第4章【マカラーニャ~ベベル】
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名ばかりの裁判
=40=
足音が聞こえた。
皆、激しい戦闘をしてきた後なのだろう。
そしてユウナに会えた安堵から緊張の糸が緩んでいたようだ。
背後を簡単に取られた仲間達の頭に突き付けられる銃口。
首筋に当てられた冷たく光る鋭い刃。
私達はその場で動くことを封じられた。
タイミング悪く、祈り子の間からユウナを抱えた少年が出てきた。
この状況を理解したのか黙って従っている。
兵士達を掻き分けるようにして出てきたのはキノックだった。
私の存在を知って驚いた顔を向ける。
「ラフテル、私のところに戻る気があるなら、上手く取り計らってやることもできるが…?」
「私は、あんたの権力の道具じゃない」
私達はこれから裁判にかけられるそうで勝ち誇ったような笑いを向けてきた。
「せいぜい祈れ」
ここが祈り子の部屋であったことの嫌味なのか。
ユウナだけ、着替えのために一旦女性兵士と共に別室に連行されることになり、他のメンバーは即裁判の間へ連れられる。
「ユウナ!」
少年が心配そうに声を荒げる。
「大丈夫だ、ティーダ、私が一緒に行く」
その言葉に少年は大人しく身を引いてくれたが、ユウナを連れた女性兵士は戸惑っているようだ。
「私なら、構わない、そうだろ?」
女性兵士は私が誰なのか知っているはず。
予想通り共に行くことを承諾してくれた。
「ラフテルさん」
「大丈夫だユウナ。裁判にかけるってことは、とりあえず危害を加えられる心配はない。それに…」
「?」
「これはチャンスとも考えないか?マイカに本当の事を伝えられる。
ユウナが考えてること思いの丈をぶつけられる」
顔を上げたユウナは目に力を宿しているのが分かった。
決意に満ち溢れた表情。
私が口を出すまでも無さそうだ。
議長席に立ったのは、キマリと同じロンゾの民であるケルク=ロンゾ老師。
厳かに、いかにも威厳たっぷりに前口上を述べる。
裁判の時に罪人に掛けるお決まりの台詞というやつだ。
いかにもらしくて、いかにもバカバカしくて、ムカついてくる。
ここにいるケルクも、キノックもマイカも、召喚士が辿る運命を知っている。
そしてわざとその真実を世間から隠匿し、わざとシンに召喚士を立ち向かわせるのだ。
こんなバカな茶番はない。
それに…
死者であるシーモアを異界へ送りたい。それがユウナの願いであり望み。
だがユウナ、それはきっと敵わない。
なぜなら…
「死人は異界へ、か……フッフッフッフ…」
バカにしたように肩を震わせたマイカの体から、フワリと幻光虫が飛び出した。
「「「!!!」」」
ユウナを始め、見ていた仲間達は己の目を疑った。
エボンの総老師であり、50年もの長きに渡りその座に君臨し続けてきた最高権力者でもあるマイカは、すでに死人。
ジスカルから聞いてはいたが、実際にこの目で確認したのはこれが始めてのこと。
私でも少々堪えた。
あの時、私がガードとして旅立つ許可をくれたあの時のマイカと、何一つ変わってはいない筈なのに…
あの時の優しい、尊大な威厳は微塵も感じられない。
今目の前にいるこの老人は、ただ生にしがみ付いているだけの哀れな存在に見えてしまった。
死に満ち、死によって支配され、変わらぬ世界を保つこと。
それがエボンの真実であり本質。
「違う!!」
私の叫び声にマイカの顔が僅かに曇った。
「そう思っているのは、望んでいるのはお前だけだろ!」
「…ラフテル!?」
ガード達、ユウナ、そしてマイカやシーモアの目までもが一斉にこちらに向けられた。
「ロンゾに教えを広め一族の誇りを守るケルクには真実を伝えず、アルベドに教えを広めようとアルベドの女性と結ばれたブラスカは民の希望の名の下犠牲となり、グアドとヒトを和解させ結びつけたジスカルを手にかけて、何が変化を望まないだ!
ジスカルは生を望んでいた。死に囚われるエボンをスピラを危惧し続けていた。いつでも変化を求めていた!
スピラは変化している。自らの力で変わろうとしている。長い長い1000年の時を経て、シンの脅威を打ち滅ぼさんと、死の螺旋を打ち破ろうとしている。
変わらないことを望むのは、その地位にいつまでもしがみつくお前だけのエゴだ!!」
言い切った私は荒い息を整えるようにマイカを睨みつけた。
マイカの表情は変わらない。
それどころか平然とした顔で言ってのけた。
「フッフッフッフッフ…。この反逆者ごときが。何を分かったつもりでおるのか」
「…変だよ。…おかしいよ…」
「真実に異を唱える者、これすなわち反逆者!」
ユウナの呟きが決定打だとでも言うように、マイカの判決は決したようだ。
反逆者には全て死の安息を。
それが裁判の本当の姿。
判決なんて、“死”以外にはありえないのだ。
「無駄だ、ラフテル…。ここであいつに何を言っても聞き流されるだけだ。あいつにはどうせ何もできん」
「…うん、すまない。少し感情を出しすぎた」
すぐに兵士たちが銃を突きつけ、私達はまたあの暗い地下に連行されることになる。
また、あの鳥篭に入れられるのかと思うと、それだけで気分が滅入る。
「あなたほどの人があんなに感情をむき出しにしたところを見たのは、初めて」
「…そう? ごめん、いきなり」
私の謝罪に対して、瞑目して、ゆっくりと否定の意味を込めて首を左右に振って見せる。
「私も、同じ気持ちだから。“死”に捕らわれたこのスピラで“生”を紡いでいくのは本当に難しいこと。でも、それが皆の望み」
「うん、決められた運命なんて、ない」
同じ檻に入れられた私とルールーの元へ、ニヤついた僧兵が迎えに来たのはそれからすぐのことだった。
→第5章
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足音が聞こえた。
皆、激しい戦闘をしてきた後なのだろう。
そしてユウナに会えた安堵から緊張の糸が緩んでいたようだ。
背後を簡単に取られた仲間達の頭に突き付けられる銃口。
首筋に当てられた冷たく光る鋭い刃。
私達はその場で動くことを封じられた。
タイミング悪く、祈り子の間からユウナを抱えた少年が出てきた。
この状況を理解したのか黙って従っている。
兵士達を掻き分けるようにして出てきたのはキノックだった。
私の存在を知って驚いた顔を向ける。
「ラフテル、私のところに戻る気があるなら、上手く取り計らってやることもできるが…?」
「私は、あんたの権力の道具じゃない」
私達はこれから裁判にかけられるそうで勝ち誇ったような笑いを向けてきた。
「せいぜい祈れ」
ここが祈り子の部屋であったことの嫌味なのか。
ユウナだけ、着替えのために一旦女性兵士と共に別室に連行されることになり、他のメンバーは即裁判の間へ連れられる。
「ユウナ!」
少年が心配そうに声を荒げる。
「大丈夫だ、ティーダ、私が一緒に行く」
その言葉に少年は大人しく身を引いてくれたが、ユウナを連れた女性兵士は戸惑っているようだ。
「私なら、構わない、そうだろ?」
女性兵士は私が誰なのか知っているはず。
予想通り共に行くことを承諾してくれた。
「ラフテルさん」
「大丈夫だユウナ。裁判にかけるってことは、とりあえず危害を加えられる心配はない。それに…」
「?」
「これはチャンスとも考えないか?マイカに本当の事を伝えられる。
ユウナが考えてること思いの丈をぶつけられる」
顔を上げたユウナは目に力を宿しているのが分かった。
決意に満ち溢れた表情。
私が口を出すまでも無さそうだ。
議長席に立ったのは、キマリと同じロンゾの民であるケルク=ロンゾ老師。
厳かに、いかにも威厳たっぷりに前口上を述べる。
裁判の時に罪人に掛けるお決まりの台詞というやつだ。
いかにもらしくて、いかにもバカバカしくて、ムカついてくる。
ここにいるケルクも、キノックもマイカも、召喚士が辿る運命を知っている。
そしてわざとその真実を世間から隠匿し、わざとシンに召喚士を立ち向かわせるのだ。
こんなバカな茶番はない。
それに…
死者であるシーモアを異界へ送りたい。それがユウナの願いであり望み。
だがユウナ、それはきっと敵わない。
なぜなら…
「死人は異界へ、か……フッフッフッフ…」
バカにしたように肩を震わせたマイカの体から、フワリと幻光虫が飛び出した。
「「「!!!」」」
ユウナを始め、見ていた仲間達は己の目を疑った。
エボンの総老師であり、50年もの長きに渡りその座に君臨し続けてきた最高権力者でもあるマイカは、すでに死人。
ジスカルから聞いてはいたが、実際にこの目で確認したのはこれが始めてのこと。
私でも少々堪えた。
あの時、私がガードとして旅立つ許可をくれたあの時のマイカと、何一つ変わってはいない筈なのに…
あの時の優しい、尊大な威厳は微塵も感じられない。
今目の前にいるこの老人は、ただ生にしがみ付いているだけの哀れな存在に見えてしまった。
死に満ち、死によって支配され、変わらぬ世界を保つこと。
それがエボンの真実であり本質。
「違う!!」
私の叫び声にマイカの顔が僅かに曇った。
「そう思っているのは、望んでいるのはお前だけだろ!」
「…ラフテル!?」
ガード達、ユウナ、そしてマイカやシーモアの目までもが一斉にこちらに向けられた。
「ロンゾに教えを広め一族の誇りを守るケルクには真実を伝えず、アルベドに教えを広めようとアルベドの女性と結ばれたブラスカは民の希望の名の下犠牲となり、グアドとヒトを和解させ結びつけたジスカルを手にかけて、何が変化を望まないだ!
ジスカルは生を望んでいた。死に囚われるエボンをスピラを危惧し続けていた。いつでも変化を求めていた!
スピラは変化している。自らの力で変わろうとしている。長い長い1000年の時を経て、シンの脅威を打ち滅ぼさんと、死の螺旋を打ち破ろうとしている。
変わらないことを望むのは、その地位にいつまでもしがみつくお前だけのエゴだ!!」
言い切った私は荒い息を整えるようにマイカを睨みつけた。
マイカの表情は変わらない。
それどころか平然とした顔で言ってのけた。
「フッフッフッフッフ…。この反逆者ごときが。何を分かったつもりでおるのか」
「…変だよ。…おかしいよ…」
「真実に異を唱える者、これすなわち反逆者!」
ユウナの呟きが決定打だとでも言うように、マイカの判決は決したようだ。
反逆者には全て死の安息を。
それが裁判の本当の姿。
判決なんて、“死”以外にはありえないのだ。
「無駄だ、ラフテル…。ここであいつに何を言っても聞き流されるだけだ。あいつにはどうせ何もできん」
「…うん、すまない。少し感情を出しすぎた」
すぐに兵士たちが銃を突きつけ、私達はまたあの暗い地下に連行されることになる。
また、あの鳥篭に入れられるのかと思うと、それだけで気分が滅入る。
「あなたほどの人があんなに感情をむき出しにしたところを見たのは、初めて」
「…そう? ごめん、いきなり」
私の謝罪に対して、瞑目して、ゆっくりと否定の意味を込めて首を左右に振って見せる。
「私も、同じ気持ちだから。“死”に捕らわれたこのスピラで“生”を紡いでいくのは本当に難しいこと。でも、それが皆の望み」
「うん、決められた運命なんて、ない」
同じ檻に入れられた私とルールーの元へ、ニヤついた僧兵が迎えに来たのはそれからすぐのことだった。
→第5章