第6章【ナギ平原~ガガゼト山】
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できること
=59=
体が押しつぶされそうに歪む。
張り裂けそうに内側から膨張する。
全てが凍てつき、全てが燃え尽きる。
この魔法本来の能力もそうだが、ルールーの放つ魔力の大きさが魔法そのものの威力の大きさを物語る。
明らかにシーモア本体にも多大なダメージを与えている。
リフレクの魔法をかけている私の体にも同じ様に影響は出るが、なんとかリフレクの魔法防御バリアが私自身を魔法の薄い膜で防いでいる。
魔法の効果が次第に薄れてきて、再び白い上空が見えた。
まだ、倒れていない。
私の体を絡み取っている触手はまだ別の生命体のように蠢いて私を絡め取ろうとする。
リフレクをかけているので魔法での体力の回復は望めない。
ルールーの魔力の高さを改めて思い知った。
静かに意識を集中する。
自由になった右手は再び触手が絡み付いてきてこの物体に縛り付ける。
だが、口さえ動けば私は魔法でここからシーモアを攻撃できる。
体に感じる振動は少年やアーロン、キマリの斬撃とワッカの投打攻撃だろうか。
掌を自分が磔にされているこの物体にぴたりと当てる。
『フレア』
意識を集中して魔力を注ぎ込む。
一瞬の閃光が辺りを明るく照らし、大気の粒一つ一つが破裂し、それは収束してひとつの大きな爆発を生む。
シーモアの本体にまでは届かないが、このでかい物体に少しでもダメージを与えることが出来れば、それはシーモア本体への攻撃に繋がる。
私の魔法攻撃で崩れた、この異体の絡み合った骨組みは大きく崩れ、そこにぽっかり穴が開いたようになった。
「よし! ………!!」
だがそれは一瞬のことで、見る間にそこは幻光虫が集まってきて修復していく。
「…本体をやらないとダメってことか」
その本体に攻撃をし続けている仲間達の勢いは止まらない。
絡みついた触手をなんとか全部幻光虫に変えてここから脱出する方法を取ったほうがいいだろうか?
「…ぐっ…」
シーモアの微かな呻き声が聞こえる。
本体へのダメージは確実にシーモアの体力を削いでいるようだ。
このまま攻撃を続けてくれれば、確実にこいつは力を失うだろう。
ふいに、この異体全体がキラキラとした小さな光の粒に包まれる。
それは私も含めてのこと。
「?」
光の粒は何かを引き寄せるように近付いたり離れたりを繰り返す。
突然、体の力がガクンと失われた。体全体を何かに引かれるような、体の中から何かを吸い取られるような…
「うっ!!」
「なんだよ!回復したぞ!?」
「幻光を吸い取ったのよ」
「ラフテル!生きてるか!」
「生きてる!私のことはいいと言ったはずだ!」
幻光を吸い取った…。そうか、こいつはつまり、シーモア本体のエネルギーを蓄えておくためのようなものか。
本体の体力がなくなったときにここから幻光を吸収することで再び体力を戻しているのだ。
命のある私にとっては、体力を吸い取るドレインの魔法のようなもの。
ただでさえ、もう体力が残り少ないというのに、これ以上吸収されて堪るか!!
私の体力は私だけのものだ。こんな奴にくれてやる義理はない!!
自分の体の何かを奴に奪われるような気がして、急にこの存在そのものがおぞましく感じられた。
もう、1分でも1秒でも早く離れたい。解放されたい!!
「うああああぁあぁあぁっっ!!」
『フレア!』『ホーリー!!』『アルテマ!!!』
ありったけの魔力を注ぎ込んでやった。
これだけの連続魔法を、リフレクをかけているとはいえ、自分自身にかけているのと同じ状態では、私の体は形を留めていられるだろうか?
仲間達には、この事態の窮地を察知して避難して貰うしかない。
立て続けに襲われる衝撃に、私を磔にしている異体の再生は追いついてこれない。
それでも私を絡め取っている触手は執拗に体に巻きついてくる。
異体のそのほとんどを幻光虫に変え、まだかろうじて残っている部分に更に触手は磔にしようとする。
位置が変わったことで、仲間達の姿を眼に捉えることが出来る。
シーモアの姿はかろうじて留めてはいるが、この異体に取り込まれているように、その体は半分ほどしか見えない。
異体の前面に巨大な腕が生えており、徐にそれが異体に備えられていたバカでかい2振りの剣を手にする。
それが予想もつかないような速度で仲間達を薙ぎ払う。
「ぐわぁっ!!」
その勢いで吹き飛ばされる仲間達を、私はただここで見つめていることしか出来ない。
吹き飛ばされても、槍で突かれても、強力な魔力を浴びても、怯まない。
傷ついて血を流し、それでも誰も、その攻撃の手を休めない。
私もまだ、諦める訳には行かない。
少しずつ、また異体の再生が始まっている。
私をここに絡め取っている状態なら、私は直接異体に触れて攻撃することができる。
集まってくる幻光虫に語りかけるようにそれらを空へと還す。
「…ぐっ、…ぐあ……、ぁぁぁぁ……」
シーモアがとうとう体力を使い果たしたのか、異体から幻光を吸収することもできずに苦しみの声を上げる。
崖から少しずつその大きな物体が離れていく。
私はまだ絡められた触手を振りほどくこともできずに、必死にもがいていた。
「ラフテル!!」
すぐ近くに聞こえたリュックの声にはっとする。
顔を上げると、崖からこの異体に向かって飛び込んできたリュックとアーロンの姿が見えた。
「!! なんで来たんだ!!」
「うっわ、何コレ~~~!?」
「斬るしかないな」
「早く戻れ!こいつはもう…!」
「黙ってろ!」
「おっちゃん、早く~~!」
実体を保っていることが出来なくなったのだろう。異体は幻光虫を撒き散らし、ボンボンと小さな爆発音を上げながら崖から離れていく。
なんとかかろうじて宙に留まってはいるが、この体そのものが幻光虫の集まり。
これが全て空へ還れば、私達は真逆さまだ。
アーロンの振るった重い太刀の生み出す斬撃の空気を裂く音が耳元に届く。
ふいに感じる体の開放感。
フラリと倒れこんだ先にあったのは、温かい赤と異界の匂い。
それまでの触手での拘束とは違う、安心できる拘束が私を包み込む。
「ワッカ~~~!!いいよ~~!!」
遠くから了承の返事が返る。
シーモアの異体はもうそのほとんどが幻光虫に還り、足場を失った私たちの体は宙に投げ出される。
→
=59=
体が押しつぶされそうに歪む。
張り裂けそうに内側から膨張する。
全てが凍てつき、全てが燃え尽きる。
この魔法本来の能力もそうだが、ルールーの放つ魔力の大きさが魔法そのものの威力の大きさを物語る。
明らかにシーモア本体にも多大なダメージを与えている。
リフレクの魔法をかけている私の体にも同じ様に影響は出るが、なんとかリフレクの魔法防御バリアが私自身を魔法の薄い膜で防いでいる。
魔法の効果が次第に薄れてきて、再び白い上空が見えた。
まだ、倒れていない。
私の体を絡み取っている触手はまだ別の生命体のように蠢いて私を絡め取ろうとする。
リフレクをかけているので魔法での体力の回復は望めない。
ルールーの魔力の高さを改めて思い知った。
静かに意識を集中する。
自由になった右手は再び触手が絡み付いてきてこの物体に縛り付ける。
だが、口さえ動けば私は魔法でここからシーモアを攻撃できる。
体に感じる振動は少年やアーロン、キマリの斬撃とワッカの投打攻撃だろうか。
掌を自分が磔にされているこの物体にぴたりと当てる。
『フレア』
意識を集中して魔力を注ぎ込む。
一瞬の閃光が辺りを明るく照らし、大気の粒一つ一つが破裂し、それは収束してひとつの大きな爆発を生む。
シーモアの本体にまでは届かないが、このでかい物体に少しでもダメージを与えることが出来れば、それはシーモア本体への攻撃に繋がる。
私の魔法攻撃で崩れた、この異体の絡み合った骨組みは大きく崩れ、そこにぽっかり穴が開いたようになった。
「よし! ………!!」
だがそれは一瞬のことで、見る間にそこは幻光虫が集まってきて修復していく。
「…本体をやらないとダメってことか」
その本体に攻撃をし続けている仲間達の勢いは止まらない。
絡みついた触手をなんとか全部幻光虫に変えてここから脱出する方法を取ったほうがいいだろうか?
「…ぐっ…」
シーモアの微かな呻き声が聞こえる。
本体へのダメージは確実にシーモアの体力を削いでいるようだ。
このまま攻撃を続けてくれれば、確実にこいつは力を失うだろう。
ふいに、この異体全体がキラキラとした小さな光の粒に包まれる。
それは私も含めてのこと。
「?」
光の粒は何かを引き寄せるように近付いたり離れたりを繰り返す。
突然、体の力がガクンと失われた。体全体を何かに引かれるような、体の中から何かを吸い取られるような…
「うっ!!」
「なんだよ!回復したぞ!?」
「幻光を吸い取ったのよ」
「ラフテル!生きてるか!」
「生きてる!私のことはいいと言ったはずだ!」
幻光を吸い取った…。そうか、こいつはつまり、シーモア本体のエネルギーを蓄えておくためのようなものか。
本体の体力がなくなったときにここから幻光を吸収することで再び体力を戻しているのだ。
命のある私にとっては、体力を吸い取るドレインの魔法のようなもの。
ただでさえ、もう体力が残り少ないというのに、これ以上吸収されて堪るか!!
私の体力は私だけのものだ。こんな奴にくれてやる義理はない!!
自分の体の何かを奴に奪われるような気がして、急にこの存在そのものがおぞましく感じられた。
もう、1分でも1秒でも早く離れたい。解放されたい!!
「うああああぁあぁあぁっっ!!」
『フレア!』『ホーリー!!』『アルテマ!!!』
ありったけの魔力を注ぎ込んでやった。
これだけの連続魔法を、リフレクをかけているとはいえ、自分自身にかけているのと同じ状態では、私の体は形を留めていられるだろうか?
仲間達には、この事態の窮地を察知して避難して貰うしかない。
立て続けに襲われる衝撃に、私を磔にしている異体の再生は追いついてこれない。
それでも私を絡め取っている触手は執拗に体に巻きついてくる。
異体のそのほとんどを幻光虫に変え、まだかろうじて残っている部分に更に触手は磔にしようとする。
位置が変わったことで、仲間達の姿を眼に捉えることが出来る。
シーモアの姿はかろうじて留めてはいるが、この異体に取り込まれているように、その体は半分ほどしか見えない。
異体の前面に巨大な腕が生えており、徐にそれが異体に備えられていたバカでかい2振りの剣を手にする。
それが予想もつかないような速度で仲間達を薙ぎ払う。
「ぐわぁっ!!」
その勢いで吹き飛ばされる仲間達を、私はただここで見つめていることしか出来ない。
吹き飛ばされても、槍で突かれても、強力な魔力を浴びても、怯まない。
傷ついて血を流し、それでも誰も、その攻撃の手を休めない。
私もまだ、諦める訳には行かない。
少しずつ、また異体の再生が始まっている。
私をここに絡め取っている状態なら、私は直接異体に触れて攻撃することができる。
集まってくる幻光虫に語りかけるようにそれらを空へと還す。
「…ぐっ、…ぐあ……、ぁぁぁぁ……」
シーモアがとうとう体力を使い果たしたのか、異体から幻光を吸収することもできずに苦しみの声を上げる。
崖から少しずつその大きな物体が離れていく。
私はまだ絡められた触手を振りほどくこともできずに、必死にもがいていた。
「ラフテル!!」
すぐ近くに聞こえたリュックの声にはっとする。
顔を上げると、崖からこの異体に向かって飛び込んできたリュックとアーロンの姿が見えた。
「!! なんで来たんだ!!」
「うっわ、何コレ~~~!?」
「斬るしかないな」
「早く戻れ!こいつはもう…!」
「黙ってろ!」
「おっちゃん、早く~~!」
実体を保っていることが出来なくなったのだろう。異体は幻光虫を撒き散らし、ボンボンと小さな爆発音を上げながら崖から離れていく。
なんとかかろうじて宙に留まってはいるが、この体そのものが幻光虫の集まり。
これが全て空へ還れば、私達は真逆さまだ。
アーロンの振るった重い太刀の生み出す斬撃の空気を裂く音が耳元に届く。
ふいに感じる体の開放感。
フラリと倒れこんだ先にあったのは、温かい赤と異界の匂い。
それまでの触手での拘束とは違う、安心できる拘束が私を包み込む。
「ワッカ~~~!!いいよ~~!!」
遠くから了承の返事が返る。
シーモアの異体はもうそのほとんどが幻光虫に還り、足場を失った私たちの体は宙に投げ出される。
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