第1章【ルカ~ミヘン街道】
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子は親を映す鏡
=5=
『みんな困ってんだ。オレらが退治しねぇでどうする!』
思わず浮かんだ言葉に噴出してしまう。
それと同時にアーロンまでクスリと笑みを漏らした。
考えていることは同じ様だ。
それに対して反発するように、少年が言葉を重ねる。
その姿にどうしても、かつての仲間が重なって見えるのは仕方の無いことだと思う。
「(あぁ、やっぱり親子なんだ)」
ミヘン街道を進み、街道に出没する大型の魔物の存在を教えられる。
チョコボイーターと名づけられたその大型の魔物は、その名の通りチョコボを好んで餌にしてしまう凶暴な魔物だ。
多くの魔物が出没するこのミヘン街道は、危険も多いがルカとジョゼを繋ぐ大事な旅の要。
旅をするものは必ず通らねばならない道でもある。
この街道には、そういった魔物と遭遇せずとも渡れるようにと、旅人は飼い慣らされたチョコボという大型の鳥で移動する手段を用いるようになった。
空を飛ぶことが出来ない代わりに、長く太い両足でかなりの速度で走ることが出来る上に、多少足場が悪くてもものともしない。
人懐こく、頭も良いため、チョコボを利用する旅人は多い。
そのチョコボが、さらに大型の魔物に襲われると言うことは、この街道を利用する旅人の足にも当然大きな影響を及ぼすことになる。
その話を聞いてしまった少年が、魔物を退治しようと言い出したのだ。
そのセリフや言い回しが、あまりにも10年前のジェクトに酷似していた為、噴出してしまったのだった。
ミヘン街道は、確かに多くの魔物が出没する。
だが、その魔物の多くは比較的温厚と言えるかもしれない。
異界の匂いに敏感な自分でも、時々嗅ぎ分けられないものもいる。
…まぁ、すぐ近くにその異界の匂いを撒き散らしている人物がいるせいでもあるんだけど…
1人で旅をしている時も、ミヘン街道を進むのはそれ程苦にはならない。
だが、何かおかしい。
どう、とは言えないのだが、何だかいつものミヘン街道の空気とは違う、禍々しさを感じてしまう。
なぜか変な胸騒ぎのようなものがして、何とも言い難い不安定で気持ち悪い靄の中を進んでいるような気分になる。
普段なら、1日あれば十分渡りきることが出来るのだが、何せこの大所帯につい先日まで戦闘など全く経験のなかった素人君が混じっている。
あのジェクトの息子なのだから、少しはできるのだろうと思っていたが、確かにブリッツの才能は素晴らしいものがあるだろう。
しかし、こと戦闘に於いてはちょっと頼りない。
まぁ、これからどんどん成長していくことだろう。
空にあった太陽の位置が目に見えて低くなっていく。
少しペースを上げてもらわねば、今夜は野宿することになってしまいそうだ。
「アーロン」
「…あぁ、仕方が無いな」
私が言いたかったことを、すぐに理解してくれたようだ。
こう言う時は何も言わなくても伝わることが素直に嬉しい。
ユウナにペースを上げる旨を伝え、私とアーロンの2人が最前線に出る。
現れる魔物は全て瞬殺。
おかげで日が沈む前に旅行公司に到着することが出来た。
「あそこで休むぞ」
「ええっ!?」
アーロンの一言に驚きの声を上げたのは、エボンの熱心な信者でもあるワッカだ。
ビサイドで初めて出会ったときから、ほんの少しの違和感はあった。
当時13歳だったワッカは、その当時からエボンの教えに忠実だった。
エボン寺院が禁止している機械を使うアルベド族を毛嫌いし、そのアルベド族が経営しているこの旅行公司を利用することも嫌悪感を抱いている。
ずっと感じていた違和感。
エボンの教えを信じ、大召喚士となったブラスカを崇拝しているのに、ブラスカが大召喚士となる以前のことは何も聞かされていないのだろうか?
ブラスカが誰と結婚したのか、知らないのだろうか?
その娘であるユウナのことを、本当の妹のように思っているワッカにわざと誰も教えないように隠してきたのだろうか?
燃えるよう、とはまさにこんな景色のことなのだろう。
公司の窓から差し込む夕焼けは、部屋の中だけに留まらず、世界のあらゆる物をその色に染め上げていく。
それは目に見えるものだけでなく、海を流れる潮風も、寝床に帰る生き物達も、この景色を見つめる人間の心の中さえも淡い温かい光に変えていくようだ。
その夕日に黒い小さな影が1つ、公司が建つ丘の上の崖際に見える。
1人ぽつんと座り込んで、夕日を眺めているのか、物思いに耽っているのか、同じ姿勢のまま動かないのはわれらの召喚士だ。
何に惹かれたのだろうか?
なぜか、外に出たくなった。
部屋を出ると、公司のエントランス付近でルールーとワッカが何か話し合っていた。
公司を利用することでアルベドがどうとか、教えがどうとか、相変わらず言っているのだろうか?
公司の外に出たところに、アーロンが立っていた。
キマリと共に、じっとユウナを見守っているようにも見える。
側まで歩み寄り、同じ様に何も言葉を発しないまま私もユウナを見つめた。
「…ユウナも、やっぱりブラスカと同じだな」
「…フッ、やはり、親子だな」
10年前、ブラスカもここで同じ様にじっと夕日を見つめていた。
声を掛けることを躊躇われてしまうほどに、穏やかに、優しい眼差しで…
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『みんな困ってんだ。オレらが退治しねぇでどうする!』
思わず浮かんだ言葉に噴出してしまう。
それと同時にアーロンまでクスリと笑みを漏らした。
考えていることは同じ様だ。
それに対して反発するように、少年が言葉を重ねる。
その姿にどうしても、かつての仲間が重なって見えるのは仕方の無いことだと思う。
「(あぁ、やっぱり親子なんだ)」
ミヘン街道を進み、街道に出没する大型の魔物の存在を教えられる。
チョコボイーターと名づけられたその大型の魔物は、その名の通りチョコボを好んで餌にしてしまう凶暴な魔物だ。
多くの魔物が出没するこのミヘン街道は、危険も多いがルカとジョゼを繋ぐ大事な旅の要。
旅をするものは必ず通らねばならない道でもある。
この街道には、そういった魔物と遭遇せずとも渡れるようにと、旅人は飼い慣らされたチョコボという大型の鳥で移動する手段を用いるようになった。
空を飛ぶことが出来ない代わりに、長く太い両足でかなりの速度で走ることが出来る上に、多少足場が悪くてもものともしない。
人懐こく、頭も良いため、チョコボを利用する旅人は多い。
そのチョコボが、さらに大型の魔物に襲われると言うことは、この街道を利用する旅人の足にも当然大きな影響を及ぼすことになる。
その話を聞いてしまった少年が、魔物を退治しようと言い出したのだ。
そのセリフや言い回しが、あまりにも10年前のジェクトに酷似していた為、噴出してしまったのだった。
ミヘン街道は、確かに多くの魔物が出没する。
だが、その魔物の多くは比較的温厚と言えるかもしれない。
異界の匂いに敏感な自分でも、時々嗅ぎ分けられないものもいる。
…まぁ、すぐ近くにその異界の匂いを撒き散らしている人物がいるせいでもあるんだけど…
1人で旅をしている時も、ミヘン街道を進むのはそれ程苦にはならない。
だが、何かおかしい。
どう、とは言えないのだが、何だかいつものミヘン街道の空気とは違う、禍々しさを感じてしまう。
なぜか変な胸騒ぎのようなものがして、何とも言い難い不安定で気持ち悪い靄の中を進んでいるような気分になる。
普段なら、1日あれば十分渡りきることが出来るのだが、何せこの大所帯につい先日まで戦闘など全く経験のなかった素人君が混じっている。
あのジェクトの息子なのだから、少しはできるのだろうと思っていたが、確かにブリッツの才能は素晴らしいものがあるだろう。
しかし、こと戦闘に於いてはちょっと頼りない。
まぁ、これからどんどん成長していくことだろう。
空にあった太陽の位置が目に見えて低くなっていく。
少しペースを上げてもらわねば、今夜は野宿することになってしまいそうだ。
「アーロン」
「…あぁ、仕方が無いな」
私が言いたかったことを、すぐに理解してくれたようだ。
こう言う時は何も言わなくても伝わることが素直に嬉しい。
ユウナにペースを上げる旨を伝え、私とアーロンの2人が最前線に出る。
現れる魔物は全て瞬殺。
おかげで日が沈む前に旅行公司に到着することが出来た。
「あそこで休むぞ」
「ええっ!?」
アーロンの一言に驚きの声を上げたのは、エボンの熱心な信者でもあるワッカだ。
ビサイドで初めて出会ったときから、ほんの少しの違和感はあった。
当時13歳だったワッカは、その当時からエボンの教えに忠実だった。
エボン寺院が禁止している機械を使うアルベド族を毛嫌いし、そのアルベド族が経営しているこの旅行公司を利用することも嫌悪感を抱いている。
ずっと感じていた違和感。
エボンの教えを信じ、大召喚士となったブラスカを崇拝しているのに、ブラスカが大召喚士となる以前のことは何も聞かされていないのだろうか?
ブラスカが誰と結婚したのか、知らないのだろうか?
その娘であるユウナのことを、本当の妹のように思っているワッカにわざと誰も教えないように隠してきたのだろうか?
燃えるよう、とはまさにこんな景色のことなのだろう。
公司の窓から差し込む夕焼けは、部屋の中だけに留まらず、世界のあらゆる物をその色に染め上げていく。
それは目に見えるものだけでなく、海を流れる潮風も、寝床に帰る生き物達も、この景色を見つめる人間の心の中さえも淡い温かい光に変えていくようだ。
その夕日に黒い小さな影が1つ、公司が建つ丘の上の崖際に見える。
1人ぽつんと座り込んで、夕日を眺めているのか、物思いに耽っているのか、同じ姿勢のまま動かないのはわれらの召喚士だ。
何に惹かれたのだろうか?
なぜか、外に出たくなった。
部屋を出ると、公司のエントランス付近でルールーとワッカが何か話し合っていた。
公司を利用することでアルベドがどうとか、教えがどうとか、相変わらず言っているのだろうか?
公司の外に出たところに、アーロンが立っていた。
キマリと共に、じっとユウナを見守っているようにも見える。
側まで歩み寄り、同じ様に何も言葉を発しないまま私もユウナを見つめた。
「…ユウナも、やっぱりブラスカと同じだな」
「…フッ、やはり、親子だな」
10年前、ブラスカもここで同じ様にじっと夕日を見つめていた。
声を掛けることを躊躇われてしまうほどに、穏やかに、優しい眼差しで…
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