第4章【マカラーニャ~ベベル】
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闇の存在
=32=
「シーモア!!」
少年の声にはっと我に返る。
自分のすぐ目の前に立つ男の存在に気付き、素早く後退して距離を取る。
自分は今何をしていたんだろうか?
頭の中に残る違和感を振り払うように頭を何度か振って意識を集中させる。
いつの間にか、この祈り子の部屋には仲間たちの姿が。
アーロンが何か言いたげにこちらを睨んでいる。
ゆっくりと歩みを進めるシーモアは、祈り子の間へと続く扉の前で静かに話しかける。
「お静かに。ユウナ殿が祈り子と対面中です」
やがて扉が重い音を立てながらゆっくりと開き、中からユウナが現われる。
仲間たちの姿に、ユウナは驚いたような声を上げる。
「どうして!?」
「ジスカルのスフィア見たぞ!」
「!?」
少年の声にビクリと肩が震える。
「(…スフィア!? …ジスカル、の?)」
なんだ、それ? そんなもの、知らない。
だが、きっとそれはジスカルが受けた息子への贖罪。誰にも何も告げずに命を落としたジスカルが、何とか形に残したものなのだろう。
見たい…。見たく、ない…。
シーモアを、止める為にユウナは結婚を承諾した。…そうか、ユウナも知っていたんだ。
グアドサラムを出てからずっと、ユウナは様子がおかしかった。
それは、このことを知ったから。
父ジスカルをその手にかけ、自分と結婚を望むシーモアの、本音を聞きだそうとしたのだろう。
もしかしたら、ユウナにもシーモアのこの黒い炎が見えているのかもしれない。
ジスカルがスフィアに何を残したのかなんて分からないが、シーモアの胸のうちを誰よりも知っていたのはジスカルなのだ。
「…なるほど、あなたは私を裁きに来たのか。 …では、ラフテル様も同じ考えですか?」
「私は、ユウナのガードだ。お前に呼ばれたから来たのではない」
私に冷たい視線を向け、ユウナを招くように手を差し出す。
ユウナはそれを拒んだ。シーモアを睨みつける様に視線を逸らさぬまま、仲間たちのほうへ後退して見せた。
「…残念です」
私はユウナの姿を隠すように前に立った。それと同時に、仲間たちが一斉に私たちを取り囲んだ。守るように。
「ならばその命、捨てて頂こう!」
エボンの教えに従順なワッカには、この老師の行動が理解できない。
咎めるような非難の声もシーモアには無意味だった。
ユウナを後方へ下がらせ、少年を先頭にアーロンとキマリが武器を構える。
「シーモアの魔力は半端じゃない!魔法攻撃に注意しろ!」
ユウナの隣で前衛に声を掛ける。
繰り出されるあらゆる属性の魔法が降り注ぐ。
雷が苦手なリュックが、自ら改造した防具で属性を無効にしてみせ、私に得意げな顔を向けてきた。
相手はシーモア1人にこちらは8人。多勢に無勢、何て言ってる場合じゃない。
激しい魔法を雨霰のように落としてくるのだ。
だが、コチラからの攻撃が効いていない訳でもない。
少年の目にも止まらぬ速さとキマリの鋭い槍とアーロンの重い太刀と、私の小太刀2連撃にルールーも魔法で反撃し、リュックとユウナは降り注ぐ魔法から私たちを守っている。
…ワッカだけは戸惑っているようだが。
まだベベルにいた頃には常に感じていた、“人を斬る”という感覚を思い出す。
そのベベルに与するエボンの老師を、私は斬り裂いていく。
シーモアの言葉が浮かんでくる。
『生きたくはないか…?』
否定はしない。間もなくこの入れ物は壊れ、私の時間は終わりを迎える。
ずっと、闘ってきた。
闘うことでしか、生きる時間を持つ意味を知ることが出来なかった。
シンというこの世界に存在する形ある罰は消えることなく、闘ってさらに罪を重ねることで、シンは脅威になっていく。
私にだって夢はある。
シンのいない平和な世界でのんびりと穏やかに過ごすこと。
大切な愛する人と幸せになること。
この世界に生まれ、この世界で生きてきた私にとって、生まれた瞬間から決められた道を外れることも出来ずにその生を終えるまで、闘うことが日常となった。そうするのが当たり前だと思ってた。
ガードという存在を知り、憧れ、召喚士を知って、旅に出た。
シンとは何か、召喚士が辿る運命とは…
真実を知ったとき、この世界に生まれた自分自身を呪った。
死んでも構わないとさえ思った。でも、できなかった。
思い出に囚われた私は、大切な魂の存在を感じることでしか生きる意味を見つけることが出来なくなっていた。
「私の闇を知るがいい。 ……出でよ『アニマ』!」
シーモアの声と共に異界の匂いが小さな部屋に充満する。
それと同時に体に感じた異変。
禍々しい空気が私を取り囲み、体の奥底から沸き上がる黒い闇。
「うわああああぁぁぁぁっ!!!」
耐え切れなくって、叫ぶ。
体の全てが心の全てが、この瞬間を拒絶している。
喉の奥底のもっとずっと奥の何かを体の外に排出することを望むように、体中の体液が全て流れ出るような感覚に堪えられない。
「ラフテル!!」
名前を呼ばれたような気がした。
薄れる意識の中必死に凝らした目に飛び込んできたのは、おぞましい姿と飛び出んばかりに見開かれた片方だけの瞳。
血の涙を流しながら仲間たちに魔力をぶつけている。
「…や、やめ、ろ!!」
その魔力の攻撃が突然私を襲う。
私は再び喉が裂けるような叫びを上げる。
苦しい!痛い!重い!そして全ての負の感情が沸き上がる。
何かが消えていく感覚。大切な何かが壊される感覚がする。
開いてたはずの目に映る全てが黒い靄の中に包み込まれていくように、視界がどんどん狭くなる。
闇に飲まれるって、こんな感じなんだろうか……
→
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「シーモア!!」
少年の声にはっと我に返る。
自分のすぐ目の前に立つ男の存在に気付き、素早く後退して距離を取る。
自分は今何をしていたんだろうか?
頭の中に残る違和感を振り払うように頭を何度か振って意識を集中させる。
いつの間にか、この祈り子の部屋には仲間たちの姿が。
アーロンが何か言いたげにこちらを睨んでいる。
ゆっくりと歩みを進めるシーモアは、祈り子の間へと続く扉の前で静かに話しかける。
「お静かに。ユウナ殿が祈り子と対面中です」
やがて扉が重い音を立てながらゆっくりと開き、中からユウナが現われる。
仲間たちの姿に、ユウナは驚いたような声を上げる。
「どうして!?」
「ジスカルのスフィア見たぞ!」
「!?」
少年の声にビクリと肩が震える。
「(…スフィア!? …ジスカル、の?)」
なんだ、それ? そんなもの、知らない。
だが、きっとそれはジスカルが受けた息子への贖罪。誰にも何も告げずに命を落としたジスカルが、何とか形に残したものなのだろう。
見たい…。見たく、ない…。
シーモアを、止める為にユウナは結婚を承諾した。…そうか、ユウナも知っていたんだ。
グアドサラムを出てからずっと、ユウナは様子がおかしかった。
それは、このことを知ったから。
父ジスカルをその手にかけ、自分と結婚を望むシーモアの、本音を聞きだそうとしたのだろう。
もしかしたら、ユウナにもシーモアのこの黒い炎が見えているのかもしれない。
ジスカルがスフィアに何を残したのかなんて分からないが、シーモアの胸のうちを誰よりも知っていたのはジスカルなのだ。
「…なるほど、あなたは私を裁きに来たのか。 …では、ラフテル様も同じ考えですか?」
「私は、ユウナのガードだ。お前に呼ばれたから来たのではない」
私に冷たい視線を向け、ユウナを招くように手を差し出す。
ユウナはそれを拒んだ。シーモアを睨みつける様に視線を逸らさぬまま、仲間たちのほうへ後退して見せた。
「…残念です」
私はユウナの姿を隠すように前に立った。それと同時に、仲間たちが一斉に私たちを取り囲んだ。守るように。
「ならばその命、捨てて頂こう!」
エボンの教えに従順なワッカには、この老師の行動が理解できない。
咎めるような非難の声もシーモアには無意味だった。
ユウナを後方へ下がらせ、少年を先頭にアーロンとキマリが武器を構える。
「シーモアの魔力は半端じゃない!魔法攻撃に注意しろ!」
ユウナの隣で前衛に声を掛ける。
繰り出されるあらゆる属性の魔法が降り注ぐ。
雷が苦手なリュックが、自ら改造した防具で属性を無効にしてみせ、私に得意げな顔を向けてきた。
相手はシーモア1人にこちらは8人。多勢に無勢、何て言ってる場合じゃない。
激しい魔法を雨霰のように落としてくるのだ。
だが、コチラからの攻撃が効いていない訳でもない。
少年の目にも止まらぬ速さとキマリの鋭い槍とアーロンの重い太刀と、私の小太刀2連撃にルールーも魔法で反撃し、リュックとユウナは降り注ぐ魔法から私たちを守っている。
…ワッカだけは戸惑っているようだが。
まだベベルにいた頃には常に感じていた、“人を斬る”という感覚を思い出す。
そのベベルに与するエボンの老師を、私は斬り裂いていく。
シーモアの言葉が浮かんでくる。
『生きたくはないか…?』
否定はしない。間もなくこの入れ物は壊れ、私の時間は終わりを迎える。
ずっと、闘ってきた。
闘うことでしか、生きる時間を持つ意味を知ることが出来なかった。
シンというこの世界に存在する形ある罰は消えることなく、闘ってさらに罪を重ねることで、シンは脅威になっていく。
私にだって夢はある。
シンのいない平和な世界でのんびりと穏やかに過ごすこと。
大切な愛する人と幸せになること。
この世界に生まれ、この世界で生きてきた私にとって、生まれた瞬間から決められた道を外れることも出来ずにその生を終えるまで、闘うことが日常となった。そうするのが当たり前だと思ってた。
ガードという存在を知り、憧れ、召喚士を知って、旅に出た。
シンとは何か、召喚士が辿る運命とは…
真実を知ったとき、この世界に生まれた自分自身を呪った。
死んでも構わないとさえ思った。でも、できなかった。
思い出に囚われた私は、大切な魂の存在を感じることでしか生きる意味を見つけることが出来なくなっていた。
「私の闇を知るがいい。 ……出でよ『アニマ』!」
シーモアの声と共に異界の匂いが小さな部屋に充満する。
それと同時に体に感じた異変。
禍々しい空気が私を取り囲み、体の奥底から沸き上がる黒い闇。
「うわああああぁぁぁぁっ!!!」
耐え切れなくって、叫ぶ。
体の全てが心の全てが、この瞬間を拒絶している。
喉の奥底のもっとずっと奥の何かを体の外に排出することを望むように、体中の体液が全て流れ出るような感覚に堪えられない。
「ラフテル!!」
名前を呼ばれたような気がした。
薄れる意識の中必死に凝らした目に飛び込んできたのは、おぞましい姿と飛び出んばかりに見開かれた片方だけの瞳。
血の涙を流しながら仲間たちに魔力をぶつけている。
「…や、やめ、ろ!!」
その魔力の攻撃が突然私を襲う。
私は再び喉が裂けるような叫びを上げる。
苦しい!痛い!重い!そして全ての負の感情が沸き上がる。
何かが消えていく感覚。大切な何かが壊される感覚がする。
開いてたはずの目に映る全てが黒い靄の中に包み込まれていくように、視界がどんどん狭くなる。
闇に飲まれるって、こんな感じなんだろうか……
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