あなたに愛されたい ytym

パンケーキを頬張りながらふと昔のことを振り返る。

 裕翔とは俺達が小学生の時のコンクールで出会った。楽屋で震えながら順番を待つ裕翔が酷く滑稽に見えて、こんな簡単な楽譜で緊張してるのか羨ましいなと思った。その言葉は無意識に口にしていたらしく、裕翔は顔を真っ赤にして楽屋を出ていった。

そんな出来事があってからのあいつの演奏は散々で見るに耐えないものだった。でもそのコンクールのヴァイオリン部門で俺は優勝した。それがどういうわけかあいつの心に火をつけてしまったらしく、コンクールの後に「君を見返してやる!」と言われた。宣戦布告されたのは後にも先にもあいつだけだった。

それから5年後、高校は両親の母校を音楽推薦でパス。音楽推薦組はオケ部か吹奏楽部に行くことが決まっているから迷わずオケ部を選んだら、あいつがいた。記憶よりもずっと背が高くなって、見違えるほどかっこよくなって俺に微笑みかけた。

高校で再会したあいつは、背格好だけでなく中身もうんと大人になっていて、いつも周りに馴染めない俺のクッションを担っていた。たまに裕翔が生徒会の仕事で遅くなる日にはテンションが下がってめちゃくちゃな指示を出すこともある。そんな裕翔は部員から密かに「メトロノーム先輩」と呼ばれているらしい。それくらい俺にとっては大きな存在になっていた。


涼介「ごちそうさま。美味しかった。」

光「まいど!」

宏太「ありがとね、またおいで。」

涼介「うん。」

店を出る頃には月が高く昇っていた。どうりで眠いわけだ。帰ったらそっこー風呂入って寝よ。

 
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