【VS版】プロローグ
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やがて、犠牲者の数は、20人を越してしまった。
プロジェクトを統括する事務次官も、さすがに難色を示していた。
穿月教授が悪いのではなく、カイザーの問題ではあるが、成功できそうな兵士の選出は、中々進まなかった。
……それは当然だ。海兵隊のエースパイロットでも駄目なら、他にどんな兵士を探せばいいんだ……。
事務次官は俺とスカーレット大尉を呼び出し、今後の方針を決めることにした。
「霜月中尉……。やはり今まで以上に、パイロットの選出には、慎重にならざるを得ない。
時間をかけて調査し、可能性が極めて高い兵士にだけ、声をかける方針でいく。それでだが……」
「……俺の勤務日数の事でしょうか? あと数ヶ月なら、このままでも大丈夫です」
事務次官は一瞬眉を曲げたけど、
「……分かった。すまないな……。こちらもあらゆるパイプを使って、できるだけ早く、候補者を見つける。
……それと、スカーレット大尉。悪いが、しばらくブリューナクとウイングルだけで、海兵隊の二枚看板を背負ってほしい。
今のままだと、カイザーが起動する得より、優秀な海兵を失う損失の方が、大きくなりそうでな……」
「もちろん、あたしは構いません。ただ……」
大尉はチラと、俺を見て言った。
「霜月は、少し疲れているようです。……たまには、あたしと交代してもいいかと」
「え?」
突然の提案に、俺は驚いた。
……確かにブリューナクは、俺が搭乗する前は、大尉がパイロットだったから、一応は可能だ。けれど……。
「ですが、大尉も教官の仕事が……」
「だが、1回につき2~3人で、30分程度だろう? それに、ブリューナクで移動すれば、すぐにコーラル・ステーションに戻れる。
……その程度なら、大してこっちの仕事も圧さないよ。……どうでしょうか、事務次官?」
事務次官も数秒、俺の方を見て、思案していた。
「……分かった。……ただ、スカーレット大尉のスケジュールも、かなり詰め込んでいるだろう。
霜月中尉が2回やったら、スカーレット大尉が1回やり、また霜月中尉に戻る……というサイクルでいいか?」
「はい。……ありがとうございます、スカーレット大尉……」
「いい。この件で、もしお前の戦闘に支障が出たら、問題だからね」
***
話がまとまり、俺達は執務室から退出した。
……3回中、1回は休めるだけでも、かなり助かった。けど……。
「すみません大尉、まだ仕事を増やしてしまって……」
「いいと言ってるだろ。今の選考状況じゃ、こっちに影響は、ほぼ無いさ」
「そうですか……。あと、その……。俺が疲れてるの、顔に出てましたか……?」
「妙に暗かった。……少しだけだがね」
相変わらず、鋭いな……。大尉は士官学校での先輩で、俺の「師匠」の一人だ。
男勝りではあるけど、こうゆう女性的な勘も鋭かった。
「それとね。……お前、あまり厳しいようなら、溜め込まずに、誰かに相談しな」
そう言う大尉の顔は、真剣だった。
「……戦場にいなくとも、こうしたストレスも、実戦で響いてくるもんだ。
解消出来なければ、細かいミスが積み重なっていく。……そして最悪、死に繋がる事もある」
……確かに、その通りだな……。
あの実験での光景は言いづらくて、今まで黙ってたけど、本当はもっと早く、吐き出した方が良かったのかもしれない……。
……とその時、ハンドモバイルが鳴り、ブルーイーグル隊とグレンファルコン隊に、出動要請が来た。
一旦話を切り上げ、俺達はすぐに、指令室へ向かった。
***
ブルーイーグル隊とグレンファルコン隊は、同時刻に要請が来た、別々の国へ派遣される事になった。
ほとんど苦戦の無い任務で、両隊共に、ほぼ無傷だった。
俺達がコーラル・ステーションに帰還し、格納庫につくと、ブリューナクの整備班のメンバーが、俺を出迎えた。
そのすぐ近くに、ウイングルと、ウイングルの整備班もいた。
グレンファルコン隊は、日本から近い国に派遣されていたから、早く帰還出来たんだろう。
その中から、黒のへそ出しタンクトップを着た、可愛い女性がこっちにやってきた。――由木翼中尉だった。
「霜月中尉、お疲れ様です! 私達も手伝いますよ」
由木中尉は元々は、ブリューナクの整備班の、副班長だった。由木中尉の修理技術は抜きん出ていて、俺も何度も驚かされた。
彼女のお陰で、一旦帰還した後、すぐに要請が来た他の任務に、出撃できた事もあった。
その功績で、カイザーとウイングルの、整備班の主任に任命された。
「ん? でも、ウイングルの整備もあるだろ? こっちの整備班がやってるから、手伝わなくても大丈夫だ」
「いえ、スカーレット大尉、すごく綺麗に乗りこなすので、ほとんど修理箇所が無かったんですよ。
時間に余裕が出来たので、すぐに終わっちゃったんです」
ウイングル整備班のメンバー全員が、暇を持て余していたようで、こちらの作業を手伝い始めた。
……けど、カイザーが起動したら、物凄く忙しくなるだろうな……。
「じゃあ、頼む。カイザーの整備技術の方は、順調に進んでいるのか?」
「はい、穿月教授から、色々と教わってます。……といっても、起動実験には、全く立ち合えてませんが……」
「いや……その方がいい」
由木中尉が戦場に直接出た経験は、ほとんど無い。それに、ちょっと気弱な所があった。
……そんな彼女に、あんな凄惨な現場は、とても見せられなかった。
「あの……霜月中尉、疲れてませんか……?」
「ん? まぁ、帰還直後だからな。休んだら治る」
……まずい。疲労は極力顔に出さないようにはしていたけど、最近は隠しきれなくなっているのかもしれない……。
事務次官の手前、ああは言ったけど……やっぱり心も体も、じわじわと蝕まれてた。
プロジェクトを統括する事務次官も、さすがに難色を示していた。
穿月教授が悪いのではなく、カイザーの問題ではあるが、成功できそうな兵士の選出は、中々進まなかった。
……それは当然だ。海兵隊のエースパイロットでも駄目なら、他にどんな兵士を探せばいいんだ……。
事務次官は俺とスカーレット大尉を呼び出し、今後の方針を決めることにした。
「霜月中尉……。やはり今まで以上に、パイロットの選出には、慎重にならざるを得ない。
時間をかけて調査し、可能性が極めて高い兵士にだけ、声をかける方針でいく。それでだが……」
「……俺の勤務日数の事でしょうか? あと数ヶ月なら、このままでも大丈夫です」
事務次官は一瞬眉を曲げたけど、
「……分かった。すまないな……。こちらもあらゆるパイプを使って、できるだけ早く、候補者を見つける。
……それと、スカーレット大尉。悪いが、しばらくブリューナクとウイングルだけで、海兵隊の二枚看板を背負ってほしい。
今のままだと、カイザーが起動する得より、優秀な海兵を失う損失の方が、大きくなりそうでな……」
「もちろん、あたしは構いません。ただ……」
大尉はチラと、俺を見て言った。
「霜月は、少し疲れているようです。……たまには、あたしと交代してもいいかと」
「え?」
突然の提案に、俺は驚いた。
……確かにブリューナクは、俺が搭乗する前は、大尉がパイロットだったから、一応は可能だ。けれど……。
「ですが、大尉も教官の仕事が……」
「だが、1回につき2~3人で、30分程度だろう? それに、ブリューナクで移動すれば、すぐにコーラル・ステーションに戻れる。
……その程度なら、大してこっちの仕事も圧さないよ。……どうでしょうか、事務次官?」
事務次官も数秒、俺の方を見て、思案していた。
「……分かった。……ただ、スカーレット大尉のスケジュールも、かなり詰め込んでいるだろう。
霜月中尉が2回やったら、スカーレット大尉が1回やり、また霜月中尉に戻る……というサイクルでいいか?」
「はい。……ありがとうございます、スカーレット大尉……」
「いい。この件で、もしお前の戦闘に支障が出たら、問題だからね」
***
話がまとまり、俺達は執務室から退出した。
……3回中、1回は休めるだけでも、かなり助かった。けど……。
「すみません大尉、まだ仕事を増やしてしまって……」
「いいと言ってるだろ。今の選考状況じゃ、こっちに影響は、ほぼ無いさ」
「そうですか……。あと、その……。俺が疲れてるの、顔に出てましたか……?」
「妙に暗かった。……少しだけだがね」
相変わらず、鋭いな……。大尉は士官学校での先輩で、俺の「師匠」の一人だ。
男勝りではあるけど、こうゆう女性的な勘も鋭かった。
「それとね。……お前、あまり厳しいようなら、溜め込まずに、誰かに相談しな」
そう言う大尉の顔は、真剣だった。
「……戦場にいなくとも、こうしたストレスも、実戦で響いてくるもんだ。
解消出来なければ、細かいミスが積み重なっていく。……そして最悪、死に繋がる事もある」
……確かに、その通りだな……。
あの実験での光景は言いづらくて、今まで黙ってたけど、本当はもっと早く、吐き出した方が良かったのかもしれない……。
……とその時、ハンドモバイルが鳴り、ブルーイーグル隊とグレンファルコン隊に、出動要請が来た。
一旦話を切り上げ、俺達はすぐに、指令室へ向かった。
***
ブルーイーグル隊とグレンファルコン隊は、同時刻に要請が来た、別々の国へ派遣される事になった。
ほとんど苦戦の無い任務で、両隊共に、ほぼ無傷だった。
俺達がコーラル・ステーションに帰還し、格納庫につくと、ブリューナクの整備班のメンバーが、俺を出迎えた。
そのすぐ近くに、ウイングルと、ウイングルの整備班もいた。
グレンファルコン隊は、日本から近い国に派遣されていたから、早く帰還出来たんだろう。
その中から、黒のへそ出しタンクトップを着た、可愛い女性がこっちにやってきた。――由木翼中尉だった。
「霜月中尉、お疲れ様です! 私達も手伝いますよ」
由木中尉は元々は、ブリューナクの整備班の、副班長だった。由木中尉の修理技術は抜きん出ていて、俺も何度も驚かされた。
彼女のお陰で、一旦帰還した後、すぐに要請が来た他の任務に、出撃できた事もあった。
その功績で、カイザーとウイングルの、整備班の主任に任命された。
「ん? でも、ウイングルの整備もあるだろ? こっちの整備班がやってるから、手伝わなくても大丈夫だ」
「いえ、スカーレット大尉、すごく綺麗に乗りこなすので、ほとんど修理箇所が無かったんですよ。
時間に余裕が出来たので、すぐに終わっちゃったんです」
ウイングル整備班のメンバー全員が、暇を持て余していたようで、こちらの作業を手伝い始めた。
……けど、カイザーが起動したら、物凄く忙しくなるだろうな……。
「じゃあ、頼む。カイザーの整備技術の方は、順調に進んでいるのか?」
「はい、穿月教授から、色々と教わってます。……といっても、起動実験には、全く立ち合えてませんが……」
「いや……その方がいい」
由木中尉が戦場に直接出た経験は、ほとんど無い。それに、ちょっと気弱な所があった。
……そんな彼女に、あんな凄惨な現場は、とても見せられなかった。
「あの……霜月中尉、疲れてませんか……?」
「ん? まぁ、帰還直後だからな。休んだら治る」
……まずい。疲労は極力顔に出さないようにはしていたけど、最近は隠しきれなくなっているのかもしれない……。
事務次官の手前、ああは言ったけど……やっぱり心も体も、じわじわと蝕まれてた。