一般小説 感想

【黒いトランク】

 鮎川先生の作品の中でも、日本のミステリ史に名を残す程、有名な小説。

 内容としては「アリバイ崩し」物で、時刻表トリック・トランクの入れ替わり、犯行時刻に「容疑者は○○にいる」という証言を、どう崩していくか……という流れ。

 リラ荘殺人事件同様、突飛で派手なトリックは全く無いのですが、それでいて堅実ですげー巧み。
 トリックの手法だけで言ったら『リラ荘』より上かもしれない(あちらも名作ですが)

 ……と書いといて何ですが、私の読解力が低いのもあり、トリックの流れがほぼ理解出来ませんでした(泣)
 いや、多分全てストンと頭に落ちたら、「このトリック考えついたのスゲー!! あの証言とか、アレが有識者によって明らかにならなかったら、完全犯罪やん!」と感動すると思うんですよ。

 ただ、この作品犯人がめっちゃ各地を移動するのと、事件の肝となる、「2つのトランクが、どこでどう入れ替わったのか」が本当のラストに分かり、
 それまでは「こうじゃないか」って説がいくつか出てくるんですが、終盤まで「やっぱコレ矛盾してるから違くね?」って主役の刑事も頭を捻ってる状態……。

 なので、自分で1から日本地図や、巻末に乗ってる時刻表を見ながら、紙に書いていかないと多分理解出来ない……。
 一応巻末のあとがきに、解説員がトリックの流れの簡易表を載せてくれてはいるんですが、
 私のIQが低いせいか、それ読んでも100%理解出来ませんでした(泣)

 鮎川哲也作品は、読解力低いと2週必須だわ……orz いや、面白いから全然いいんですが。

 なんで「映像作品の方が分かりやすいかな?」と調べてみたんですが、一度も映像化された事が無いっぽい……。
 エッこの名作が一度も映像化してないとかマジか……? というかこの作品の主人公の鬼貫刑事が主役の、テレビシリーズ昔やってたらしいのに(そちらは見てない)何故『黒いトランク』は採用してない……?

 やっぱトリックが複雑だから、映像化しにくかったのかな……。
 というかそのTVドラマ版の設定が、放送当時の年代だったから、それもあるのかな……(原作は戦後間もなくの設定)。

 ……なんで「2週してトリック理解しよう!」と思ったんですが、まだ未読の本が何冊かあるので、そっちが終わってからまた読み直したい。

 余談ですが、被害者の1人が「ネットでよく見る迷惑者」まんまで、「昔からこんな人いたんだ……」とちょい引きました(笑)
 むしろ対面でも平気でそうゆう事しちゃうぶん、余計タチ悪いというか……。
 鮎川先生トリックもそうですが、「嫌な人」をリアルに書くのも上手いよね……。

 長々書いてきましたが、絶対面白いのは確かなので、推理小説好きでまだ読んでない方は是非……。

2025-05-11

【リラ荘殺人事件】

日本の推理小説史に残る名作だったの知らず、事前情報一切無しで読んだんですが……いやぁすごい。

確かに「今となっては定番なトリック」が結構あって、「もしかしてアレか?」と思い当たる箇所はチラホラあったんですが、
その組み合わせというか、鮮やかさが見事。真相解明パートがけっこう短めなんですが、それでも「あ~成程!!」と感動。
私は推理小説って犯人の正体分かったらそれで満足しちゃって、読み直すことあんま無いんですが、
この本は「犯人の手口が分かったからこそ、もう一周したい!!」って意欲ムクムクと湧いてきました。

ただ、最後の最後で明かされる真犯人の動機はちょっと分からんかった。いや、真相判明パートの序盤の動機は、当時の時代背景を考えればまだ理解出来るんですが、終盤が……「え? そんな事で殺人に走る?」みたいな。

文字数が多いので、読書初心者の方にはおすすめ出来ませんが、推理小説にハマり始めた方なら間違いなく読んでおいた方がいいです。

あとネット検索したら、1ページ目の上部だけで、真犯人の名前とかトリックとかボロボロ出てくるので、読み終わるまで検索しない方が吉。

2025-03-23

【魔眼の匣の殺人(著:今村昌弘)】

「特殊設定ミステリ」のベストセラーになった『屍人荘の殺人』の続編。

 被害者数も事件の規模も、前作よりずっと小さいので、前作のような「大事件」を期待してる人には物足りないかもしれませんが、個人的には今作の方がエグい……。
 前作は大量の●●●という「視覚的な醜さ」が一番のインパクトですが、
 今作は「心の醜さ」を全面的に押し出してるというか……。グロじゃなく、精神的なキツさ。

 前作は、館の中に犯人がいると分かってはいても、それより外に「強大な敵」がいたから、一致団結は一応出来ていましたが、
 今作はそうゆうのが一切無く、しかも「制限時間内に、誰かが死ぬ」というのは確定してるため、
 その災いを避けるために、平気で卑劣な手段に走る人達と、その犠牲になる人達の様子が……。
 生々しいし、中盤に起こった「第2の事件」は特に……うん……。

 あと推理小説としての完成度も、前作より上がっててすごい。伏線の貼り方とか、心理的な駆け引きの上手さに「作者さん、めっちゃ頭いいな……」となりました(AFO)
 たまに推理小説読んでて、「犯人の意外さに注目しすぎて、それまでの犯行の説得力が微妙……」ってなる事あるんですが、今作はそうゆうの一切無い。
 犯人が分かって一件落着、と思いきや、また色々な事実が明らかになって、その描写もまた……。

 このシリーズって「推理小説+α(別のジャンル)」が上手く融合してるのが特徴で、その「αの部分」は前作と今作で異なりますが、
 雰囲気的には全く同じだし、主役2人のやり取りははいいし、推理小説としても読み応え十分なので、おすすめします。

 前作も好きですが、個人的には今作の方が好きです。
 続編2作出てるみたいなので、今から読むのが楽しみ……。

2025-08-21

【象は忘れない(著:アガサ・クリスティ)】
 ※ネタバレ無しですが、批判寄りなので注意

 アガサ・クリスティのポアロシリーズの中でも、かなり後期の作品。
 内容は「過去の事件の真相暴き物」で、昔あった、ある夫婦の心中事件に対し、
 夫が妻を殺したのか? それとも逆か? 第3者による犯行か? といった疑問を、ポアロと友人のオリヴァで、当時の関係者を尋ねて解明していく話。

 で、内容なんですが……うーん……。
 謎解きがかなり分かりやすいので、真相パートであんま驚かなかったのと、動機が現代の感覚だと、あんま共感出来ませんでした。50年くらい前の作品なんで仕方ないですが……。
「いや、あの人への●●●●の失敗が、そもそもの元凶では?」ってなるし、「手を下した人物」の動機も、当時の真相を知った関係者の人達の反応も、うん? というか……。
 まぁこれは当時の時代背景による物が大きいかも……。

 私はクリスティの小説好きではあるんですが、正直言うと、クリスティ初めて読む人にこの作品はあんま勧められないな~……。
 同じ題材だったら『5匹の子豚』の方が優れてますね……。
 アレも「過去の事件の真相を、当時の関係者を尋ねて解明する」「事件の中心人物の実子が、カップルとして出てくる」と共通点が多いですが、
 あっちは真相の肝となる部分が「あっ、そうゆう事か!! 言われてみたら確かに!!」と感動するのと、
 犯人も動機もだいぶ納得できる。「道徳的にはともかく、そんな事されたらそりゃブチ切れるわな……」みたいな。

 ……と、『象は忘れない』より『5匹の子豚』PRになってしまいました。
 5匹の子豚は、オリエント急行とか、そして誰もいなくなったとか、ABC、アクロイドよりは知名度低いですが、推理小説としては文句無しに面白いです。

2025-05-25
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