あなたに愛されたい ytym

裕翔「涼ちゃん落ち着いた?弾けそう?」

涼介「うん。」
裕翔「はじめよっか。」

目を真っ赤にしながらもヴァイオリンに向かう涼介の強い美しさが好きだ。本人には絶対に言えないけれど、いつかちゃんと言葉にしたい。そんなことを考えながら弾いていたら、2、3個ミスった。まぁ気楽な演奏だしいっか。

裕翔「ごめん、途中1個失敗しちゃった。」

涼介「3個くらい間違えてたぞ。まぁ、いいけど。」

裕翔「涼ちゃん楽しかった?いい顔してる。」

涼介「え?」

涼介が弾くヴァイオリンがやっぱり好きだ。


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涼介「はぁ。」

こんな風に、肩の力を抜いて音楽が出来たらいいのになと思う。表向きは上品で華やかな世界でも、裏舞台は目を背けたくなるような暗い影がつきまとう。

裕翔のような人に音楽の神様は微笑むのだろう。でも、俺がしてきたことが全て無駄だと思いながら音楽を続けられるほど、メンタルが強い訳ではない。

もしも次のコンテストでライバルが躍進してきたら、もしも音楽の神様に見放されてしまったら、もしも…

裕翔に見放されてしまったら……

裕翔「涼介?」

ふと胃が痛くなってフラフラとピアノの傍に体重をかけて寄りかかる。

涼介「怖い、怖いよ。1人にしないで。俺を愛していて、神……」

はらはらと涙が止まらない。呼吸が浅くなるのがわかる。目の前が歪んで立ちくらみに耐えていると、裕翔の手がスっと伸びてきて俺の手からヴァイオリンを抜きとった。

裕翔は俺のヴァイオリンを大切にケースにしまうと俺をそっと抱きしめた。

裕翔「愛してるよ、涼介。たとえ、涼介が音楽の神様に愛されなくなってしまっても。たとえ、俺の愛を要らないと言っても。俺は涼介のことを、愛してる。」

裕翔の胸の中はシャツの柔軟剤の匂いでふんわりと甘く、心の不安を取り除いてくれるようだった。

涼介「ん、なにそれ、プロポーズみたい。」

裕翔「プロポーズとして受け取ってくれる?」

裕翔はふっと笑うと俺の手を取って跪いた。すっと背筋が伸びたその姿勢は、まさに王子様そのものだった。王子、もとい裕翔は俺の手の甲をスリスリと撫でて、柔らかい唇を押し付けた。

裕翔「ふふ、この綺麗な手に似合う指輪いつかプレゼントさせてね。」

涼介「ムジークフェラインザール にも映えるでっかいダイヤモンドがいいな。」

裕翔「あははっ、頑張るね。」
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