第6章【ナギ平原~ガガゼト山】
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事実は闇の中
=53=
次の日の朝、目を覚ましたユウナは改めて村長達と挨拶を交し、エボン式の祈りを捧げて礼を述べた。
村人達はユウナの、シンを倒す旅をしている召喚士の話を聞きたがった。
いつものように先を急がせようとするアーロンを一睨みしてから声を掛けた。
「世話になったんだろ」
仕方がないとばかりに、アーロンは重い溜息を吐き出した。
「…少しだけだ」
あっという間にユウナは村人たちに取り囲まれ、身動き一つできない状態だ。
私もかつてここを訪れたときは、今のユウナのように村人たちに囲まれて話をせがまれた。
私と同じ立場であるアーロンも、村長に捕まりいつの間にか輪の中に加えられていた。
他の仲間達はどうしているかと辺りを探してみると、ユウナの後方でユウナを守るようにキマリが立ちはだかっていた。
ここからでもよく見える村の広場では、ワッカとティーダが村の子供たちとブリッツで遊んでいる。
ルールーも子供たちを相手に黒魔法を披露していた。
リュックの姿が見えなかったが、大方アルベドの機械の技術でも伝授しているのであろう。
「一つ、昔話をしてもいいですかな?」
壁際に立つ私に声を掛けてきたのは、いつの間にか輪の中から抜け出してきた村長だ。
ユウナのほうをチラリと見るのは、本当はユウナにも聞かせたいとでも思ったからなのだろうか。
―――――――――――――――――――
昔々、まだこの寺院に祈り子様がいらっしゃった頃、1人の若者が村を飛び出し、討伐隊へと身を投じました
若者は力を認められ、ある召喚士様のガードとしてお仕えすることになりました
召喚士様は各地の寺院で力をつけられ、ザナルカンドに入るべくガガゼトまでやってきましたがその前にこの村を訪れて下さいました
ガードを勤めた若者の故郷ということもあって、お気を遣って下さったのです
召喚士様が村に到着されたのは夜も遅い時間でしたので、寺院で祈りを捧げるのは翌日にしてまずはお休み頂くように寝所を用意させて頂きました
召喚士様がお休みになられた後も、ガードの若者は村の者や僧官と遅くまで話し込んでいました
若者にとっては故郷なので懐かしさもあったのでしょう
ところが次の日、そのガードの若者の姿は忽然と消えていました
祈り子様の像と共に…
―――――――――――――――――――
「そのガードが盗んだってこと?」
「さぁ、今となってはその真相は誰にもわかりませんな。…ただ、その若者は何も知らなかった。
旅の行く末の真実を何も知らされることはなかったのだとか。」
「その時に真実を知ってしまったのか…」
少年を、思い浮かべてしまった。
何も知らず、教えられず、ただ純粋に召喚士であるユウナを守るガードとして側にいる少年を…
そういえば、少年はもうその真実を知ったんだったろうか…?
―――――――――――――――――――
召喚士様は再び旅に出ました
でもその目的地はザナルカンドの究極召喚ではなく、消えたガードと祈り子の有りか
召喚士様は探しました
ずっと共に旅をしてきたガードである若者の行方を
なくなってしまった祈り子様の像を
それから長い年月が過ぎ、結局ガードも祈り子様の像も戻ることはありませんでした
―――――――――――――――――――
「…もし、その盗まれた祈り子の存在が分かったとしたらどうするんだ?」
「…さぁ、どうするべきですかな」
「寺院の中に戻したいとは思わないのか?」
「…あれから長い年月が流れました。今の者達の半数はここが寺院であったことすら知らん。外との交流のほとんどない静かなこの村にいて、
突然祈り子様が戻られたとしてもどうすることもできんじゃろう」
そう言って村長は寂しそうな顔を見せた。
子供達と遊んでいたティーダがこちらに近づいてきた。
いつまでも出発しないユウナやアーロンに痺れを切らせたらしい。
ユウナはまだ村人に囲まれ身動きも取れない状態だ。
なんとかアーロンと目配せを交わし、催促してみる。
徐に立ち上がったアーロンの意図を汲んだのか、キマリがユウナに声を掛けなんとか解放されたユウナは少々疲労の色が見える。
いつまでも別れを惜しむ村人達に礼を伝えてやっと旅を再開することができた。
ここに来たときのように暗い穴倉を抜け、細い雪道を渡り、再びガガゼト山への山道へ辿り着くと、急に空気の冷たさに身震いする。
「ユウナ、平気か?」
村に辿り着いたとき、ユウナは寒さに耐え切れなかったようで体調を崩してしまったかと思ったが、今はそれほどでもないようだ。
やはり疲労が溜まっていたのか。
…無理もない。
立て続けにユウナの身に起こった現実は、まだ幼いこの少女には負担が大きすぎる。
「ティーダ、ちょっと」
「なんスか?」
山道を歩く一行から少年だけを呼び止める。
キマリと共に先頭を進んでいた少年はその場で足を止めた。
と同時にユウナの足も止まってしまった為、当然のように行軍の足は止まる。
「…あ、ごめん、ちょっと話聞くだけだから進んで構わない」
一瞬だけ浮かんだユウナの不安そうな顔に、少年は笑顔を向ける。
それだけで、この2人はもう通じ合っているように見えた。
その場で待つ少年の隣に立つと、少しみんなが先に進むのを待ってから、2人で後に続く。
「…もう、知ってるのか?」
「……あぁ、聞いた」
何を、とは聞かない、言わない。それが何を指すのか、理解していたようだ。
「…そうか」
「でも、 ……死なせない!必ず…!」
「…フフ。頼もしいな」
「それ最近のラフテルの口癖っスか? なんか、自分がいなくても大丈夫、みたいなセリフだ」
「!!」
ドキリとした。
見透かされたように思った。…事実、だから…
→
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次の日の朝、目を覚ましたユウナは改めて村長達と挨拶を交し、エボン式の祈りを捧げて礼を述べた。
村人達はユウナの、シンを倒す旅をしている召喚士の話を聞きたがった。
いつものように先を急がせようとするアーロンを一睨みしてから声を掛けた。
「世話になったんだろ」
仕方がないとばかりに、アーロンは重い溜息を吐き出した。
「…少しだけだ」
あっという間にユウナは村人たちに取り囲まれ、身動き一つできない状態だ。
私もかつてここを訪れたときは、今のユウナのように村人たちに囲まれて話をせがまれた。
私と同じ立場であるアーロンも、村長に捕まりいつの間にか輪の中に加えられていた。
他の仲間達はどうしているかと辺りを探してみると、ユウナの後方でユウナを守るようにキマリが立ちはだかっていた。
ここからでもよく見える村の広場では、ワッカとティーダが村の子供たちとブリッツで遊んでいる。
ルールーも子供たちを相手に黒魔法を披露していた。
リュックの姿が見えなかったが、大方アルベドの機械の技術でも伝授しているのであろう。
「一つ、昔話をしてもいいですかな?」
壁際に立つ私に声を掛けてきたのは、いつの間にか輪の中から抜け出してきた村長だ。
ユウナのほうをチラリと見るのは、本当はユウナにも聞かせたいとでも思ったからなのだろうか。
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昔々、まだこの寺院に祈り子様がいらっしゃった頃、1人の若者が村を飛び出し、討伐隊へと身を投じました
若者は力を認められ、ある召喚士様のガードとしてお仕えすることになりました
召喚士様は各地の寺院で力をつけられ、ザナルカンドに入るべくガガゼトまでやってきましたがその前にこの村を訪れて下さいました
ガードを勤めた若者の故郷ということもあって、お気を遣って下さったのです
召喚士様が村に到着されたのは夜も遅い時間でしたので、寺院で祈りを捧げるのは翌日にしてまずはお休み頂くように寝所を用意させて頂きました
召喚士様がお休みになられた後も、ガードの若者は村の者や僧官と遅くまで話し込んでいました
若者にとっては故郷なので懐かしさもあったのでしょう
ところが次の日、そのガードの若者の姿は忽然と消えていました
祈り子様の像と共に…
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「そのガードが盗んだってこと?」
「さぁ、今となってはその真相は誰にもわかりませんな。…ただ、その若者は何も知らなかった。
旅の行く末の真実を何も知らされることはなかったのだとか。」
「その時に真実を知ってしまったのか…」
少年を、思い浮かべてしまった。
何も知らず、教えられず、ただ純粋に召喚士であるユウナを守るガードとして側にいる少年を…
そういえば、少年はもうその真実を知ったんだったろうか…?
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召喚士様は再び旅に出ました
でもその目的地はザナルカンドの究極召喚ではなく、消えたガードと祈り子の有りか
召喚士様は探しました
ずっと共に旅をしてきたガードである若者の行方を
なくなってしまった祈り子様の像を
それから長い年月が過ぎ、結局ガードも祈り子様の像も戻ることはありませんでした
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「…もし、その盗まれた祈り子の存在が分かったとしたらどうするんだ?」
「…さぁ、どうするべきですかな」
「寺院の中に戻したいとは思わないのか?」
「…あれから長い年月が流れました。今の者達の半数はここが寺院であったことすら知らん。外との交流のほとんどない静かなこの村にいて、
突然祈り子様が戻られたとしてもどうすることもできんじゃろう」
そう言って村長は寂しそうな顔を見せた。
子供達と遊んでいたティーダがこちらに近づいてきた。
いつまでも出発しないユウナやアーロンに痺れを切らせたらしい。
ユウナはまだ村人に囲まれ身動きも取れない状態だ。
なんとかアーロンと目配せを交わし、催促してみる。
徐に立ち上がったアーロンの意図を汲んだのか、キマリがユウナに声を掛けなんとか解放されたユウナは少々疲労の色が見える。
いつまでも別れを惜しむ村人達に礼を伝えてやっと旅を再開することができた。
ここに来たときのように暗い穴倉を抜け、細い雪道を渡り、再びガガゼト山への山道へ辿り着くと、急に空気の冷たさに身震いする。
「ユウナ、平気か?」
村に辿り着いたとき、ユウナは寒さに耐え切れなかったようで体調を崩してしまったかと思ったが、今はそれほどでもないようだ。
やはり疲労が溜まっていたのか。
…無理もない。
立て続けにユウナの身に起こった現実は、まだ幼いこの少女には負担が大きすぎる。
「ティーダ、ちょっと」
「なんスか?」
山道を歩く一行から少年だけを呼び止める。
キマリと共に先頭を進んでいた少年はその場で足を止めた。
と同時にユウナの足も止まってしまった為、当然のように行軍の足は止まる。
「…あ、ごめん、ちょっと話聞くだけだから進んで構わない」
一瞬だけ浮かんだユウナの不安そうな顔に、少年は笑顔を向ける。
それだけで、この2人はもう通じ合っているように見えた。
その場で待つ少年の隣に立つと、少しみんなが先に進むのを待ってから、2人で後に続く。
「…もう、知ってるのか?」
「……あぁ、聞いた」
何を、とは聞かない、言わない。それが何を指すのか、理解していたようだ。
「…そうか」
「でも、 ……死なせない!必ず…!」
「…フフ。頼もしいな」
「それ最近のラフテルの口癖っスか? なんか、自分がいなくても大丈夫、みたいなセリフだ」
「!!」
ドキリとした。
見透かされたように思った。…事実、だから…
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