第2章【ジョゼ~グアドサラム】
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渦巻いているのは、記憶と思い出
=20=
ここは私がスピラの中で一番嫌いな場所と言っても過言では無い場所。
死者との繋がりが一番深い町。
そして忌まわしき思い出の眠る土地。
いつでもここは通り過ぎるだけ。
10年前のあの日から、私はできるだけこの町に足を踏み入れることを拒んできた。
だから今回も、できればすぐに立ち去ってしまいたかった。
これも決められた運命の一環なのだろうか?
町に入った途端、まるで待ち伏せでもされていたかのように1人の男性がコチラに近付いてきた。
ユウナに声を掛けた途端、ユウナの手を取ろうとする。
「!」
咄嗟に体が反応する。
だが、私が動く前に、ユウナのすぐ隣にいたワッカが男の手を阻止する。
トワメルと名乗ったこのグアド族の老人、聞けばこのグアドの族長であるシーモアの身内だとか。
…トワメル…? 聞いたことあるような…?
誰だっけ…?
考えているうちに、ユウナはシーモアの屋敷に招かれることになったようだ。
私1人、ここで留守番してちゃダメだろうか?
「行くぞ」
後ろから背中を押される。
「できれば、行きたくない」
「お前の希望など却下だ。ユウナが行くならガードも行かねばならん」
「………わかった」
渋々、ユウナたちに続いてシーモアの屋敷へ向かう。
エントランスで待たされている間、私はこっそりアーロンに聞いてみた。
「…アーロン、さっきの人、覚えてるか?」
「…勿論だ。向こうは覚えてなどおらんようだがな。 あいつがどうかしたか」
「いや、誰だったかな、と」
「………先代族長ジスカルの側近だった男だ」
「…ジスカルの…。あぁ、そういえばそんな奴いたっけ…」
「代替わりしたのは、こちらに戻ってから初めて知ったがな」
「そっか、あんた向こうに行ってたから。何年か前になるよ」
「…そうか」
現われたトワメルに誘われ、屋敷の中へ。そこには溢れんばかりの食事が用意されていた。
リュックは空腹だったのか、早速果物に齧り付いている。
不安そうな表情のユウナからは、キマリが片時も側を離れようとしない。
キマリはシーモアに対する嫌悪感を隠そうともせず、ことがことならいつでもシーモアに敵対する覚悟がありそうだ。
部屋の中全体を見渡せる入口付近に立っていると、部屋の奥からトワメルと、怪しい笑みを口元に浮かべたシーモアが登場した。
あいつの纏う空気を感じると、ゾワリと鳥肌が浮かぶ。
もう、一刻も早くこんなところから逃げ出したかった。
突然部屋の明かりが落とされる。
足元から仄かな光が浮かび上がり、それは徐々に部屋全体を照らし出す。暗闇の中に浮かび上がった光の粒は、見たことも無い大きな都市。
高い建物がひしめき合い、至る所に灯された明かりは空の星さえも消してしまいそうなほどに眩しく煌いて、溢れる人の波は地面を覆いつくしそうなほどだ。
ザワザワとざわめく人の声、不思議な機械音、見たことも無い変わった服、どこまでも続く光の海。
「(なんだ、ここ!?)」
見たことも無い大きな都市と大勢の人の波の映像に、眩暈を覚えぐらりと体が傾く。
ふいに二の腕を掴まれ、体を固定された。…アーロンだ。
「…フン」
どこか呆れたような、馬鹿にしたような表情でそれを見つめていた。
「ザナルカンド!!」
少年が叫ぶ。
…そうか、これが、この街が、少年のいたザナルカンド。
ジェクトがいた街、アーロンが10年間生きていた街。
こんなものを見せられれば、喜ぶ少年の顔を見れば、我関せずな態度のアーロンを見れば、かつてのザナルカンドの繁栄を信じずにはいられない。
…だが、1000年もの時を、この少年とアーロンは一体どうやって超えたと言うのだろうか?
自分1人で、アーロンを運んだのはシンなんじゃないだろうか?なんて思っていた考えは、甘かったのだろうか。
映像は1つの屋敷の中に切り替わる。
寝台に腰掛ける1人の女性。
「ユウナレスカ様!」
今度はユウナが叫ぶ。
こうして生前の姿を見ても、あのことがあってからは敬おうなどという感情は沸いてこない。
ユウナレスカの元にゼイオンが歩み寄り、力強く抱きしめるところで映像は終了し、再び部屋の明かりが灯された。
目が慣れるまでに何度か瞬きを繰り返していたが、シーモアの近くにいたユウナがこちら側のテーブルに駆け寄ってきた。
そこに用意されていたグラスで一気に水を飲み干すと、大きく深呼吸をしながら顔を俯けた。
ユウナの様子に異変を感じ、少年とリュックが駆け寄る。
「うわ、顔 真っ赤!!」
酷く困惑しながら、ユウナはシーモアを一度振り返り、そして、告げた。
「……結婚を、申し込まれました…」
「「「!!!」」」
「…マジッスか…!?」
ユウナの言葉がにわかには信じられなかったのか、少年は確かめるようにシーモアに問いかける。
それはアーロンも同じだったようだ。
そして、私も…
一体、何を考えているのだろうか。今、ユウナがどんな立場にいて、何をしようとして、どこに向かっているのか、分かっているはず。
それでも尚、ユウナという花嫁を欲するのか。
アーロンが言う。『ひとときの夢で観客を酔わせても、現実は変わらん。スピラは劇場ではない…』と。
…確かに、結婚という幸福なイベントは人を幸せな気持ちにするだろう。
ましてや、ヒトとグアドの混血でありながらエボンの老師と言う役職についている男と、伝説の大召喚士の血を受け継ぐ次代の希望の星。
スピラに住む多くの民にとっては、この上ない喜ばしい大きなニュースとなる。
穏やかな笑みを浮かべているつもりなのだろう。
私には、その顔が歪んだ己の野望の為の生贄を手に入れたときのようなものにしか見えない。
優しい表情は、下卑た笑いと黒い闇を覆い隠す仮面にしか見えない。
酷く、気分が悪かった。
今すぐこいつの首を刎ねてしまいたかった。
ユウナが命じれば、この屋敷ごと吹き飛ばす自信もあった。
そっと、ユウナに視線をめぐらせる。
突然のことに、ユウナはどうしていいのかわからず混乱してしまってるようだ。
「良い返事を、お待ちしております」
そんなシーモアの言葉にも、何も返すことが出来ずに俯いてしまう。
「出るぞ」
怒りを含んだアーロンの低い声に、一同は踵を返した。
→第3章
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ここは私がスピラの中で一番嫌いな場所と言っても過言では無い場所。
死者との繋がりが一番深い町。
そして忌まわしき思い出の眠る土地。
いつでもここは通り過ぎるだけ。
10年前のあの日から、私はできるだけこの町に足を踏み入れることを拒んできた。
だから今回も、できればすぐに立ち去ってしまいたかった。
これも決められた運命の一環なのだろうか?
町に入った途端、まるで待ち伏せでもされていたかのように1人の男性がコチラに近付いてきた。
ユウナに声を掛けた途端、ユウナの手を取ろうとする。
「!」
咄嗟に体が反応する。
だが、私が動く前に、ユウナのすぐ隣にいたワッカが男の手を阻止する。
トワメルと名乗ったこのグアド族の老人、聞けばこのグアドの族長であるシーモアの身内だとか。
…トワメル…? 聞いたことあるような…?
誰だっけ…?
考えているうちに、ユウナはシーモアの屋敷に招かれることになったようだ。
私1人、ここで留守番してちゃダメだろうか?
「行くぞ」
後ろから背中を押される。
「できれば、行きたくない」
「お前の希望など却下だ。ユウナが行くならガードも行かねばならん」
「………わかった」
渋々、ユウナたちに続いてシーモアの屋敷へ向かう。
エントランスで待たされている間、私はこっそりアーロンに聞いてみた。
「…アーロン、さっきの人、覚えてるか?」
「…勿論だ。向こうは覚えてなどおらんようだがな。 あいつがどうかしたか」
「いや、誰だったかな、と」
「………先代族長ジスカルの側近だった男だ」
「…ジスカルの…。あぁ、そういえばそんな奴いたっけ…」
「代替わりしたのは、こちらに戻ってから初めて知ったがな」
「そっか、あんた向こうに行ってたから。何年か前になるよ」
「…そうか」
現われたトワメルに誘われ、屋敷の中へ。そこには溢れんばかりの食事が用意されていた。
リュックは空腹だったのか、早速果物に齧り付いている。
不安そうな表情のユウナからは、キマリが片時も側を離れようとしない。
キマリはシーモアに対する嫌悪感を隠そうともせず、ことがことならいつでもシーモアに敵対する覚悟がありそうだ。
部屋の中全体を見渡せる入口付近に立っていると、部屋の奥からトワメルと、怪しい笑みを口元に浮かべたシーモアが登場した。
あいつの纏う空気を感じると、ゾワリと鳥肌が浮かぶ。
もう、一刻も早くこんなところから逃げ出したかった。
突然部屋の明かりが落とされる。
足元から仄かな光が浮かび上がり、それは徐々に部屋全体を照らし出す。暗闇の中に浮かび上がった光の粒は、見たことも無い大きな都市。
高い建物がひしめき合い、至る所に灯された明かりは空の星さえも消してしまいそうなほどに眩しく煌いて、溢れる人の波は地面を覆いつくしそうなほどだ。
ザワザワとざわめく人の声、不思議な機械音、見たことも無い変わった服、どこまでも続く光の海。
「(なんだ、ここ!?)」
見たことも無い大きな都市と大勢の人の波の映像に、眩暈を覚えぐらりと体が傾く。
ふいに二の腕を掴まれ、体を固定された。…アーロンだ。
「…フン」
どこか呆れたような、馬鹿にしたような表情でそれを見つめていた。
「ザナルカンド!!」
少年が叫ぶ。
…そうか、これが、この街が、少年のいたザナルカンド。
ジェクトがいた街、アーロンが10年間生きていた街。
こんなものを見せられれば、喜ぶ少年の顔を見れば、我関せずな態度のアーロンを見れば、かつてのザナルカンドの繁栄を信じずにはいられない。
…だが、1000年もの時を、この少年とアーロンは一体どうやって超えたと言うのだろうか?
自分1人で、アーロンを運んだのはシンなんじゃないだろうか?なんて思っていた考えは、甘かったのだろうか。
映像は1つの屋敷の中に切り替わる。
寝台に腰掛ける1人の女性。
「ユウナレスカ様!」
今度はユウナが叫ぶ。
こうして生前の姿を見ても、あのことがあってからは敬おうなどという感情は沸いてこない。
ユウナレスカの元にゼイオンが歩み寄り、力強く抱きしめるところで映像は終了し、再び部屋の明かりが灯された。
目が慣れるまでに何度か瞬きを繰り返していたが、シーモアの近くにいたユウナがこちら側のテーブルに駆け寄ってきた。
そこに用意されていたグラスで一気に水を飲み干すと、大きく深呼吸をしながら顔を俯けた。
ユウナの様子に異変を感じ、少年とリュックが駆け寄る。
「うわ、顔 真っ赤!!」
酷く困惑しながら、ユウナはシーモアを一度振り返り、そして、告げた。
「……結婚を、申し込まれました…」
「「「!!!」」」
「…マジッスか…!?」
ユウナの言葉がにわかには信じられなかったのか、少年は確かめるようにシーモアに問いかける。
それはアーロンも同じだったようだ。
そして、私も…
一体、何を考えているのだろうか。今、ユウナがどんな立場にいて、何をしようとして、どこに向かっているのか、分かっているはず。
それでも尚、ユウナという花嫁を欲するのか。
アーロンが言う。『ひとときの夢で観客を酔わせても、現実は変わらん。スピラは劇場ではない…』と。
…確かに、結婚という幸福なイベントは人を幸せな気持ちにするだろう。
ましてや、ヒトとグアドの混血でありながらエボンの老師と言う役職についている男と、伝説の大召喚士の血を受け継ぐ次代の希望の星。
スピラに住む多くの民にとっては、この上ない喜ばしい大きなニュースとなる。
穏やかな笑みを浮かべているつもりなのだろう。
私には、その顔が歪んだ己の野望の為の生贄を手に入れたときのようなものにしか見えない。
優しい表情は、下卑た笑いと黒い闇を覆い隠す仮面にしか見えない。
酷く、気分が悪かった。
今すぐこいつの首を刎ねてしまいたかった。
ユウナが命じれば、この屋敷ごと吹き飛ばす自信もあった。
そっと、ユウナに視線をめぐらせる。
突然のことに、ユウナはどうしていいのかわからず混乱してしまってるようだ。
「良い返事を、お待ちしております」
そんなシーモアの言葉にも、何も返すことが出来ずに俯いてしまう。
「出るぞ」
怒りを含んだアーロンの低い声に、一同は踵を返した。
→第3章