【OVA版】誕生編:第1章
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そして次の日、霜月はスカーレットと共に、LLIの施設内に入った。
エントランスでは、明るい茶髪と垂れ目の、白衣を着た女性が出迎えた。
「こんにちは、霜月中尉。私はLLI室長の、由木翼です」
「あれ……? 君、この前、ブリューナクの研究チームにいたよな……?」
由木とは、ブリューナクのテストパイロットとして、その後の秋田エリアのテロの鎮圧の時に、2度会っていた。
「ええ、そうです。覚えていたんですか……?」
「ああ、いや……。俺より年下なのに、重要なプロジェクトに関わってたから……印象に残ってたんだ」
霜月が見るに、由木は2~3歳下だった。
「いえ、そんな」
「実際、とても優秀だぞ。ブリューナクがあれ程早く復元出来たのは、由木中尉が、古代のパーツを現代の技術で、完全に再現したお陰だからな。
その功績で、LLIの室長に昇進したんだ」
由木の案内で、地下へと続くエレベーターに乗ると、スカーレットはカイザーの説明を始めた。
「……化物じみた強さの機体でな。修復に成功すれば、間違いなくWSOの守護神となる。それも、ブリューナク以上のな」
「本当ですか!? じゃあ、軍への被害も、更に少なくなりますね……!」
「……それがな。アレは曰く付きの機体だ。……まぁ、見れば分かる」
その時、地下への到着を告げるアラームが鳴り、扉が開いた。
そこは監視室だった。――そして、大きな窓から、一体の巨大なロボットが見えた。
「あれ、が……!!」
一流の槍術使いである霜月でさえ、カイザーの魔神のようなオーラには、圧倒された。
その後、霜月は2人から、カイザーが発掘され、復活プロジェクトが始まった経緯を聞かされた。
その段階では、具体的な性能はまだ聞いていなかったが、恐ろしい兵器である事は、嫌でも分かった。
「……確かに、アレが復活すれば、間違いなくWSOは無敵の力を手に入れるでしょうね……。
……けど、あんな物を目覚めさせて、本当にいい事ばかりと言えるのか……」
「ええ、それは私も懸念しています……」
「だが、海兵隊には、間違いなくコイツの力が必要だ。ブリューナク一機では、全てのアクシデントには対応出来ないからな……」
スカーレットは腕組みをしながら、霜月を見て言った。
「そこでだ。ブリューナクは、カイザーが暴走した時の、歯止め役も担うことになった。
安全性を考慮しながら進めているとはいえ、未知の部分が多い機体だ。何が起きるかも分からない。
だから、もしLLIから緊急要請が出たら、すぐに出動し、カイザーを制圧する」
「了解。……しかし、実験段階とはいえ……。コレが暴走すれば、ブリューナクも只じゃ済まないかもしれませんね……」
(……その読みは当たっているな)
いつもなら「弱腰になるな、チンカス野郎!!」と喝を入れる所だが、今回に限っては例外だった。カイザーに対しては、少し楽観視するだけでも危険だった。
霜月は、分析力と危機察知能力に優れていた。基本的には慎重に行動し、相手の実力や脅威を、即座に見抜く。
悪く言えば臆病な面もあるが、それで窮地を回避してきたのも、一度や二度では無かった。
「……ああ。カイザーは火力だけでなく、耐久力もずば抜けて高い。
……それに、完全に制御不能になり、破壊しなければならない、という事態もあり得る。
だから、これから具体的な作戦を決めるぞ」
***
3人は室長室に移動し、バーチャルモニターにカイザーの設計図を表示してから、会議を始めた。
「……縮退炉を直接貫けば、大規模な爆発が起き、街が壊滅します。なので、四肢を破壊し、行動不能にするしかありません」
「それなら、まずは足の関節から破壊して、動けなくさせてから、腕を破壊した方が……」
「あっ、すみません、言い忘れてました……。カイザーには、両腕をロケットのように発射する武器があるんです。
それを正面から喰らえば、ブリューナクのエネルギーバリア込みでも、おそらく耐えられません……」
「ふむ……。ならば、腕の破壊が最優先だな。……ただし、おそらく一撃では破壊できん。最低でも2回、攻撃は必要だ」
「じゃあ、遠距離攻撃しながら、両腕の攻撃を誘い、発射された瞬間に距離を詰めて、接続部を破壊するのが一番、ですが……。そう簡単に行くとも、思えませんね……」
「だな。次にいいのは、スピードで攪乱しつつ、死角に回り込み……」
話し合いは順調に進み、1時間程度で、作戦は決まった。
だが、カイザーの修復が進む度に、戦闘力も上がっていく事を踏まえると、定期的に、作戦を考え直す必要があった。
なので霜月は、最低でも週に1回は、LLIを訪れる事になった。
そうして数ヶ月、打ち合わせをしていれば、流石にお互いの性格は分かっていく。
霜月と由木は、真面目な常識人同士、とても気があった。
ある日、カイザーに金属腐敗ガスが搭載されている事が発覚し、緊急で会議を始めた。
もしガスの流出を止められなければ、市民への被害は、計り知れない。
卓上には、ホログラムの立体地図が表示され、霜月と由木は、それを見ながら話し合っていた。
「口のダクトさえ潰せれば、ガスは止められますが……。市街地への流入から、10分だけでも、信号機に電力網、建物が倒壊し始めます。
車も同様です。避難が間に合わない住民も、出てくるかと……」
「コーラル・ステーションから、現場の到着まで、最速で5分……。
いや、トラブルでもう少し遅れる可能性も踏まえると……。3分以内に、決着をつけるしか無いな……」
「ガスが広がる範囲は、カイザーの状態と、風速から、こちらで分析します。
それと、ブリューナクへの悪影響ですが……。槍だけは、未知の金属で出来ているため、錆びないでしょう。
ただ、ボディは15分浴び続けると、腐食が始まります。もっとも、一般的なロボットよりは、進行は遅いですが……」
「思ったより、猶予はあるな……。けど、念のため、エネルギー弾かジャベリンで、ダクトを集中的に攻撃する。
……近づくのは一瞬だな。基本的な方針は、最初の案と変わらないが……。住民の避難状況を考えて、何パターンか用意しよう」
「了解」
スカーレットは、その様子を見守っていた。
最初のうちは、霜月も由木も慣れていなかったため、自分が主導で会議をしていた。
だが今は、しばらくアイデアを出させ、穴があれば自分が指摘する、というスタンスにしている。
2人を成長させるためだ。――そして、その成果は現れ、指摘の回数は、少なくなってきていた。
(由木中尉も、これからは正規中尉として、戦況の分析も、担当しなければならないからな……。
それに将来、霜月が独立部隊を持てば、カイザーの部隊と、合同で任務をする事も、多くなるだろう。
今のうちに信頼関係を築いておけば、「本番」での連携も、上手くいく)
霜月と由木は、真剣に作戦を練っていた。
由木の的確な被害予測と、霜月の慎重かつ柔軟な作戦立案は、相乗効果で、スカーレットから見ても、かなり完成度が高い物に、仕上がっていった。
(といっても、まだ穴はあるが……中々いい組み合わせになりそうだな。将来が楽しみだ)
修正案を2人に出しつつ、スカーレットはわずかに口元を緩めた。
エントランスでは、明るい茶髪と垂れ目の、白衣を着た女性が出迎えた。
「こんにちは、霜月中尉。私はLLI室長の、由木翼です」
「あれ……? 君、この前、ブリューナクの研究チームにいたよな……?」
由木とは、ブリューナクのテストパイロットとして、その後の秋田エリアのテロの鎮圧の時に、2度会っていた。
「ええ、そうです。覚えていたんですか……?」
「ああ、いや……。俺より年下なのに、重要なプロジェクトに関わってたから……印象に残ってたんだ」
霜月が見るに、由木は2~3歳下だった。
「いえ、そんな」
「実際、とても優秀だぞ。ブリューナクがあれ程早く復元出来たのは、由木中尉が、古代のパーツを現代の技術で、完全に再現したお陰だからな。
その功績で、LLIの室長に昇進したんだ」
由木の案内で、地下へと続くエレベーターに乗ると、スカーレットはカイザーの説明を始めた。
「……化物じみた強さの機体でな。修復に成功すれば、間違いなくWSOの守護神となる。それも、ブリューナク以上のな」
「本当ですか!? じゃあ、軍への被害も、更に少なくなりますね……!」
「……それがな。アレは曰く付きの機体だ。……まぁ、見れば分かる」
その時、地下への到着を告げるアラームが鳴り、扉が開いた。
そこは監視室だった。――そして、大きな窓から、一体の巨大なロボットが見えた。
「あれ、が……!!」
一流の槍術使いである霜月でさえ、カイザーの魔神のようなオーラには、圧倒された。
その後、霜月は2人から、カイザーが発掘され、復活プロジェクトが始まった経緯を聞かされた。
その段階では、具体的な性能はまだ聞いていなかったが、恐ろしい兵器である事は、嫌でも分かった。
「……確かに、アレが復活すれば、間違いなくWSOは無敵の力を手に入れるでしょうね……。
……けど、あんな物を目覚めさせて、本当にいい事ばかりと言えるのか……」
「ええ、それは私も懸念しています……」
「だが、海兵隊には、間違いなくコイツの力が必要だ。ブリューナク一機では、全てのアクシデントには対応出来ないからな……」
スカーレットは腕組みをしながら、霜月を見て言った。
「そこでだ。ブリューナクは、カイザーが暴走した時の、歯止め役も担うことになった。
安全性を考慮しながら進めているとはいえ、未知の部分が多い機体だ。何が起きるかも分からない。
だから、もしLLIから緊急要請が出たら、すぐに出動し、カイザーを制圧する」
「了解。……しかし、実験段階とはいえ……。コレが暴走すれば、ブリューナクも只じゃ済まないかもしれませんね……」
(……その読みは当たっているな)
いつもなら「弱腰になるな、チンカス野郎!!」と喝を入れる所だが、今回に限っては例外だった。カイザーに対しては、少し楽観視するだけでも危険だった。
霜月は、分析力と危機察知能力に優れていた。基本的には慎重に行動し、相手の実力や脅威を、即座に見抜く。
悪く言えば臆病な面もあるが、それで窮地を回避してきたのも、一度や二度では無かった。
「……ああ。カイザーは火力だけでなく、耐久力もずば抜けて高い。
……それに、完全に制御不能になり、破壊しなければならない、という事態もあり得る。
だから、これから具体的な作戦を決めるぞ」
***
3人は室長室に移動し、バーチャルモニターにカイザーの設計図を表示してから、会議を始めた。
「……縮退炉を直接貫けば、大規模な爆発が起き、街が壊滅します。なので、四肢を破壊し、行動不能にするしかありません」
「それなら、まずは足の関節から破壊して、動けなくさせてから、腕を破壊した方が……」
「あっ、すみません、言い忘れてました……。カイザーには、両腕をロケットのように発射する武器があるんです。
それを正面から喰らえば、ブリューナクのエネルギーバリア込みでも、おそらく耐えられません……」
「ふむ……。ならば、腕の破壊が最優先だな。……ただし、おそらく一撃では破壊できん。最低でも2回、攻撃は必要だ」
「じゃあ、遠距離攻撃しながら、両腕の攻撃を誘い、発射された瞬間に距離を詰めて、接続部を破壊するのが一番、ですが……。そう簡単に行くとも、思えませんね……」
「だな。次にいいのは、スピードで攪乱しつつ、死角に回り込み……」
話し合いは順調に進み、1時間程度で、作戦は決まった。
だが、カイザーの修復が進む度に、戦闘力も上がっていく事を踏まえると、定期的に、作戦を考え直す必要があった。
なので霜月は、最低でも週に1回は、LLIを訪れる事になった。
そうして数ヶ月、打ち合わせをしていれば、流石にお互いの性格は分かっていく。
霜月と由木は、真面目な常識人同士、とても気があった。
ある日、カイザーに金属腐敗ガスが搭載されている事が発覚し、緊急で会議を始めた。
もしガスの流出を止められなければ、市民への被害は、計り知れない。
卓上には、ホログラムの立体地図が表示され、霜月と由木は、それを見ながら話し合っていた。
「口のダクトさえ潰せれば、ガスは止められますが……。市街地への流入から、10分だけでも、信号機に電力網、建物が倒壊し始めます。
車も同様です。避難が間に合わない住民も、出てくるかと……」
「コーラル・ステーションから、現場の到着まで、最速で5分……。
いや、トラブルでもう少し遅れる可能性も踏まえると……。3分以内に、決着をつけるしか無いな……」
「ガスが広がる範囲は、カイザーの状態と、風速から、こちらで分析します。
それと、ブリューナクへの悪影響ですが……。槍だけは、未知の金属で出来ているため、錆びないでしょう。
ただ、ボディは15分浴び続けると、腐食が始まります。もっとも、一般的なロボットよりは、進行は遅いですが……」
「思ったより、猶予はあるな……。けど、念のため、エネルギー弾かジャベリンで、ダクトを集中的に攻撃する。
……近づくのは一瞬だな。基本的な方針は、最初の案と変わらないが……。住民の避難状況を考えて、何パターンか用意しよう」
「了解」
スカーレットは、その様子を見守っていた。
最初のうちは、霜月も由木も慣れていなかったため、自分が主導で会議をしていた。
だが今は、しばらくアイデアを出させ、穴があれば自分が指摘する、というスタンスにしている。
2人を成長させるためだ。――そして、その成果は現れ、指摘の回数は、少なくなってきていた。
(由木中尉も、これからは正規中尉として、戦況の分析も、担当しなければならないからな……。
それに将来、霜月が独立部隊を持てば、カイザーの部隊と、合同で任務をする事も、多くなるだろう。
今のうちに信頼関係を築いておけば、「本番」での連携も、上手くいく)
霜月と由木は、真剣に作戦を練っていた。
由木の的確な被害予測と、霜月の慎重かつ柔軟な作戦立案は、相乗効果で、スカーレットから見ても、かなり完成度が高い物に、仕上がっていった。
(といっても、まだ穴はあるが……中々いい組み合わせになりそうだな。将来が楽しみだ)
修正案を2人に出しつつ、スカーレットはわずかに口元を緩めた。
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