第4章【マカラーニャ~ベベル】
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脱出大作戦
=38=
見張りの僧兵を何人か倒し、地上へ出る為の通路を探す。
しかし、ベベルの地下牢と地上とは実は繋がってはいない。
正確に言えば、階段のような階と階を結ぶ通路が存在しないということだ。
リフターと呼ばれる上下に動いて乗人を運ぶ装置があり、それを使って階の行き来をする。
動かす為のコードはベベルの僧や兵しか知らず、罪人が易々と逃げられないようになっているのだ。
ベベルにいた私もコードは知っているが、それは10年前のものだ。
ダメだったらそれはそれとして別の手を考えよう。
私は自分の中でそう結論付けて操作盤にコードを打ち込んだ。
驚いたことに、小さな電子音がしてリフターが作動し始めた。まだこのコードは現役らしい。
いくらエボンの本質が変わらないことだとしても、全くパスやコードも変えないというのも可笑しな話だ。
地上に戻って来ると同時に、すかさず身を隠した。
ベベルの寺院の中はとんでもない騒動になっており、蜂の巣をつついたとはまさにこのことだろう。
ひとまずそこら辺の僧を捕まえて何事か問い質す。
この状況にパニックになってしまっている可哀想な僧は、反逆者が現れたとそればかりを繰り返した。
『反逆者』
それが誰のことを指しているのかなんて、言われなくても解っていた。
あいつらだ…
思わず口許が緩む。
「あんたも巻き込まれんうちに早く逃げたほうがいい」
しどろもどろになりながら言った僧に向かって、私は笑顔を浮かべながら静かに言葉を発する。
「悪いな。私がその反逆者だ…」
敬虔なエボンの僧なのであろうその初老の男は私の言葉を理解したのか腰を抜かしてしまった。
胸が高鳴る。
わくわくとした高揚感を覚える。
なんだろうか、この期待に満ち溢れた嬉しさは。
ユウナの危機だと分かっているのに、私はまだここから逃げ出せずにいるというのに、仲間がいる。
それだけでこんなにも嬉しくて仕方がない。
仲間達の存在だけでこんなにも頼もしく思えるし、何でもできそうな気になる。
どうして?どうやって?なんて愚問でしかない。
仲間がそこにいるという事実だけで十分だ。
今回の旅もそれまでの10年間も久しく忘れていたこの気持ちの高ぶり。
10年前のブラスカ達との旅ではよく感じていたはずなのに、どうして忘れてしまってたんだろう。
どこで無くしてしまったんだろう。
そして考える。
さて、まずはどうしてやろうかと。
結婚式を執り行うとすればあそこだろう。
たくさんの僧兵や参列者、それに世間に見せびらかすような派手なイベントなら、ここベベルの寺院に覆い被さるように張り出してる長い渡橋、そこから階段を登った先に設えられた祭壇。
マイカの演説だったり式典の類いはそこで行われる。
自分が今いるところはそこのはるか下。
今から急いでそこに向かっても間に合わないかもしれない。
騒ぎ逃げ惑う人の波を掻き分けるように進み、なんとか窓辺に手をかける。
そこから身を乗り出すようにして上を見上げた。
お誂え向きに、今いるこの部屋は丁度祭壇の真下だ。
そこから伸びる長い渡橋が影を落としている。
先程まで聞こえていた激しい戦闘の音は止み、やけに静かだ。
その静寂がかえって恐ろしいものに思える。
事の顛末をここでじっと見ているわけにもいかず、自分も行動をおこさねばならないだろう。
まずは武器と服をなんとかしたかった。
いつまでも使用人の衣装でいるわけにもいかない。
私をあの部屋に運んだ人物ならどこにあるか知っているだろうか?
行きたくはないとは思いつつ、あの時の僧官と会って話をしなければならない。
上階へいくリフターを見つけて乗り込む。
乗り物の類は全く駄目な筈なのに、なぜかこのリフターだけは平気で、それに気付いたのはもう少し後のことだった。
降りた先は勿論、高官専用のフロア。見張りの兵士が一斉にこちらに視線を向ける。
そこでひっかかった。
そこにいた兵士のほとんどが、グアド族だったのだ。
一瞬考えてからはっとする。
シーモアだ…
グアドの兵士は、個人個人の能力はそれほど高くはないものの、強い魔力と幻光虫を操る能力を持つ。
…私にはない能力だが。
グアドの兵士は、戦闘において魔物を召喚することが出来るのだ。
私を一目見て理解したのだろう。
有無を言わさずそこにいた何人も兵士が一斉に魔物を召喚した。
一体一体はさほど強くはないものの、この数の兵士が数体ずつの魔物を出すものだから堪らない。
いくら高官専用の広いフロアだとしても、前に進むことすらできないほどの魔物の群れに囲まれてはどうしようもない。
迫ってくる魔物をいくつか払いながら対峙していると、ふいにまた鐘の音が鳴り響いた。
あぁ、なんて美しい鐘の音なんだ、なんて聞き惚れている場合ではない。
先程地下で聞いたものよりも随分とはっきり耳に心地よいその音は式場が近いことを示している。
迫り来る魔物に大きく窓の開いた壁際まで追い詰められ、魔物の唸り声や奇妙な羽音や耳障りな鳴き声、息遣いまでが届きそうな距離で、異界の匂いに頭がくらくらする。
建物への被害なんて、その瞬間綺麗さっぱり頭の中からは消えていた。
「…くっ!『フレア!』」
振りかざした掌から迸った真っ白な閃光が魔物と周囲の建物全てを飲み込む。
爆発が起きる瞬間、窓から身を投げ出した。
破裂する空気の固まりは、宙にいる自分の体を簡単に弾き飛ばす。
逃げる、なんて選択をするなんて……
自分の命が惜しい証拠なのだろうか?
空中に弾かれて、自身ではどうすることもできなくて、ただ重力に任せて考える。
さて、この後どうしようか、と…
青い空がやけに綺麗に見えた。
→
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見張りの僧兵を何人か倒し、地上へ出る為の通路を探す。
しかし、ベベルの地下牢と地上とは実は繋がってはいない。
正確に言えば、階段のような階と階を結ぶ通路が存在しないということだ。
リフターと呼ばれる上下に動いて乗人を運ぶ装置があり、それを使って階の行き来をする。
動かす為のコードはベベルの僧や兵しか知らず、罪人が易々と逃げられないようになっているのだ。
ベベルにいた私もコードは知っているが、それは10年前のものだ。
ダメだったらそれはそれとして別の手を考えよう。
私は自分の中でそう結論付けて操作盤にコードを打ち込んだ。
驚いたことに、小さな電子音がしてリフターが作動し始めた。まだこのコードは現役らしい。
いくらエボンの本質が変わらないことだとしても、全くパスやコードも変えないというのも可笑しな話だ。
地上に戻って来ると同時に、すかさず身を隠した。
ベベルの寺院の中はとんでもない騒動になっており、蜂の巣をつついたとはまさにこのことだろう。
ひとまずそこら辺の僧を捕まえて何事か問い質す。
この状況にパニックになってしまっている可哀想な僧は、反逆者が現れたとそればかりを繰り返した。
『反逆者』
それが誰のことを指しているのかなんて、言われなくても解っていた。
あいつらだ…
思わず口許が緩む。
「あんたも巻き込まれんうちに早く逃げたほうがいい」
しどろもどろになりながら言った僧に向かって、私は笑顔を浮かべながら静かに言葉を発する。
「悪いな。私がその反逆者だ…」
敬虔なエボンの僧なのであろうその初老の男は私の言葉を理解したのか腰を抜かしてしまった。
胸が高鳴る。
わくわくとした高揚感を覚える。
なんだろうか、この期待に満ち溢れた嬉しさは。
ユウナの危機だと分かっているのに、私はまだここから逃げ出せずにいるというのに、仲間がいる。
それだけでこんなにも嬉しくて仕方がない。
仲間達の存在だけでこんなにも頼もしく思えるし、何でもできそうな気になる。
どうして?どうやって?なんて愚問でしかない。
仲間がそこにいるという事実だけで十分だ。
今回の旅もそれまでの10年間も久しく忘れていたこの気持ちの高ぶり。
10年前のブラスカ達との旅ではよく感じていたはずなのに、どうして忘れてしまってたんだろう。
どこで無くしてしまったんだろう。
そして考える。
さて、まずはどうしてやろうかと。
結婚式を執り行うとすればあそこだろう。
たくさんの僧兵や参列者、それに世間に見せびらかすような派手なイベントなら、ここベベルの寺院に覆い被さるように張り出してる長い渡橋、そこから階段を登った先に設えられた祭壇。
マイカの演説だったり式典の類いはそこで行われる。
自分が今いるところはそこのはるか下。
今から急いでそこに向かっても間に合わないかもしれない。
騒ぎ逃げ惑う人の波を掻き分けるように進み、なんとか窓辺に手をかける。
そこから身を乗り出すようにして上を見上げた。
お誂え向きに、今いるこの部屋は丁度祭壇の真下だ。
そこから伸びる長い渡橋が影を落としている。
先程まで聞こえていた激しい戦闘の音は止み、やけに静かだ。
その静寂がかえって恐ろしいものに思える。
事の顛末をここでじっと見ているわけにもいかず、自分も行動をおこさねばならないだろう。
まずは武器と服をなんとかしたかった。
いつまでも使用人の衣装でいるわけにもいかない。
私をあの部屋に運んだ人物ならどこにあるか知っているだろうか?
行きたくはないとは思いつつ、あの時の僧官と会って話をしなければならない。
上階へいくリフターを見つけて乗り込む。
乗り物の類は全く駄目な筈なのに、なぜかこのリフターだけは平気で、それに気付いたのはもう少し後のことだった。
降りた先は勿論、高官専用のフロア。見張りの兵士が一斉にこちらに視線を向ける。
そこでひっかかった。
そこにいた兵士のほとんどが、グアド族だったのだ。
一瞬考えてからはっとする。
シーモアだ…
グアドの兵士は、個人個人の能力はそれほど高くはないものの、強い魔力と幻光虫を操る能力を持つ。
…私にはない能力だが。
グアドの兵士は、戦闘において魔物を召喚することが出来るのだ。
私を一目見て理解したのだろう。
有無を言わさずそこにいた何人も兵士が一斉に魔物を召喚した。
一体一体はさほど強くはないものの、この数の兵士が数体ずつの魔物を出すものだから堪らない。
いくら高官専用の広いフロアだとしても、前に進むことすらできないほどの魔物の群れに囲まれてはどうしようもない。
迫ってくる魔物をいくつか払いながら対峙していると、ふいにまた鐘の音が鳴り響いた。
あぁ、なんて美しい鐘の音なんだ、なんて聞き惚れている場合ではない。
先程地下で聞いたものよりも随分とはっきり耳に心地よいその音は式場が近いことを示している。
迫り来る魔物に大きく窓の開いた壁際まで追い詰められ、魔物の唸り声や奇妙な羽音や耳障りな鳴き声、息遣いまでが届きそうな距離で、異界の匂いに頭がくらくらする。
建物への被害なんて、その瞬間綺麗さっぱり頭の中からは消えていた。
「…くっ!『フレア!』」
振りかざした掌から迸った真っ白な閃光が魔物と周囲の建物全てを飲み込む。
爆発が起きる瞬間、窓から身を投げ出した。
破裂する空気の固まりは、宙にいる自分の体を簡単に弾き飛ばす。
逃げる、なんて選択をするなんて……
自分の命が惜しい証拠なのだろうか?
空中に弾かれて、自身ではどうすることもできなくて、ただ重力に任せて考える。
さて、この後どうしようか、と…
青い空がやけに綺麗に見えた。
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