第4章【マカラーニャ~ベベル】
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深層の世界
=33=
……真っ白だ
真っ白な、空間。
何もない、世界。
何もない世界で私は何をしている?
どうしてここに存在している?
ここはどこだ?
耳を澄ませて辺りの気配を探る。
何も聞こえない、見えない、感じない。
…いや、感じる。
小さな、本当に小さな、何か。
自分の体の中に残った小さな光の粒。
指先に乗せたら消えてしまいそうな小さな魂の欠片。
あぁ、これは、ジスカルだ。
ジスカルが、残っていた。
無くしてしまわない様に、消してしまわない様に、自分の胸の中から飛びださない様にと、上から強く押さえた。
この魂を消してしまった闇の召喚獣、そう、あいつが出したあの召喚獣によってジスカルの魂は消滅してしまった。
でも、僅かにこうして残っててくれた。
必死にあの闇に抵抗したのだろう。
なんとか抗うことができたのだろう。
小さな小さな光は失われること無く、私という入れ物の中の祈り子に存在していた。
この小さな魂があるということは、まだ私も生きているのだろうか?
壊れていない、のだろうか?
ならばこの空間は何だ?
シーモアの召喚獣によって、何もかも全てが消滅してしまったのだろうか?
真っ白な空間は何もないと思っていたが、地に足がついていることに漸く気が付いた。
地面がある。ただ真っ白で分からなかっただけ。
どこに向かうのか、何があるのかなんて分からない。
分からないけど、私は足を前に進めた。
そうすることしかできなかったから。
ふいに異界の匂いが鼻をついた。
顔を上げると、そこに漂ういくつかの幻光虫。
七色の光を発し、不規則にフワフワと漂っている。
瞬きを繰り返し、どこにいくとも知れずに前に進む私を取り巻く。
白い空間が歪んで、記憶の中に残る部屋の景色が映し出される。
それは一つではなく、いくつもいくつも私の記憶から生み出される景色が現われては消えていく。
人の想いを強く反映する幻光虫が、ここにたった1人いる私の記憶を読み取っているのだろう。
映し出される懐かしい部屋、建物、景色、人物、行動、言葉……嫌でも蘇るそれに纏わる記憶の数々。
楽しい思い出も辛い思い出も、嬉しいときも悲しいときも、もう見たくはないと思っているのに、幻光虫がそれを止めてくれない。
「…やめろ」
小さく呟く言葉を拾い上げてくれるものはいない。
「やめろ!!」
思わず腰に挿した小太刀を抜いて、幻影を生み出す幻光虫を斬りすてる。
だが、所詮は幻光虫。
そんな物理攻撃が効くわけもなく、ただ見たくも無い映像を映し続けている。
「もうやめてくれぇぇぇぇっ!!」
気が狂いそうだ。
そうだ、いっそのこと狂ってしまえばいいんだ。
狂って何も考えられなくなってしまえばいい。
何もない真っ白な空間で、誰もいないのをいいことに子供のように喚き、涙を流した。
歩いていた足は、それらの景色を捨て行くように逃げるように走っていた。
ひたすら走り続け、それでも未だに幻光虫が映し出す記憶の映像に苛まれ、目を奪われたと同時に足がもつれて倒れこんだ。
走り続けていた地面への衝突の衝撃を覚悟して思わず目を閉じる。
だが思ったほど衝撃は少なかったし、痛みもそれほど感じなかった。
それよりも、張り裂けそうなこの胸の痛みのほうが遥かに大きくて、誰に感じているのか分からない怒りと何に対してなのか分からない悲しみとが私を覆いつくしていた。
終わらない自分の記憶の映像を、もう何の感情も沸かない表情で見つめていた。
ただ、涙が地面に吸い込まれていった。
記憶の中の映像の一つが私の目に止まる。
それは赤い背中。
長い黒髪を尻尾のように揺らして、赤い背中が歩いている。
立ち止まり、こちらを振り返る。
私の名を呼び、そして手を差し伸べる。
あぁ、これか…
いつもならそこで目が覚める。
だが今回は目が覚めることは無かった。
そこで映像は途切れ、別の場面が映し出されている。
私はどうしたかったのだろう。
なにをすべきだったのだろう…
こんな状況になって、初めて人恋しいと感じた。
もう会うことも出来ないブラスカや太陽のようなジェクトの顔を思い浮かべる。
「……会いたい、よ。 助けて………アーロン…」
→
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……真っ白だ
真っ白な、空間。
何もない、世界。
何もない世界で私は何をしている?
どうしてここに存在している?
ここはどこだ?
耳を澄ませて辺りの気配を探る。
何も聞こえない、見えない、感じない。
…いや、感じる。
小さな、本当に小さな、何か。
自分の体の中に残った小さな光の粒。
指先に乗せたら消えてしまいそうな小さな魂の欠片。
あぁ、これは、ジスカルだ。
ジスカルが、残っていた。
無くしてしまわない様に、消してしまわない様に、自分の胸の中から飛びださない様にと、上から強く押さえた。
この魂を消してしまった闇の召喚獣、そう、あいつが出したあの召喚獣によってジスカルの魂は消滅してしまった。
でも、僅かにこうして残っててくれた。
必死にあの闇に抵抗したのだろう。
なんとか抗うことができたのだろう。
小さな小さな光は失われること無く、私という入れ物の中の祈り子に存在していた。
この小さな魂があるということは、まだ私も生きているのだろうか?
壊れていない、のだろうか?
ならばこの空間は何だ?
シーモアの召喚獣によって、何もかも全てが消滅してしまったのだろうか?
真っ白な空間は何もないと思っていたが、地に足がついていることに漸く気が付いた。
地面がある。ただ真っ白で分からなかっただけ。
どこに向かうのか、何があるのかなんて分からない。
分からないけど、私は足を前に進めた。
そうすることしかできなかったから。
ふいに異界の匂いが鼻をついた。
顔を上げると、そこに漂ういくつかの幻光虫。
七色の光を発し、不規則にフワフワと漂っている。
瞬きを繰り返し、どこにいくとも知れずに前に進む私を取り巻く。
白い空間が歪んで、記憶の中に残る部屋の景色が映し出される。
それは一つではなく、いくつもいくつも私の記憶から生み出される景色が現われては消えていく。
人の想いを強く反映する幻光虫が、ここにたった1人いる私の記憶を読み取っているのだろう。
映し出される懐かしい部屋、建物、景色、人物、行動、言葉……嫌でも蘇るそれに纏わる記憶の数々。
楽しい思い出も辛い思い出も、嬉しいときも悲しいときも、もう見たくはないと思っているのに、幻光虫がそれを止めてくれない。
「…やめろ」
小さく呟く言葉を拾い上げてくれるものはいない。
「やめろ!!」
思わず腰に挿した小太刀を抜いて、幻影を生み出す幻光虫を斬りすてる。
だが、所詮は幻光虫。
そんな物理攻撃が効くわけもなく、ただ見たくも無い映像を映し続けている。
「もうやめてくれぇぇぇぇっ!!」
気が狂いそうだ。
そうだ、いっそのこと狂ってしまえばいいんだ。
狂って何も考えられなくなってしまえばいい。
何もない真っ白な空間で、誰もいないのをいいことに子供のように喚き、涙を流した。
歩いていた足は、それらの景色を捨て行くように逃げるように走っていた。
ひたすら走り続け、それでも未だに幻光虫が映し出す記憶の映像に苛まれ、目を奪われたと同時に足がもつれて倒れこんだ。
走り続けていた地面への衝突の衝撃を覚悟して思わず目を閉じる。
だが思ったほど衝撃は少なかったし、痛みもそれほど感じなかった。
それよりも、張り裂けそうなこの胸の痛みのほうが遥かに大きくて、誰に感じているのか分からない怒りと何に対してなのか分からない悲しみとが私を覆いつくしていた。
終わらない自分の記憶の映像を、もう何の感情も沸かない表情で見つめていた。
ただ、涙が地面に吸い込まれていった。
記憶の中の映像の一つが私の目に止まる。
それは赤い背中。
長い黒髪を尻尾のように揺らして、赤い背中が歩いている。
立ち止まり、こちらを振り返る。
私の名を呼び、そして手を差し伸べる。
あぁ、これか…
いつもならそこで目が覚める。
だが今回は目が覚めることは無かった。
そこで映像は途切れ、別の場面が映し出されている。
私はどうしたかったのだろう。
なにをすべきだったのだろう…
こんな状況になって、初めて人恋しいと感じた。
もう会うことも出来ないブラスカや太陽のようなジェクトの顔を思い浮かべる。
「……会いたい、よ。 助けて………アーロン…」
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