最終章【ジェクト~終結】
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ありがとう
=100=
「そろそろ、かな?」
「…フッ」
「んじゃ、行こう」
「…仕方ねえなあ…」
「嬉しいくせに」
「…っるせーよ!」
真っ白な世界。
真っ白だけど、温かみのある世界。
ここには、心を許せる仲間がいる。友がいる。大切な人がいる。
そして間もなくここに戻ってくる、もう1人の友人を、私達は待っている。
私達はこうして姿を保っていられるべき存在ではない。
ここにあっていい存在ではない。
でも、それでもこうしてここに私達を留めていてくれるのは、硬い絆という意思。
ただ一緒に旅をしただけの人間ではない。
たくさんの会話を交し、感情を共有し、信頼を結び、命を預けあった。
生と死、人間が生まれ持った運命さえも乗り越えて結ばれた存在。
その人がいるから、私がいる。私が存在してるから、その人も存在できる。
互いに互いを支えて、頼りにしている。
誰か独りでも欠けることは許されない。
スピラという世界で生まれ、そして死んでいく。
人間の命の重さは誰にも計ることは出来ない。
命は与えられ、失われるもの。
でも、ヒトとして生きた記憶や想いという“魂”は永遠だと信じたい。
そしてもう1人。
遠い遠い空の彼方から、彼は私たちのところへ戻ってきた。
泣きはらしたように目を真っ赤にしながら、それでも笑顔を浮かべて。
太陽のような眩しい笑顔で、そいつは近付く。
ブラスカの横を通りすぎ、アーロンの前を通過して、片手を軽く挙げた私をチラリと見て、そして、真っ直ぐにジェクトの元へ。
“パシッ!”
小気味いい音が聞こえる。
それは私たちには理解できない、親子の挨拶。
超満員のスタジアム。
人々の歓声は鳴り止むことが無い。
真っ青な空はどこまでも高く、人々の歓喜の声を高らかに吸い込んでいく。
集まった人々の目はただ一箇所を見つめている。
「多くの……数え切れない犠牲がありました」
ユウナの声が拡声器を通して響き渡る。
観客席はとたんに水を打ったようにしんと静まり返り、誰もがその声に耳を欹てる。
「何をなくしたのかわからないくらい、たくさん……なくしました。 そのかわり……もう、シンはいません」
静かに拍手が沸き起こる。
「もう、復活もしません!」
雨粒のような音は漣となって、私の耳にも届く。
「これから……これからは、私達の時代、…だよね」
鳴り止まない拍手に、人々の感嘆の声が混じる。
ユウナの言葉に賛同する人々の喜びの声。
「不安なこと、いっぱいあるけど、時間もいっぱいあるから……! だから、大丈夫だよね!」
歓喜の声は歓声となってスタジアムを覆いつくす。
ユウナの声が聞こえなくなってくるほどに。
「力を合わせて、一緒に歩けるよね」
そこで声は最高潮に達する。
空気が震えるほど、割れんばかりとは正にこのことだと思う。
ユウナが、後ろを振り返る。
そこにいたのは、ガードの仲間達。みんな誇らし気に胸を張っている。
そしてユウナは何かに気付いたように、少し寂し気に俯いた。
どうしてかなんて、わかりきっている。
本当はそこにいなければならない人物がいないから……
「ひとつだけ、お願いがあります」
先程とは違う、真面目な緊迫したユウナの声。
人々の歓声は、再びそこで止められる。
「いなくなってしまった人たちの事……、時々でいいから……」
ユウナはそこで一端、言葉を切る。
観客たちはじっと、ユウナの言葉を待った。
「思い出してください」
人々の狂ったような歓声を聞き流しながら、私はルカのシンボルとも言えるスタジアムの得点板の上で、密かに感動していた。
フワリと幻光虫が私の周りを舞う。
「…わかった、今、行く」
私の姿を見ることができる生きた人間は、もうこのスピラにはいないだろう。
幻光虫の1つとなって漂うことしかできない。
でも、こうして意識を保っていられる。それも、あとどのくらいなのか、この意識も完全に消えて、幻光虫は消滅するだろう。
もう、私の魂は異界にいるのだから。
ありがとう、ユウナ。
ありがとう、みんな。
そして、さようなら……
これが私の物語
end
→ あとがき
=100=
「そろそろ、かな?」
「…フッ」
「んじゃ、行こう」
「…仕方ねえなあ…」
「嬉しいくせに」
「…っるせーよ!」
真っ白な世界。
真っ白だけど、温かみのある世界。
ここには、心を許せる仲間がいる。友がいる。大切な人がいる。
そして間もなくここに戻ってくる、もう1人の友人を、私達は待っている。
私達はこうして姿を保っていられるべき存在ではない。
ここにあっていい存在ではない。
でも、それでもこうしてここに私達を留めていてくれるのは、硬い絆という意思。
ただ一緒に旅をしただけの人間ではない。
たくさんの会話を交し、感情を共有し、信頼を結び、命を預けあった。
生と死、人間が生まれ持った運命さえも乗り越えて結ばれた存在。
その人がいるから、私がいる。私が存在してるから、その人も存在できる。
互いに互いを支えて、頼りにしている。
誰か独りでも欠けることは許されない。
スピラという世界で生まれ、そして死んでいく。
人間の命の重さは誰にも計ることは出来ない。
命は与えられ、失われるもの。
でも、ヒトとして生きた記憶や想いという“魂”は永遠だと信じたい。
そしてもう1人。
遠い遠い空の彼方から、彼は私たちのところへ戻ってきた。
泣きはらしたように目を真っ赤にしながら、それでも笑顔を浮かべて。
太陽のような眩しい笑顔で、そいつは近付く。
ブラスカの横を通りすぎ、アーロンの前を通過して、片手を軽く挙げた私をチラリと見て、そして、真っ直ぐにジェクトの元へ。
“パシッ!”
小気味いい音が聞こえる。
それは私たちには理解できない、親子の挨拶。
超満員のスタジアム。
人々の歓声は鳴り止むことが無い。
真っ青な空はどこまでも高く、人々の歓喜の声を高らかに吸い込んでいく。
集まった人々の目はただ一箇所を見つめている。
「多くの……数え切れない犠牲がありました」
ユウナの声が拡声器を通して響き渡る。
観客席はとたんに水を打ったようにしんと静まり返り、誰もがその声に耳を欹てる。
「何をなくしたのかわからないくらい、たくさん……なくしました。 そのかわり……もう、シンはいません」
静かに拍手が沸き起こる。
「もう、復活もしません!」
雨粒のような音は漣となって、私の耳にも届く。
「これから……これからは、私達の時代、…だよね」
鳴り止まない拍手に、人々の感嘆の声が混じる。
ユウナの言葉に賛同する人々の喜びの声。
「不安なこと、いっぱいあるけど、時間もいっぱいあるから……! だから、大丈夫だよね!」
歓喜の声は歓声となってスタジアムを覆いつくす。
ユウナの声が聞こえなくなってくるほどに。
「力を合わせて、一緒に歩けるよね」
そこで声は最高潮に達する。
空気が震えるほど、割れんばかりとは正にこのことだと思う。
ユウナが、後ろを振り返る。
そこにいたのは、ガードの仲間達。みんな誇らし気に胸を張っている。
そしてユウナは何かに気付いたように、少し寂し気に俯いた。
どうしてかなんて、わかりきっている。
本当はそこにいなければならない人物がいないから……
「ひとつだけ、お願いがあります」
先程とは違う、真面目な緊迫したユウナの声。
人々の歓声は、再びそこで止められる。
「いなくなってしまった人たちの事……、時々でいいから……」
ユウナはそこで一端、言葉を切る。
観客たちはじっと、ユウナの言葉を待った。
「思い出してください」
人々の狂ったような歓声を聞き流しながら、私はルカのシンボルとも言えるスタジアムの得点板の上で、密かに感動していた。
フワリと幻光虫が私の周りを舞う。
「…わかった、今、行く」
私の姿を見ることができる生きた人間は、もうこのスピラにはいないだろう。
幻光虫の1つとなって漂うことしかできない。
でも、こうして意識を保っていられる。それも、あとどのくらいなのか、この意識も完全に消えて、幻光虫は消滅するだろう。
もう、私の魂は異界にいるのだから。
ありがとう、ユウナ。
ありがとう、みんな。
そして、さようなら……
これが私の物語
end
→ あとがき