喚をも行えるだろう。
しかし、ここにいる祈り子の数は半端ない。
これ全部から一度に召喚を行えるほどの能力者。
そんな人物が実在するのだろうか…
「ねぇ、なんか知ってるんでしょ!教えてよ!!」
リュックが私とアーロンに問いかける。
こればかりは、実は私も知らないのだ。
その旨をリュックに言うと、リュックは口を尖らせた。
「何の為の旅だ。他人の知識をあてにしても無駄だ…」
アーロンは、何か知っているんだろうか…?
不満をぶつけるリュックを諌めるように、少年がリュックとアーロンの間に入る。
「これは俺の…、俺達の物語なんだからさ…」
少年がその存在を確かめるように、祈り子のひとつに触れた。
途端に、少年の体は崩れ落ちるようにその場に倒れた。
「「「!!!」」」
「ティーダ!!」
「お、おいっ!」
ピクリとも反応しないティーダにユウナは慌てて駆け寄る。
一体どうしたというんだ?
少年は何をした?何が起きた?
祈り子の像に触れると、こうなるのか…?
私も直接手で触れたことはない。
皆が慌てて少年を心配する中、アーロンだけは訳知り顔で何かをじっと待っているようだ。
「…知って、るのか?ティーダが、こうなった訳」
アーロンが、仲間達のところから少し距離を取る。
まだ眼を覚まさない少年を取り囲むように、仲間達は声をかけ続けていた。
「恐らく、あいつはウチに帰ったんだろう」
「……………は?」
返ってきた答えが余りにも、こう、何と言うか、あっさりと簡単に現実的なことを口にするものだから、私は少々思考回路が停止した。
「もう一つ教えようか。 …俺は、ここからザナルカンドへ飛んだ」
「………」
私は考えた。言葉を発することも忘れて必死に頭の中で単語を繋ぎ合わせる。
突然意識を失った少年。何かを召喚し続ける大量の祈り子。死人であるアーロン。…そして、ジェクトの言うザナルカンド。
そして一つの考えが浮かび上がる。
だがそれはとてもではないが信じられるものではない。
もしかしてという可能性があったとしても、そんなこと、有り得ない。
「わかったのか?」
「…あ、あぁ、いや、その……」
「出たようだな」
「だが、とても信じられないし、有り得ない! それに、どうやってこっちで肉体を…。…それも、全部含めて、ってことか…」
「あぁ。俺も自分の目を疑った。ジェクトの言っていたことが嘘ではなかったと…」
ウチに帰ったとは、そういう意味だったのか。
「戻って、くるだろうか?」
「…さあな、わからん」
少年がアーロンと共にこの世界に、スピラに来た時の様子は、以前さわりだけ聞いた。
突然シンに襲われ、有無を言わさずアーロンに連れてこられた、と。
来たくて来た訳ではないだろう。
それまでの平和な世界は一変し、急に全く未知の、世界観も何もかもが違う場所に連れてこられ、不安に苛まれていたことだろう。
帰りたい、と、願っていただろう。…かつてのジェクトのように。
帰れたら、それは嬉しいだろう。ずっと帰りたいと願っていたところに突然それが叶ったら。
…戻ってきてくれるだろうか。戻らなかったら、ユウナやみんなとの旅はどうする?
何もかも捨てて、何事も無かったかのように、また平和な世界で生きる道を選択するのだろうか?
「(ジェクトとのケリ、つけるんじゃなかったのかよ…)」
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