第2章【ジョゼ~グアドサラム】
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時として記憶は酷
=17=
シパーフ乗り場に着いたとき、丁度対岸から渡河した乗客を乗せたシパーフが陸に上がるところだった。
「あの時の子、まだ現役で頑張ってるみたいだな」
足の付け根に古い傷が残るシパーフを見て、ジェクトを思い出さずにはいられない。
それはアーロンも同じ様だ。
「…親子揃って同じことをされたのでは、敵わんがな」
「それもそうだな」
感慨深げにシパーフを見つめた後、本来の目的を成す為に多くの店に目を向ける。
服を取り扱っている露店を見つけ、商品を見せてもらうことにした。
シンプルな無地のカットソーとジャケット。どちらも色は黒。
丈の短いジャケットは、後ろ腰に獲物を差す自分にとっては都合のいい服なのだ。
中に着るものなんて、本当ならなんでもいい。
服になんて特に拘らない性質だが、色だけは昔から黒を好んで着ている。
だから、この真っ赤な服は少々目立ちすぎて逆に恥ずかしさを覚えるほどだ。
「ラフテル、こっちの服にしろ」
「…は?なんで?」
一緒に店を訪れていたアーロンが、突然私に1着突き出した。
シャツのように羽織ってから前で止めて着るタイプのものだ。
「脱がせやすい」
「…っっ!!」
サラリと平気な顔で言ってのけたこのバカに、フレアをお見舞いしてやろうかと思った瞬間だった。
そこが店の中だということが、なんとか私の理性を保ってくれたらしい。
「バカ野郎!!」
とりあえず、握り拳で殴っておいた。
「親父!これをくれ! 代金はこのバカが払う!!」
私は最初に自分で手に取った服を握り締めたまま、店を後にした。
シパーフ乗り場の陰で買ったばかりの服に袖を通し、借りっぱなしだった赤い服を元の持ち主に返すべく、その人物を探す。
乗り場近くの階段の下で、何やら少年と話し込んでいるのを見つけ、そこに駆け寄った。
「ラフテル!!」
私の姿を見つけた少年が無邪気に手を振っているが、その横にいるサングラスの男は憮然とした顔で静かに目を閉じていた。
「ティーダ、来てたんだ」
「ラフテル、ちょっと聞きたいことがあったッスよ!」
「何?」
バサリとやつの顔目掛けて赤い服を返した。
「…一応、後で何か礼をするよ、アーロン」
「いずれ体で返してくれればいい」
「アーロンの顔のケガ「この変態!!!『バキッ!』」………あ~…なるほど」
「何!?ティーダ!」
「…あ、いや、なんでもないッス…」
東屋の屋根の下で準備が整うのを待っていたユウナを見つけ、駆け寄った。
アーロンはこの日、もう一つサングラスを買ったってことは、後でティーダに聞いた。
「ユウナ!」
「ラフテルさん!」
ユウナよりも、実は隣に立つキマリのほうが目立つからすぐに見つけられる、なんて口に出来るはずも無く…
「ユウナ、ごめん。勝手に側を離れて」
フルフルと可愛らしく顔を振ってみせる。
「大丈夫です。すぐそこですし、キマリもいたから。…それで新しい服、買えた…、あれ? 前とあまり変わってない…」
「あぁ、これ?」
着ているジャケットの合わせ目を左右に開いて見せた。
「着慣れてるものが一番いいからな」
どうしてそんな寂しそうな顔になるんだ、この娘は…。
「嬢ちゃん」
後ろから声を掛けられる。
こんな呼び方と声を持っている人物は、私の記憶の中で1人だけ。
「…おやっさん、もうそんな歳じゃないから、その呼び方は止めてくれ…」
肩に釣竿を乗せて現われたその老人は、私の顔なじみの1人。
声を詰まらせたように出す笑い方も10年前から全く変わらない。
「今日は魚持ってくかい?」
「…魚?」
短く聞き返したのはユウナ。
10年前、とある理由で野宿せざるを得ない事情が出来たとき、私はこのおやっさんと呼ばれている老人から釣ったばかりの魚を何匹か分けて貰ったことがある。
それが縁で、1人で旅をしているときも時々魚を貰ってはその場で焼いて2人で嗜んだこともある。
だが今日は野宿するにはまだ早いし、準備が出来次第すぐに出発することになるだろう。
おやっさんの心遣いはありがたいが、申し訳ないが今回は丁重に断らせてもらった。
「今日は友達と一緒かね?」
ユウナとキマリの存在に気付いたおやっさんが笑顔で聞いてくる。
「とも……、いや、彼女は召喚士だ。ガードとして旅をしている途中なんだ」
「ほっほっほっほ、そりゃまた懐かしいことじゃ。昔と同じじゃな」
「その時の召喚士の娘さんだよ」
「召喚士のユウナと申します」
ユウナはきれいにエボンの挨拶をおやっさんに向けた。
ブラスカの娘と聞いて、細められた目が1度見開かれ、そしてまた同じ様に短く笑った。
ここにも、ブラスカを知る者がいる。
この人の中にも、ブラスカは生きている。
それは私にとってもユウナにとっても喜ばしい誇り高いこと。
「そりゃますます昔の再現じゃな、嬢ちゃん」
「?」
私は苦笑を返すしかないが、おやっさんの言葉の意味を理解できないユウナは疑問符を浮かべるしかできないようだ。
再現なんて、したくない……
ブラスカの二の舞なんて、絶対にさせるものか。
→
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シパーフ乗り場に着いたとき、丁度対岸から渡河した乗客を乗せたシパーフが陸に上がるところだった。
「あの時の子、まだ現役で頑張ってるみたいだな」
足の付け根に古い傷が残るシパーフを見て、ジェクトを思い出さずにはいられない。
それはアーロンも同じ様だ。
「…親子揃って同じことをされたのでは、敵わんがな」
「それもそうだな」
感慨深げにシパーフを見つめた後、本来の目的を成す為に多くの店に目を向ける。
服を取り扱っている露店を見つけ、商品を見せてもらうことにした。
シンプルな無地のカットソーとジャケット。どちらも色は黒。
丈の短いジャケットは、後ろ腰に獲物を差す自分にとっては都合のいい服なのだ。
中に着るものなんて、本当ならなんでもいい。
服になんて特に拘らない性質だが、色だけは昔から黒を好んで着ている。
だから、この真っ赤な服は少々目立ちすぎて逆に恥ずかしさを覚えるほどだ。
「ラフテル、こっちの服にしろ」
「…は?なんで?」
一緒に店を訪れていたアーロンが、突然私に1着突き出した。
シャツのように羽織ってから前で止めて着るタイプのものだ。
「脱がせやすい」
「…っっ!!」
サラリと平気な顔で言ってのけたこのバカに、フレアをお見舞いしてやろうかと思った瞬間だった。
そこが店の中だということが、なんとか私の理性を保ってくれたらしい。
「バカ野郎!!」
とりあえず、握り拳で殴っておいた。
「親父!これをくれ! 代金はこのバカが払う!!」
私は最初に自分で手に取った服を握り締めたまま、店を後にした。
シパーフ乗り場の陰で買ったばかりの服に袖を通し、借りっぱなしだった赤い服を元の持ち主に返すべく、その人物を探す。
乗り場近くの階段の下で、何やら少年と話し込んでいるのを見つけ、そこに駆け寄った。
「ラフテル!!」
私の姿を見つけた少年が無邪気に手を振っているが、その横にいるサングラスの男は憮然とした顔で静かに目を閉じていた。
「ティーダ、来てたんだ」
「ラフテル、ちょっと聞きたいことがあったッスよ!」
「何?」
バサリとやつの顔目掛けて赤い服を返した。
「…一応、後で何か礼をするよ、アーロン」
「いずれ体で返してくれればいい」
「アーロンの顔のケガ「この変態!!!『バキッ!』」………あ~…なるほど」
「何!?ティーダ!」
「…あ、いや、なんでもないッス…」
東屋の屋根の下で準備が整うのを待っていたユウナを見つけ、駆け寄った。
アーロンはこの日、もう一つサングラスを買ったってことは、後でティーダに聞いた。
「ユウナ!」
「ラフテルさん!」
ユウナよりも、実は隣に立つキマリのほうが目立つからすぐに見つけられる、なんて口に出来るはずも無く…
「ユウナ、ごめん。勝手に側を離れて」
フルフルと可愛らしく顔を振ってみせる。
「大丈夫です。すぐそこですし、キマリもいたから。…それで新しい服、買えた…、あれ? 前とあまり変わってない…」
「あぁ、これ?」
着ているジャケットの合わせ目を左右に開いて見せた。
「着慣れてるものが一番いいからな」
どうしてそんな寂しそうな顔になるんだ、この娘は…。
「嬢ちゃん」
後ろから声を掛けられる。
こんな呼び方と声を持っている人物は、私の記憶の中で1人だけ。
「…おやっさん、もうそんな歳じゃないから、その呼び方は止めてくれ…」
肩に釣竿を乗せて現われたその老人は、私の顔なじみの1人。
声を詰まらせたように出す笑い方も10年前から全く変わらない。
「今日は魚持ってくかい?」
「…魚?」
短く聞き返したのはユウナ。
10年前、とある理由で野宿せざるを得ない事情が出来たとき、私はこのおやっさんと呼ばれている老人から釣ったばかりの魚を何匹か分けて貰ったことがある。
それが縁で、1人で旅をしているときも時々魚を貰ってはその場で焼いて2人で嗜んだこともある。
だが今日は野宿するにはまだ早いし、準備が出来次第すぐに出発することになるだろう。
おやっさんの心遣いはありがたいが、申し訳ないが今回は丁重に断らせてもらった。
「今日は友達と一緒かね?」
ユウナとキマリの存在に気付いたおやっさんが笑顔で聞いてくる。
「とも……、いや、彼女は召喚士だ。ガードとして旅をしている途中なんだ」
「ほっほっほっほ、そりゃまた懐かしいことじゃ。昔と同じじゃな」
「その時の召喚士の娘さんだよ」
「召喚士のユウナと申します」
ユウナはきれいにエボンの挨拶をおやっさんに向けた。
ブラスカの娘と聞いて、細められた目が1度見開かれ、そしてまた同じ様に短く笑った。
ここにも、ブラスカを知る者がいる。
この人の中にも、ブラスカは生きている。
それは私にとってもユウナにとっても喜ばしい誇り高いこと。
「そりゃますます昔の再現じゃな、嬢ちゃん」
「?」
私は苦笑を返すしかないが、おやっさんの言葉の意味を理解できないユウナは疑問符を浮かべるしかできないようだ。
再現なんて、したくない……
ブラスカの二の舞なんて、絶対にさせるものか。
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