あなたに愛されたい ytym

ym
翌日午後7時、今日も退屈な部活が終わった。個人レッスンまでに時間があるから裕翔と一緒に楽器を弾こうと準備をしていたら、廊下から女子生徒の話し声が聞こえてきた。

「知ってる?部長って山田先輩に出会ってから楽器変えたらしいよ。元々ヴァイオリンだったんだって。」

「うっそー、部長もあの人に才能潰されちゃったんだ。可哀想。」

涼介「……おいお前、誰からそれ聞いた。」

「いやっ、その。」

涼介「裕翔はヴァイオリンなんて開放弦も弾けねぇよ。できるのはピアノとドラムと、他は軽音楽器を少しだけ。下らねぇ噂話してる暇があるなら練習しろ。下手くそ。」

考える前に体が動いていた。自分のことならいくらでも言ってもらって構わないが、裕翔のことをバカにするやつは許せない。

裕翔「君たちまだ帰ってなかったの?もう暗いから早く帰りな。気をつけてね。涼ちゃん、俺のことはいいからそんなに睨まないの。」

ちょうど顧問に報告が終わった裕翔が向こうから歩いてきて間に入ってくる。自分が嫌味を言われたくせにヘラヘラと後輩たちに手を振って見送るあいつに余計に腹が立ってくる。

「す、すみません……」

涼介「ふんっ!」

ムカつく。俺の裕翔が、俺がいることで噂の標的になっていることも、女子生徒達を咎めることも無く丸く収めようとする裕翔にも。

やっかみや嫉妬は今に始まったことじゃない。ガキの頃から天才だなんだと持て囃される度、裏では人の醜い感情に振り回されてきた。

お前らは才能がなくて羨ましいよ。俺の孤独も焦燥もどれとも縁がないんだろうな、これから先もずっと。遺伝子も環境も音楽をする為だけに整えられ、期待や羨望の眼差しは俺の事をギリギリと縛り付けた。

裕翔「大丈夫?涼ちゃん。」

こいつを除いて。
6/9ページ
スキ