第2章【ジョゼ~グアドサラム】
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父という傘を取り払おう
=13=
巨大な岩の塊が雷の力を以ってゆっくりと浮かび上がっている。
不思議なその光景にしばし目を奪われる。
過去にもここは訪れたことはある。
この現象は召喚士が祈り子と心を通わせている時にだけ起こる。
つまり今現在、祈り子と対面している召喚士がいるということだ。
10年前もこうしてここに立ったし、1人で旅をしているときにも何度か訪れた。
だが、初めてここに来たときには当然、私はブラスカや他のガード達と共に祈り子の部屋にいた。
それ以外でこうして召喚士が祈りを捧げている瞬間に立ち会えたことはない。
私は、この大岩が浮かぶ現象を目の当たりにするのは初めてなのだ。
ジョゼの寺院で出会ったのは、イサールという青年と彼の弟達。
ユウナと同じ様に召喚士として旅をしている。
また、10年前を思い出す。
ブラスカとの旅の途中にも、こうして他の召喚士と顔を合わせたことがあった。
この寺院で、ではなかったが…
召喚士にも本当に様々な性格の人間がいるものだと痛感した。
召喚士であるという立場を笠に着せて大仰に振舞うクセに、実力はそれに伴わない、なんて輩もいた。
試練の間に続く階段を上っているときに、私の後ろを歩いていた少年が、イサールに呼び止められていた。
今から試練の間へ入るってことはイサールも知っているわけだから、それほど長い話になることは無いだろうと、一瞥を向けただけで私も仲間達の後に続いた。
「うっし、ガード全員揃ったな」
ワッカの言葉に頷く。
少年が合流して、試練の間へ入る。
ジョゼの寺院の試練の間へ入るのは、実に10年ぶりだ。
そして、ユウナのガードして試練の間に入るのはこれが初めてとなる。
試練の間は、当然召喚士とガード以外は立ち入り禁止だ。
10年前、ブラスカとの旅を終えた私はガードとして役目を果たし、ガードという役職からも身を引いた。
寺院としては別に禁止するわけではないが、私としては入っても意味のない場所なのだ。
だから、10年ぶり…
スピラは10年経っても何も変わらない。
このままの螺旋を描き続ければ、この先何十年何百年経っても、きっとこのままなのだろう。
普通の召喚士が辿る旅では、絶対にシンは倒せない。それだけは確信していた。
試練の間を抜けると、祈り子の部屋に出る。その奥の祈り子の間にて、召喚士は祈りを捧げる。
奥に安置された祈り子と心を交し、その力を授かる為に。
力を授かって、初めて召喚士は召喚獣を呼び出すことが出来る。
うろうろと落ち着きの無い少年がルールーとアーロンに諌められるのを横目に見ながら、アーロンの隣に立つ。
ふいに試練の間のほうに人の気配を感じる。
誰か、もう1人、召喚士が入ってきたようだ。
扉が開き、召喚士とガードが入ってくる。
やけに露出の高い服?布?を身にまとうこの女性は、ドナ、とか言ったか。
その後ろを筋肉ムキムキのコチラも半裸の男が細い目を更に細めて子供のようについてきた。
ユウナたちは、この女性たちと少なからず面識があるのだろう。
私たちガードをグルリと見渡して、数だけは多いとか嫌味のように言ってのける。
キツイ目付きで、なぜか私を睨みつけるドナの迫力に、自分が何か悪いことをしてしまったかのような錯覚に囚われる。
ドナの隣に立っていたムキムキ男が、アーロンに歩み寄り、突然握手を求めてきた。
素直にそれに応じるアーロンに呆気に取られていると、私の目の前にも片手が差し出されていた。
手の主を確認しようと顔を上げると、そこには恥ずかしそうに赤くなった顔を背け、小さな声で呟くドナの姿。
「あ、あの、これはあくまでも敬意を表すって意味で、べ、別に憧れてるとか、そんな意味はないのよ!」
強がってはいるが、本音が洩れてしまっていることに、この女性は気付いていないのだろう。
思わず可愛いな~とか思ってしまうあたり、歳をとった証拠なのだろうか。
旅の途中で覚えた営業スマイルをニコリと添えて、ドナの差し出された片手を両手で握り締めてあげた。
「なあ、ドナ、俺、もう手、洗わんぞ」
「気持ちは判るけど、…私だって洗いたくは無いけど、汚い手で触らないでよ!」
少年とそんな会話をしているドナたちをみつめていると、祈り子の間の扉が重々しい音を立ててゆっくりと開いた。
中からふらふらと覚束ない足取りでユウナが出てくる。
ユウナのそんな姿を見たのは初めてだ。
他の仲間たちは承知しているのか、特に驚いた様子は無い。
チラリとアーロンに目を向ける。
「随分と熱心に祈りを捧げているようだな」
小さく呟くような声は、恐らく私にしか聞こえていないだろう。
部屋の中央に躍り出たドナが、豊満な胸を更に誇張するかのように顎を突き出してせせら笑う。
先程街道の途中で、ユウナが私に向けたユウナ自身の気持ちと考え其のものを、再び議論させてしまうような、嫉妬とも取れる発言。
私までがユウナのガードでいることを責められているかのような言葉の数々。
私は、ユウナが考えていた彼女の意思を汲み取ったばかりだ。
ドナのこの発言で、ユウナの覚悟が鈍るようなことなんて、無いと確信できる。
「父は関係ありません!」
言い切ったユウナに、思わず笑みが零れる。
そうだ、もう本当に私の役目は終わったんだ、そう思った。
大召喚士となったブラスカの栄光を語ることは、もう必要ない。
今は新たな召喚士が子のスピラを救うため、人々に笑顔を取り戻させる為に旅をしているのだ。
過去ではなく、今を人々に伝えなければ…
それは私ではなく、ユウナの役目なのだ。
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巨大な岩の塊が雷の力を以ってゆっくりと浮かび上がっている。
不思議なその光景にしばし目を奪われる。
過去にもここは訪れたことはある。
この現象は召喚士が祈り子と心を通わせている時にだけ起こる。
つまり今現在、祈り子と対面している召喚士がいるということだ。
10年前もこうしてここに立ったし、1人で旅をしているときにも何度か訪れた。
だが、初めてここに来たときには当然、私はブラスカや他のガード達と共に祈り子の部屋にいた。
それ以外でこうして召喚士が祈りを捧げている瞬間に立ち会えたことはない。
私は、この大岩が浮かぶ現象を目の当たりにするのは初めてなのだ。
ジョゼの寺院で出会ったのは、イサールという青年と彼の弟達。
ユウナと同じ様に召喚士として旅をしている。
また、10年前を思い出す。
ブラスカとの旅の途中にも、こうして他の召喚士と顔を合わせたことがあった。
この寺院で、ではなかったが…
召喚士にも本当に様々な性格の人間がいるものだと痛感した。
召喚士であるという立場を笠に着せて大仰に振舞うクセに、実力はそれに伴わない、なんて輩もいた。
試練の間に続く階段を上っているときに、私の後ろを歩いていた少年が、イサールに呼び止められていた。
今から試練の間へ入るってことはイサールも知っているわけだから、それほど長い話になることは無いだろうと、一瞥を向けただけで私も仲間達の後に続いた。
「うっし、ガード全員揃ったな」
ワッカの言葉に頷く。
少年が合流して、試練の間へ入る。
ジョゼの寺院の試練の間へ入るのは、実に10年ぶりだ。
そして、ユウナのガードして試練の間に入るのはこれが初めてとなる。
試練の間は、当然召喚士とガード以外は立ち入り禁止だ。
10年前、ブラスカとの旅を終えた私はガードとして役目を果たし、ガードという役職からも身を引いた。
寺院としては別に禁止するわけではないが、私としては入っても意味のない場所なのだ。
だから、10年ぶり…
スピラは10年経っても何も変わらない。
このままの螺旋を描き続ければ、この先何十年何百年経っても、きっとこのままなのだろう。
普通の召喚士が辿る旅では、絶対にシンは倒せない。それだけは確信していた。
試練の間を抜けると、祈り子の部屋に出る。その奥の祈り子の間にて、召喚士は祈りを捧げる。
奥に安置された祈り子と心を交し、その力を授かる為に。
力を授かって、初めて召喚士は召喚獣を呼び出すことが出来る。
うろうろと落ち着きの無い少年がルールーとアーロンに諌められるのを横目に見ながら、アーロンの隣に立つ。
ふいに試練の間のほうに人の気配を感じる。
誰か、もう1人、召喚士が入ってきたようだ。
扉が開き、召喚士とガードが入ってくる。
やけに露出の高い服?布?を身にまとうこの女性は、ドナ、とか言ったか。
その後ろを筋肉ムキムキのコチラも半裸の男が細い目を更に細めて子供のようについてきた。
ユウナたちは、この女性たちと少なからず面識があるのだろう。
私たちガードをグルリと見渡して、数だけは多いとか嫌味のように言ってのける。
キツイ目付きで、なぜか私を睨みつけるドナの迫力に、自分が何か悪いことをしてしまったかのような錯覚に囚われる。
ドナの隣に立っていたムキムキ男が、アーロンに歩み寄り、突然握手を求めてきた。
素直にそれに応じるアーロンに呆気に取られていると、私の目の前にも片手が差し出されていた。
手の主を確認しようと顔を上げると、そこには恥ずかしそうに赤くなった顔を背け、小さな声で呟くドナの姿。
「あ、あの、これはあくまでも敬意を表すって意味で、べ、別に憧れてるとか、そんな意味はないのよ!」
強がってはいるが、本音が洩れてしまっていることに、この女性は気付いていないのだろう。
思わず可愛いな~とか思ってしまうあたり、歳をとった証拠なのだろうか。
旅の途中で覚えた営業スマイルをニコリと添えて、ドナの差し出された片手を両手で握り締めてあげた。
「なあ、ドナ、俺、もう手、洗わんぞ」
「気持ちは判るけど、…私だって洗いたくは無いけど、汚い手で触らないでよ!」
少年とそんな会話をしているドナたちをみつめていると、祈り子の間の扉が重々しい音を立ててゆっくりと開いた。
中からふらふらと覚束ない足取りでユウナが出てくる。
ユウナのそんな姿を見たのは初めてだ。
他の仲間たちは承知しているのか、特に驚いた様子は無い。
チラリとアーロンに目を向ける。
「随分と熱心に祈りを捧げているようだな」
小さく呟くような声は、恐らく私にしか聞こえていないだろう。
部屋の中央に躍り出たドナが、豊満な胸を更に誇張するかのように顎を突き出してせせら笑う。
先程街道の途中で、ユウナが私に向けたユウナ自身の気持ちと考え其のものを、再び議論させてしまうような、嫉妬とも取れる発言。
私までがユウナのガードでいることを責められているかのような言葉の数々。
私は、ユウナが考えていた彼女の意思を汲み取ったばかりだ。
ドナのこの発言で、ユウナの覚悟が鈍るようなことなんて、無いと確信できる。
「父は関係ありません!」
言い切ったユウナに、思わず笑みが零れる。
そうだ、もう本当に私の役目は終わったんだ、そう思った。
大召喚士となったブラスカの栄光を語ることは、もう必要ない。
今は新たな召喚士が子のスピラを救うため、人々に笑顔を取り戻させる為に旅をしているのだ。
過去ではなく、今を人々に伝えなければ…
それは私ではなく、ユウナの役目なのだ。
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