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矢避けの林檎

2.病院での出会い

夢殿大学病院
病院の建物を蔦が這い回り、それが外へ外へと伸びている。まるで何か怪物の繭のようにも見えて少し気味が悪い。
授業中の学校のように、大学病院は静かだった。外から見た限りでは。

(玄関から入ろうとする)

?「怪我したのかい?」
正門から入ったばかりの探索者たちを呼び止める声が、病院の庭だろうか、少し開けた空間から木々の合間を抜けてこだました。

?「それとも病気?なら今はやめた方がいい。今医者は藪ばっかりなんだ。さっきまでパニックになってたんだけど、どうやら自分たちの方がうまく治療ができるって患者たちが気づいてね、ようやく静かになった頃さ」

ダムダム、とボールが跳ねる音がする。
ここで聞き耳(初期値25)どうぞ。
(成功)→近くの草むらでガサガサと音がした気がした。

(探索者が話しかけてきたり、名前を聞いたりしてくる)
制服姿の少女は、姿を表すと、木の枝にくくりつけた針金の輪っかを指差して笑った。
?「暇なら相手してくれないかな?あれがゴール。ほら、パス!」
そう言って探索者に手持ちのバスケットボールを投げた。(バスケ初期値25)

(シュートをしてくれた後)
?「ひゅー。上手いね。ナイッシュー」
(シュートをしてもらえない)
?「いけずだなぁ。ほら、こうするの…さ…。あら?」(ゴールから外れる)

ボールが縁に当たった瞬間、くにゃりと背を曲げた針金が木の枝から地上に落下する。
それを手に取りまた枝の上に戻そうとして、彼女は顔をしかめた。

?「っ、いたっ。……やっちゃったなあ。ごめん。もう大人しく病室に戻るとするよ。回診の時間もあるしね。遊んでくれてありがとう」

針金を枝の上に乗せ、ボールを近くの遊具入れに放った彼女は、ひらひらと手を振り、玄関へと駆けて行った。

?「あ、忘れてた。名前だったね。村上でいーよー」(走り去る)

(※ここでは笹世を追えない)

彼女を追いかけようとしたところで「キューーー!」と何かの鳴き声がした。
音のした方へ向かうと、翡翠色の蛇が蔦に絡まり身悶え身体をくねらせているところだった。苦しそうに「キュルキュル」と泣く姿はあまりにも憐れで、濡れた眼は自分より何倍も大きな探索者たちを恐れるどころか、最後の砦とばかりに助けを乞うているようにも見える。

(助ける)

蛇は大人しく探索者にされるがままだったが、自分の身から緑の拘束が剥がれたところで、とぅるん、と踊るように身を跳ねあげ、地面をパタタとのたうった。
蠢く蛇を見ていると、それには見る見る手足が生え、風船のように大きく膨らんでいく。視線をそらすこともできないまま、あなたの目の前で翡翠色の蛇は、ゴキゴキと嫌な音を立て、まるで人のような化け物に姿を変えた。SANc1/1d4

化け物は探索者にずずい、と近づき、目を細めた。
「いや〜〜。皆々様方。一度ならず、2度までも、お救いいただき、感謝感激雨霰。不肖わたくし、なんとお礼申し上げればよいものか…人の身仮初めまだ幾ばくもないもので、なかなか言葉見つからず、むつかしい限りではございますが、何卒ご容赦ご容赦。本日は、先日に引き続き、ご迷惑とお手数をおかけ致しました。こうしてお手をお貸しいただき、ありがとうございます」
と、蛇から転じた化け物は、友好的に探索者にまくしたててくる。

(1度目、先日のことを聞く)

「おぉっと、わたくしとしたことが、これは失礼以下ご無礼。皆々様の記憶を少しいじってしまったことを失念しておりましたことよ。それがこの世の、いや、わたくしどもなりの礼であり法であり理ではあったのですが、この緊急事態でありますから、お偉い方には少々目をつぶっていただきましょう」
そう言って、パチンと指を鳴らす。

すると、探索者たちの脳内にビリビリと電気のようなものが走り、突然記憶が水のように流れ込んでくる。
そこで、あなた方は昨日自分たちがそれぞれ蛇を助け、その夜蛇の飼い主を名乗るものが現れてアイスクリームを貰い、その際記憶を消されてしまったことを思い出す。
SANc0/1

「昨日助けて頂いたのはわたくしの弟たちと言いますか、皆々様風に言うなれば、同胞たちといいますか。ともかく、この地に間違って降りてしまったところを、それぞれ皆々様に命救われたのでございます。その後、わたくしが、お礼に参りまして、同時に記憶も少々消させていただきまして、今に至るわけにてございます。大体思い出していただけましたでしょうか?」

(名前)
「…考えたことがございませんでした。そもそも、名付ける文化は、ヒトガタ特有のものでして。差し支えなければあわよくば、わたくしめにも何か名前をつけていただきたく」

(ここで何をしていた)
「皆々様の様子がおかしかったので、こうして追って来ていたのです。いやいや、今にしてみれば当たり前のことでございました。成る程皆々様は、昨日わたくしめのアイスを食べておりましたから、どおりでどおりで。いやしかし、そうであるとするならば、いやはや申し訳のないことをしてしまったなぁ、などとも思いますことでして」

(アイスのことを聞く)
「何を隠そうわたくしどものお造りいたしますあのアイスに含まれましたるあの赤いシロップは、ヒトガタである皆々様にはラズベリー風味のなんとも特に変わった様子のない甘いお菓子に思われるでしょうが、その実ななんと、呪詛返しなるものが…まあわかりやすくいうなれば、魔術を跳ね返してしまうまじないが込められた特殊なものでございました。同胞を助けてくださったお礼にと、お守りのような気軽さでお渡ししてしまいましたが、こうして世界の理が大きく変わってしまった今、寧ろ酷な事をしてしまったと反省しているのです」

(ことわりが変わった)
「皆々様既にお気づきご覧の通り、この世界、グルンと大きく一回転。なんと出来ることとできないことが入れ替わっているのです。しかし、それに気付いて違和感を覚えていらっしゃるヒトガタは、我々のアイスを食してしまい、意図せずまじないを返してしまった方のみなのでございまして。あぁ…何も知らない方が幸せだったとお思いでしょう。アダムとイブに林檎を差し出した蛇ならば、しめしめと思うところでございましょうが、わたくしは知ることの残酷さ故に恩人が苦しむのは心が痛くて仕方のないことでございます……お望みならば、この世界に順応できるよう皆々様の意識を改変することを我が主人たる蛇神様にお頼みしましょうと罪滅ぼしを提案させていただきとうございますよ」

(拒む)
「はて…何故でございましょう。この世界、おそらくですが、ヒトガタ皆々様できることが格段に増えていると思われますが。何かご不便が?」

(事情を飲み込み手助けを申し出る)
「ふむ…そういうことでしたら、わたくしは恩人である皆々様に、できる限りのお力添えをお約束しましょう。よければ、わたくしの住処に一度いらしてみてはいかがでしょう。わからないことがわかる手がかりくらいは、見つかるやもしれません」

(蛇の姿に戻る)
「このままだとわたくし目立ってしまうので、ちょいと失礼」にょろろーん
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(病院に入ろうとする)
歩いても歩いても建物に辿り着けない。

「……ここが気になるんですか?…成る程。確かに、何かに守られているような気がしますことよ。…しかし、今のままでは突破できません。情報を集めましょう」
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