第6章【ナギ平原~ガガゼト山】
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決して無くせないもの
=54=
誇りを持つこと、誇りを守ること、誇りのために生きること。
どれも素晴らしくて輝いている。
でもその為に命までかけるのはどうかとも思ってしまう。
そもそも誇りって何だろう。
誇れるもの?自慢?矛持ち?上っ面?そんなもの、無くても生きてはいける。
…でも、それを大きく掲げ大事にしている奴を格好良いと思ってしまうんだ。
ガガゼト山はザナルカンドに入る為の一つの試練。
聖なる御山と崇めるロンゾ族が守り奉る。
一歩踏み出せばそこは極寒の雪山と強力な魔物の住み処。並みの精神力では前には進めない。
ロンゾ族の集落で意外な人物と再会することになった。
エボン四老師の一人、ベベルで私達を裁判にかけた時に議長を勤めた、ケルク=ロンゾ老師。
そういえば、ナギ平原で出会ったズークが、そんなことを言ってたか。
そのケルクを守るように立つのは、かつてキマリに召喚士が消える、と忠告にきた大きなロンゾの青年2人。
岩を踏みしめる音やざわざわとした生きた者の気配。
はっとして辺りを見渡すと、登山道の入口に立つ私達はすっかり囲まれているようだ。
横にも背後にも、岩山の岸壁にもたくさんのロンゾの民達がこちらを睨みつける様に見下ろしている。
「反逆者ユウナ、お前たちにエボンの聖なる御山の土は踏ませない」
「エボンの敵はロンゾの敵!」
その言葉にロンゾの戦士達が賛同の意を口々に叫ぶ。
いつの間に、ロンゾ族の間にこれだけエボンの教えが蔓延していたのだろうか。
「もう、寺院の命令には従いません」
きっぱりと言い切ったユウナの目にもう迷いは見えない。
そして、その目を信じるからこそ、私達ガードはここにいる。
エボンの本質を知ったユウナが目指すものは、エボンがずっと隠していた真実を暴き出して、シンという螺旋を断ち切るためのもの。
そこにエボンの教えは必要ない。
そんなエボンを離れた者に、エボンの教えを説かれたくはない。
「言わせておけば!」
ケルクの前に黄色い鬣を持った大きなロンゾの青年が進み出た。
咄嗟にキマリがそれを防ぐかのように立ち塞がる。
2人の距離は息がかかるほど近い。
互いにロンゾ族特有の殺意の篭った瞳で相手を睨みつける。
だが、ビランと己の名を名乗ったこの大きなロンゾの青年は、キマリよりも頭ひとつ分大きい。
私たちと一緒にいるときは、やはりキマリは大きいと思っていたが、こうして他の同族たちと比べるとキマリは小さく見えてしまう。
「あなたも、ベベルを離れたのではありませんか?ケルク=ロンゾ様」
「!」
「それでも山を守るのは、一族の誇りのため。 …ユウナも同じだ」
「むっ……」
ルールーとアーロンの言葉に、ケルクは言葉を失った。
誇りのため…
アーロンの言葉を頭の中で反芻する。
誇り、ロンゾとしての誇り、エボンの老師となっても失われなかったもの。エボンを捨ててもなお、決して失ってはならないもの。
ロンゾ族でありながらエボンの民として生きることを選んだケルクの気高い、ロンゾの誇り。
私の足は自然とケルクの元へ進んだ。
仲間達は何も言わない。私が何をする気なのかを見守っている。
私は、ケルクの目の前に立った。
「ラフテル、お前は…。お前も、ユウナと同じか?」
「ケルク…」
ケルクの皴だらけの、それでも力強さを失わない大きな掌を、私は自分の手で自分の胸に押し当てた。
「?」
私の行動が理解できないケルクは、それでも振りほどくことも無くされるがままに私に手を預けている。
「聞いて、ケルク」
「お前たちの声なら聞こえている」
「…違う。……よく、聞いて。あなたなら、聞こえるはず」
胸に当てたケルクの掌を更に強く押し当てる。
「………まさか…」
私は小さく頷いた。
「…ジスカル、か…?」
「聞こえた?」
「…おお、なんということだ。こんなことをすればお前はもう…」
「ジスカルの望みは生きることだった。死だけに縛られた世界じゃない。ケルクだって、同じはずだろ?」
ケルクの言おうとした言葉を遮って、わざと話を逸らさせる。
私から手を下ろしたケルクは、しばらく何かを考え込むような素振りを見せた。
「召喚士ユウナ、反逆者と呼ばれても、旅を続け、シンに挑むというのか。…なぜそこまでして戦う」
きつく睨んでいたユウナの目が、ふっと力を落としたように優しくなる。
語られるのはユウナの誇り。
召喚士として生きていくことを決めた日からずっとユウナが持ち続けてきたもの。
スピラが大好きだ、と。平和を、ナギ節を待つ人々への贈り物を、と。
それはユウナがユウナとしてシンを倒すこと。
この覚悟はたとえ何が起ころうとも、決して消えることのない、ユウナの誇り。
ケルクはじっとユウナの顔を見つめた。
「ケルク、ユウナの覚悟は本物だ」
「むぅ……」
俯いて顔を大きく横に振るったケルクが振り払ったものは何だったのか。
そのまま踵を返したケルクは、後方に高く聳えるガガゼトの山々に向かって声を張り上げる。
「者ども、道をあけい!!」
「ケルク大老!」
その一言は、私の顔に微かな笑みを浮かべさせた。
ロンゾの戦士達の戸惑いが空気を震わせて伝わってくる。
「召喚士ユウナ。その鋼よりも硬いお主の意思、見事である。ガガゼトはその覚悟を受け入れるであろう!行くが良い!!」
「「「!!」」」
→
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誇りを持つこと、誇りを守ること、誇りのために生きること。
どれも素晴らしくて輝いている。
でもその為に命までかけるのはどうかとも思ってしまう。
そもそも誇りって何だろう。
誇れるもの?自慢?矛持ち?上っ面?そんなもの、無くても生きてはいける。
…でも、それを大きく掲げ大事にしている奴を格好良いと思ってしまうんだ。
ガガゼト山はザナルカンドに入る為の一つの試練。
聖なる御山と崇めるロンゾ族が守り奉る。
一歩踏み出せばそこは極寒の雪山と強力な魔物の住み処。並みの精神力では前には進めない。
ロンゾ族の集落で意外な人物と再会することになった。
エボン四老師の一人、ベベルで私達を裁判にかけた時に議長を勤めた、ケルク=ロンゾ老師。
そういえば、ナギ平原で出会ったズークが、そんなことを言ってたか。
そのケルクを守るように立つのは、かつてキマリに召喚士が消える、と忠告にきた大きなロンゾの青年2人。
岩を踏みしめる音やざわざわとした生きた者の気配。
はっとして辺りを見渡すと、登山道の入口に立つ私達はすっかり囲まれているようだ。
横にも背後にも、岩山の岸壁にもたくさんのロンゾの民達がこちらを睨みつける様に見下ろしている。
「反逆者ユウナ、お前たちにエボンの聖なる御山の土は踏ませない」
「エボンの敵はロンゾの敵!」
その言葉にロンゾの戦士達が賛同の意を口々に叫ぶ。
いつの間に、ロンゾ族の間にこれだけエボンの教えが蔓延していたのだろうか。
「もう、寺院の命令には従いません」
きっぱりと言い切ったユウナの目にもう迷いは見えない。
そして、その目を信じるからこそ、私達ガードはここにいる。
エボンの本質を知ったユウナが目指すものは、エボンがずっと隠していた真実を暴き出して、シンという螺旋を断ち切るためのもの。
そこにエボンの教えは必要ない。
そんなエボンを離れた者に、エボンの教えを説かれたくはない。
「言わせておけば!」
ケルクの前に黄色い鬣を持った大きなロンゾの青年が進み出た。
咄嗟にキマリがそれを防ぐかのように立ち塞がる。
2人の距離は息がかかるほど近い。
互いにロンゾ族特有の殺意の篭った瞳で相手を睨みつける。
だが、ビランと己の名を名乗ったこの大きなロンゾの青年は、キマリよりも頭ひとつ分大きい。
私たちと一緒にいるときは、やはりキマリは大きいと思っていたが、こうして他の同族たちと比べるとキマリは小さく見えてしまう。
「あなたも、ベベルを離れたのではありませんか?ケルク=ロンゾ様」
「!」
「それでも山を守るのは、一族の誇りのため。 …ユウナも同じだ」
「むっ……」
ルールーとアーロンの言葉に、ケルクは言葉を失った。
誇りのため…
アーロンの言葉を頭の中で反芻する。
誇り、ロンゾとしての誇り、エボンの老師となっても失われなかったもの。エボンを捨ててもなお、決して失ってはならないもの。
ロンゾ族でありながらエボンの民として生きることを選んだケルクの気高い、ロンゾの誇り。
私の足は自然とケルクの元へ進んだ。
仲間達は何も言わない。私が何をする気なのかを見守っている。
私は、ケルクの目の前に立った。
「ラフテル、お前は…。お前も、ユウナと同じか?」
「ケルク…」
ケルクの皴だらけの、それでも力強さを失わない大きな掌を、私は自分の手で自分の胸に押し当てた。
「?」
私の行動が理解できないケルクは、それでも振りほどくことも無くされるがままに私に手を預けている。
「聞いて、ケルク」
「お前たちの声なら聞こえている」
「…違う。……よく、聞いて。あなたなら、聞こえるはず」
胸に当てたケルクの掌を更に強く押し当てる。
「………まさか…」
私は小さく頷いた。
「…ジスカル、か…?」
「聞こえた?」
「…おお、なんということだ。こんなことをすればお前はもう…」
「ジスカルの望みは生きることだった。死だけに縛られた世界じゃない。ケルクだって、同じはずだろ?」
ケルクの言おうとした言葉を遮って、わざと話を逸らさせる。
私から手を下ろしたケルクは、しばらく何かを考え込むような素振りを見せた。
「召喚士ユウナ、反逆者と呼ばれても、旅を続け、シンに挑むというのか。…なぜそこまでして戦う」
きつく睨んでいたユウナの目が、ふっと力を落としたように優しくなる。
語られるのはユウナの誇り。
召喚士として生きていくことを決めた日からずっとユウナが持ち続けてきたもの。
スピラが大好きだ、と。平和を、ナギ節を待つ人々への贈り物を、と。
それはユウナがユウナとしてシンを倒すこと。
この覚悟はたとえ何が起ころうとも、決して消えることのない、ユウナの誇り。
ケルクはじっとユウナの顔を見つめた。
「ケルク、ユウナの覚悟は本物だ」
「むぅ……」
俯いて顔を大きく横に振るったケルクが振り払ったものは何だったのか。
そのまま踵を返したケルクは、後方に高く聳えるガガゼトの山々に向かって声を張り上げる。
「者ども、道をあけい!!」
「ケルク大老!」
その一言は、私の顔に微かな笑みを浮かべさせた。
ロンゾの戦士達の戸惑いが空気を震わせて伝わってくる。
「召喚士ユウナ。その鋼よりも硬いお主の意思、見事である。ガガゼトはその覚悟を受け入れるであろう!行くが良い!!」
「「「!!」」」
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