第1章【ルカ~ミヘン街道】
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“堅物”って何?
=4=
ルカの街を出ると、長い長い街道が続いている。
かつての討伐隊を組織したミヘンという人物の歩んだ街道だ。
何百年も前の人物の名や聖像が残っている。
それでもそれよりもずっとずっと前から、シンというこの世界の脅威が存在し続けていた。
これまでに、一体何人の召喚士がこの街道を今のユウナと同じ気持ちで進んだのだろう。
一体何人の召喚士がシンに挑んできたのだろう。
それでも、今尚、シンの脅威は消えることなく続いている。
人々を悲しみと絶望の底に陥れるだけの存在、シン。
それは昔々の人々の罪が形になったもの。罪を償うことが出来ればシンはいなくなる。
そんな教えがこのスピラには蔓延している。
私は、信じない。
そんなもの、全部でたらめだ。
これが初めての旅だったなら、あるいは純粋に教えを信じてエボンを敬っていたかもしれない。
だが10年前の旅で、私はアーロンと共に召喚士の辿る運命を知った。
逃れられぬ宿命は召喚士を覚悟と言う檻で縛り付け、無駄に犠牲を作るだけの希望を生み出している。
その現実を知ってから、私はエボンを信じない。
伝説のガードなどといわれて、その気になって当時の話を語るのは、その恩恵に預かる為でしかない。
何かと色々都合がいい場合が多く、1人で旅を続ける為に利用させてもらっている。
だけど、いつも思う。
何が伝説なんだ?
大切な仲間を失って大きな、とてつもなく大きなキズを心に受けただけの旅でしかないというのに…
「何を考えている?」
ふいに掛けられた声にハッする。
異界の匂いを発するこの男の側では、魔物の匂いを嗅ぎつけることが鈍ってしまう。
「なんでもない」
前方を歩くユウナたちとは結構距離が開いてしまっていた。
一蹴するように返答を返し、歩く速度を僅かに上げた。
「ラフテル」
「…何?」
振り向くことなく返事を返す。
「聞かないのか?」
「…何を?」
「10年前、お前と別れてから何があったのか」
聞きたい。知りたい。
本当は何があったのか、教えて欲しい。
…でも、聞きたくない。
それはきっと、こいつの匂いの原因にまで話が辿り着くから。
死んだ原因なんて、知りたくない。
「…話したいのか?」
少し考えてから、そう返した。
「聞いてくれんのか?」
思わず、視線を向けた。
前を向いていると思っていたやつの視線も、私を見つめていて、足が止まってしまった。
何かを口に出そうとしたのだが、言葉は飲み込まれてしまった。
言葉と共に呼吸さえも飲み込まれてしまい、アーロンから目が離せなくなった。
10年前とは明らかに違う、刺々しさの無い柔らかな目線。
色眼鏡の奥に見える褐色の瞳が、今は片方だけになってしまったが、堅物と呼ばれていた時の鋭い眼差しまで一緒に無くしてしまったのかと思ってしまう。
ブラスカのような優しさを孕んだ目。
ジェクトのように温かさを孕んだ目。
2人の約束を受けたと同時に、2人の持つ目の力まで受け取ってしまったのだろうか?
…私は、何も貰うことができなかったというのに…
アーロンの右手がゆっくりと私の頬に触れた。
手袋を嵌めていたというのに、そこから仄かな温かさが伝わってくるような感覚に眩暈を起こしそうになる。
「魔物だ!!」
前方から突然少年の叫び声が耳に届く。
2人の世界は現実に引き戻され、互いに頷いてユウナの元まで走った。
「アーロン、何してたッスか?」
戦闘が終わり、再び歩みを再開させると、ティーダがアーロンの横にきて呟いた。
今はユウナの隣で何やら楽しそうに2人で会話している私の、尻尾のように揺れる長い髪を見つめながら、アーロンは曖昧に返事を返した。
「…あの人、なんだろ?」
「…フッ、なんのことだ?」
「とぼけんなって!ちゃんとわかってたんだからな」
「ガキには関係ない」
ティーダを取り残すように、アーロンは足早に進んだ。
「あ!ちょっ! …ったく、素直じゃないってか、変なとこだけ堅物なんだよな~」
そんな会話が交されていたと、後で聞いたことだ。
→
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ルカの街を出ると、長い長い街道が続いている。
かつての討伐隊を組織したミヘンという人物の歩んだ街道だ。
何百年も前の人物の名や聖像が残っている。
それでもそれよりもずっとずっと前から、シンというこの世界の脅威が存在し続けていた。
これまでに、一体何人の召喚士がこの街道を今のユウナと同じ気持ちで進んだのだろう。
一体何人の召喚士がシンに挑んできたのだろう。
それでも、今尚、シンの脅威は消えることなく続いている。
人々を悲しみと絶望の底に陥れるだけの存在、シン。
それは昔々の人々の罪が形になったもの。罪を償うことが出来ればシンはいなくなる。
そんな教えがこのスピラには蔓延している。
私は、信じない。
そんなもの、全部でたらめだ。
これが初めての旅だったなら、あるいは純粋に教えを信じてエボンを敬っていたかもしれない。
だが10年前の旅で、私はアーロンと共に召喚士の辿る運命を知った。
逃れられぬ宿命は召喚士を覚悟と言う檻で縛り付け、無駄に犠牲を作るだけの希望を生み出している。
その現実を知ってから、私はエボンを信じない。
伝説のガードなどといわれて、その気になって当時の話を語るのは、その恩恵に預かる為でしかない。
何かと色々都合がいい場合が多く、1人で旅を続ける為に利用させてもらっている。
だけど、いつも思う。
何が伝説なんだ?
大切な仲間を失って大きな、とてつもなく大きなキズを心に受けただけの旅でしかないというのに…
「何を考えている?」
ふいに掛けられた声にハッする。
異界の匂いを発するこの男の側では、魔物の匂いを嗅ぎつけることが鈍ってしまう。
「なんでもない」
前方を歩くユウナたちとは結構距離が開いてしまっていた。
一蹴するように返答を返し、歩く速度を僅かに上げた。
「ラフテル」
「…何?」
振り向くことなく返事を返す。
「聞かないのか?」
「…何を?」
「10年前、お前と別れてから何があったのか」
聞きたい。知りたい。
本当は何があったのか、教えて欲しい。
…でも、聞きたくない。
それはきっと、こいつの匂いの原因にまで話が辿り着くから。
死んだ原因なんて、知りたくない。
「…話したいのか?」
少し考えてから、そう返した。
「聞いてくれんのか?」
思わず、視線を向けた。
前を向いていると思っていたやつの視線も、私を見つめていて、足が止まってしまった。
何かを口に出そうとしたのだが、言葉は飲み込まれてしまった。
言葉と共に呼吸さえも飲み込まれてしまい、アーロンから目が離せなくなった。
10年前とは明らかに違う、刺々しさの無い柔らかな目線。
色眼鏡の奥に見える褐色の瞳が、今は片方だけになってしまったが、堅物と呼ばれていた時の鋭い眼差しまで一緒に無くしてしまったのかと思ってしまう。
ブラスカのような優しさを孕んだ目。
ジェクトのように温かさを孕んだ目。
2人の約束を受けたと同時に、2人の持つ目の力まで受け取ってしまったのだろうか?
…私は、何も貰うことができなかったというのに…
アーロンの右手がゆっくりと私の頬に触れた。
手袋を嵌めていたというのに、そこから仄かな温かさが伝わってくるような感覚に眩暈を起こしそうになる。
「魔物だ!!」
前方から突然少年の叫び声が耳に届く。
2人の世界は現実に引き戻され、互いに頷いてユウナの元まで走った。
「アーロン、何してたッスか?」
戦闘が終わり、再び歩みを再開させると、ティーダがアーロンの横にきて呟いた。
今はユウナの隣で何やら楽しそうに2人で会話している私の、尻尾のように揺れる長い髪を見つめながら、アーロンは曖昧に返事を返した。
「…あの人、なんだろ?」
「…フッ、なんのことだ?」
「とぼけんなって!ちゃんとわかってたんだからな」
「ガキには関係ない」
ティーダを取り残すように、アーロンは足早に進んだ。
「あ!ちょっ! …ったく、素直じゃないってか、変なとこだけ堅物なんだよな~」
そんな会話が交されていたと、後で聞いたことだ。
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