第4章【マカラーニャ~ベベル】
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天使の祈り
=39=
白い影が目の端に映った。
白い、羽を撒き散らして、自分目掛けて空からやってきたそれを、本当にそうだと思ってしまったんだ。
少女のように純粋な心なんて、もう失った。
たくさんの命を蔑ろにしてきた。
そんな存在なんて神話の中でしか知らなかった。
餓鬼くさいと笑われるかも知れなかった。
『天使』が舞い降りた―――
私の存在を知って、優しく笑った美しい女性の姿をした天使…
いや、違う、あれは、…ユウナ!?
空中で祈りを捧げるように、招き入れるように腕を翳す。
ユウナの体を中心に浮かび上がった魔方陣は、ユウナの体全体を包み込む。
淡い光に包まれながら私とユウナはベベルの高い外壁の外を落下し続けている。
ユウナが降りてきたもっともっと遥か上空の雲を突き破って、こちらに物凄い速さで飛来する物体。
それは私達が落下するよりも早くユウナも、私をも抜き去って下方へ落下していく。
「!?」
バサリと重い羽音が耳に届く。
私の体はベベルの寺院の硬質な屋根にぶつかる直前、何かに受け止められた。
「…ヴァルファーレ!」
ユウナが空中で召喚したのか。
はっとして宙を見上げる。
ユウナが落ちてくる。
私は慌てて体勢を立て直し、ユウナの体を受け止めた。
というより、ユウナに慌てて抱きついた私をヴァルファーレが受け止めてくれたと言ったほうがいい。
ユウナは気を失うことも無く、私の顔をじっと見つめた。
「ラフテルさん!!」
私の首にしがみつく様に抱きついてきたユウナを、私もしっかりと抱き締めてやった。
召喚獣を戻したユウナが改めて私の首に腕を回して抱きついてくる。
思わず私もユウナを抱きしめ返した。
「ユウナ無事で良かった」
「うん、ラフテルさんも!」
空から舞い降りるユウナを天使と見間違えたのは、この衣装のせいか。
結婚式してたんだものな、当然か…。
聞きたいことはたくさんある。
できれば早く仲間達と合流して、こんなところさっさと逃げたい。
だがユウナの考えは違うようだ。
ここはベベル。寺院がある。
旅を続けるつもりのユウナはここの祈り子とも対面を願った。
その言葉だけでユウナの旅の覚悟を汲み取ることができる。
祈り子の間へと続く回廊を歩きながら、ここに来る前に最後にユウナと交わした会話を思い出す。
「ユウナ、ごめん…」
「?」
何の事を言ってるのか理解できないユウナはただ頭を傾げた。
「マカラーニャの湖の底で、私はユウナに酷いことを言ってしまった」
ユウナはその時の言葉を思い出したのだろう、僅かに俯いて言葉を紡ぐ。
「ううん、ホントのことだから。…それに、思い知りました。シーモア老師の権力という力も考えも、私なんかじゃ全然届かないほど上だったんだって。
あの時のラフテルさんが言ってた通りでした。謝らなければならないのは、私のほうです。ごめんなさい、ラフテルさん」
ユウナの言葉に私は小さな笑みを溢し、私より小柄なユウナの頭をそっと撫でた。
ユウナは私が一緒にここに連れて来られていたことに驚いていた。
私はユウナも一緒だということを目覚めた時に聞いていたが、ユウナは何も聞かされていなかったのだろう。
「どうしてラフテルさんも一緒に?」
まぁ、普通に考えれば疑問ではあるだろう。
「ベベルは伝説のガードを祭り上げて飾っておきたかったのさ」
何も知らないユウナに、父ブラスカの受けた屈辱まで受け継いで欲しくはない。
ユウナが祈り子の間に入って間もなく、祈り子の部屋に荒々しい足音がいくつも入ってきた。
一番最初に飛び込んできた少年が、私の顔を見て驚愕の声を上げる。
「失礼な!」
「ラフテル!」
ここにいたのか!無事か?!と仲間達の暖かい声に胸が熱くなる。
「ラフテル…」
何か言いたげなアーロンの視線を無視して言葉を発する。
そんなことよりも、ここからすぐに逃げるのが先だ。
「ユウナはこの中だ。祈り子との対面が終わったらすぐに出る!」
私の言葉を聞いて少年が祈り子の間への扉に手をかける。
「今更、掟もないだろっ!!」
少年の力では持ち上がらない重い扉にもうひとつ手が加わる。
大きく力強い拳は、美しい毛皮と鋭い爪が生えたロンゾ特有のものだ。
少年は礼の代わりにニヤリと口角を持ち上げ、僅かに開いた隙間から身を滑り込ませた。
ユウナが祈る。
祈り子の力をその身に宿す為に。
そして近づく。…究極召喚に。
ユウナが究極召喚を手に入れたら、この年若い小さな召喚士は躊躇いもなくそれを使うだろう。
それが唯一シンを討ち滅ぼし、世界を平和にしうる手段だとしたら。
たとえその為に犠牲になると最初から分かっているとしても…。
それがユウナの覚悟なのだから。
その時私は、他のガードのみんなはどうするだろう。
何ができるだろう?
ユウナの為に、ユウナの覚悟に見合ったことをしてやれるだろうか?
…自分の中に浮かぶ多くの疑問に答えを貰えることなど少ない。
そんなの自分で答えを出していかなければならないのだ。
誰かに答えを求めている時点で私はまだ逃げているのだろう。
何ができる?ではなく、やろう!ユウナの為にこの世界の為に、私にできる精一杯の抗いをしてやろう。
→
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白い影が目の端に映った。
白い、羽を撒き散らして、自分目掛けて空からやってきたそれを、本当にそうだと思ってしまったんだ。
少女のように純粋な心なんて、もう失った。
たくさんの命を蔑ろにしてきた。
そんな存在なんて神話の中でしか知らなかった。
餓鬼くさいと笑われるかも知れなかった。
『天使』が舞い降りた―――
私の存在を知って、優しく笑った美しい女性の姿をした天使…
いや、違う、あれは、…ユウナ!?
空中で祈りを捧げるように、招き入れるように腕を翳す。
ユウナの体を中心に浮かび上がった魔方陣は、ユウナの体全体を包み込む。
淡い光に包まれながら私とユウナはベベルの高い外壁の外を落下し続けている。
ユウナが降りてきたもっともっと遥か上空の雲を突き破って、こちらに物凄い速さで飛来する物体。
それは私達が落下するよりも早くユウナも、私をも抜き去って下方へ落下していく。
「!?」
バサリと重い羽音が耳に届く。
私の体はベベルの寺院の硬質な屋根にぶつかる直前、何かに受け止められた。
「…ヴァルファーレ!」
ユウナが空中で召喚したのか。
はっとして宙を見上げる。
ユウナが落ちてくる。
私は慌てて体勢を立て直し、ユウナの体を受け止めた。
というより、ユウナに慌てて抱きついた私をヴァルファーレが受け止めてくれたと言ったほうがいい。
ユウナは気を失うことも無く、私の顔をじっと見つめた。
「ラフテルさん!!」
私の首にしがみつく様に抱きついてきたユウナを、私もしっかりと抱き締めてやった。
召喚獣を戻したユウナが改めて私の首に腕を回して抱きついてくる。
思わず私もユウナを抱きしめ返した。
「ユウナ無事で良かった」
「うん、ラフテルさんも!」
空から舞い降りるユウナを天使と見間違えたのは、この衣装のせいか。
結婚式してたんだものな、当然か…。
聞きたいことはたくさんある。
できれば早く仲間達と合流して、こんなところさっさと逃げたい。
だがユウナの考えは違うようだ。
ここはベベル。寺院がある。
旅を続けるつもりのユウナはここの祈り子とも対面を願った。
その言葉だけでユウナの旅の覚悟を汲み取ることができる。
祈り子の間へと続く回廊を歩きながら、ここに来る前に最後にユウナと交わした会話を思い出す。
「ユウナ、ごめん…」
「?」
何の事を言ってるのか理解できないユウナはただ頭を傾げた。
「マカラーニャの湖の底で、私はユウナに酷いことを言ってしまった」
ユウナはその時の言葉を思い出したのだろう、僅かに俯いて言葉を紡ぐ。
「ううん、ホントのことだから。…それに、思い知りました。シーモア老師の権力という力も考えも、私なんかじゃ全然届かないほど上だったんだって。
あの時のラフテルさんが言ってた通りでした。謝らなければならないのは、私のほうです。ごめんなさい、ラフテルさん」
ユウナの言葉に私は小さな笑みを溢し、私より小柄なユウナの頭をそっと撫でた。
ユウナは私が一緒にここに連れて来られていたことに驚いていた。
私はユウナも一緒だということを目覚めた時に聞いていたが、ユウナは何も聞かされていなかったのだろう。
「どうしてラフテルさんも一緒に?」
まぁ、普通に考えれば疑問ではあるだろう。
「ベベルは伝説のガードを祭り上げて飾っておきたかったのさ」
何も知らないユウナに、父ブラスカの受けた屈辱まで受け継いで欲しくはない。
ユウナが祈り子の間に入って間もなく、祈り子の部屋に荒々しい足音がいくつも入ってきた。
一番最初に飛び込んできた少年が、私の顔を見て驚愕の声を上げる。
「失礼な!」
「ラフテル!」
ここにいたのか!無事か?!と仲間達の暖かい声に胸が熱くなる。
「ラフテル…」
何か言いたげなアーロンの視線を無視して言葉を発する。
そんなことよりも、ここからすぐに逃げるのが先だ。
「ユウナはこの中だ。祈り子との対面が終わったらすぐに出る!」
私の言葉を聞いて少年が祈り子の間への扉に手をかける。
「今更、掟もないだろっ!!」
少年の力では持ち上がらない重い扉にもうひとつ手が加わる。
大きく力強い拳は、美しい毛皮と鋭い爪が生えたロンゾ特有のものだ。
少年は礼の代わりにニヤリと口角を持ち上げ、僅かに開いた隙間から身を滑り込ませた。
ユウナが祈る。
祈り子の力をその身に宿す為に。
そして近づく。…究極召喚に。
ユウナが究極召喚を手に入れたら、この年若い小さな召喚士は躊躇いもなくそれを使うだろう。
それが唯一シンを討ち滅ぼし、世界を平和にしうる手段だとしたら。
たとえその為に犠牲になると最初から分かっているとしても…。
それがユウナの覚悟なのだから。
その時私は、他のガードのみんなはどうするだろう。
何ができるだろう?
ユウナの為に、ユウナの覚悟に見合ったことをしてやれるだろうか?
…自分の中に浮かぶ多くの疑問に答えを貰えることなど少ない。
そんなの自分で答えを出していかなければならないのだ。
誰かに答えを求めている時点で私はまだ逃げているのだろう。
何ができる?ではなく、やろう!ユウナの為にこの世界の為に、私にできる精一杯の抗いをしてやろう。
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