第5章【ベベル~ナギ平原】
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解放
=44=
「ティーダ!!」
思わず声を大にして叫ぶ。
私の横にフワリと風が巻き起こり、目の端に赤いものが見えた次の瞬間、耳障りな金属音のような音が響いた。
すぐ後ろから温かな光が私たちを照らし、少年の安堵の声が洩れた。
「アーロン!」
幻光異体が本体から離れた瞬間、キマリとワッカ、そしてルールーの魔法攻撃が容赦なくシーモアに向けられる。
「へっへ~ん、お宝は貰っちゃったもんね~」
いつの間にかアイテムを盗み出していたリュックが私たちに回復薬を振り撒いていった。
アーロンと視線を合わせ、息を吸い込む。
同時にするどい爪をへし折り、斬撃を浴びせる。
飛び散る幻光虫にフラフラとなりながらも、幻光異体はシーモアの元へ戻り、そして再びシーモアから幻光虫を吸い取る。
だがそれももう上手くシンクロできなくなってきたのか、実体を保っていられないようで微かに透けている。
「…ユウナ、とどめを!」
「はい!」
握り締めた杖に祈りを捧げるように目を閉じて、ユウナは集中していく。
足元に浮かび上がった大きな魔方陣はユウナを中心にして光が迸る。
「力を貸して…『バハムート!』」
グレートブリッジから覗く遥か上空の雲を切り裂くようにして、それは舞い降りた。
黒い大きな翼をはためかせ、するどい爪を鈍く光らせて、強大な力を持つ最強の召喚獣がユウナの前に立った。
その圧倒的な存在感と覇気。
巨大な翼が生み出す風は竜巻となり、豪風が術者をも襲う。
直接攻撃にも魔法攻撃にも耐えうる強靭な肉体。
私が初めてこれを目にしたのも、ここベベルだったなと、妙に感慨にふけってしまった。
バハムートは自分の胸の前で組んでいた太い腕をほどき、攻撃の体制に入る。
背の羽根と羽根の間にある紋章を型どった陣盤がぐるぐると回り、大きな口を敵に向けた。
『インパルス!』
物凄い光と熱量がシーモアと幻光異体を同時に包み込む。
目が眩むような眩い光が収まると、急に辺りはしんと静まる。
動きの止まったシーモアと、反対に痙攣するようにカタカタと小刻みに揺れる幻光異体。
淡い光を漂わせながら、空中に溶けるように幻光異体は霧散した。
「お、お、お、おぉ…」
同時に地獄の底から響いてくるような低く重い声を上げながら、幻光虫を撒き散らし、シーモアもまたその姿を留めることなく空へ消えた。
「はあ、はあ…」
召喚獣を空に還し、ユウナは力尽きたようにその場に崩れ落ちた。
その背にそっと手を添え、労るようにゆっくり立たせてやる。
「私、みんなに…」
「後にしろ。今はここを出るのが先だ」
ユウナの言葉を遮るようにアーロンが言う。
先程は出るのを躊躇った仲間達だが今回の行動は早かった。
騒動を聞き付けた兵士達が、徒党を組んで押し掛けるのは目に見えていた。
ベベルの大きな街並みを目の端に捉えながら皆走った。
一目散に、振り返ることもせず。
そうして辿り着いたのはマカラーニャの森。
ここに辿り着くまでに、私はあの日を思い出していた。
来る日も来る日もお飾りとして利用され続けたベベルから逃げて、泣いたあの日のことを。
森の一画で体を休ませることができそうな場所を見つけ、そこで休息を取ることにした。
酷く憔悴しきっているユウナには尚ゆっくりさせる必要があるだろう。
ユウナをキマリに任せ、アーロンと私は今走ってきたベベルの方向へ逆戻りする。
今一番警戒すべきはベベルからの追っ手だ。
せっかくここまで逃げてきて、再度捕まったりしたら意味はないし、何よりもう二度と生きて出ることはできないだろう。
ベベルの寺院、兵の警備について、たとえ10年のブランクがあるとは言え、仲間達の中で知識があるのは私とアーロンだけ。
ユウナもベベルで暮らしてはいたが、幼い子供に僧兵の警備の様子など論外だ。
ある程度、寺院や街の様子を確認したところで、私達もみんなのところに戻ることにした。
私とアーロンが戻るのを待っていたのか、姿を見掛けた途端ワッカが声を掛けてきた。
「どうでした?」
「今のところ追っ手はない」
「寺院も静かなものだった。もう少し騒動になってるかと思ったけどね」
「だが今後、寺院に近付くべきではないだろうな」
「…そうっスか」
今夜はここで夜を明かすことになりそうだ。
少し離れた奥まった場所で野宿の準備をしていたのであろう少年がこちらに歩み寄ってきた。
「やっぱ俺の言った通りだったろ、アーロン」
「…まぁ、今回ばかりは譲ってやる」
「あ、なんだよその言い方!…ったく大人ってズリィよな~」
「?」
アーロンと少年の話の意味がわからない。
「ところで、ユウナはどうしてるんだ?」
その場に姿が見えなかったユウナとキマリのことを聞いてみた。
「さあ?俺、知らないっスよ」
「ひとりになりたいってさ」
「奥の湖のほうへキマリと行ったわ。様子をみてきたら?」
会話を聞いていたのか、リュックとルールーがそれに答えた。
「…だろうな」
小さく嘆息して、アーロンは皆から少し離れたところに腰を落ち着けた。
少年はまだ皆と話を続けているようで、声が届いてくる。
「…ユウナ、旅やめてくれるかな?」
「そのほうがいいだろ」
「ユウナに全部決めさせるなんて、無責任だよな…」
「何も考えずに旅ができたら、よかったわね…」
少年はどうしたらいいのか迷っているようだ。
こういうときこそ、行って慰めてやればいいのに…
そう思う私の心情を読み取ったのか、アーロンが少年を呼びつけた。
「…なんスか?」
「…フッ、お前の出番、ではないのか?」
意地悪そうに笑みを浮かべた顔でアーロンは少年に言う。
「!?」
「ユウナの気持ち、汲み取ってやれ、ティーダ。ユウナんとこ行って、慰めてやってくれよ」
「…う、うっス…」
→
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「ティーダ!!」
思わず声を大にして叫ぶ。
私の横にフワリと風が巻き起こり、目の端に赤いものが見えた次の瞬間、耳障りな金属音のような音が響いた。
すぐ後ろから温かな光が私たちを照らし、少年の安堵の声が洩れた。
「アーロン!」
幻光異体が本体から離れた瞬間、キマリとワッカ、そしてルールーの魔法攻撃が容赦なくシーモアに向けられる。
「へっへ~ん、お宝は貰っちゃったもんね~」
いつの間にかアイテムを盗み出していたリュックが私たちに回復薬を振り撒いていった。
アーロンと視線を合わせ、息を吸い込む。
同時にするどい爪をへし折り、斬撃を浴びせる。
飛び散る幻光虫にフラフラとなりながらも、幻光異体はシーモアの元へ戻り、そして再びシーモアから幻光虫を吸い取る。
だがそれももう上手くシンクロできなくなってきたのか、実体を保っていられないようで微かに透けている。
「…ユウナ、とどめを!」
「はい!」
握り締めた杖に祈りを捧げるように目を閉じて、ユウナは集中していく。
足元に浮かび上がった大きな魔方陣はユウナを中心にして光が迸る。
「力を貸して…『バハムート!』」
グレートブリッジから覗く遥か上空の雲を切り裂くようにして、それは舞い降りた。
黒い大きな翼をはためかせ、するどい爪を鈍く光らせて、強大な力を持つ最強の召喚獣がユウナの前に立った。
その圧倒的な存在感と覇気。
巨大な翼が生み出す風は竜巻となり、豪風が術者をも襲う。
直接攻撃にも魔法攻撃にも耐えうる強靭な肉体。
私が初めてこれを目にしたのも、ここベベルだったなと、妙に感慨にふけってしまった。
バハムートは自分の胸の前で組んでいた太い腕をほどき、攻撃の体制に入る。
背の羽根と羽根の間にある紋章を型どった陣盤がぐるぐると回り、大きな口を敵に向けた。
『インパルス!』
物凄い光と熱量がシーモアと幻光異体を同時に包み込む。
目が眩むような眩い光が収まると、急に辺りはしんと静まる。
動きの止まったシーモアと、反対に痙攣するようにカタカタと小刻みに揺れる幻光異体。
淡い光を漂わせながら、空中に溶けるように幻光異体は霧散した。
「お、お、お、おぉ…」
同時に地獄の底から響いてくるような低く重い声を上げながら、幻光虫を撒き散らし、シーモアもまたその姿を留めることなく空へ消えた。
「はあ、はあ…」
召喚獣を空に還し、ユウナは力尽きたようにその場に崩れ落ちた。
その背にそっと手を添え、労るようにゆっくり立たせてやる。
「私、みんなに…」
「後にしろ。今はここを出るのが先だ」
ユウナの言葉を遮るようにアーロンが言う。
先程は出るのを躊躇った仲間達だが今回の行動は早かった。
騒動を聞き付けた兵士達が、徒党を組んで押し掛けるのは目に見えていた。
ベベルの大きな街並みを目の端に捉えながら皆走った。
一目散に、振り返ることもせず。
そうして辿り着いたのはマカラーニャの森。
ここに辿り着くまでに、私はあの日を思い出していた。
来る日も来る日もお飾りとして利用され続けたベベルから逃げて、泣いたあの日のことを。
森の一画で体を休ませることができそうな場所を見つけ、そこで休息を取ることにした。
酷く憔悴しきっているユウナには尚ゆっくりさせる必要があるだろう。
ユウナをキマリに任せ、アーロンと私は今走ってきたベベルの方向へ逆戻りする。
今一番警戒すべきはベベルからの追っ手だ。
せっかくここまで逃げてきて、再度捕まったりしたら意味はないし、何よりもう二度と生きて出ることはできないだろう。
ベベルの寺院、兵の警備について、たとえ10年のブランクがあるとは言え、仲間達の中で知識があるのは私とアーロンだけ。
ユウナもベベルで暮らしてはいたが、幼い子供に僧兵の警備の様子など論外だ。
ある程度、寺院や街の様子を確認したところで、私達もみんなのところに戻ることにした。
私とアーロンが戻るのを待っていたのか、姿を見掛けた途端ワッカが声を掛けてきた。
「どうでした?」
「今のところ追っ手はない」
「寺院も静かなものだった。もう少し騒動になってるかと思ったけどね」
「だが今後、寺院に近付くべきではないだろうな」
「…そうっスか」
今夜はここで夜を明かすことになりそうだ。
少し離れた奥まった場所で野宿の準備をしていたのであろう少年がこちらに歩み寄ってきた。
「やっぱ俺の言った通りだったろ、アーロン」
「…まぁ、今回ばかりは譲ってやる」
「あ、なんだよその言い方!…ったく大人ってズリィよな~」
「?」
アーロンと少年の話の意味がわからない。
「ところで、ユウナはどうしてるんだ?」
その場に姿が見えなかったユウナとキマリのことを聞いてみた。
「さあ?俺、知らないっスよ」
「ひとりになりたいってさ」
「奥の湖のほうへキマリと行ったわ。様子をみてきたら?」
会話を聞いていたのか、リュックとルールーがそれに答えた。
「…だろうな」
小さく嘆息して、アーロンは皆から少し離れたところに腰を落ち着けた。
少年はまだ皆と話を続けているようで、声が届いてくる。
「…ユウナ、旅やめてくれるかな?」
「そのほうがいいだろ」
「ユウナに全部決めさせるなんて、無責任だよな…」
「何も考えずに旅ができたら、よかったわね…」
少年はどうしたらいいのか迷っているようだ。
こういうときこそ、行って慰めてやればいいのに…
そう思う私の心情を読み取ったのか、アーロンが少年を呼びつけた。
「…なんスか?」
「…フッ、お前の出番、ではないのか?」
意地悪そうに笑みを浮かべた顔でアーロンは少年に言う。
「!?」
「ユウナの気持ち、汲み取ってやれ、ティーダ。ユウナんとこ行って、慰めてやってくれよ」
「…う、うっス…」
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