第5章【ベベル~ナギ平原】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しつこい男は嫌われる
=49=
広いナギ平原を通り抜け、深い谷がすぐ近くまで見えるところに差し掛かったとき、そこで待ち伏せていたのか2人のグアド族の男が私達の行く手を塞ぎ立ちはだかった。
あの男の命により、また私とユウナを連れて行く気なのだろう。
私は勿論、ユウナもきっぱりと断る旨を口にし、男たちは死体でも構わぬというシーモアの言葉を伝える。
…死体でも構わぬ…?
「…だが、そちらの女、お前だけは生かして連れて行く」
明らかに私を指差して男は言う。
そうだろう、私が生きているからこそ、シーモアには利用価値があるのだから。
この男たちの狙いがどこにあるのか、恐らくユウナも他のガード達もわかっていない。
私が、時が来たら全部話すと、以前に言った言葉を信じてくれているのだろう。
皆に申し訳ないという気持ちよりも、シーモアに対する嫌悪感のほうが遥かに勝っている。
本当に、どこまで身勝手な奴だろうか。
私とユウナが断ったことで、グアド族の男たちは戦闘をしてでも力付くで連行したいのだろう。
いつものように魔物を召喚しての戦闘になるのだろうと、私を始めその場にいた全員が戦闘体勢を取る。
谷の底の方から響いてくる重い足音と、次第に感じる僅かな地面の揺れ。
独特の機械音を響かせて現われた巨大な機械魔人。
アルベドの使う機械を禁止しているにも関わらず、ベベルでは戦力として当然のように機械を使っている。
その最たるもの、『護法戦機』。
とてつもない強度と力を有する、ベベルを守護する機械兵器だ。
私がまだベベルで暮らしていたずっと昔から、開発はされていた。
だが機械を禁止するエボンの教えの元、公の場で登場することはまず無い。
あくまでも寺院を守護するのが役目なのだ。
ユウナの生死を問わない、隠してきた筈の機械兵器を惜しげもなく晒し、体面を気に掛けることも無くこうして召喚士に刃を向ける。
そこまでしてユウナを、私を手に入れねばならないのか…
「こいつは動きは鈍いけど物凄い力を持ってる。気をつけて!!」
「ラフテル、こいつ知ってんのか?」
「…ベベルの寺院のものだ」
「!? …アルベドじゃなく、…寺院、!?」
「ワッカ、ベベルの寺院の地下で見たでしょう?」
「……くそ!」
「行くぞ!」
そこでふと気が付く。
ワッカの言動から、リュックがアルベドの人間だと分かってるような感じ、受けるような…?
リュック、話したんだろうか?
それなら言っても大丈夫か。
「リュック、背後に回ってイジれるか?」
「もっちろん!ちょいちょいってやっちゃうよ!」
「頼もしいな。ワッカ、あいつの目潰し、アーロンは装甲を崩して!ティーダは時間差攻撃!キマリ!腕の繋ぎ目狙って。ルールー、腕を振り上げた瞬間がチャンスだ。ユウナ、下がってろなんて言わない。隙があったらいつでも召喚してくれ」
私の指示にみんなからそれぞれ返事を受け取る。
そして私はこの機械魔人を使うグアド族の男たちに向き合った。
この機械が負けるわけがないと高をくくっていたようだ。
全員でそちらにかかり、まさか自分達が闘うことになるとは思っていなかったのだろう。
慌てた様子で体勢を直すと思った通りどこからともなく魔物を召喚する。
「やはり、あれはあんたたちが呼んだわけじゃないみたいだな。…シーモアか…」
「できればキズつけることなく連れ帰りたかったが…」
「なぁに、生きてさえいればいい」
この男達は私のことを知らないのか、私の強さも。
私を囲むように対峙した数匹の魔物はどれも耳障りな鳴き声や唸り声を上げ、異界の匂いを撒き散らしている。
気分の悪さと機嫌の悪さと私の攻撃力は比例するようだ。
私は身を構えることもせず、ただそこに立ち尽くした。
魔物達は襲い掛かる気配を見せない。
「観念したか」
「おい、さっさと捕らえろ」
男達の声にも魔物は動かない。
私は片腕を地面と水平になるようにゆっくりと持ち上げ、1体の魔物を指差すようにして指先に魔力を集中させる。
その姿勢のまま、クルリとその場で一回り。
男達は私が何をしたのか意味がわからなかったのだろう。
勝ち誇ったような笑みを浮かべた顔に疑問符が浮かぶ。
「わけのわからないことを!」
「おい、やれ!」
男達の声を合図に魔物達は一斉に襲いかかってきた。
その瞬間、私は魔物を指差したままの指から小さな炎を灯す。
『ファイア!』
大気を震わせる空気の波が巻き起こる。
巨大な火柱が上がった。
1人立つ私を中心にして、私を囲む炎の壁は周囲の魔物もグアドの男達も飲み込んでしまった。
炎が作り出す強烈な上昇気流が私の服と髪を舞い上がらせ、幻光虫になることもできずに消滅してしまった魔物と男達のいた場所を見つめた。
どうやら向こうも終わったらしい。
大きな石の残骸や機械の部品らしきものが散乱していた。
「ラフテル、大丈夫っスか!?」
すぐに少年がかけよってくる。
もう炎はすっかり消えて、少々火照った顔に手を当てる。
少年に続いて他のメンバーも歩み寄ってくる。
「なんだ今の?」
「今の、魔法、なの?」
「…フッ、久しぶりに見たな」
「アーロンさん、ご存知なんですか?」
魔法は、その属性の力をそのまま出すことが勿論基本だ。
だが私はそれを応用して様々に組み替えたり併用したりできる。
つまりはアレンジといいやつだ。
「今の、どうやったの?」
やはり魔法に関することにはルールーは興味が大きいようだ。
「ま、追々、な。…それより、ユウナ」
「はい」
「今の、シーモアの差し金ってことは…」
「…はい、きっとまた狙ってくると思います」
「当然だな。異界送りせん限りは何度でも蘇る」
「…そうですね」
「だ~いじょぶっス!何度来てもやっつけてやる!ユウナは俺が守るっス!」
「こら~!“俺達”でしょ~~!」
「まったくだ!」
しつこいシーモアの攻めに少々気落ちしていたようにも見えたユウナの顔が皆の声で明るくなっていくのがよくわかった。
「じゃ、出発します」
谷に架かる橋を越えようとしたところで、少年が谷底に降りる道を見つけた。
→
=49=
広いナギ平原を通り抜け、深い谷がすぐ近くまで見えるところに差し掛かったとき、そこで待ち伏せていたのか2人のグアド族の男が私達の行く手を塞ぎ立ちはだかった。
あの男の命により、また私とユウナを連れて行く気なのだろう。
私は勿論、ユウナもきっぱりと断る旨を口にし、男たちは死体でも構わぬというシーモアの言葉を伝える。
…死体でも構わぬ…?
「…だが、そちらの女、お前だけは生かして連れて行く」
明らかに私を指差して男は言う。
そうだろう、私が生きているからこそ、シーモアには利用価値があるのだから。
この男たちの狙いがどこにあるのか、恐らくユウナも他のガード達もわかっていない。
私が、時が来たら全部話すと、以前に言った言葉を信じてくれているのだろう。
皆に申し訳ないという気持ちよりも、シーモアに対する嫌悪感のほうが遥かに勝っている。
本当に、どこまで身勝手な奴だろうか。
私とユウナが断ったことで、グアド族の男たちは戦闘をしてでも力付くで連行したいのだろう。
いつものように魔物を召喚しての戦闘になるのだろうと、私を始めその場にいた全員が戦闘体勢を取る。
谷の底の方から響いてくる重い足音と、次第に感じる僅かな地面の揺れ。
独特の機械音を響かせて現われた巨大な機械魔人。
アルベドの使う機械を禁止しているにも関わらず、ベベルでは戦力として当然のように機械を使っている。
その最たるもの、『護法戦機』。
とてつもない強度と力を有する、ベベルを守護する機械兵器だ。
私がまだベベルで暮らしていたずっと昔から、開発はされていた。
だが機械を禁止するエボンの教えの元、公の場で登場することはまず無い。
あくまでも寺院を守護するのが役目なのだ。
ユウナの生死を問わない、隠してきた筈の機械兵器を惜しげもなく晒し、体面を気に掛けることも無くこうして召喚士に刃を向ける。
そこまでしてユウナを、私を手に入れねばならないのか…
「こいつは動きは鈍いけど物凄い力を持ってる。気をつけて!!」
「ラフテル、こいつ知ってんのか?」
「…ベベルの寺院のものだ」
「!? …アルベドじゃなく、…寺院、!?」
「ワッカ、ベベルの寺院の地下で見たでしょう?」
「……くそ!」
「行くぞ!」
そこでふと気が付く。
ワッカの言動から、リュックがアルベドの人間だと分かってるような感じ、受けるような…?
リュック、話したんだろうか?
それなら言っても大丈夫か。
「リュック、背後に回ってイジれるか?」
「もっちろん!ちょいちょいってやっちゃうよ!」
「頼もしいな。ワッカ、あいつの目潰し、アーロンは装甲を崩して!ティーダは時間差攻撃!キマリ!腕の繋ぎ目狙って。ルールー、腕を振り上げた瞬間がチャンスだ。ユウナ、下がってろなんて言わない。隙があったらいつでも召喚してくれ」
私の指示にみんなからそれぞれ返事を受け取る。
そして私はこの機械魔人を使うグアド族の男たちに向き合った。
この機械が負けるわけがないと高をくくっていたようだ。
全員でそちらにかかり、まさか自分達が闘うことになるとは思っていなかったのだろう。
慌てた様子で体勢を直すと思った通りどこからともなく魔物を召喚する。
「やはり、あれはあんたたちが呼んだわけじゃないみたいだな。…シーモアか…」
「できればキズつけることなく連れ帰りたかったが…」
「なぁに、生きてさえいればいい」
この男達は私のことを知らないのか、私の強さも。
私を囲むように対峙した数匹の魔物はどれも耳障りな鳴き声や唸り声を上げ、異界の匂いを撒き散らしている。
気分の悪さと機嫌の悪さと私の攻撃力は比例するようだ。
私は身を構えることもせず、ただそこに立ち尽くした。
魔物達は襲い掛かる気配を見せない。
「観念したか」
「おい、さっさと捕らえろ」
男達の声にも魔物は動かない。
私は片腕を地面と水平になるようにゆっくりと持ち上げ、1体の魔物を指差すようにして指先に魔力を集中させる。
その姿勢のまま、クルリとその場で一回り。
男達は私が何をしたのか意味がわからなかったのだろう。
勝ち誇ったような笑みを浮かべた顔に疑問符が浮かぶ。
「わけのわからないことを!」
「おい、やれ!」
男達の声を合図に魔物達は一斉に襲いかかってきた。
その瞬間、私は魔物を指差したままの指から小さな炎を灯す。
『ファイア!』
大気を震わせる空気の波が巻き起こる。
巨大な火柱が上がった。
1人立つ私を中心にして、私を囲む炎の壁は周囲の魔物もグアドの男達も飲み込んでしまった。
炎が作り出す強烈な上昇気流が私の服と髪を舞い上がらせ、幻光虫になることもできずに消滅してしまった魔物と男達のいた場所を見つめた。
どうやら向こうも終わったらしい。
大きな石の残骸や機械の部品らしきものが散乱していた。
「ラフテル、大丈夫っスか!?」
すぐに少年がかけよってくる。
もう炎はすっかり消えて、少々火照った顔に手を当てる。
少年に続いて他のメンバーも歩み寄ってくる。
「なんだ今の?」
「今の、魔法、なの?」
「…フッ、久しぶりに見たな」
「アーロンさん、ご存知なんですか?」
魔法は、その属性の力をそのまま出すことが勿論基本だ。
だが私はそれを応用して様々に組み替えたり併用したりできる。
つまりはアレンジといいやつだ。
「今の、どうやったの?」
やはり魔法に関することにはルールーは興味が大きいようだ。
「ま、追々、な。…それより、ユウナ」
「はい」
「今の、シーモアの差し金ってことは…」
「…はい、きっとまた狙ってくると思います」
「当然だな。異界送りせん限りは何度でも蘇る」
「…そうですね」
「だ~いじょぶっス!何度来てもやっつけてやる!ユウナは俺が守るっス!」
「こら~!“俺達”でしょ~~!」
「まったくだ!」
しつこいシーモアの攻めに少々気落ちしていたようにも見えたユウナの顔が皆の声で明るくなっていくのがよくわかった。
「じゃ、出発します」
谷に架かる橋を越えようとしたところで、少年が谷底に降りる道を見つけた。
→