I=U(アイハユウ)
【CoCシナリオ】I=U(アイハユウ)
愛は言う「あなたは正しく、あなたである」と。
シナリオ:I= U(アイハユウ)
推奨人数:2名〜(NPCを出せばPL1人も可能)
形式:一本道
時間:短い
難易度:簡単
ロスト:あり
推奨技能:目星、図書館、戦闘技能(重要)
犬猿の仲とか相棒同士が、互いの武器を交換して戦うのめちゃくちゃかっこいいよね、やろ。というシナリオ。
-------
【注意】
1.影響があるのかないのかわからない後遺症(?)のようなものが残る可能性があります。
2.PCはみんな知り合い設定だとなお良いと思います。
3.相棒、犬猿の仲、恋人あたりの関係の探索者たちでくるのを推奨していますが、別にそれ以外でも大丈夫です。
4.めちゃくちゃ戦闘の技能値が高くても構いません。
5.御察しの通り入れ替わりネタです。相手のPCを思いやる気持ちを大切にしましょう。
-------
<ここからネタバレが入ります。>
<キーパーへの補足は< >で括ってあります>
<このシナリオで大事なことは、間違えないことです。>
【導入】
※調べられるところ、技能を使えるところを『』で括っています。
首裏に走る鈍痛。
仕事帰りだったか、学校帰りだったか、はたまたそんなもの自分は行ってなかったか。
混濁する意識の中、目を開けるとそこには見覚えのない薄汚い床。
困惑して顔を上げると、鏡の向こうに困った顔をした"あいつ"がいた。
<もし初対面探索者ならば、" "の中を、"知らない人"などに変えてください>
鏡張りのワンルーム。
いかがわしいホテルかと言われればそうかもしれないし、悪趣味で気味の悪いただの部屋だと言われればそんな気もする。
いや、場所はどうでもいい。
そんな部屋の真ん中、目の前では自分と同じ顔をした人間が呆けている。そして鏡の中で驚く自分と同じ動きをしているのは、なんと"あいつ"の方なのだ。
互いの動揺を見た瞬間、探索者たちは悟った。
自分と"あいつ"が入れ替わってしまっている。
目の前にいる、自分ではない"自分"。
その事実に背中がゾッとする。
SANc(1/1d2+1)どうぞ。
<探索者同士が恋人、もしくは相手を好いている場合、鏡に映るその人の姿ではなく、目の前にいる自分の姿のその人を好ましく思います>
---------------------
KP情報ページ
【入れ替わりについて】
<実は、魂が入れ替わった訳ではありません。探索者同士の記憶のみが入れ替わっています。つまり、魂も体も本人のものですが、記憶が入れ替わっているので探索者たちは自分が相手だと思い込んでいるのです>
<なので、好きなものや嫌いなものは魂や体に準拠します。記憶では好きだと記憶しているが、いざ食べたり見たりしてみるとそうでもないと感じます>
※<つまりPL(A)さんは、キャラクター(A)の記憶を持った"キャラクター(B)の魂と体"を動かすことになります。(そのことについては伏せておいてください)>
【技能について】
<知識系の技能は補正なし。体を使う技能(面倒なら、少なくとも戦闘技能だけでも)は50%(つまり出目が50以下で成功)で判定して下さい。記憶を持っている方が使うときは「やり方がわかるが、体は違う人物なので」、体の持ち主が使うときは「やり方は記憶していないが、体が覚えているので」という理由です。元々の技能値が50%以下の場合は、40%や30%など、KP側で調整をお願いします>
<また、2人の互いの理解度が高い、もしくは上がって来たと感じたら、後半の戦闘などでは、50%にプラスで補正をかけても構いません。雰囲気が最高だったら、ラストバトルで相手の技をまんまトレースできたっていいのです。さじ加減はお任せします>
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【鏡ばりの部屋】
いかがわしいホテルを連想させられるその部屋は、四方の壁と天井が鏡張りで、自分の顔が、記憶にあるそれと全く異なることを強調してくる。
部屋に玄関や外へつながるドアらしいものは見つからないが、『風呂』、『トイレ』、『キッチン』、『ベッド』など生活に必要なものは全てある。
一応体は健康体だ。顔が自分のものでないことを除いて。
よくよく見て見ると、探索者の首には覚えのない革製の首輪が巻かれていて、施錠されている。
全体に目星
→床が鏡張りでないことに気がつく。
風呂
→泥水が浴槽を満たしている。
(風呂に目星)
→キラ、と何かが泥の中で光る。
(浴槽に手を入れる)
→何かが指先に引っかかるが、泥で滑って取れない。
(浴槽の泥を掻き出そうとする)
→ある程度すくえるが、全部は無理である。泥の中には髪の毛や石鹸カスやらが大量に混じっている。不快だ。SANc(0/1)。
(風呂の栓を抜く)
→ズゾゾゾゾという狭いパイプを泥が進んで行く音、そして、広いところに出ているのか、ジャー、と、解放される音がする。そして、キンッ!ガゴゴガッ!と固い何かがパイプに落ちて流された音もした。
(栓を抜いた後の風呂)
→流しきれなかった泥や髪の毛が残っている以外何もなさそうだ。
トイレ
→手洗い場の鏡に赤い文字で「Who are you?」と書かれている。
キッチン
→冷蔵庫を開けると、自分と、そして記憶が間違っていなければ一緒にいるあの人の好物もある。
(自分の好物を食べる)
→記憶にある通りの味にも関わらず、記憶通りの多幸感はない。思わずあなたは首をかしげるだろう。
(相手の好物を食べる)
→好物を食べた時特有の多幸感が舌いっぱいに広がる。
ベッド
→ベッドの下に自分たちの持ち物が放り込まれていた。
ベッド目星
→ベッドの下、自分たちの荷物が放り込まれていた部分の床に、取っ手が付いている。床を開けられそうだ。
ベッドの下の床を開ける
→下に鏡張りではない部屋がある。床は汚泥で一部汚れている。しばらく目を凝らしていると、視界の端で何かが動く。ローブを纏う何かが、汚泥を跳ねさせながら下の部屋の端にある扉に向かって走る。
<このローブを被った何かを異常に怖がって追いかけなかったり、興味が薄そうだったりした場合は、「見失うともう二度と元の体に戻れない気がする」など、追いかけさせるような描写をして下さい>
----------------------------
【下の階に降りる】
泥に塗れた部屋に降り立つ探索者たち。少し高さがあるが、大怪我をするほどではない。見回すと、開いたドアの隙間から『ローブ』の端がチラリと見えてすぐに消えた。
(ローブに目星)
→キラリと、泥に汚れた鍵のようなものが裾に引っかかっているのが見えた。
【下の部屋】
上の部屋同様『洗面台』とキッチン、『風呂場』がある。家具も何もないワンルームは泥に塗れており、先ほどの部屋とは違って半開きのドアがある。
洗面台
→鏡にルージュで「鏡は本当のあなたの姿を映しだす」と書いてある。
<探索者が鏡を見つめると、探索者視点だともちろん入れ替わった相手が映っているという認識です。しかし、実は入れ替わっているのは記憶だけで、鏡に映る姿が本人には変わりないのです>
風呂場
→上の階の泥がそのままパイプを通り落ちてきたようだ。水気の残る多くの泥が浴槽に『山』を作っている。
(山に目星)
→一冊の本が泥に埋まっている。泥に汚れたそれはところどころ汚れて読みづらい。
(日本語ロール成功)
→とある模様が書いてある。その模様で囲んだものは外に出られなくなるのだという。魂を定着させるために用いられるのだそうだ。そしてそれは、探索者の首輪に彫られている模様と酷似していた。
気味の悪い本を読んだ探索者は自分の首に付けられた呪いに吐き気を覚える。SANc(0/1)
<探索者の魂が外に出ないようにする呪いです。後々わかりますが、記憶が入れ替わったまま首輪を外すと、記憶が移動するのではなく、魂が移動してしまい、姿と心がちぐはぐのままになってしまいます>
(日本語ロール失敗)
→見え辛いがとある模様が本には書いてあり、その模様には何か不思議な力があると記されている………ように感じる。
扉を出ようとする
→ローブの後を追おうと扉へと向かう探索者の背後、ぴちゃ、びちゃ、とぬかるみを踏む音がする。おぞましい存在感に身を震わせ、後ろを振り向くと、部屋中の泥をかき集めてできた2メートル程の人型の何かが、扉の先に行かせまいと、探索者たちに手を伸ばしているところだった。
SANc(1/1d2)
<魔術的な土人形です。探索者が扉の外に出れば、魔術の加護がなくなりただの土に戻ります。しかし、戦闘技能持ち探索者はここぞとばかりにここで格好をつけさせましょう。一、二発殴ったら泥に返させるもよし、怖がらせるだけ怖がらせたらいつの間にか消えてるのでもよし。好きな演出をどうぞ。戦闘用スペック一応載せておきます>
<土人形スペック>
<siz18、str6、dex3、app3、耐久10>
<殴る30%(ダメージ1d3)、
蹴る30%(ダメージ1d6)、
捕まえる30%(次ターン回避半減、str対抗で抜け出し可)>
【探索者が部屋から出る。または土人形を倒す】
「ヒノデ マデ アト ニジカン」
不快な水温を響かせながら土人形はにたりと笑うように、そう言った。
何かの加護が消えたのか、自重に耐え切れないとでもいったように土塊は足元から崩れ、その衝撃によって弾けて散った。後には、土にまみれた床しか残っていない。
ひとまず危機は脱したようだ。
--------------
【土人形をかわし、または倒し、扉の外に出る】
扉を開けるとそこには無数の扉。しかしなんてことはないただのマンション、いや、ホテルだろうか。ともかくその様な建物とほとんど大差ない。追いかけているローブは探索者が来ているのかを確認するためか、嘲笑うように少し動きを止めた後、奥の階段を下に降りていく。
<ただのマンションもしくはホテルの二階です。無理に他の扉を開けようとしても開きませんし、下手にガチャガチャすると怒られてしまうでしょう>
降りるとそこはロビーのようだ。一般的な出入り口用の自動ドアの向こうでローブがはためく。外は暗い。深夜だろうか。道に見覚えはないが、なんてことはない普通の町のような気がする。
<普通のどっかの町です。探索者の住む地域でも構いません。外に出てからはコンビニに寄っても家に寄っても大丈夫です。しかし、焦燥感は感じさせて下さい。日が昇るとアウトです>
------------------
【ローブを追いかけて夜道を走る】
追いつけるような追いつけないような、絶妙な速さでローブは夜の町を駆け抜ける。
<ローブの中身はただの一般的な(?)狂信者なので、やりたかったらタクシーに乗せてカーチェイスしても構いません。運転手さん!前のあいつを追ってくれ!>
<店や家など寄り道をした場合は、そこから出てきたときに曲がり角の陰にローブの端を見つけるといった親切設計です。ローブの狂信者さんも、探索者たちに追いかけてきてもらいたいのです(体を使えば使うほど、記憶と体の定着率が上がるので)>
--------------
【探索者が警察に行った場合】
<「自分たちは入れ替わっている」もしくは、「攫われた後今ローブ姿の人を追っている」などと探索者が言うと、「またその手のイタズラか」と門前払いされます。今まで何人も同じようなことを言う人が現れて調査したが何も出てこなかったので、今流行りのイタズラだと警察は結論付けました>
【探索者達が情報収集を行った場合】
目星か図書館でとある宗教のパンフレットが、おそらく無許可だろう電信柱に数束くくりつけられているのに気づく。その宗教のパンフレットの表紙には「自分を変えたくはありませんか?」と大きく書かれている。
<宗教団体の拠点の地図も載っているには載っています。地図に気付いたり、この宗教について調べたがる探索者がいたら、ローブをまとった何かが向かっている先が、ちょうどパンフレットに記されている拠点だと情報を出して構いません。※行き先に気付いてもローブの先回りはできません>
<時間制限のため情報収集に触れるダイスは1回>
----------------------
【ローブの後を追って建物に入る】
探索者の足も疲れからもつれ始めてきた頃、人気の少ない場所にポツンと立った二階建ての建物に、ローブを纏う何かは入って行った。
扉はローブをまとったものが使用したその1つしか見当たらない。
<聞き耳で人の気配、目星で二階の一室の窓から光が漏れていることがわかる(遮光カーテンでも使っているのか、見える光が弱く細い)>
建物に入ると、一階には扉が1つと端には階段がある。
【1階の部屋】
物置のようだ。雑然と物が置かれているが、丸い水晶や髑髏を模した鏡や気味の悪いオカルティックなものが多い。
(部屋全体に目星)
→一冊の革張りの本が髑髏の鏡の前に置いてある。
(革張りの本)
→そこには、恐ろしい宗教の実態が描かれていた。信仰宗教の聖書的な位置にあるものなのだろうか。どのように世界は作られて人はどう生きるべきかといった内容が書かれているが、端が折られたページに驚くべきことが書いてある。「人の魂は記憶に由来する。記憶を変えれば魂が変わる」その一文が書かれた一節には、記憶を変えれば魂や人格を変えることもできる、とある。魂は記憶のあるところに惹きつけられるに違いない、と力説するその本の異常な魅力に、探索者の中の何かがぐらりと揺らぐ。目の前の鏡がそんな探索者を笑うように「お前は誰だ」と言った気がした。自分の根底を覆す聖典の存在に吐き気を覚えた探索者はSANc(1/1d2)。
【2階】
階段を登った先には扉が2つあった。1つは書庫と書かれたプレートがかかっており、もう1つは半開きで中から嫌な感じのする光が漏れている。
<書庫にまずいくように誘導して下さい。書庫を後回しにすると、生存率がぐっと下がります>
【2階の書庫】
一室を埋め尽くすほどの膨大な量の本。『本棚』に納められたもの、『床』に放られたもの。部屋には無秩序に文字が溢れかえっている。
(床に目星)
→本の中に埋もれた1つの木箱を発見する。見ると、中には首輪が入っている。探索者の首にはまっているものと似ているようだが、探索者の首に巻かれている首輪にある不思議な模様がそれには刻まれていない。
(本棚に図書館)
→棚から頻繁に出し入れされた形跡のあるそれは、何かの記録のようなものが束ねられたファイルだった。最初のページでは、望みの内臓や体の部位といったものをどうしたら手に入れることができるか、そしてそれにまつわる恐ろしい実験や魔術について綴られていたが、後々望みのものは性格や人格、魂といったさらに入手困難なものへと変貌していく。最後のページ、比較的新しい項目で探索者の手は止まる。
『【記憶代替実験】被験者AとBの記憶を術式αにより入れ替え、定着のために拘束術式βを施した首輪にて施錠。一定時間経過後、首輪を外して魂の動きを見る。現在5組が首輪を外せず日の出を迎え、術式βの拒絶反応にて死亡。残りが日の出前に首輪を外し、記憶のある方の肉体に魂が引きつけられるかたちとなった。仮説通りである。被験体はその後魂と肉体が入れ替わったままつつがなく生存。直ちに身体への影響はなし』
淡々と綴られた文字の中に見えた"死亡"という単語。自分の背後に忍び寄る日の出と死の気配に、探索者は顔を青ざめさせる。オカルティックでありながら、凄惨な研究内容とその結果。込み上げる吐き気。SANc(1/1d3)どうぞ。
【半開きの扉】
(中を覗こうと近づくと、扉はひとりでに大きく開き、壁にぶつかり大きな音を立てた。)
そこは、血肉と泥に塗れていた。
鼻をつく生臭い匂いの中、ローブを着たそいつが、禍々しい本を手にこちらを振り返る。
「新しい目覚めはいかがかな。僕は君らにアダムとイブという名前をつけたんだけど、本当にその名にふさわしい働きをしてくれるね。君らの術式は特にうまくいったんだ。なに…時期に"記憶通り"完全に体を動かせるようにもなるさ。ん?なんだその顔……あぁ、もしかして、自覚がないのか」
男は興奮気味に言葉を続ける。
「君たちの体と魂は入れ替わってなんかいないんだ。不思議だろう?君たちは"記憶"が入れ替わっているに過ぎない。それなのに、さも自分が自分でないような心地がするはずだ!そう、そうなんだよ!今はその首輪のおかげで、魂と記憶が別の体にあるけれど、それを外すと魂は完全に記憶のある方、つまり相手の体に向かうってわけさ。面白いと思わないかい?魂は体じゃなくて、記憶のあるところにあるのさ。ふふ………お喋りが過ぎたようだ。君たちと話せるのが嬉しくてつい、ね…。君たちの不便もあと少しだ。では早速、最終治験を始めよう」
男が何事かを呟くと、部屋中の血肉と泥は部屋の中央で渦を巻き、バキバキぐちゃぐちゃと音を立てて、気味の悪い二足歩行の化け物へと変わる。
「さあアダム、イブ。リリスと僕と、仲良くしよう」
リリスと呼ばれた化け物が咆哮をあげた。
死を体現した存在は、探索者の精神を確実に蝕んでいく。SANc(1/1d3)どうぞ。
<探索者が記憶と魂が別物であること。そして、記憶だけを入れ替えられてしまったということを理解できるよう、長々と黒幕には演説してもらいましょう。足りないと思ったら随時足して下さい>
【戦闘開始】
<魔術師(狂信者)スペック>
<siz15、str5、dex12、app13、耐久12>
<回避60%、リリスの術を維持する99%>
<自分のターンでは、リリスを動かす術しか基本しません>
<土人形スペック>
<siz20、str10、dex3、app3、耐久15、気絶・窒息判定などは無し>
<殴る30%(ダメージ1d3+1d4)、
蹴る30%(ダメージ1d6+1d4)、
捕まえる30%(次ターン回避半減、str適当なところで魔術師のmp切れで瓦解したことにしたことにしても構いません>
【戦闘終了】
化け物は自らの傷口から溢れ出す死のほとばしりにすら目もくれず、探索者へと手を伸ばそうとした。しかし、その死神の手は生者であるあなたたちには届かない。自分の背負う死の重さに耐えきれないとでもいうかのように、リリスは足元から瓦解し、その醜い姿を元の泥へと変えた。
「あ、あぁ……り、リリス…。くそっ…!!僕は…俺は諦めないぞ…!!!」
ローブを着た男は、もはや自分の退路の妨げとなりうる『ローブ』を脱ぎ、『本』すら投げ捨て窓へと足をかけていた。
慌てて探索者が追いかけても、飛び降りた男は闇に溶け、どこにも見つからないだろう。
【狂った男の置き土産】
ローブを調べる
→鍵が布の中に埋もれている。首輪の錠とサイズが合いそうだ。また、一枚のメモもある。
本を調べる
→αと書かれた付箋が貼られている。
付箋の貼られたページには、人間の記憶を入れ替える呪文が書いてあった。
<記憶の転移MP3/SAN 1d2消費で発動>
<魔術師が既存の呪文から作ったオリジナル呪文です。あまり深く考えなくて大丈夫です>
---------------------------------
ED1【呪文α(記憶の転移)→首輪を外す】
呪文αを唱えた途端、あなたの脳内に本当のあなたの記憶が流れ込んでくる。ピースがピタリと当てはまる感触。それはどことなく完成間際のパズルのようで急く心とは裏腹に、心地よい痺れを脳にもたらす。
反射的に閉じていた目を開ければ、それはもう"いつも通り"だった。強いて違う点を挙げるとするならば、自分の中に微かに、自分以外のものであった記憶が残っていることだ。このトンチキ騒ぎの間の出来事や、その間思い出してしまった相手の記憶は、完全には無くならないのだろう。あなたはそれを脳内の適当な引き出しにしまい込んだ。
禍々しい首輪は鍵を使えばなんともあっけなく外れた。
<首輪のことを忘れていたら、窓の外が白み始めると同時に首輪が締まってきた描写などを入れて助けてあげてください>
空の向こうが白み始める。
窓に映るいつもの自分の隣で、いつものあいつが、目を眇めているのが見えた。
今日も、あなたは、あなただ。
ED1.Yes,I am!
----------------------
ED2【呪文α(記憶の転移)無しに首輪を外す。その後も呪文α(記憶の転移)をしない】
禍々しい首輪は、鍵を使えばなんともあっけなく外れた。これで命の危機はない。あなたはホッと息をつく。
スッと、何かがしっくりとくるようで、それでいて無理に割り込むような感覚がした。あなたはそれに首を傾げるが、違和感の正体はよくわからないだろう。
空の向こうが白み始める。
窓に映る顔はどうやってもあいつのもので、その隣では自分が光に目を細めているのを他人事のように観察できる。
体と心のズレは日が昇っても治らない。少なくとも今日1日は、このまま過ごすしかないだろう。いや、もしかしたら一生かもしれない。
妙なことになってしまった。これからどうしよう、とあなたはため息をつく。
とりあえず、2人で頭を打ってみようかなどと、窓の下を見てあなたは考えていた。
ED2.Are you me?
<前前前世でも流しておきましょう。キャラロスト案件かもしれませんが、このまま入れ替わったPCを使用したいとのことなら、ロスト扱いでなくても構いません。技能値などは要相談で>
----------------------
ED3【首輪を外す→その後呪文α(記憶の転移)をする】
禍々しい首輪は、鍵を使えばなんともあっけなく外れた。これで命の危機はない。あなたはホッと息をつくだろう。
そこでスッと、何かがしっくりとくるようで、それでいて無理に割り込むような感覚がした。あなたはそれに首を傾げるが、違和感の正体はよくわからないだろう。
呪文αを唱えた途端、あなたの脳内にあなたが求めていた記憶が流れ込んでくる。白いキャンバスが絵の具で塗りつぶされていく感触。それはどことなく気持ち悪さすら感じる。
しかし、反射的に閉じていた目を開ければ、それはもう"いつも通り"だった。強いて違う点を挙げるとするならば、自分の中に微かな違和感が残ることだ。このトンチキ騒ぎの間の出来事や、その間思い出してしまった相手の記憶は、完全には無くならないわけだから、違和感が残るのも仕方がないのかもしれない。あなたはその違和感を、脳内の適当な引き出しにしまい込んだ。
空の向こうが白み始める。
窓に映るいつもの自分の隣で、いつものあいつが目を眇めているのが見えた。
今日も、あなたは、あなただ。
…………………………………本当に?
変わってしまった好物と、変わってしまった好きな人。
あなたが本当は誰だったのかを、それらだけが知っていた。
ED3.Who am I?
<魂だけが入れ替わってしまったエンドになります。PLさんと話し合って、「記憶に魂がひきつけられるので〜」と、時間経過で徐々に魂も戻って来て、結局ED1になる形にしても構いません。難易度調整はお好みに>
---------------------------
【エピローグ(ED1〜3共通オマケ)】
<なくてもいいです。時間があって、犯人に一発かましたい時とかにどうぞ>
あの騒動からどれ程経っただろうか。
昼の繁華街、例のあいつと示し合わせたようにバッタリと出くわす。
すると、喧騒をかき分けてサイレンの音が鳴り響く。
「止まりなさい!黒い服の男!止まりなさい!」
人々は恐怖にかられ、モーゼの渡る海のようにその道を開ける。
「どけ!!」
人垣によってできた道の真ん中、未だ立ち尽くす探索者に向かって突進してくるのは、制服警官に追われて走る、例のローブの男だ。
現在はもちろんローブなんて着ていない。
けったいな本もない。
こちらを見る余裕もないのか、それとも数ある実験台の顔など覚えていないのか、人々がお膳立てしてくれたその道を、よりにもよって自分たちに向かって進んでくる。
足か。
頭か。
いやいや、腹だな。
人波に揉まれて到着が幾ばくか遅れそうな警察官に変わり、あなたたちは武器をとる。
今度は、威力100%をお見舞いしよう。
完
<探索者たちの活躍のおかげで男は捕まり、町に平和が訪れるエンドになります。しかし、ED2やED3で得た後遺症や体の違和感は、下級狂信者の彼では治せません。治す方法も知りません。残念>
---------------------------
【報酬】
SAN回復
ED1で生還→1d10回復
ED2、もしくはED3で生還→1d3回復
技能値報酬(ED1のみ)
入れ替わっている間に"相手の技能"を使い、成功した場合→成功した技能のうち1つを1d20成長させる。
例(相手の剣術技能を入れ替わり時に使用し、判定に成功した場合、シナリオクリア後剣術技能を1d20プラスできる)
【背景】
皮膚の兄弟団の日本支部の分家のさらに異端児が今回の騒動を引き起こします。
体にまつわる魔術、邪術の宝庫である皮膚の兄弟団の、末端中の末端にある新興宗教組織の危険人物が、一部の術と生贄用の肉を掠め取り、1人で色々実験をしていました。
彼が欲しかったのは、強靭な肉体ではなく理想の精神。しかし、悲しきかな、彼の理想は彼の蔑ろにしていたはずの強靭な肉体(探索者たちの技能)によって打ち砕かれます。
途中の敵が見た目の割に弱いのは、彼が肉体よりも精神の創造に力を入れたからであり、だからこそ言葉を解したり命令に忠実だったりとしたわけです。
探索者たちを事件に巻き込んだ後、彼は警察に捕まり、町には平和が訪れます。
めでたしめでたし。
【蛇足】
※基本死亡エンドは無しだと思って下さい。(土人形との戦闘で死にかけたら、魔術師のMP切れを理由に戦闘終了でいいと思います。また、首輪を頑なに外さなかったら、少しずつ首を締めて、危機感を持たせて下さい。)
しかし、死亡エンドが欲しい、という人の為に描写は記載しておくので、よかったら使って下さい。
------------------
探索者死亡
→少しずつ淡くなる呼吸に、目前が霞む。他人の姿のまま、自分は死んでしまうのか。重い瞼が落ちる。
走馬灯のようにかけていく記憶は、自分の身に覚えのないものばかり。
あぁ…なんで忘れてたんだろう。
自分は、最初から、自分だったじゃないか。
死の間際、術が緩んだのか、それとも勘か、あなたはあなたを取り戻す。
私は、私だ。
そしてあなたは、あなた自身として一生を終えた。
ED.4 I≠U
愛は言う「あなたは正しく、あなたである」と。
シナリオ:I= U(アイハユウ)
推奨人数:2名〜(NPCを出せばPL1人も可能)
形式:一本道
時間:短い
難易度:簡単
ロスト:あり
推奨技能:目星、図書館、戦闘技能(重要)
犬猿の仲とか相棒同士が、互いの武器を交換して戦うのめちゃくちゃかっこいいよね、やろ。というシナリオ。
-------
【注意】
1.影響があるのかないのかわからない後遺症(?)のようなものが残る可能性があります。
2.PCはみんな知り合い設定だとなお良いと思います。
3.相棒、犬猿の仲、恋人あたりの関係の探索者たちでくるのを推奨していますが、別にそれ以外でも大丈夫です。
4.めちゃくちゃ戦闘の技能値が高くても構いません。
5.御察しの通り入れ替わりネタです。相手のPCを思いやる気持ちを大切にしましょう。
-------
<ここからネタバレが入ります。>
<キーパーへの補足は< >で括ってあります>
<このシナリオで大事なことは、間違えないことです。>
【導入】
※調べられるところ、技能を使えるところを『』で括っています。
首裏に走る鈍痛。
仕事帰りだったか、学校帰りだったか、はたまたそんなもの自分は行ってなかったか。
混濁する意識の中、目を開けるとそこには見覚えのない薄汚い床。
困惑して顔を上げると、鏡の向こうに困った顔をした"あいつ"がいた。
<もし初対面探索者ならば、" "の中を、"知らない人"などに変えてください>
鏡張りのワンルーム。
いかがわしいホテルかと言われればそうかもしれないし、悪趣味で気味の悪いただの部屋だと言われればそんな気もする。
いや、場所はどうでもいい。
そんな部屋の真ん中、目の前では自分と同じ顔をした人間が呆けている。そして鏡の中で驚く自分と同じ動きをしているのは、なんと"あいつ"の方なのだ。
互いの動揺を見た瞬間、探索者たちは悟った。
自分と"あいつ"が入れ替わってしまっている。
目の前にいる、自分ではない"自分"。
その事実に背中がゾッとする。
SANc(1/1d2+1)どうぞ。
<探索者同士が恋人、もしくは相手を好いている場合、鏡に映るその人の姿ではなく、目の前にいる自分の姿のその人を好ましく思います>
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KP情報ページ
【入れ替わりについて】
<実は、魂が入れ替わった訳ではありません。探索者同士の記憶のみが入れ替わっています。つまり、魂も体も本人のものですが、記憶が入れ替わっているので探索者たちは自分が相手だと思い込んでいるのです>
<なので、好きなものや嫌いなものは魂や体に準拠します。記憶では好きだと記憶しているが、いざ食べたり見たりしてみるとそうでもないと感じます>
※<つまりPL(A)さんは、キャラクター(A)の記憶を持った"キャラクター(B)の魂と体"を動かすことになります。(そのことについては伏せておいてください)>
【技能について】
<知識系の技能は補正なし。体を使う技能(面倒なら、少なくとも戦闘技能だけでも)は50%(つまり出目が50以下で成功)で判定して下さい。記憶を持っている方が使うときは「やり方がわかるが、体は違う人物なので」、体の持ち主が使うときは「やり方は記憶していないが、体が覚えているので」という理由です。元々の技能値が50%以下の場合は、40%や30%など、KP側で調整をお願いします>
<また、2人の互いの理解度が高い、もしくは上がって来たと感じたら、後半の戦闘などでは、50%にプラスで補正をかけても構いません。雰囲気が最高だったら、ラストバトルで相手の技をまんまトレースできたっていいのです。さじ加減はお任せします>
-------------
【鏡ばりの部屋】
いかがわしいホテルを連想させられるその部屋は、四方の壁と天井が鏡張りで、自分の顔が、記憶にあるそれと全く異なることを強調してくる。
部屋に玄関や外へつながるドアらしいものは見つからないが、『風呂』、『トイレ』、『キッチン』、『ベッド』など生活に必要なものは全てある。
一応体は健康体だ。顔が自分のものでないことを除いて。
よくよく見て見ると、探索者の首には覚えのない革製の首輪が巻かれていて、施錠されている。
全体に目星
→床が鏡張りでないことに気がつく。
風呂
→泥水が浴槽を満たしている。
(風呂に目星)
→キラ、と何かが泥の中で光る。
(浴槽に手を入れる)
→何かが指先に引っかかるが、泥で滑って取れない。
(浴槽の泥を掻き出そうとする)
→ある程度すくえるが、全部は無理である。泥の中には髪の毛や石鹸カスやらが大量に混じっている。不快だ。SANc(0/1)。
(風呂の栓を抜く)
→ズゾゾゾゾという狭いパイプを泥が進んで行く音、そして、広いところに出ているのか、ジャー、と、解放される音がする。そして、キンッ!ガゴゴガッ!と固い何かがパイプに落ちて流された音もした。
(栓を抜いた後の風呂)
→流しきれなかった泥や髪の毛が残っている以外何もなさそうだ。
トイレ
→手洗い場の鏡に赤い文字で「Who are you?」と書かれている。
キッチン
→冷蔵庫を開けると、自分と、そして記憶が間違っていなければ一緒にいるあの人の好物もある。
(自分の好物を食べる)
→記憶にある通りの味にも関わらず、記憶通りの多幸感はない。思わずあなたは首をかしげるだろう。
(相手の好物を食べる)
→好物を食べた時特有の多幸感が舌いっぱいに広がる。
ベッド
→ベッドの下に自分たちの持ち物が放り込まれていた。
ベッド目星
→ベッドの下、自分たちの荷物が放り込まれていた部分の床に、取っ手が付いている。床を開けられそうだ。
ベッドの下の床を開ける
→下に鏡張りではない部屋がある。床は汚泥で一部汚れている。しばらく目を凝らしていると、視界の端で何かが動く。ローブを纏う何かが、汚泥を跳ねさせながら下の部屋の端にある扉に向かって走る。
<このローブを被った何かを異常に怖がって追いかけなかったり、興味が薄そうだったりした場合は、「見失うともう二度と元の体に戻れない気がする」など、追いかけさせるような描写をして下さい>
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【下の階に降りる】
泥に塗れた部屋に降り立つ探索者たち。少し高さがあるが、大怪我をするほどではない。見回すと、開いたドアの隙間から『ローブ』の端がチラリと見えてすぐに消えた。
(ローブに目星)
→キラリと、泥に汚れた鍵のようなものが裾に引っかかっているのが見えた。
【下の部屋】
上の部屋同様『洗面台』とキッチン、『風呂場』がある。家具も何もないワンルームは泥に塗れており、先ほどの部屋とは違って半開きのドアがある。
洗面台
→鏡にルージュで「鏡は本当のあなたの姿を映しだす」と書いてある。
<探索者が鏡を見つめると、探索者視点だともちろん入れ替わった相手が映っているという認識です。しかし、実は入れ替わっているのは記憶だけで、鏡に映る姿が本人には変わりないのです>
風呂場
→上の階の泥がそのままパイプを通り落ちてきたようだ。水気の残る多くの泥が浴槽に『山』を作っている。
(山に目星)
→一冊の本が泥に埋まっている。泥に汚れたそれはところどころ汚れて読みづらい。
(日本語ロール成功)
→とある模様が書いてある。その模様で囲んだものは外に出られなくなるのだという。魂を定着させるために用いられるのだそうだ。そしてそれは、探索者の首輪に彫られている模様と酷似していた。
気味の悪い本を読んだ探索者は自分の首に付けられた呪いに吐き気を覚える。SANc(0/1)
<探索者の魂が外に出ないようにする呪いです。後々わかりますが、記憶が入れ替わったまま首輪を外すと、記憶が移動するのではなく、魂が移動してしまい、姿と心がちぐはぐのままになってしまいます>
(日本語ロール失敗)
→見え辛いがとある模様が本には書いてあり、その模様には何か不思議な力があると記されている………ように感じる。
扉を出ようとする
→ローブの後を追おうと扉へと向かう探索者の背後、ぴちゃ、びちゃ、とぬかるみを踏む音がする。おぞましい存在感に身を震わせ、後ろを振り向くと、部屋中の泥をかき集めてできた2メートル程の人型の何かが、扉の先に行かせまいと、探索者たちに手を伸ばしているところだった。
SANc(1/1d2)
<魔術的な土人形です。探索者が扉の外に出れば、魔術の加護がなくなりただの土に戻ります。しかし、戦闘技能持ち探索者はここぞとばかりにここで格好をつけさせましょう。一、二発殴ったら泥に返させるもよし、怖がらせるだけ怖がらせたらいつの間にか消えてるのでもよし。好きな演出をどうぞ。戦闘用スペック一応載せておきます>
<土人形スペック>
<siz18、str6、dex3、app3、耐久10>
<殴る30%(ダメージ1d3)、
蹴る30%(ダメージ1d6)、
捕まえる30%(次ターン回避半減、str対抗で抜け出し可)>
【探索者が部屋から出る。または土人形を倒す】
「ヒノデ マデ アト ニジカン」
不快な水温を響かせながら土人形はにたりと笑うように、そう言った。
何かの加護が消えたのか、自重に耐え切れないとでもいったように土塊は足元から崩れ、その衝撃によって弾けて散った。後には、土にまみれた床しか残っていない。
ひとまず危機は脱したようだ。
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【土人形をかわし、または倒し、扉の外に出る】
扉を開けるとそこには無数の扉。しかしなんてことはないただのマンション、いや、ホテルだろうか。ともかくその様な建物とほとんど大差ない。追いかけているローブは探索者が来ているのかを確認するためか、嘲笑うように少し動きを止めた後、奥の階段を下に降りていく。
<ただのマンションもしくはホテルの二階です。無理に他の扉を開けようとしても開きませんし、下手にガチャガチャすると怒られてしまうでしょう>
降りるとそこはロビーのようだ。一般的な出入り口用の自動ドアの向こうでローブがはためく。外は暗い。深夜だろうか。道に見覚えはないが、なんてことはない普通の町のような気がする。
<普通のどっかの町です。探索者の住む地域でも構いません。外に出てからはコンビニに寄っても家に寄っても大丈夫です。しかし、焦燥感は感じさせて下さい。日が昇るとアウトです>
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【ローブを追いかけて夜道を走る】
追いつけるような追いつけないような、絶妙な速さでローブは夜の町を駆け抜ける。
<ローブの中身はただの一般的な(?)狂信者なので、やりたかったらタクシーに乗せてカーチェイスしても構いません。運転手さん!前のあいつを追ってくれ!>
<店や家など寄り道をした場合は、そこから出てきたときに曲がり角の陰にローブの端を見つけるといった親切設計です。ローブの狂信者さんも、探索者たちに追いかけてきてもらいたいのです(体を使えば使うほど、記憶と体の定着率が上がるので)>
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【探索者が警察に行った場合】
<「自分たちは入れ替わっている」もしくは、「攫われた後今ローブ姿の人を追っている」などと探索者が言うと、「またその手のイタズラか」と門前払いされます。今まで何人も同じようなことを言う人が現れて調査したが何も出てこなかったので、今流行りのイタズラだと警察は結論付けました>
【探索者達が情報収集を行った場合】
目星か図書館でとある宗教のパンフレットが、おそらく無許可だろう電信柱に数束くくりつけられているのに気づく。その宗教のパンフレットの表紙には「自分を変えたくはありませんか?」と大きく書かれている。
<宗教団体の拠点の地図も載っているには載っています。地図に気付いたり、この宗教について調べたがる探索者がいたら、ローブをまとった何かが向かっている先が、ちょうどパンフレットに記されている拠点だと情報を出して構いません。※行き先に気付いてもローブの先回りはできません>
<時間制限のため情報収集に触れるダイスは1回>
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【ローブの後を追って建物に入る】
探索者の足も疲れからもつれ始めてきた頃、人気の少ない場所にポツンと立った二階建ての建物に、ローブを纏う何かは入って行った。
扉はローブをまとったものが使用したその1つしか見当たらない。
<聞き耳で人の気配、目星で二階の一室の窓から光が漏れていることがわかる(遮光カーテンでも使っているのか、見える光が弱く細い)>
建物に入ると、一階には扉が1つと端には階段がある。
【1階の部屋】
物置のようだ。雑然と物が置かれているが、丸い水晶や髑髏を模した鏡や気味の悪いオカルティックなものが多い。
(部屋全体に目星)
→一冊の革張りの本が髑髏の鏡の前に置いてある。
(革張りの本)
→そこには、恐ろしい宗教の実態が描かれていた。信仰宗教の聖書的な位置にあるものなのだろうか。どのように世界は作られて人はどう生きるべきかといった内容が書かれているが、端が折られたページに驚くべきことが書いてある。「人の魂は記憶に由来する。記憶を変えれば魂が変わる」その一文が書かれた一節には、記憶を変えれば魂や人格を変えることもできる、とある。魂は記憶のあるところに惹きつけられるに違いない、と力説するその本の異常な魅力に、探索者の中の何かがぐらりと揺らぐ。目の前の鏡がそんな探索者を笑うように「お前は誰だ」と言った気がした。自分の根底を覆す聖典の存在に吐き気を覚えた探索者はSANc(1/1d2)。
【2階】
階段を登った先には扉が2つあった。1つは書庫と書かれたプレートがかかっており、もう1つは半開きで中から嫌な感じのする光が漏れている。
<書庫にまずいくように誘導して下さい。書庫を後回しにすると、生存率がぐっと下がります>
【2階の書庫】
一室を埋め尽くすほどの膨大な量の本。『本棚』に納められたもの、『床』に放られたもの。部屋には無秩序に文字が溢れかえっている。
(床に目星)
→本の中に埋もれた1つの木箱を発見する。見ると、中には首輪が入っている。探索者の首にはまっているものと似ているようだが、探索者の首に巻かれている首輪にある不思議な模様がそれには刻まれていない。
(本棚に図書館)
→棚から頻繁に出し入れされた形跡のあるそれは、何かの記録のようなものが束ねられたファイルだった。最初のページでは、望みの内臓や体の部位といったものをどうしたら手に入れることができるか、そしてそれにまつわる恐ろしい実験や魔術について綴られていたが、後々望みのものは性格や人格、魂といったさらに入手困難なものへと変貌していく。最後のページ、比較的新しい項目で探索者の手は止まる。
『【記憶代替実験】被験者AとBの記憶を術式αにより入れ替え、定着のために拘束術式βを施した首輪にて施錠。一定時間経過後、首輪を外して魂の動きを見る。現在5組が首輪を外せず日の出を迎え、術式βの拒絶反応にて死亡。残りが日の出前に首輪を外し、記憶のある方の肉体に魂が引きつけられるかたちとなった。仮説通りである。被験体はその後魂と肉体が入れ替わったままつつがなく生存。直ちに身体への影響はなし』
淡々と綴られた文字の中に見えた"死亡"という単語。自分の背後に忍び寄る日の出と死の気配に、探索者は顔を青ざめさせる。オカルティックでありながら、凄惨な研究内容とその結果。込み上げる吐き気。SANc(1/1d3)どうぞ。
【半開きの扉】
(中を覗こうと近づくと、扉はひとりでに大きく開き、壁にぶつかり大きな音を立てた。)
そこは、血肉と泥に塗れていた。
鼻をつく生臭い匂いの中、ローブを着たそいつが、禍々しい本を手にこちらを振り返る。
「新しい目覚めはいかがかな。僕は君らにアダムとイブという名前をつけたんだけど、本当にその名にふさわしい働きをしてくれるね。君らの術式は特にうまくいったんだ。なに…時期に"記憶通り"完全に体を動かせるようにもなるさ。ん?なんだその顔……あぁ、もしかして、自覚がないのか」
男は興奮気味に言葉を続ける。
「君たちの体と魂は入れ替わってなんかいないんだ。不思議だろう?君たちは"記憶"が入れ替わっているに過ぎない。それなのに、さも自分が自分でないような心地がするはずだ!そう、そうなんだよ!今はその首輪のおかげで、魂と記憶が別の体にあるけれど、それを外すと魂は完全に記憶のある方、つまり相手の体に向かうってわけさ。面白いと思わないかい?魂は体じゃなくて、記憶のあるところにあるのさ。ふふ………お喋りが過ぎたようだ。君たちと話せるのが嬉しくてつい、ね…。君たちの不便もあと少しだ。では早速、最終治験を始めよう」
男が何事かを呟くと、部屋中の血肉と泥は部屋の中央で渦を巻き、バキバキぐちゃぐちゃと音を立てて、気味の悪い二足歩行の化け物へと変わる。
「さあアダム、イブ。リリスと僕と、仲良くしよう」
リリスと呼ばれた化け物が咆哮をあげた。
死を体現した存在は、探索者の精神を確実に蝕んでいく。SANc(1/1d3)どうぞ。
<探索者が記憶と魂が別物であること。そして、記憶だけを入れ替えられてしまったということを理解できるよう、長々と黒幕には演説してもらいましょう。足りないと思ったら随時足して下さい>
【戦闘開始】
<魔術師(狂信者)スペック>
<siz15、str5、dex12、app13、耐久12>
<回避60%、リリスの術を維持する99%>
<自分のターンでは、リリスを動かす術しか基本しません>
<土人形スペック>
<siz20、str10、dex3、app3、耐久15、気絶・窒息判定などは無し>
<殴る30%(ダメージ1d3+1d4)、
蹴る30%(ダメージ1d6+1d4)、
捕まえる30%(次ターン回避半減、str適当なところで魔術師のmp切れで瓦解したことにしたことにしても構いません>
【戦闘終了】
化け物は自らの傷口から溢れ出す死のほとばしりにすら目もくれず、探索者へと手を伸ばそうとした。しかし、その死神の手は生者であるあなたたちには届かない。自分の背負う死の重さに耐えきれないとでもいうかのように、リリスは足元から瓦解し、その醜い姿を元の泥へと変えた。
「あ、あぁ……り、リリス…。くそっ…!!僕は…俺は諦めないぞ…!!!」
ローブを着た男は、もはや自分の退路の妨げとなりうる『ローブ』を脱ぎ、『本』すら投げ捨て窓へと足をかけていた。
慌てて探索者が追いかけても、飛び降りた男は闇に溶け、どこにも見つからないだろう。
【狂った男の置き土産】
ローブを調べる
→鍵が布の中に埋もれている。首輪の錠とサイズが合いそうだ。また、一枚のメモもある。
本を調べる
→αと書かれた付箋が貼られている。
付箋の貼られたページには、人間の記憶を入れ替える呪文が書いてあった。
<記憶の転移MP3/SAN 1d2消費で発動>
<魔術師が既存の呪文から作ったオリジナル呪文です。あまり深く考えなくて大丈夫です>
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ED1【呪文α(記憶の転移)→首輪を外す】
呪文αを唱えた途端、あなたの脳内に本当のあなたの記憶が流れ込んでくる。ピースがピタリと当てはまる感触。それはどことなく完成間際のパズルのようで急く心とは裏腹に、心地よい痺れを脳にもたらす。
反射的に閉じていた目を開ければ、それはもう"いつも通り"だった。強いて違う点を挙げるとするならば、自分の中に微かに、自分以外のものであった記憶が残っていることだ。このトンチキ騒ぎの間の出来事や、その間思い出してしまった相手の記憶は、完全には無くならないのだろう。あなたはそれを脳内の適当な引き出しにしまい込んだ。
禍々しい首輪は鍵を使えばなんともあっけなく外れた。
<首輪のことを忘れていたら、窓の外が白み始めると同時に首輪が締まってきた描写などを入れて助けてあげてください>
空の向こうが白み始める。
窓に映るいつもの自分の隣で、いつものあいつが、目を眇めているのが見えた。
今日も、あなたは、あなただ。
ED1.Yes,I am!
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ED2【呪文α(記憶の転移)無しに首輪を外す。その後も呪文α(記憶の転移)をしない】
禍々しい首輪は、鍵を使えばなんともあっけなく外れた。これで命の危機はない。あなたはホッと息をつく。
スッと、何かがしっくりとくるようで、それでいて無理に割り込むような感覚がした。あなたはそれに首を傾げるが、違和感の正体はよくわからないだろう。
空の向こうが白み始める。
窓に映る顔はどうやってもあいつのもので、その隣では自分が光に目を細めているのを他人事のように観察できる。
体と心のズレは日が昇っても治らない。少なくとも今日1日は、このまま過ごすしかないだろう。いや、もしかしたら一生かもしれない。
妙なことになってしまった。これからどうしよう、とあなたはため息をつく。
とりあえず、2人で頭を打ってみようかなどと、窓の下を見てあなたは考えていた。
ED2.Are you me?
<前前前世でも流しておきましょう。キャラロスト案件かもしれませんが、このまま入れ替わったPCを使用したいとのことなら、ロスト扱いでなくても構いません。技能値などは要相談で>
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ED3【首輪を外す→その後呪文α(記憶の転移)をする】
禍々しい首輪は、鍵を使えばなんともあっけなく外れた。これで命の危機はない。あなたはホッと息をつくだろう。
そこでスッと、何かがしっくりとくるようで、それでいて無理に割り込むような感覚がした。あなたはそれに首を傾げるが、違和感の正体はよくわからないだろう。
呪文αを唱えた途端、あなたの脳内にあなたが求めていた記憶が流れ込んでくる。白いキャンバスが絵の具で塗りつぶされていく感触。それはどことなく気持ち悪さすら感じる。
しかし、反射的に閉じていた目を開ければ、それはもう"いつも通り"だった。強いて違う点を挙げるとするならば、自分の中に微かな違和感が残ることだ。このトンチキ騒ぎの間の出来事や、その間思い出してしまった相手の記憶は、完全には無くならないわけだから、違和感が残るのも仕方がないのかもしれない。あなたはその違和感を、脳内の適当な引き出しにしまい込んだ。
空の向こうが白み始める。
窓に映るいつもの自分の隣で、いつものあいつが目を眇めているのが見えた。
今日も、あなたは、あなただ。
…………………………………本当に?
変わってしまった好物と、変わってしまった好きな人。
あなたが本当は誰だったのかを、それらだけが知っていた。
ED3.Who am I?
<魂だけが入れ替わってしまったエンドになります。PLさんと話し合って、「記憶に魂がひきつけられるので〜」と、時間経過で徐々に魂も戻って来て、結局ED1になる形にしても構いません。難易度調整はお好みに>
---------------------------
【エピローグ(ED1〜3共通オマケ)】
<なくてもいいです。時間があって、犯人に一発かましたい時とかにどうぞ>
あの騒動からどれ程経っただろうか。
昼の繁華街、例のあいつと示し合わせたようにバッタリと出くわす。
すると、喧騒をかき分けてサイレンの音が鳴り響く。
「止まりなさい!黒い服の男!止まりなさい!」
人々は恐怖にかられ、モーゼの渡る海のようにその道を開ける。
「どけ!!」
人垣によってできた道の真ん中、未だ立ち尽くす探索者に向かって突進してくるのは、制服警官に追われて走る、例のローブの男だ。
現在はもちろんローブなんて着ていない。
けったいな本もない。
こちらを見る余裕もないのか、それとも数ある実験台の顔など覚えていないのか、人々がお膳立てしてくれたその道を、よりにもよって自分たちに向かって進んでくる。
足か。
頭か。
いやいや、腹だな。
人波に揉まれて到着が幾ばくか遅れそうな警察官に変わり、あなたたちは武器をとる。
今度は、威力100%をお見舞いしよう。
完
<探索者たちの活躍のおかげで男は捕まり、町に平和が訪れるエンドになります。しかし、ED2やED3で得た後遺症や体の違和感は、下級狂信者の彼では治せません。治す方法も知りません。残念>
---------------------------
【報酬】
SAN回復
ED1で生還→1d10回復
ED2、もしくはED3で生還→1d3回復
技能値報酬(ED1のみ)
入れ替わっている間に"相手の技能"を使い、成功した場合→成功した技能のうち1つを1d20成長させる。
例(相手の剣術技能を入れ替わり時に使用し、判定に成功した場合、シナリオクリア後剣術技能を1d20プラスできる)
【背景】
皮膚の兄弟団の日本支部の分家のさらに異端児が今回の騒動を引き起こします。
体にまつわる魔術、邪術の宝庫である皮膚の兄弟団の、末端中の末端にある新興宗教組織の危険人物が、一部の術と生贄用の肉を掠め取り、1人で色々実験をしていました。
彼が欲しかったのは、強靭な肉体ではなく理想の精神。しかし、悲しきかな、彼の理想は彼の蔑ろにしていたはずの強靭な肉体(探索者たちの技能)によって打ち砕かれます。
途中の敵が見た目の割に弱いのは、彼が肉体よりも精神の創造に力を入れたからであり、だからこそ言葉を解したり命令に忠実だったりとしたわけです。
探索者たちを事件に巻き込んだ後、彼は警察に捕まり、町には平和が訪れます。
めでたしめでたし。
【蛇足】
※基本死亡エンドは無しだと思って下さい。(土人形との戦闘で死にかけたら、魔術師のMP切れを理由に戦闘終了でいいと思います。また、首輪を頑なに外さなかったら、少しずつ首を締めて、危機感を持たせて下さい。)
しかし、死亡エンドが欲しい、という人の為に描写は記載しておくので、よかったら使って下さい。
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探索者死亡
→少しずつ淡くなる呼吸に、目前が霞む。他人の姿のまま、自分は死んでしまうのか。重い瞼が落ちる。
走馬灯のようにかけていく記憶は、自分の身に覚えのないものばかり。
あぁ…なんで忘れてたんだろう。
自分は、最初から、自分だったじゃないか。
死の間際、術が緩んだのか、それとも勘か、あなたはあなたを取り戻す。
私は、私だ。
そしてあなたは、あなた自身として一生を終えた。
ED.4 I≠U
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