第3章【グアドサラム~マカラーニャ】
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この世界の神話
=26=
タイミングって何だろう?
“間”ってことなんだろうけど、それが妙にいいやつと悪いやつがいるよな。
後ほんのちょっとの時間差があったら…と思う瞬間てたくさんある。
それだけで、人生が変わるような決断を強いられてるときの人間の信条なんて、ころっと変わってしまうだろう。
私が発した言葉にリュックが疑問符を浮かべる。
「どういうこと~?」
「えーとさ、難しい選択を迫られたとき、さんざん悩んだ挙句に一度は出した答えでも、直前になってから『やっぱりこっち』って感じで変えたくなる時あるだろ? シーモアがそこにいて、すぐに返事を返せていたら、ユウナはあんなに悩んでないと思う」
「…そうね」
小さくルールーが賛同の言葉を呟く。
「どちらにせよ、決めるのはユウナだ」
少年は、ユウナの消えた方を苛々とした様子で何度も目を向けている。
「…心配なのはお前だけじゃねーよ。みんな同じ気持ちだ。少しは落ち着け」
ワッカの言葉に重なるように、またすぐ近くにでかい雷が落ちて、悲鳴を上げながらリュックが私の腕にしがみついてきた。
「…わかってるっスよ」
「今日はどうするんだ? このまま休む? 先に進む?」
「休んでこ~よ~!」
私の言葉にリュックは即答だ。
「ユウナ次第だな」
じっと頭を垂れたまま低い返答が返った。
ただじっと待っていることに耐えられなくなったのか、少年が様子を見てくると言って立ち上がった。
それを制するようにルールーとワッカも少年の後についていく。
アーロンとキマリはそこを動く気はないようだ。
できれば私もユウナの様子を見に行きたいところだったのだが、腕に必死にしがみついているリュックを無理に放す事も出来ない。
再び辺りが閃光に包まれ、リュックの悲鳴と公司が揺れるほどの雷鳴が轟く。
「キャアアアアアアアァァァッッ!!」
「うるさいっ!!」
「……えっ…ご、ごめん」
「あ、悪い、リュックに言ったんじゃないから」
目に涙を浮かべている少女の頭を軽く撫でてやる。
「?」
「リュック、少しだけ雷が怖くなくなる話、しようか?」
「…そんな話、あるの?」
「うん」
「…少しだけ?」
「うん、少しだけ」
「………」
少しだけ、という言葉に戸惑ったようだが、興味のほうが勝ったらしい。話を聞く体勢になる。
「雷ってどうしてなるのか、知ってる?」
「…空気中の静電気が…」
「フフ、違う違う。アルベドってそういう勉強もしてるのか?」
ワッカがいないのをいいことに、リュックがアルベドである前提の言葉を曝け出す。
「ここにはね、雷神が住んでる」
「…雷の、神様…?」
「そう。白く長いひげを蓄えた老人で、ラムウと呼ばれている。雷と、農耕を司り、農民を守る神とされた。若い頃の彼は赤髪の大男で大食漢。
その力の強さは当時の神々の中では誰も敵わない、と言われるほどだった。彼が人々から愛されたのは、人々を守る優しい心を持っていたから。
確かに大男で力も強く豪胆な性格だったけど、実は少々マヌケな一面もあったそうだ。計略や女性に弱くて、とても騙されやすい、純真な人だった。神々の大事な集会に行く為に用意していた大事な武器を、邪神ロキの悪戯によって長かった柄を短くされてしまったり、それを他の神に盗まれてしまったり、宴会を開く為に釣り上げた巨大なヨルムンガンドを海の女神セイレーンに邪魔されて逃がしてしまったり…。」
「へ~、ホントマヌケだ~」
「だから、神の民が住むところに近いこの雷平原では、その民を守るために邪な気を持つ人間を近づけさせまいと雷を落とし続ける。
でも、女性には絶対に落ちない。雷鳴なんて、実はラムウが飼ってる山羊の足音でしかないんだから! …雷がなったらね、空に向かって大声で『うるさいっっ』て怒鳴ればいいんだよ。その声に驚いてラムウは雷を落とすのを躊躇うんだそうだ」
私の話を聞いて、リュックは小さな丸い目を更に大きく見開いていた。
「…そっか。 …よ~~し!」
「随分と懐かしい話をしたもんだな」
少し元気を取り戻したらしいリュックが、自分もユウナの様子を見てくると私を解放してくれてから、アーロンが小さく呟いた。
懐かしい、そうかもしれない。
旅に出てこの雷平原に入る前に、ブラスカに聞いた話だったから。
アーロンも聞いたことがあるのか?と尋ねると、あぁ、と短い返事が返ってきた。
雷を本気で怖がるこの少女は、酷く幼く見える。
確か、15歳、だったはずだ。
・・・・15歳。
この年齢は、私やアーロンにとっては意味のある年齢だった。
誰かの傘の下ではなく、今度は己自身で傘を広げて生きていく為に…
しばらくして、ワッカと少年がじゃれ合いながら戻ってきたので、ユウナの様子を聴いて見たが、思いつめたような態度で部屋を飛び出してしまったらしい。
「ティーダはまだまだだな」
と笑い、アーロンも小莫迦にしたように小さく笑った。
意味が理解できなかったのだろう、少年は不思議そうな顔をしながらも悔しそうにいじけて見せた。
間もなくリュックも戻り、ユウナはルールーと部屋に戻って休んだことを告げた。
そして問う。どうするべきか、と。
私はそれに答えてやることは出来なかった。
きっとそれは私だけじゃなかったんだと思う。
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タイミングって何だろう?
“間”ってことなんだろうけど、それが妙にいいやつと悪いやつがいるよな。
後ほんのちょっとの時間差があったら…と思う瞬間てたくさんある。
それだけで、人生が変わるような決断を強いられてるときの人間の信条なんて、ころっと変わってしまうだろう。
私が発した言葉にリュックが疑問符を浮かべる。
「どういうこと~?」
「えーとさ、難しい選択を迫られたとき、さんざん悩んだ挙句に一度は出した答えでも、直前になってから『やっぱりこっち』って感じで変えたくなる時あるだろ? シーモアがそこにいて、すぐに返事を返せていたら、ユウナはあんなに悩んでないと思う」
「…そうね」
小さくルールーが賛同の言葉を呟く。
「どちらにせよ、決めるのはユウナだ」
少年は、ユウナの消えた方を苛々とした様子で何度も目を向けている。
「…心配なのはお前だけじゃねーよ。みんな同じ気持ちだ。少しは落ち着け」
ワッカの言葉に重なるように、またすぐ近くにでかい雷が落ちて、悲鳴を上げながらリュックが私の腕にしがみついてきた。
「…わかってるっスよ」
「今日はどうするんだ? このまま休む? 先に進む?」
「休んでこ~よ~!」
私の言葉にリュックは即答だ。
「ユウナ次第だな」
じっと頭を垂れたまま低い返答が返った。
ただじっと待っていることに耐えられなくなったのか、少年が様子を見てくると言って立ち上がった。
それを制するようにルールーとワッカも少年の後についていく。
アーロンとキマリはそこを動く気はないようだ。
できれば私もユウナの様子を見に行きたいところだったのだが、腕に必死にしがみついているリュックを無理に放す事も出来ない。
再び辺りが閃光に包まれ、リュックの悲鳴と公司が揺れるほどの雷鳴が轟く。
「キャアアアアアアアァァァッッ!!」
「うるさいっ!!」
「……えっ…ご、ごめん」
「あ、悪い、リュックに言ったんじゃないから」
目に涙を浮かべている少女の頭を軽く撫でてやる。
「?」
「リュック、少しだけ雷が怖くなくなる話、しようか?」
「…そんな話、あるの?」
「うん」
「…少しだけ?」
「うん、少しだけ」
「………」
少しだけ、という言葉に戸惑ったようだが、興味のほうが勝ったらしい。話を聞く体勢になる。
「雷ってどうしてなるのか、知ってる?」
「…空気中の静電気が…」
「フフ、違う違う。アルベドってそういう勉強もしてるのか?」
ワッカがいないのをいいことに、リュックがアルベドである前提の言葉を曝け出す。
「ここにはね、雷神が住んでる」
「…雷の、神様…?」
「そう。白く長いひげを蓄えた老人で、ラムウと呼ばれている。雷と、農耕を司り、農民を守る神とされた。若い頃の彼は赤髪の大男で大食漢。
その力の強さは当時の神々の中では誰も敵わない、と言われるほどだった。彼が人々から愛されたのは、人々を守る優しい心を持っていたから。
確かに大男で力も強く豪胆な性格だったけど、実は少々マヌケな一面もあったそうだ。計略や女性に弱くて、とても騙されやすい、純真な人だった。神々の大事な集会に行く為に用意していた大事な武器を、邪神ロキの悪戯によって長かった柄を短くされてしまったり、それを他の神に盗まれてしまったり、宴会を開く為に釣り上げた巨大なヨルムンガンドを海の女神セイレーンに邪魔されて逃がしてしまったり…。」
「へ~、ホントマヌケだ~」
「だから、神の民が住むところに近いこの雷平原では、その民を守るために邪な気を持つ人間を近づけさせまいと雷を落とし続ける。
でも、女性には絶対に落ちない。雷鳴なんて、実はラムウが飼ってる山羊の足音でしかないんだから! …雷がなったらね、空に向かって大声で『うるさいっっ』て怒鳴ればいいんだよ。その声に驚いてラムウは雷を落とすのを躊躇うんだそうだ」
私の話を聞いて、リュックは小さな丸い目を更に大きく見開いていた。
「…そっか。 …よ~~し!」
「随分と懐かしい話をしたもんだな」
少し元気を取り戻したらしいリュックが、自分もユウナの様子を見てくると私を解放してくれてから、アーロンが小さく呟いた。
懐かしい、そうかもしれない。
旅に出てこの雷平原に入る前に、ブラスカに聞いた話だったから。
アーロンも聞いたことがあるのか?と尋ねると、あぁ、と短い返事が返ってきた。
雷を本気で怖がるこの少女は、酷く幼く見える。
確か、15歳、だったはずだ。
・・・・15歳。
この年齢は、私やアーロンにとっては意味のある年齢だった。
誰かの傘の下ではなく、今度は己自身で傘を広げて生きていく為に…
しばらくして、ワッカと少年がじゃれ合いながら戻ってきたので、ユウナの様子を聴いて見たが、思いつめたような態度で部屋を飛び出してしまったらしい。
「ティーダはまだまだだな」
と笑い、アーロンも小莫迦にしたように小さく笑った。
意味が理解できなかったのだろう、少年は不思議そうな顔をしながらも悔しそうにいじけて見せた。
間もなくリュックも戻り、ユウナはルールーと部屋に戻って休んだことを告げた。
そして問う。どうするべきか、と。
私はそれに答えてやることは出来なかった。
きっとそれは私だけじゃなかったんだと思う。
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