第6章【ナギ平原~ガガゼト山】
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自分ひとりでは出来ないこともある
=51=
悲しみを消す為には、人は何をすればいいんだろうか…?
消すことが出来るのだろうか。
消しては、いけないのだろうか。
辛い想いが人を成長させるのだとしたら、人は悲しみに満ちた生き物となってしまう。
「不思議ね、もっと悲しいと思ってた。 …人と別れることに慣れすぎたのかな」
「強く、なったんだろ」
「そうだね…。そうだと、いいね…」
ルールーの悲しみに満ちた涙を見たのは、初めてだ。
その純粋な雫を、心から綺麗だと思ってしまった。
人との永久の別れを意味する“死”。
このスピラという世界では、死はいつも身近にあるもので、それがいつ我が身へと降りかかるとも知れない。
そんな世界で生きる全ての人間は、何時でも誰かとの別れを覚悟している。
死が恐怖なのではない。
死を齎す存在が、恐怖なのだ。
更に奥にある小さな空間に、ユウナは少年と共に入った。祈り子と対面する為に。
ユウナ達を待っている間、ルールーはワッカと共に少し離れて話をしていた。
かつてのことを思い出していたのだろう。
私も壁に凭れかかっているアーロンのところへ行き、傍らに腰を下ろした。
「…祈り子が盗まれた村へ、行ったんだ」
「どこだ?」
「ガガゼトの、麓。キマリ達ロンゾ族の村があるところの少し手前」
「…もう誰も立ち寄らんだろう、祈り子が無ければ、な」
「…うん。寂しいところだった」
「…そうか」
こちらを向いていたアーロンの顔が、一度天を仰ぐように上に向けられ、そして首もとの大きな襟の中に隠れてしまった。
ユウナと少年が戻り、一向は再び旅を再開する。
洞窟を出て明るい日差しの下に戻ると、リュックは嬉しそうに大きく伸びをした。
ここに来るときとは逆に細い坂道を登り、再び街道への道に出る。
谷に架かる橋を渡り、ナギ平原ともここでお別れだ。
幾つかある橋の最後の一つを渡り終えたとき、ユウナの足がそこで止まってしまった。
少年がじっとユウナの動向を見守っている。
私も少年の隣で同じ様にユウナを見つめた。
彼女が今何を考えているのか、どんな気持ちなのか、よく分かる。
それは全てブラスカと同じだったから…
「ユウナ」
声を掛けると、はっとしたようにこちらを振り返って笑顔を見せる。
少し先に進んだ仲間達がそこで待っていた。
大きな岩をくり貫いて作ったような道を通り、それは険しさを増していく。
坂道を上へ上へと進んでいくと、突然景色は一変した。
黒い岩肌に張り付いた真っ白な雪と氷。
草木の一本すらも生えないような寒々とした土地。
キマリの生まれた、ロンゾ族の土地。
このガガゼト山を祀り敬い崇め守ってきた誇り高い一族だ。
彼らに認められることができてはじめて、召喚士は山を越えることが許される。
この山の向こう側に、目的地であるザナルカンドがあるのだ。
必然的に旅をするものはここを越えることになる。
認められぬ召喚士は山に入ることすら許されず、そこで終わりとなるか、引き返してもっと力をつけて再来するしかない。
広いナギ平原と、谷底の洞窟でかなりの時間を費やしてしまったようだ。
このまま山を登るのは少々無謀かもしれない。
ロンゾ族の集落まで辿り着いたとしても、たとえ召喚士でもロンゾ族は旅人を迎え入れる習慣がない。
故に宿等あるわけもなく、この極寒の地で野宿するしかない。
私達はいいとしても、とてもではないがユウナやリュックにそれを強いるのは忍びない。
そうこうしているうちに日は沈み、冷たい風も出てきた。
このまま夜を迎えれば更に気温は下がるし、夜行性の凶暴な魔物も多数襲い来るだろう。
いつもなら先に進むことを強要するアーロンも、今回ばかりは私と同じ考えだったようだ。
「ラフテル、さっき言っていた村はこの近くか?」
「…あー、うん、もう少し行った所だ」
私とアーロンの言葉に少年とリュックが大袈裟に喜んでみせる。
「なんだよ、村があるんなら先に言ってくれよな」
「そうだよ!もう凍える寸前なんだよ~!…ね、ユウナ」
「ガガゼトにロンゾ族以外に村があるなんて聞いたことないわね」
「キマリも知らない…」
ロンゾ族の中でも、その存在を知っているのは僅かだけなのだろう。
それにキマリはある事が切欠で、村を出た者。知らないのも無理は無い。
本当に小さな村だし、召喚士が旅で訪れることがなくなってからはまともな宿もあるか分からない。
それでも行くしかない。
すっかり日は沈み、夜の帳が下りてきて気温がぐっと下がってきた。
「こっちだ」
よく目を凝らさなければ見つけることが出来ないような岩陰に小道がある。
そこから岩のトンネルに入ると、風は防ぐことが出来るがやはりこの寒さは堪える。
「私が先に行って様子を見てくる。うまくすれば今晩宿を借りられるかもしれない。みんなも後から来てくれ。一本道だ」
「ユウナにはキマリがついている」
「頼もしいな」
以前も訪れたことがあるところだ。私のことを覚えていてくれるものがいれば助かるのだが…
→
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悲しみを消す為には、人は何をすればいいんだろうか…?
消すことが出来るのだろうか。
消しては、いけないのだろうか。
辛い想いが人を成長させるのだとしたら、人は悲しみに満ちた生き物となってしまう。
「不思議ね、もっと悲しいと思ってた。 …人と別れることに慣れすぎたのかな」
「強く、なったんだろ」
「そうだね…。そうだと、いいね…」
ルールーの悲しみに満ちた涙を見たのは、初めてだ。
その純粋な雫を、心から綺麗だと思ってしまった。
人との永久の別れを意味する“死”。
このスピラという世界では、死はいつも身近にあるもので、それがいつ我が身へと降りかかるとも知れない。
そんな世界で生きる全ての人間は、何時でも誰かとの別れを覚悟している。
死が恐怖なのではない。
死を齎す存在が、恐怖なのだ。
更に奥にある小さな空間に、ユウナは少年と共に入った。祈り子と対面する為に。
ユウナ達を待っている間、ルールーはワッカと共に少し離れて話をしていた。
かつてのことを思い出していたのだろう。
私も壁に凭れかかっているアーロンのところへ行き、傍らに腰を下ろした。
「…祈り子が盗まれた村へ、行ったんだ」
「どこだ?」
「ガガゼトの、麓。キマリ達ロンゾ族の村があるところの少し手前」
「…もう誰も立ち寄らんだろう、祈り子が無ければ、な」
「…うん。寂しいところだった」
「…そうか」
こちらを向いていたアーロンの顔が、一度天を仰ぐように上に向けられ、そして首もとの大きな襟の中に隠れてしまった。
ユウナと少年が戻り、一向は再び旅を再開する。
洞窟を出て明るい日差しの下に戻ると、リュックは嬉しそうに大きく伸びをした。
ここに来るときとは逆に細い坂道を登り、再び街道への道に出る。
谷に架かる橋を渡り、ナギ平原ともここでお別れだ。
幾つかある橋の最後の一つを渡り終えたとき、ユウナの足がそこで止まってしまった。
少年がじっとユウナの動向を見守っている。
私も少年の隣で同じ様にユウナを見つめた。
彼女が今何を考えているのか、どんな気持ちなのか、よく分かる。
それは全てブラスカと同じだったから…
「ユウナ」
声を掛けると、はっとしたようにこちらを振り返って笑顔を見せる。
少し先に進んだ仲間達がそこで待っていた。
大きな岩をくり貫いて作ったような道を通り、それは険しさを増していく。
坂道を上へ上へと進んでいくと、突然景色は一変した。
黒い岩肌に張り付いた真っ白な雪と氷。
草木の一本すらも生えないような寒々とした土地。
キマリの生まれた、ロンゾ族の土地。
このガガゼト山を祀り敬い崇め守ってきた誇り高い一族だ。
彼らに認められることができてはじめて、召喚士は山を越えることが許される。
この山の向こう側に、目的地であるザナルカンドがあるのだ。
必然的に旅をするものはここを越えることになる。
認められぬ召喚士は山に入ることすら許されず、そこで終わりとなるか、引き返してもっと力をつけて再来するしかない。
広いナギ平原と、谷底の洞窟でかなりの時間を費やしてしまったようだ。
このまま山を登るのは少々無謀かもしれない。
ロンゾ族の集落まで辿り着いたとしても、たとえ召喚士でもロンゾ族は旅人を迎え入れる習慣がない。
故に宿等あるわけもなく、この極寒の地で野宿するしかない。
私達はいいとしても、とてもではないがユウナやリュックにそれを強いるのは忍びない。
そうこうしているうちに日は沈み、冷たい風も出てきた。
このまま夜を迎えれば更に気温は下がるし、夜行性の凶暴な魔物も多数襲い来るだろう。
いつもなら先に進むことを強要するアーロンも、今回ばかりは私と同じ考えだったようだ。
「ラフテル、さっき言っていた村はこの近くか?」
「…あー、うん、もう少し行った所だ」
私とアーロンの言葉に少年とリュックが大袈裟に喜んでみせる。
「なんだよ、村があるんなら先に言ってくれよな」
「そうだよ!もう凍える寸前なんだよ~!…ね、ユウナ」
「ガガゼトにロンゾ族以外に村があるなんて聞いたことないわね」
「キマリも知らない…」
ロンゾ族の中でも、その存在を知っているのは僅かだけなのだろう。
それにキマリはある事が切欠で、村を出た者。知らないのも無理は無い。
本当に小さな村だし、召喚士が旅で訪れることがなくなってからはまともな宿もあるか分からない。
それでも行くしかない。
すっかり日は沈み、夜の帳が下りてきて気温がぐっと下がってきた。
「こっちだ」
よく目を凝らさなければ見つけることが出来ないような岩陰に小道がある。
そこから岩のトンネルに入ると、風は防ぐことが出来るがやはりこの寒さは堪える。
「私が先に行って様子を見てくる。うまくすれば今晩宿を借りられるかもしれない。みんなも後から来てくれ。一本道だ」
「ユウナにはキマリがついている」
「頼もしいな」
以前も訪れたことがあるところだ。私のことを覚えていてくれるものがいれば助かるのだが…
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