第6章【ナギ平原~ガガゼト山】
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明かされたもう一つの真実
=60=
体に感じる浮遊感と異常なほどの不安定感。
頼れる何かを探して掴もうとするのは、無意識の行動だ。
だが今は、今は…
私の体をガッチリと捕らえている腕の存在に安心感を覚える。
「行っくよ~~!」
楽しそうなリュックの声が響き、足元で何かが破裂するような音と共に体が吹き飛ばされる感覚。
声を上げることも出来ずに、眼を硬く閉じて必死に赤い服にしがみついた。
軽い衝撃の後、私を拘束していた腕の力が解かれる。
降り立った地面に足をつけた、と思ったが、私の体はそのままズルズルと地面まで落ちていった。
「!!」
慌てたようにアーロンが再び私を抱き上げる。
「ラフテル!」
「大丈夫か!?」
仲間達の声が懐かしく感じてしまう。
「だ、だいじょう…「どこがだ」」
私の言葉を遮ってアーロンが反論する。
「魔力を使いすぎたのね。回復するまでは無理しないほうがいいわ」
「うっ……」
よく見ると、仲間達もみんなボロボロだ。私以上に必死に闘ったことを物語っている。
「とりあえず、行くっスか」
それまで黙って何も言わなかったユウナが口を開く。
「私の力で“シン”になる……?」
先を進んでいた一行がユウナのほうを一斉に振り向いた。
「戯言だ。 …忘れろ…」
「気にするなよ、ユウナ」
全てを知っている私とアーロンは、シーモアの言葉の意味を理解している。
だがそれを、その意味をここでユウナに話す必要はない。
「彼が“シン”になれば、ジェクトさんが救われる……?」
もう、最終目的地はすぐそこなのだ。
真実は、ユウナ自身に知ってもらいたい。
「…行こう、アーロン」
「あぁ」
少年がこちらに視線を向けたのを知りながら、あえてユウナの言葉を無視しようとした。
「何か知っているなら教えて下さい!」
ユウナの真剣な眼差しがアーロンと私に向けられる。
私は敢えてその視線を受け取らなかった。
必死に食い下がろうとするユウナは、少年に駆け寄る。
「教えて!」
「アーロン、少し、休みたいんだけど」
「………、わかった」
「ティーダ、ユウナも、まずは少しだけ待って…」
そこから少し進んだところに、岩が重なってできた自然の空洞がポッカリと広がっていた。
アーロンはそこの奥に私を運び、また後ろから抱き締めるようにそこに座り込んだ。
「お前は少し寝ろ。魔力は寝なければ回復せん」
「…うん、ごめん」
仲間達もその空間に入り、円陣を組むように座り込んだ。
地下水が流れ込んでいるのだろう、微かな水の音が耳に心地良い。
キマリだけは、1人そこから何も言わずに出て行った。
そうだ、奴はここに来る前にロンゾの戦士達を…
キマリの心情を考えると、慰めの言葉も見つからない。
私はアーロンの腕の中で、温かい胸に凭れかかったまま、ボンヤリと少年とユウナが話をするのを聞いていた。
「“シン”、…親父なんだ」
「!!」
「なんだそりゃ!」
反応したのはワッカだ。降ろしていた腰を少年のほうへ寄らせる。
「“シン”は俺の親父だ。親父が“シン”になったんだ…。リクツとか、そういうの、よくわからない」
「………」
「でも俺、…感じた。“シン”の中には、親父がいる。親父が、スピラを苦しめているんだ。 ……ごめん」
少年は一気にそこまで話して、俯いてしまった。
「…ごめん、なさい。 例え、“シン”がジェクトさんでも、“シン”が“シン”である限り、私……」
「わかってる。 …倒そう。…親父も、それを望んでる」
「父親と、戦えるの?」
話を聞いていたルールーも静かに少年に問いかける。
「大丈夫、やるよ、俺!」
「…な、なぁ、その話よぉ、“シン”の毒気にやられて夢を見た……わけじゃ、ねぇよな」
「……おう」
「んじゃ、チャップは……」
ワッカは大きな体を小さく小さくして肩を落とした。そして少年から目を背けるように後ろを向いてしまった。
「…悪ぃけどよ、俺、なにも聞いてねえことにしとくわ。頭こんがらがってきたぞ!?なんでまたそんなことになっちまったんだ…」
ワッカの葛藤も分かる。
少年の心境の複雑さも分かる。
ユウナの揺るがない覚悟も分かる。
ただ自分自身の揺れる心だけが、分からなかった。
「行けばわかる…」
たった一言で会話を終了させることができるアーロンの言葉を最後に、私は意識を落とした。
夢を見た。
いつもの夢じゃない。
いつか来たことがある、真っ白な何もない世界。
そこに、ジスカルがいた。
寂しそうな笑顔で、何も言わずにただそこにいて、私を見つめていた。
『ジスカル、 ……力を貸してくれて、ありがとう…』
→ 第7章
=60=
体に感じる浮遊感と異常なほどの不安定感。
頼れる何かを探して掴もうとするのは、無意識の行動だ。
だが今は、今は…
私の体をガッチリと捕らえている腕の存在に安心感を覚える。
「行っくよ~~!」
楽しそうなリュックの声が響き、足元で何かが破裂するような音と共に体が吹き飛ばされる感覚。
声を上げることも出来ずに、眼を硬く閉じて必死に赤い服にしがみついた。
軽い衝撃の後、私を拘束していた腕の力が解かれる。
降り立った地面に足をつけた、と思ったが、私の体はそのままズルズルと地面まで落ちていった。
「!!」
慌てたようにアーロンが再び私を抱き上げる。
「ラフテル!」
「大丈夫か!?」
仲間達の声が懐かしく感じてしまう。
「だ、だいじょう…「どこがだ」」
私の言葉を遮ってアーロンが反論する。
「魔力を使いすぎたのね。回復するまでは無理しないほうがいいわ」
「うっ……」
よく見ると、仲間達もみんなボロボロだ。私以上に必死に闘ったことを物語っている。
「とりあえず、行くっスか」
それまで黙って何も言わなかったユウナが口を開く。
「私の力で“シン”になる……?」
先を進んでいた一行がユウナのほうを一斉に振り向いた。
「戯言だ。 …忘れろ…」
「気にするなよ、ユウナ」
全てを知っている私とアーロンは、シーモアの言葉の意味を理解している。
だがそれを、その意味をここでユウナに話す必要はない。
「彼が“シン”になれば、ジェクトさんが救われる……?」
もう、最終目的地はすぐそこなのだ。
真実は、ユウナ自身に知ってもらいたい。
「…行こう、アーロン」
「あぁ」
少年がこちらに視線を向けたのを知りながら、あえてユウナの言葉を無視しようとした。
「何か知っているなら教えて下さい!」
ユウナの真剣な眼差しがアーロンと私に向けられる。
私は敢えてその視線を受け取らなかった。
必死に食い下がろうとするユウナは、少年に駆け寄る。
「教えて!」
「アーロン、少し、休みたいんだけど」
「………、わかった」
「ティーダ、ユウナも、まずは少しだけ待って…」
そこから少し進んだところに、岩が重なってできた自然の空洞がポッカリと広がっていた。
アーロンはそこの奥に私を運び、また後ろから抱き締めるようにそこに座り込んだ。
「お前は少し寝ろ。魔力は寝なければ回復せん」
「…うん、ごめん」
仲間達もその空間に入り、円陣を組むように座り込んだ。
地下水が流れ込んでいるのだろう、微かな水の音が耳に心地良い。
キマリだけは、1人そこから何も言わずに出て行った。
そうだ、奴はここに来る前にロンゾの戦士達を…
キマリの心情を考えると、慰めの言葉も見つからない。
私はアーロンの腕の中で、温かい胸に凭れかかったまま、ボンヤリと少年とユウナが話をするのを聞いていた。
「“シン”、…親父なんだ」
「!!」
「なんだそりゃ!」
反応したのはワッカだ。降ろしていた腰を少年のほうへ寄らせる。
「“シン”は俺の親父だ。親父が“シン”になったんだ…。リクツとか、そういうの、よくわからない」
「………」
「でも俺、…感じた。“シン”の中には、親父がいる。親父が、スピラを苦しめているんだ。 ……ごめん」
少年は一気にそこまで話して、俯いてしまった。
「…ごめん、なさい。 例え、“シン”がジェクトさんでも、“シン”が“シン”である限り、私……」
「わかってる。 …倒そう。…親父も、それを望んでる」
「父親と、戦えるの?」
話を聞いていたルールーも静かに少年に問いかける。
「大丈夫、やるよ、俺!」
「…な、なぁ、その話よぉ、“シン”の毒気にやられて夢を見た……わけじゃ、ねぇよな」
「……おう」
「んじゃ、チャップは……」
ワッカは大きな体を小さく小さくして肩を落とした。そして少年から目を背けるように後ろを向いてしまった。
「…悪ぃけどよ、俺、なにも聞いてねえことにしとくわ。頭こんがらがってきたぞ!?なんでまたそんなことになっちまったんだ…」
ワッカの葛藤も分かる。
少年の心境の複雑さも分かる。
ユウナの揺るがない覚悟も分かる。
ただ自分自身の揺れる心だけが、分からなかった。
「行けばわかる…」
たった一言で会話を終了させることができるアーロンの言葉を最後に、私は意識を落とした。
夢を見た。
いつもの夢じゃない。
いつか来たことがある、真っ白な何もない世界。
そこに、ジスカルがいた。
寂しそうな笑顔で、何も言わずにただそこにいて、私を見つめていた。
『ジスカル、 ……力を貸してくれて、ありがとう…』
→ 第7章