あなたに愛されたい ytym

裕翔は俺が音楽を嫌いになる度に、音の楽しさを思い出させてくれる。裕翔が弾くピアノは実に軽快で、落ち込んでいるのがバカバカしいと思うくらい明るい気分になる。だから俺は本物の天才とは、裕翔のような人の気持ちを変えられる音楽を持つ人なんじゃないかと思う。

涼介「お前、なんで言い返さねぇんだよ!」

裕翔「だって、本当のこと一つもなかったじゃん。そんなことよりも、俺は涼ちゃんが泣いてる事の方が心配。なんで嫌なこと言われた俺よりも泣いてるの。」

涼介「うるせぇ!」


裕翔のカーディガンの裾で頬を拭われる。いつもそうだ、自分のことは後回しで俺の事を心配してくる。まるで、この世の何よりも俺のことが一番大事とでも言うように。


裕翔「涼ちゃん落ち着いた?弾けそう?」

涼介「…うん。」

裕翔「はじめよっか。」

そうだ、今は誰にも邪魔されない2人だけの空間。裕翔のアイコンタクトから始まる曲は裕翔が作曲してくれたオリジナル曲。軽快な裕翔のピアノが心地よくて、弾いていて心がふわりと温かくなる。


裕翔「ごめん、途中1個失敗しちゃった。」

涼介「3個くらい間違えてたぞ。まぁ、いいけど。」

裕翔「涼ちゃん楽しかった?いい顔してる。」

涼介「え?」

やっぱり裕翔は人を笑顔にさせる天才だ。

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職員室に日誌を出して音楽室に戻ると、女子部員と涼介の話し声が聞こえてきた。どうやら俺に対する噂が流れているらしく、涼介が噛み付いてる。慌てて仲裁に入ると、部員たちは俺と目も合わせずに早足に行ってしまった。

涼介「お前、なんで言い返さねぇんだよ!」

涼介に向き直ると、涼介は口をへの字に曲げてポロポロと涙を零していた。涼介は自分に対するマイナスな言葉は100倍にして返すくせに、俺に対するものは自分の事のように真に受けてしまう。その度に、自分は星の数ほどいるファンの1人に過ぎないと何度も心の中に言い聞かせている。まぁ、呼び名はちょっとしたマウントだけどね。俺のだぞって。

裕翔「だって、本当のこと一つも言ってなかったじゃん。そんなことよりも、俺は涼ちゃんが泣いてる事の方が心配。なんで嫌なこと言われた俺よりも泣いてるの。」

涼介「うるせぇ!」
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