第3章【グアドサラム~マカラーニャ】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
揺れる気持ちの中の決意
=27=
公司の奥から、一目でアルベドとわかる人物が出てきた。
「…おや、ラフテルさん」
「ああ、リン」
「当公司でお休みいただきましてありがとうございます。 …ん?」
「シーッ!」
慌ててリュックが口封じを願うような仕草をリンに向ける。
たまたまワッカはこちらに背を向けていたようで、何事もなかったように静かになる。
「ときに…、あの方……もしや、アーロンさんでは?」
俯いたまま我関せずな赤い服の男に、リンは確かめるように問う。
「そうっスよ」
すかさず答えたのは少年だ。
「(…ん?アーロンのこと、知ってる…?)」
リンがアーロンに話しかけ、アーロンはいくつか返事を返していた。
「では私はこれで」
「忙しいんだな」
「ええ、スピラの各地にある公司の支店に顔を出さねばいけませんから。みなさんも道中お気をつけて」
リンは用事が済むとすぐに公司を出て行った。
「…アーロン、10年前の瀕死のお前って……」
小さな声で囁くようにアーロンに問いかけた。
「その後どうなったのか、知っているだろうが」
まぁ、嫌でも異界の匂いはしてくるし、本人にも先日聞いたことだから既に命はないということはわかっている。
だが、そうなるまでの過程は、あの日、ナギ平原で別れた後にコイツが何をしていたのかってことは、まだ、知らない。
思っていたよりも早くユウナが戻ってきたことで、再び雷平原を進むことになった。
嫌そうにしていたリュックだったが、私の顔を一瞥するように見つめて、そして空を睨みつけた。
雷平原を抜けるまであと半分。
ユウナは先程までの思いつめたような顔はもうしていないようだったが、それでも何かをずっと考えているようだった。
だが仲間たちに声を掛けられればいつものように明るく返事を返し、戦闘にも集中して向かえていた。
先を歩くユウナたちを、数歩遅れて後ろから付いていく。
私の隣には、アーロン。
そのアーロンが、ユウナを見つめたまま小さく笑みを零したのに気が付いた。
「? アーロン?」
「…フッ、召喚士が若い娘だと、ガードするのも大変だ、と思ってな」
「…そのセリフ、歳取った言訳に聞こえるよ」
「そうか。お前も人のことは言えんと思うがな」
少し頭にきた。素直に感じた。
「…でも、そうか。…そうかも」
「少々、面倒な旅になりそうだな」
もう間もなく雷平原を抜ける、という時だ。
「みんな……いいかな。…聞いて欲しいことがあるの」
突然ユウナが足を止めた。
いつまでも止むことのない雷から早く逃れたいリュックは先を急ぐことを提案するが、ユウナは頑として譲らない。
雨に霞む道の先に、雨を凌げる屋根の付いた避雷塔があった。
アーロンがそこで話を聞こうと促し、皆はそこへ移動した。
ユウナは自分に向けられる皆の視線を受け、真っ直ぐに向き合った。
その目はもう、迷いの色は見えなかった。
「わたし、結婚する」
「「「!!!」」」
「…やっぱり」
雷平原に入ってからのユウナの態度を見ていれば、彼女が口にした言葉は予想できてたことだった。
それでもやはり、仲間たちの動揺は大きい。
ユウナの旅の本当の目的はよく分かっている。
ユウナの性格もよく分かっている。
彼女が何を望んでいるか、その為に何をすべきか、それは誰のためなのか…
本当に悩んで考えてたのだろう。たった一人で全部抱え込んで。
「…もしかして、ジスカル様のことが関係してるの?」
思いついたようにルールーがユウナに問いかける。
ジスカルという言葉に、私は思わずピクリと反応してしまった。
だがその反応を打ち消してくれる言葉が少年から出てくる。
「あ!あのスフィア!」
少年の言葉に、ユウナはたじろぐ。
「…スフィア…?」
何ことを言っているのか分からず、私はアーロンに助けを求めるように隣を見上げた。
アーロンは私を一度見下ろしてから、ユウナの元へ歩みを進める。
「……見せろ」
当然、ユウナはそれを拒否する。拒むようにアーロンから一歩身を引いて。
やはり、何か関係があるようだ。
ジスカルの息子シーモア。
突然降って沸いたような話だったが、ジスカルが命を落としたときからおかしいと感じていた違和感が、少しずつ少しずつ形を成してきたようで、ゾクリと肌が粟立つ。
シーモアの抱える闇に、ユウナが囚われていくような嫌な予感が消えない。
「ちょっと待てよアーロン!」
少年の大きな声にはっとする。
旅さえ続けるならば、何をしてもいい。
「それは召喚士の“権利”だ。…シンを倒す“覚悟”と引き換えのな」
その言葉は私の記憶を蘇らせる。
思い出したくも無い嫌な記憶を。
アーロンの言葉に、少年はまだ晴れない気持ちを持ったまま憮然とする。
少年は、いまだに真実を知らない。
何も知らないからこそ、少年にはユウナの考えが分からないのだろう。
ユウナに語りかけるワッカやリュックたちの輪から離れて、少年は1人複雑そうな表情でユウナをじっと見つめていた。
→
=27=
公司の奥から、一目でアルベドとわかる人物が出てきた。
「…おや、ラフテルさん」
「ああ、リン」
「当公司でお休みいただきましてありがとうございます。 …ん?」
「シーッ!」
慌ててリュックが口封じを願うような仕草をリンに向ける。
たまたまワッカはこちらに背を向けていたようで、何事もなかったように静かになる。
「ときに…、あの方……もしや、アーロンさんでは?」
俯いたまま我関せずな赤い服の男に、リンは確かめるように問う。
「そうっスよ」
すかさず答えたのは少年だ。
「(…ん?アーロンのこと、知ってる…?)」
リンがアーロンに話しかけ、アーロンはいくつか返事を返していた。
「では私はこれで」
「忙しいんだな」
「ええ、スピラの各地にある公司の支店に顔を出さねばいけませんから。みなさんも道中お気をつけて」
リンは用事が済むとすぐに公司を出て行った。
「…アーロン、10年前の瀕死のお前って……」
小さな声で囁くようにアーロンに問いかけた。
「その後どうなったのか、知っているだろうが」
まぁ、嫌でも異界の匂いはしてくるし、本人にも先日聞いたことだから既に命はないということはわかっている。
だが、そうなるまでの過程は、あの日、ナギ平原で別れた後にコイツが何をしていたのかってことは、まだ、知らない。
思っていたよりも早くユウナが戻ってきたことで、再び雷平原を進むことになった。
嫌そうにしていたリュックだったが、私の顔を一瞥するように見つめて、そして空を睨みつけた。
雷平原を抜けるまであと半分。
ユウナは先程までの思いつめたような顔はもうしていないようだったが、それでも何かをずっと考えているようだった。
だが仲間たちに声を掛けられればいつものように明るく返事を返し、戦闘にも集中して向かえていた。
先を歩くユウナたちを、数歩遅れて後ろから付いていく。
私の隣には、アーロン。
そのアーロンが、ユウナを見つめたまま小さく笑みを零したのに気が付いた。
「? アーロン?」
「…フッ、召喚士が若い娘だと、ガードするのも大変だ、と思ってな」
「…そのセリフ、歳取った言訳に聞こえるよ」
「そうか。お前も人のことは言えんと思うがな」
少し頭にきた。素直に感じた。
「…でも、そうか。…そうかも」
「少々、面倒な旅になりそうだな」
もう間もなく雷平原を抜ける、という時だ。
「みんな……いいかな。…聞いて欲しいことがあるの」
突然ユウナが足を止めた。
いつまでも止むことのない雷から早く逃れたいリュックは先を急ぐことを提案するが、ユウナは頑として譲らない。
雨に霞む道の先に、雨を凌げる屋根の付いた避雷塔があった。
アーロンがそこで話を聞こうと促し、皆はそこへ移動した。
ユウナは自分に向けられる皆の視線を受け、真っ直ぐに向き合った。
その目はもう、迷いの色は見えなかった。
「わたし、結婚する」
「「「!!!」」」
「…やっぱり」
雷平原に入ってからのユウナの態度を見ていれば、彼女が口にした言葉は予想できてたことだった。
それでもやはり、仲間たちの動揺は大きい。
ユウナの旅の本当の目的はよく分かっている。
ユウナの性格もよく分かっている。
彼女が何を望んでいるか、その為に何をすべきか、それは誰のためなのか…
本当に悩んで考えてたのだろう。たった一人で全部抱え込んで。
「…もしかして、ジスカル様のことが関係してるの?」
思いついたようにルールーがユウナに問いかける。
ジスカルという言葉に、私は思わずピクリと反応してしまった。
だがその反応を打ち消してくれる言葉が少年から出てくる。
「あ!あのスフィア!」
少年の言葉に、ユウナはたじろぐ。
「…スフィア…?」
何ことを言っているのか分からず、私はアーロンに助けを求めるように隣を見上げた。
アーロンは私を一度見下ろしてから、ユウナの元へ歩みを進める。
「……見せろ」
当然、ユウナはそれを拒否する。拒むようにアーロンから一歩身を引いて。
やはり、何か関係があるようだ。
ジスカルの息子シーモア。
突然降って沸いたような話だったが、ジスカルが命を落としたときからおかしいと感じていた違和感が、少しずつ少しずつ形を成してきたようで、ゾクリと肌が粟立つ。
シーモアの抱える闇に、ユウナが囚われていくような嫌な予感が消えない。
「ちょっと待てよアーロン!」
少年の大きな声にはっとする。
旅さえ続けるならば、何をしてもいい。
「それは召喚士の“権利”だ。…シンを倒す“覚悟”と引き換えのな」
その言葉は私の記憶を蘇らせる。
思い出したくも無い嫌な記憶を。
アーロンの言葉に、少年はまだ晴れない気持ちを持ったまま憮然とする。
少年は、いまだに真実を知らない。
何も知らないからこそ、少年にはユウナの考えが分からないのだろう。
ユウナに語りかけるワッカやリュックたちの輪から離れて、少年は1人複雑そうな表情でユウナをじっと見つめていた。
→