ジャンルに拘らない短い文章群
——兄妹——
ある村の外れに仲の良い兄妹が住んでいた。
腕の良い猟師の兄と、そんな兄を甲斐甲斐しく支える妹。
大きな事件も起きることなく、村は平和そのものだった。
村の近くの山で化け物が目撃されるようになるまでは。
白銀の毛並みを持つ大きな狼のような化け物の噂は瞬く間に村中に広がった。
幸いその化け物が人を襲ったという報告は無い。
しかし、襲われない保障は無い。
化け物は村で恐怖の対象となった。
村では討伐隊が結成された。
猟師である兄も参加することになり、今夜が討伐作戦の決行日だ。
「顔色が悪いわ、兄さま。
どうしても参加しなければならないの?」
「心配するな。
それに不参加なんて選択肢は無いよ」
兄は妹の顔を見ずに答えた。
そして一度も妹と目を合わせることはなく、今夜の準備のために出かけて行った。
討伐作戦は上手くいき、化け物に致命傷を与えた。
トドメを刺す役目を引き受けた兄は化け物が逃げた跡を追う。
川のほとりで血を流し横たわる化け物に近づくと、その側に跪き涙を流した。
「……すまない」
抑えきれない嗚咽が川の流れる音と共に静かな夜に響く。
化け物はそんな男に目を向け、最期の力を使ってこう言った。
「にい、さ、ま……」
ある村の外れに仲の良い兄妹が住んでいた。
腕の良い猟師の兄と、そんな兄を甲斐甲斐しく支える妹。
二人が暮らしていた家には、今は誰も住んでいない。
ある村の外れに仲の良い兄妹が住んでいた。
腕の良い猟師の兄と、そんな兄を甲斐甲斐しく支える妹。
大きな事件も起きることなく、村は平和そのものだった。
村の近くの山で化け物が目撃されるようになるまでは。
白銀の毛並みを持つ大きな狼のような化け物の噂は瞬く間に村中に広がった。
幸いその化け物が人を襲ったという報告は無い。
しかし、襲われない保障は無い。
化け物は村で恐怖の対象となった。
村では討伐隊が結成された。
猟師である兄も参加することになり、今夜が討伐作戦の決行日だ。
「顔色が悪いわ、兄さま。
どうしても参加しなければならないの?」
「心配するな。
それに不参加なんて選択肢は無いよ」
兄は妹の顔を見ずに答えた。
そして一度も妹と目を合わせることはなく、今夜の準備のために出かけて行った。
討伐作戦は上手くいき、化け物に致命傷を与えた。
トドメを刺す役目を引き受けた兄は化け物が逃げた跡を追う。
川のほとりで血を流し横たわる化け物に近づくと、その側に跪き涙を流した。
「……すまない」
抑えきれない嗚咽が川の流れる音と共に静かな夜に響く。
化け物はそんな男に目を向け、最期の力を使ってこう言った。
「にい、さ、ま……」
ある村の外れに仲の良い兄妹が住んでいた。
腕の良い猟師の兄と、そんな兄を甲斐甲斐しく支える妹。
二人が暮らしていた家には、今は誰も住んでいない。
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